第218話「偽者ヶ崎(上巻)」
「妹の奴、着替えの服代とか言って俺の財布から三千円も持っていきやがった……」
(畜生……。まるで、追い剥ぎグレムリンにあった気分だよ)
「キャハハ! でも、先輩のドリンクで汚れたんですし、それくらい仕方ないんじゃないですかぁ~?」
「原因はお前にもある気がするけどな?」
「まぁ、逆に三千円ですんで良かったじゃないですかぁ~
「へー、そんなもんなのか?」
「そんなもんですねぇ~
「なるほど……」
(だから、妹の奴も『服選ぶのに時間かかると思うから、二人は一階のカフェテリアで待ってて』なんて言ったのか……。しかし、姉ヶ崎妹と二人だけにされると話題がなくて困るというかぁ……)
「俺達って、こうして二人だけになるのって意外と珍しいのな……」
「え……センパイ、なんですか? 急に……もしかして、口説いてます?」
「ちげぇよ! そうじゃなくてだな……。俺って、お前のことあんまり知らないんだなって思ったんだよ……」
(だって、同じ生徒会なのに、俺よりも妹の方が姉ヶ崎妹については知っていることは多いからな……。
それに、俺は姉ヶ崎妹が生徒会に入るとは思っていなかったんだ。
選挙で当選した時、俺は姉ヶ崎会長の妹が生徒会に会計の枠で立候補したのを初めて知った。その時は――
『ふーん、前会長の妹か……あの
なんて、正直思った。多分、会長が推薦した朝倉さんが当選した際に、自分の息のかかった人間を生徒会に入れる算段なんだろうと……。
だから、俺が当選してしまったので姉ヶ崎妹は生徒会の立候補を取り消すと思ったんだ。でも、俺の予想とは裏腹に彼女はそのまま書記として俺の生徒会に入ってきた。
最初は姉ヶ崎会長の差し金か? とも思ったけど……生徒会長になって直ぐに姉の方に呼び出されて――
『
とか、鬼神の如き表情で脅迫されたので、それはないと確信したが……。
だから、俺はコイツ、姉ヶ崎妹について何も知らない。生徒会に入った理由。そして、俺に媚を売る理由……)
「なぁ……姉ヶ崎妹」
「なんですかぁ~、センパイ
「お前って、何で生徒会に入ったの……?」
「え……せ、センパイがそんなこと聞いてくるなんて珍しいですねぇ~? あ! もしかして……いまさら、アタシの魅力に気付いちゃいましたかぁ~
「お前それ、朝倉さんの前でも言えるの?」
「あ、すみません。今の言葉は撤回しまぁーす……。だから、朝倉センパイと比べるのは勘弁してください……。流石に『学校一の美少女』と比べられるのはキツイですよぉ……」
(あと、安藤センパイにちょっかい出したのがバレるのもマズイっていうかぁ~? だって、朝倉センパイってなんか怒らせたらヤバそうだし……)
「まぁ、別に茶化す意味はないんだけどさ……。お前って正直、真面目に生徒会に入りたいってタイプじゃないじゃん? なのに、姉ヶ崎会長が敵対してた俺の生徒会に入ったってことは、何か目的があって生徒会に入ったんだと思ったんだよ」
「へぇ~、流石はセンパイですね……。因みに、センパイはどうして生徒会長になろうと思ったんですかぁ~?」
「内申」
「うっわ……凄い、俗っぽい理由ですね……」
「さぁ、俺が答えたんだから、次はお前の番だぞ」
「でも、アタシは別に答えるとか言ってないですしぃ~
「お前……本当に姉と似ていい性格してるよな……。もし、答えなかったら、明日から、お前を『偽者ヶ崎(妹)』って呼ぶぞ」
「妹の方だって、れっきとした本物の『
(まったく、センパイってばピンポイントで私の嫌なところを付いて来るんだから……)
「……でも、センパイ相手なら話してもいいかもですねぇ~
「…………?」
「私が生徒会に入った理由は……『私になりたいから』ですよ
【次回予告】
「そろそろ、出番が欲しい~♪ 出番が~欲しいの~よ~♪ いつの間にか~? 出番が消えた~♪
マイネームなんて~、もらえる気配もな――あ……み、皆! いつも応援してくれてありがとう! い、委員長よ……♪
さーて、次回の『何故かの』は?」
次回 「偽者ヶ崎(下巻)」 よろしくお願いします!
「じゃあ、いつもの『ペタリンじゃんけん』を始めるわよ! 出す手は決まった? もちろん、私は決めてるわ。じゃあ、いくわよ?
ペタペタ・ペタりん♪ じゃん・けん・ポン♪」
【パー】
「皆のコメント、評価、待ってるわ♪」
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