第217話「『妹』という概念」
「姉ヶ崎さん、次は何処に行こうか?」
「そうですねぇ~、安藤さんは何か候補ありますかぁ~?」
「……え、お前らまだ遊ぶつもりなの? もう、映画も終ったんだし帰ろうぜ」
「ぶぅーっ! お兄ちゃんってば、こんなに可愛い女の子を二人も連れて、その態度はないんじゃないかなー?」
「でも、片方はただの妹なんだよなぁ……」
(実の妹相手に兄がデレデレしてたら、それ世間的にシスコン認定まっしぐらですよね?)
「意義あーり! お兄ちゃん、そんなのは妹差別だよ! むしろ、お兄ちゃんは私が『妹』だからこそ、優しくしてくれてもいいと思うのです!」 ムフー!
「そーですよぉ~! 妹だってちゃんとした『女の子』なんですよぉ~? だ・か・ら、私のこともちゃんと可愛がってくださいね? お兄ちゃん♪」
「誰が『お兄ちゃん』だ!? お前にいるのは『
「じゃあ、そこは『可愛い後輩』ってことで
「それを自分で言うのか……」
(でも『お兄ちゃん』って言われてちょっと『ドキッ!』って、したのは黙っておこう……。そうだ! 今度、朝倉さんに『おにぃ――)
「むぅ~……」
「ど、どうした……妹よ?」
「……なんか、お兄ちゃん変なこと考えてない?」
「へ、そそ、そんなことないぞ!? 一体、この妹は何を言ってるんだろうなぁ~? ハッハッハ!」
「むむぅ……」
(怪しい……お兄ちゃんから『浮気(妹)』の気配がする)
「てか、センパ~イ。なんでまだ映画で買ったドリンク持ってるんですかぁ~? 邪魔じゃないです?」
「いや、だってまだ残ってるんだもん……」
「お兄ちゃん、それくらいさっさと飲んじゃいなよ? Sサイズなのに、何で映画がやっている間に飲めないの……?」
「仕方ないだろ……アイスティーって一気に飲むような飲み物じゃないんだよ……」
(本当は映画が予想外に面白くて、飲み物を飲むのも忘れていたとは言えない……)
「あ! センパ~イ♪ じゃあ、アタシがそのドリンク代わりに飲みますよぉ~
「うにゃんと!?」
「え、姉ヶ崎妹……? 流石にそれは……」
(だって、それって……間接キス的なことにならない?)
「ちょちょ、ちょっと、姉ヶ崎さん!? なな、何言っているのかにゃ!? お兄ちゃんにはサクラお義姉ちゃんって言う彼女がいるんだからね! そ、そういう行動は謹んでくれないかな……?」
「お、おう、そうだそうだ! 妹の言うとおりだぞ?」
「えへへ、そうですよねぇ~? フフ、冗談ですよぉ~、センパイ
(……チッ)
「でも、まぁ……確かに、お兄ちゃんのドリンクをこのまま捨てるのももったいないし? はぁ、仕方ないな~……。ここは『妹』の私が責任をもって、このドリンクをお兄ちゃんの代わりに飲んで上げしかないよね~? 実の『妹(本物)』として、仕方なくね?」
「……ん? まぁ、そうか?」
(なんか、妹の言っていることがさっきと矛盾している気がしなくもないが……まぁ、妹だしいいか?)
「じゃあ、このドリンクは妹に――」
「ちょぉ~~っと、待ってください!? せ、センパ~イ……? アタシがドリンクをもらうのはダメで! 妹さんが代わりに飲むのはOKって……なぁ~んか? お・か・し・くないですかぁ~?」
「……え、そうか?」
「そうですよぉ~! 妹さんが飲んでいいなら、アタシにだってもらう権利あります!」
「ちょっと、姉ヶ崎さん? 余計な口は出さないでくれるかな~? これは私とお兄ちゃん『兄妹』の問題なの! 姉ヶ崎さんは関係無いでしょ……?」
「関係ありますぅ~! だって、アタシも『妹(偽)』じゃないですかぁ~? それで、センパイは『お兄さん』なんだから、これはもう『兄妹(偽)』と言っても過言じゃないみたいなぁ~?」
「「いや、その理屈はおかしい……」」
「てか、姉ヶ崎妹よ……。お前には絶壁パッドと言う名の実の『姉』がいるだろ? そんなこと言うと姉ヶ崎会長の無い胸が悲しみでさらに抉れるぞ」
「お姉ちゃんの胸なんか抉れてもパッドでも詰めとけばいいんですよ! てか、センパイは黙っててくれませんかぁ~?」
「あ、ハイ……」
(おかしいなぁ……俺、当事者のはずなんですけどぉ~?)
