第219話「偽者ヶ崎(中巻)」
「私が生徒会に入った理由は……『私になりたいから』ですよ
「え……それはどういう――」
「そのまんまですよぉ~、センパイ
(アタシのお姉ちゃんは凄い人だ……)
「センパイ、知ってましたぁ~? アタシのお姉ちゃんって結構凄いんですよ?」
(お姉ちゃんは『優秀な姉』だった。テストではいつも高得点を取り、運動神経も良く、そしてなにより、お姉ちゃんは美人でカリスマがあった……)
「お姉ちゃんって、実は中学生の頃から生徒会長をやっていたんですよ。そして、高校でも一年生であっという間に生徒会長になったんです……」
「へぇー、お前の姉ちゃんって、中学生の頃から生徒会長やってたのか……物好きだな」
「フフ! それ、いま生徒会長をやっているセンパイが言いますかぁ~? でも、そうですね……。アタシのお姉ちゃんは凄い物好きなんですよ♪ センパイ、ウチのお姉ちゃんが何で『生徒会長』になったのか……分かりますか?」
(お姉ちゃんは本当に凄い。勉強も、運動も、学校生活も全て完璧にこなして……そして、それは全て――)
「……え? いや、あの会長のことだし……」
(何だろう? 生徒会長と言ったら胸パッドだし……ペッタンコを隠すため? いや、違うな。もっときっとこう……かなり自己的な考えだとは思うが――)
「何だろうな……でも、多分『偉くなりたかった』とかじゃないの?」
「うぅ~ん……惜しいぃ! ですねぇ~」
「惜しいのかよ……。じゃあ、ロクな理由じゃねぇな」
「ハハハ! そうですねぇ~。ロクな理由ではありませんよ? だって、お姉ちゃんが生徒会長になったのは『奨学金を貰うため』ですもん♪」
「…………は?」
(それってどういう――)
「アハハ……。つまり、お姉ちゃんが頑張っているのは全部『妹のため』なんですよ」
(正直、アタシの家はあまり裕福とは言えない。何故なら、ウチは母子家庭だから……。お母さんは高校の学費くらいは、娘が二人だろうと余裕だって言っているけど……それも、高校までの話だ。ウチの家計的にアタシとお姉ちゃんの二人とも大学に行けるほどの余裕は決してありえない。だから、お姉ちゃんは『奨学金』に頼ることにした。自分がいい成績を取って学費を免除してもらえれば一人分の学費が浮く、お姉ちゃんはその浮いた分の学費で私を大学まで行かせるつもりなのだ)
「それで、お姉ちゃんってば本当にそれを実行しちゃうんですよぉ~? 中学生の時から成績が優秀な人しか貰えない奨学金の申請をして、そのために生徒会長になって成績上位をキープして……それで、大学も推薦貰って特待生の枠で内定貰っちゃうんですもん……それも全て、アタシを大学に通わせるためなんです……」
「ふーん……なんだ、会長って意外といいところあったんだな」
「えへへ……そうなんですよぉ~、ウチのお姉ちゃんって、意外と凄いんです
(お姉ちゃんが私のために頑張っているのは分かってる……。でも、お姉ちゃんが頑張れば頑張るほど、アタシは自分が惨めな気持ちになるのだ。
お姉ちゃんはあれでカリスマを持っているから周りの人から凄い慕われる。だからこそ、周りの人達はアタシを見ると……ガッカリする)
「アタシはお姉ちゃんの妹だから、お姉ちゃんを知っている人がアタシを見るといつも驚かれるんですよ……『え、アレが姉ヶ崎さんの妹?』『あ……貴方があの姉ヶ崎さんの妹なんだ……』とか『貴方は姉ヶ崎さんみたい生徒会に入らないの?』や『生徒会長の妹なら、勉強もできるでしょ?』なんてね
実はアタシって、お姉ちゃんと違って勉強も出来ないし、運動だって得意じゃないんですよ……だから皆、アタシを見るとお姉ちゃんとの違いにガッカリするんです」
(だから、アタシは高校に入る前に自分を変えた。お姉ちゃんとは正反対の人間になるように――髪を染めて、化粧をして、口調も少し乱暴にして自分は『姉ヶ崎の妹』ではなく『姉ヶ崎』なのだと回りに見ただけで分からせるように……。
それは意外と成功して、高校に入った私は中学の頃のような思いはあまりしなかった。そして、私はお姉ちゃんとは『違う』と言うことをより、皆に分からせるためにクラス、学年で自分のグループを作り――そして、出会ってしまった。
『俺が証明してやる! 誰でも変われるって! 誰にでも変えることができるって!』
最初はただ単に、変なセンパイが無謀なことをしているなぁ~、なんて感覚だった。
生徒会にだってお姉ちゃんが『私の息のかかった朝倉さんか石田くんが生徒会長になるのは確実ですわ! ですから、貴方は安心して生徒会に役員に立候補していいのよ?』なんて言って、ほぼ無理矢理『会計』に立候補させられたけど、最初は誰が生徒会長になっても生徒会に入る気なんてサラサラ無かった。
でも、そのセンパイは言った――
『俺は変わる! 生徒会長になってやる!
だから、皆も俺を選べ!』
あの時、何でセンパイを選んだのかは正直、分からない……。
でも、その言葉でアタシは自分の気持ちに気付いたんだ――)
「つまり、アタシはただ『お姉ちゃんを超えたい』……そう思っていただけなんです。だから、アタシは『センパイの生徒会』に入ろうと思ったんですよ
【次回予告】
「皆、いつも応援してくれてありがとう!
下巻が出るっていって中巻が出るのはよくあることよね
さーて、次回の『
次回 「
「……じゃあ、いつもの『ペタリンじゃんけん』を始めるわよ…………。出す手は決まった……? 私はもうどうでもいいわ。……じゃあ、いくわよ?
ペタペタ・ペタりん……じゃん……けん……ポン…………」
【パー】
「
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