第222話「障害物競争」
『さーて! 次が短距離走最後の第十二レースです! ここまでの成績はなんと! なんと! 全て北高が一着を独占しています! 南高、まさかの全敗になってしまうのか……? それとも、最後だけは一着を取り全敗は避けるのか!? 注目のレースが今始まります!』
「オマエ、ソノ体……運動スル男ノモノトハ思エヌ……マサカ、文化部カ?」
「あぁ『死んだブタの目栄養不足シャトーブリアン部』……。
フッ、通りすがりの文化部さ」
「ハッハッハハッ! 文化部ダト!? これは、傑作ダナ! クックッ……。
運動部デナイ、オマエナド……俺ノ敵デハナイ」
「……そうかな?」
『位置について……よーい――――』
「付き合ってやるよ……十秒間だけな!」
『では、次の種目は「障害物競走」でーす♪ 出場する選手はゲートにお集まりください』
「安藤くん、短距離走は惨敗だったわね……。まぁ、最後のレースだけは『死んだブタの目栄養不足シャトーブリアン部』の人が一着を取れたから全敗だけは避けれたけど……」
「そうだな、委員長。まさか『シャトーブリアン部』の奴が『十秒』台のタイムを出したのは流石に驚いたなぁ……」
(てか、何であんなに早いのに『死んだブタの目栄養不足シャトーブリアン部』なんてわけのわからん同好会に入ってんだろ?)
「まぁ、それでも……初っ端の競技からほぼ完敗だからな……」
「そうね。この結果で、南高生の士気も少し下がって――」
「みんなぁぁぁあああああああああ! 俺様の帰還だぞぉおおおおおおおお!」
「ウェェエエーーーーイ!」
「お前達、コケたくせによくそんな偉そうな顔で戻ってこれるよな?」
「「「山田ァアアアアアアアアアアアア!」」」
「てめぇ! 山田と沢渡! お前らよく帰ってこれたな!?」
「あと、ついでにハゲ!」
「この短距離走の面汚しが!」
「あと、ついでにハゲ!」
「負けてすみませんでしたって土下座しろ!」
「でぇえええええええ!? 皆なんでそんなに怒ってるんだよ!? 体育際はまだ始まったばっかりだZE! 気にすんなYO♪」
「ウェエエーーーーイ!」
「お前ら、これだけ罵倒されてよくそんな平気でいられるよな……あと、どさくさにまぎれて、俺を『ハゲ』って言ったのは誰だゴラァア! 俺は『坊主』にしているだけで『ハゲ』なわけじゃねぇからな!?」
「……なんか、心配なさそうね」
「だな……」
(山田が言うのはシャクだが、奴の言うとおり体育祭はまだ始まったばかり……さっき負けたポイントは次の競技で取り返せばいいんだ)
「それに、次の競技は『障害物競走』これは純粋に運動神経だけに左右される競技ではないから、外国人留学生が相手でも十分に勝機はあるはずだ」
「でも、安藤くん。それは向こうだって同じでしょう?」
「フッフッフ……委員長、ところがどっこいなんだよ。この合同体育祭は互いの学校から出した実行委員が協力して平等に競技の内容を決めていることになっているが……その実態はこっちのスパイである早坂さんが手引きした北高生と、俺が推薦した我が妹と姉ヶ崎後輩の妹ズが実行委員を仕切っている! つまり、この体育祭競技のある程度は俺の支配下にあるのだ!」
(そして、障害物競走は俺が考えた『障害物』を妹と姉ヶ崎後輩に指示したから、内容は既に把握済みなのさ……)
「だから、あとは障害物競走に有利な選手をエントリーさせれば俺達の勝利は確実って寸法さ!」
「でも、障害物競走に有利な選手って……」
『さぁ、次の競技! 障害物競走に出る選手の入場です! そして、注目の選手!
我が南高で文武両道、才色兼備で知られる「学校一の美少女」として有名なこの人――朝倉さんです!』
「安藤くん! 『この競技は朝倉さんの力が絶対に必要なんだ!』って意味は良く分からなかったけど……でも、彼の期待に答えるためにも私は頑張るわ!」
〉〉〉スカァァア――ンッ!〈〈〈
「おわかり……いただけただろうか?」
「あっ……」
(なんとなく、察したわ……)
「安藤くん! 見ててね……ここから私の体育祭伝説が始――」
『はーい、以上で障害物競走は終わりになります♪ いや~、先ほどの短距離走とくらべてこっちの競技は接戦でしたね♪ そして、次の競技は「借り物競争」ですが、その前に休憩でーす。最近は熱中症になる人も多いので、皆さん水分補給はしっかりしてくださいねー? メガネちゃんとの約束ですよ♪』
「「「はーい! メガネちゃーーん!」」」
「安藤くんの予想通り、朝倉さん凄い活躍だったわね」
「ああ、委員長。そうだな……」
(確かに、障害物競走における朝倉さんの活躍は凄まじかった……『ドキッ! 窓に体が引っかかって上手く通れないトンネル1号』や『ワーオ! 狭いタイヤの中をトンネルみたいに上手く潜れるかな?2号』とか『キャ! こんな狭い幅なんて体を横にしても通り抜けられない3号』などの俺が考えた数多くの障害物を朝倉さんは持ち前のスタイルの良さで誰よりも早く駆け抜けて一着を取ったからな)
「でも、計算外だったのは朝倉さん以外のレースで思うように勝てなかったところよね」
「そうなんだよな……」
(よりによって、朝倉さんと同じ
「結果、障害物競走の六レース中で勝てたのは僅か三組……北高とのポイントは開いたままね……」
「畜生! 障害物競走なら、胸が障害物にならない女子で打線を組めば、全員小柄だから楽に一着を独占できると思ったのに!」
「あ、安藤くん……後ろ――」
「ん? 委員長、どうした? なんか、変な顔して――」
「あらあら~、安藤くんが『この競技は朝倉さんの力が絶対に必要なんだ!』って、言うから私は頑張って一着をとったのだけど……まさか、そんな意図があったなんてね? ……ウフフ♪」
「…………」
(こ、この声は――)
「いや、朝倉さん……これは――ね?」
「ねぇ、安藤くん……少し、向こうでお・
「あ、ああ……ああぁああ――!」
「安藤くん……自業自得よ」
(その日、振り返った俺の背後には……久々の『グレムリン』が召喚されていた)
【次回予告】
「皆、いつも応援してくれてありがとう! 委員長よ♪
安藤くんは、きっと他の女ばっかりにかまっていたから天罰が下ったのね。
さーて、次回の『何故かの』は?」
次回 「借り物競走」 よろしくお願いします!
「じゃあ、いつもの『ペタリンじゃんけん』を始めるわよ! 出す手は決まった? もちろん、私は決めてるわ。じゃあ、いくわよ?
ペタペタ・ペタりん♪ じゃん・けん・ポン♪」
【チョキ】
「皆のコメント、評価、待ってるわ♪」
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