第221話「開会式」
『えー、それでは時間になりましたので南高と、北高による「合同体育祭」を始めます。司会は南高三年の私。通称「メガネちゃん」が勤めさせていただきまーす♪』
「「「キャー、メガネちゃーーん!」」」 ←ファンのメガネっ子好きな生徒達
「……安藤くん、何であのメガネ先輩は生徒会を引退したはずなのに、まだ司会なんてやっているのかしら?」
「委員長、知らないのか? あのメガネ先輩は俺と入れ替わりに生徒会を引退して『メガネっ子司会同好会』を立ち上げたんだよ。だから、今後ウチの学校に関わる行事の司会はその同好会のメンバーが、同好会の活動として引き受けるんだってさ」
「何その意味不明な同好会は!? てか、貴方はよくそんな同好会の設立を許可したわね。貴方って、まがりなりにも生徒会長なんだからちゃんと怪しい同好会のチェックとかしなさいよ……」
「そんなこと言われても、俺の仕事って事前に石田や朝倉さんがチェックした書類に判子押すだけになってきてるからなぁ……」
「もはや、お飾りね……でも、あの二人がよくそんな意味不明な同好会をOKしたわね……」
「メガネ先輩が差し入れしてくれた『お勧めのメガネっ子ヒロインが出てくるライトノベル10選』は大変面白かったです」
「めちゃくちゃ買収されているじゃない!?」
「因みに、メガネ先輩は卒業したら『メガネっ子司会同好会』の後継者は委員長にするって言ってたぞ」
「何それ!? 全然、聞いてないわよ! そんな変な同好会なんて、絶対に引き受けないわよ!」
「うーん……そうかぁ~? 何故か、俺は委員長って司会が上手そうなイメージがあるけどな。メガネだし……」
「そ、そう……? って、それ、ただ『メガネキャラ』が同じなだけじゃない!」
(そんな、明らかに面倒で損な役割なんて『要領よく生きる』がモットーの私がやるわけないじゃない!)
(委員長の性格だと……なんだかんだ言って、来年は普通に司会してそうなイメージがあるんだよなぁ……)
『さーて、最初に始まる競技は「短距離走」です! 短距離走に出る生徒は走る順番ごとに列を作って入場ゲートに集合してくださいね♪』
「「「はぁーい、メガネちゃーーん!」」」 ←ファンのメガネっ子好きな生徒達
「因みに、この体育祭の作戦はちゃんと分かっているわよね?」
「ああ、俺達の南高は『負けない戦い』を仕掛ける。相手の北高が外国人留学生を大量投入して、勝ち目がほぼないなら、狙うのは『引き分け』だ。
引き分け狙いで不正々堂々と戦いを挑み――、
あわよくばおこぼれを貰うつもりで勝つ!」
「うん……実に安藤くんらしい作戦だわ……」
『さーて、第一種目「短距離走」の第一レースの準備ができました!』
「それで、安藤くん。もう、第一種目の『短距離走』が始まるけど、この競技は何か対策はしてあるの?」
「ああ……。短距離走は第十二レースまでやるけど、その中で北高が出してくる外国人留学生は六人で、後半の第七レースから一人づつ出してくることはもう分かってるんだよ。だから、俺達は後半の七レースからを運動が苦手な『死んだブタの目栄養不足シャトーブリアン部』通称『SES部』の奴らを捨て駒にして、足の速い人間は前半の第六レースまでに集中させる作戦だ」
(外国人留学生相手に勝つのは無理だけど、前半の六レースまでに出てくる北高生なら、まだちゃんとした勝負が出来る可能性はあるはず……。作戦の内容的に短距離走のポイントの半分は奪われる計算だが、逆に前半のレース次第ではイーブンに出来る可能性だってあるはずだ!)
「その作戦、死んだブタの……え、えーと――SES部? の子達はよく引き受けたわね」
「奴らの同好会を生徒会が認めるのを条件にしたら、簡単に引き受けてくれたぞ?」
「部活動ですらないじゃない!?」
(そもそも、一体何をする同好会なのかしら……)
(それにこれには南高の運動神経が良い生徒を温存する意味もあるんだよな。体育祭は生徒が参加できる種目に限りがあるから、運動神経が良い生徒は相手の留学生と種目を被らせたら無駄に体力を消費させてしまう)
「因みに、外国人留学生が後半のレースから出てくるってどうして分かるの?」
「早坂さんが俺のスマホに普通に送って来たぞ」
「そ、そう……」
(この男……未だに山田とか石田くんの連絡先すら知らないくせに、女の連絡先だけ増えていくのね)
『はーい、では今から「短距離走」の第一レースから順番に初めていきたいと思いまーす! 第一レースの選手は準備OKですかー?』
「ウェーイ!」
「え! さ、沢渡くん……? 何で彼が第一レースの選手に選ばれているのよ!?」
「いやぁ……委員長が驚く気持ちも分かるんだけどね? アレでも意外に、沢渡ってウチの学校でかなり足が速いんだよね。今は辞めちゃったらしいけど、一年の時は野球部のエースだったらしいよ?」
(そして、沢渡の次は吉田が第二レースで走る予定だっけ? 学校の体力テストの結果を見たら、あの二人が学年で二番と三番目に足が速いんだよなぁ……。
あいつら、入る部活間違えてね?)