「と・に・か・く! このドリンクは真の『妹』である私が、お兄ちゃんの代わりにもらうの!」
「先にセンパイのドリンクを貰うって言ったのはアタシなんですけどぉ~? そもそも妹に『真の』とか『実の』とか関係無いって言うかぁ~? むしろ、時代的には『実妹』より『義妹』の方が需要あるっていうかぁ~
「はぁああ!? そんなわけないでしょ! ちょっと、姉ヶ崎さん……? 全国の『妹』をなめているんじゃないかな~?」
「…………」
(いや、一理あ――)
「……
「ハイ! 何も考えてないでございます!」
(そもそも、姉ヶ崎妹は『義妹』ですらないけどな……)
「てか、何でお前らはそんなにこのジュースが欲しいの? もしかして、俺のこと好きなの……?」
(まぁ、本当はただ張り合っているだけ、だろうけど――)
「はぁ~? ちょっと、お兄ちゃんマジでキモいよ……。お兄ちゃんはただでさえ『ぼっち』なのに、それに加えて『ナルシスト』とか、本当に救いようがないからね……?」
「うわぁ~、センパイ、その冗談マジないです……。ちょっと、本気で鳥肌が立ちましたよ……。もう、これSNSで即拡散するレベルですよぉ……」
((そ、そんなんじゃないし……))
「ちょっと、冗談で言っただけなのに、マジの反応止めてくれる!? 今の言葉、今世紀で一番ダメージ入ったわ! だから、SNSの拡散だけはマジで止めてください。おねがいします!」
(ただでさえ、ボロクソにダメージ入ったのにSNSの拡散は死体蹴りすぎるだろ!? そんなん、されたら体育祭の結果に限らず即、生徒会長をリコールされるわ! ……うん、やっぱり生徒会長になったからと言っても『ぼっち』は所詮『ぼっち』なのだな。これからも、浮かれずに『ぼっち三原則』を胸に抱いて自重しよう……)
「じゃあ、なんでお前らはそんなにこのジュースが欲しいの……?」
「「そ、それは……ただ――こ、コイツに負けるのが嫌なだけ!」」
「あ、そうですか……」
(やっぱり、こいつら仲が悪いんだな……)
「「…………」」
((本当に、それだけだし……))
(ハッ――今がドリンクを奪うチャンス!)
「てへ
「おま! ちょ、あぶな――」
「あ、ズルイ! それはお兄ちゃんのなんだから、私が貰うのーっ!」
(ま、まだ! 手を伸ばせば奪い返せ――)
(――え? 妹? 何で、妹の手が――)
「「「あ!」」」
バッチャ~ン! ← ドリンクをこぼした音
「にゃぁ~ああ! お兄ちゃんのドリンクが私の服にかかったぁーっ!」
「おぉう……妹よ。なんか、すまん……」
(でも、今のは主にドリンクを奪おうとした
「センパ~イ、安心してください♪ アタシは無事ですよ
「いや、お前は少し反省しろよ……」
「もう! 何で二人は濡れてないのーっ!」
(私だけびしょびしょとか不公平だよ!)
「そう言われても、妹の方にドリンクが落ちたから――あ……」
「ん? どうしたの……お兄ちゃん」
「いや……まぁ、何と言うかだな――」
「え~とぉ……安藤さん、もう少し自分を良く見た方がいい的なぁ~
「へ? 自分の格好って――ッ!?」
(わわわ、私の服……濡れたせいでブラジャーが透けてる!?)
「み、みにゃぁぁああああああーーっ!?」
「アハハハ! マジでウケるんですけぉ~
「全――然! ウケないから! てか、透けてるなら最初から教えてよーっ!」
「…………」
(……チッ! 姉ヶ崎妹め、余計なことを……)
「――ッ! うぅ……これも全部、お兄ちゃんのせいだからね!?」
「何でそこで俺の責任になるんだよ!?」
「だって、お兄ちゃんがドリンクを飲み残してたのが原因じゃん!」
「こぼしたのは主に、お前らだけどな!?」
「にゃうぅ~……てか、お兄ちゃん! いつまでジロジロ見てるの!? も、もう……実の妹相手にいやらしい目つきするか……ほ、本当に! お兄ちゃんはどうしようもないんだから~……フフン!」
(……何言ってんだお前? 俺が実の妹の下着程度で動揺なんかするわけないだろう? そもそも、妹の下着なんか家で普通に干してあるし、いまさらどうとも思わんよ)← 口で言ったつもり
「しかし、まだ高一だというのに花柄で薄いピンク色のブラジャーとは、お前もませてるなぁ~……」 ← 心の中で言ったつもり
「――にゃ、にゃにゃ……ッ!? お兄ちゃんのスケベェーッ!」
パッチコーン! ← ビンタの音
「何でだぁああああ!」
「キャハハハ! マジでウケるんですけぉ~
【次回予告】
「皆、いつも応援してくれてありがとう! 委員長よ♪
安藤くんってさりげなくシスコンよねぇ……。
さーて、次回の『何故かの』は?」
次回 「姉ヶ崎後輩」 よろしくお願いします!
「じゃあ、いつもの『ペタリンじゃんけん』を始めるわよ! 出す手は決まった? もちろん、私は決めてるわ。じゃあ、いくわよ?
ペタペタ・ペタりん♪ じゃん・けん・ポン♪」
【チョキ】
「皆のコメント、評価、待ってるわ♪」
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