「第三から第五レースは陸上部の先輩達のようね」
「まぁ、純粋に体力テストのタイムが早い順に組んだ結果なんだけどな……それでも、陸上部の三年を抜いたら、吉田と沢渡の方が陸上部の二年より早いのは意外だよ」
『では「短距離走」第一レース始めまーす♪ 皆さん、位置について……よーい――――』
「いよいよね……」
「あぁ……」
『ドン!』 スカァーン! ← スタートの音
「ウェエェエエエエエエエエーーーイイッ!」
『おぉーーっと! ここで第一レースの沢渡選手! スタートに失敗して見事にコケてしまいました!』
「「沢渡ィイイイイイイイーーィイッ!」」
『一着は北高! 二着も北高! 三着は南高! そして、ビリがスタートでこけてしまった沢渡選手です! これは南高は第一レースから厳しい結果になってしまいましたねー』
「ちょっと、安藤くん……これ本当に大丈夫なの?」
「だ、大丈夫……。沢渡なんて、第六レースまでに出る選手の中でも最弱……。それに、次の吉田はしっかりしてる方だから、沢渡みたいにコケるなんてドジはしないだろうし、それ以降の奴らは後のレースになるほどタイムが早い奴が出るから挽回はまだ可能――」
十分後
『はい! ここまで「短距離走」の第五レースまでが終了しましたが……なんとなんと! 現在、第一レースから第五レースまで、北高が全ての一着を総取りする結果となっています! 最初の競技から北高に大きくポイントを離された南高は残りの七レースはなんとしても取り返したいところですが、この合同体育祭! 早くも結果は見えてきたか!?』
「吉田くんは普通に負けて……三、四、五レースの陸上部の先輩達は昨日食べたマルゲリターピザのトマトが腐ってた所為で体調を崩してボロ負け……さて、安藤くん……。今の感想は?」
「吉田がナチュラルに負けてるのが救いようもないなぁ……と思う」
(やはり、髪の毛の差が空気抵抗の決定的な差にはなりえなかったか)
「せめて、次の第六レースだけでも一着を取りたい所よね……」
「でも、よりによってウチの学校で一番足が速いのってアイツなんだよなぁ……」
『さーて! 前半も最後の第六レース目! 注目の選手は――』
「ぉおお~れだ! 俺だ俺だ俺だ俺だ俺だ俺だ俺だ俺だ俺だ俺だ俺だ……っ!
俺どぅぇだぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああーーーーっ!」
『誰ですか!?』
「ハッハッハ! 皆ようやく待たせたな! そう、この真打のぉ~~、山田様だぁあああああああああああああああ!」
『
「「や、山田……」」
「ちょっと、安藤くん! いくら、山田が学校で一番足が速いからってこれはどうなのよ!?」
「仕方ないだろ! 山田って体力テストの成績が人を超えて『猿』の領域なんだぞ!? この体育祭であの体力バカを使わない手はないんだよぉ……」
「まさに、苦渋の選択ね……」
(でも、山田とハサミは使いようって言葉もあるくらいだし、ちょっとは彼にも期待をしても――)
『では、第六レース始めまーす♪ 位置について……よーい――――
ドン!』 スカァーン! ← スタートの音
「俺だ俺だ俺ぇ――――だぁああああああ!!」
『おぉーっと、山田選手! なんと、スタートダッシュに失敗して、見事にコケてしまいましたぁー!』
「「や、山田ァアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」」
【次回予告】
「皆、いつも応援してくれてありがとう! 委員長よ♪
結局『死んだブタの目栄養不足シャトーブリアン部』って、何をする同好会だったのかしら……。
さーて、次回の『何故かの』は?」
次回 「障害物競走」 よろしくお願いします!
「じゃあ、いつもの『ペタリンじゃんけん』を始めるわよ! 出す手は決まった? もちろん、私は決めてるわ。じゃあ、いくわよ?
ペタペタ・ペタりん♪ じゃん・けん・ポン♪」
【パー】
「皆のコメント、評価、待ってるわ♪」
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