第211話「桃井さんのラノベ入門3」



「安藤くん、そういえば今日はライトノベルを買いに来たんだよー。だから、ライトノベルのコーナー見に行かないー?」

「…………」


(桃井さん、気まずいからって強引に話題を逸らしはじめたな……)


「桃井さん、俺的にはもう少し『Tピー』を何で知ったのか詳しく――」

「ラ・イ・ト・ノ・ベ・ル・のコーナー見に行かないかなぁーー?」

「……あ、ハイ」


(これ、逆らっちゃダメな空気だな……)


「へぇー、漫画コーナーの裏側がライトノベルのコーナーになってたんだねー。てっきり、他の小説がいっぱいある棚の方にあると思ってたよー」

「ああ、あっちの小説は一般文芸とかが中心だからね……ライトノベルは客の年齢層が漫画を読む人と近いから、大抵の本屋さんとかは一般文芸の棚よりも、漫画本とかの棚の近くにラノベの棚は配置している所が多いんだよ」


(本屋によっては、ラノベの棚の配置によって、その本屋が『ラノベ』や『なろう』に詳しいか見ただけで分かったりするからな。前に行った本屋なんかだと女性向け小説とBピー小説を同じ棚にしたり、時代小説の中に『なろう』の作品が埋もれていたりと酷い配置のところもあったしな……)


「年齢層が近いねー、例えばライトノベルって何歳くらいから何歳の人が読むのかなー?」

「そうだね……これは、あくまで俺の個人的な主観だけど、大体十代後半から三十代の年齢層が多いんじゃないかな?」

「ほへー、意外と幅広いんだね……でも、私達と同じくらいの人も読むなら漫画の棚の近くでも自然だね」

「でも、漫画の棚の近くだと、逆に成人してる人は近寄りがたくなるから、表紙が子供っぽくないちょっと大人向けに見える単行本サイズの小説とかを近くの棚に配置して、年齢層が若い人向けのラノベの棚と年齢層が高い人向けの小説の棚を隣同士にしたりするんだ。そうすれば、近寄りがたい雰囲気も解消されるからね。ここの本屋はやってないけど、中にはさらに細分化して、女性向けの小説だけを別の棚にまとめて少女漫画、女性向け漫画とラノベの棚の間くらいに女性向け小説の棚を作ったりして、女性も気兼ねなく棚を見れるように気を使っている店舗もあるね」


(大体、メイトとかはそこら辺の棚配置がしっかり考えられているんだよな。

 朝倉さんも、ラノベを探す時はラノベの棚の近くに女性向け作品のコーナーがあると、ラノベのコーナーに居ても、浮いている感じが緩和されて助かるって言っていたし)


「ほへー、安藤くん物知りだね。まるで、本屋さんみたいだー!」

「いやいや、それほどじゃ無いからね……?」


(ぼっちって、買い物する時も周りの目を気にするし、最近は朝倉さんと本屋に行く事も増えて余計に回りの目が気になるから、気づいたことだしなぁ……)




「…………」

「店長ー、両替おねがいしまーす」

「え、ああ! ゴメン、直ぐに行くよ」


(良い意見だ。参考にしよう……)


(うわ! 見たことあると思ったら、いつもカフェに来るリア充じゃん! しかも、今日は別の女連れてるし! カァーーッ! その巨乳ごと宇宙の中で爆ぜろ!)




「それで、安藤くん。ライトノベルってどれから読めばいいのかなー? 何か、オススメある……?」

「そうだね……これなら、桃井さんも楽しめるんじゃないかな?」

「あ!? 安藤くん……これって、もしかして――」

「うん……『ソードアート・オフライン』桃井さんが見たあの映画の原作ラノベだよ」

「……アハハ。そう言えば、安藤くんこれの一巻貸してくれるってまだだったよねー?」

「うん……正直、忘れてたっていうのもあるけど……でも、これは桃井さんが始めて興味もった作品でしょ? だから、自分で買った方がいいかな……って、思ったんだ」

「安藤くん……」


(えへへ、今思い出しても笑っちゃいそうだなー。あの時、私はサクラと安藤くんがアニメ映画なんて見たいって言うから猛反対してたんだっけー……。

 でも、確かにこれならサクラと一緒に観想言えるよねー♪)


「うん、決めた! 安藤くん、私このラノベを買うよ!」

「桃井さん……」


(よし、計算どおり! かかったな桃井さん! あの映画の様子からして桃井さんが気に入ることは間違いなしだが――それが罠なのだよ! フフフ、このラノベ通称『SAO』はまだ完結していない作品で現在、二十一巻まで刊行中! さらに、外伝シリーズも出ていて外伝も合わせれば全部で四十巻以上も続いて終らない長編ラノベなのだ! つまり、一度読めば最後――ラノベ沼にはまること間違い無しの作品なのさ! 朝倉さんの趣味を理解したいってことがきっかけだし……ちゃんと、責任をもってラノベにどハマりしてもらわないとね♪)




ありがとうございましたー爆発しろ~~



「安藤くん、今日は付き合ってくれてありがとうね♪」

「元々は、俺が約束忘れていたのが原因だけどね……」

「そういえば、安藤くんも何か買ってたけどなにを買ったのー?」

「えーと……実は桃井さんのプレゼントを買ったんだ」

「ふぇ!? 安藤くんが私に……プレゼント?」


(え! だから、私に隠れてコソコソ買ってたの?)


「う、うん……桃井さんには演劇でナレーションを押し付けちゃったし……そのお詫びかな? まぁ、それと……今回、桃井さんは朝倉さんの趣味を理解したいってことでラノベを買ったけど、桃井さんにラノベを好きになって欲しいのは俺も同じなんだ。 だから、桃井さんが気に入りそうなラノベをプレゼントしようと思って……」

「もぉ~、安藤くんったら、女の子のプレゼントにラノベって……フフ。でも、ありがとうねー♪ ねぇ! どんなのか見ていいー?」

「うん、いいよ」

「わーい! どれどれ……おお! 思ってたよりも可愛い表紙だー!

 『伯爵令嬢の嗜み』? なんか、少女漫画みたいなライトノベルだねー」

「これは女性向けのラノベなんだよ。内容も桃井さんの大好きな胸キュンものだから気に入ると思うよ? ……ププッ」

「あぁぁあああああああ! 安藤くん、笑ったでしょぉーーっ! うぅ~~どうせ、桃井さんは少女漫画が似合いませんよぉーだ!」

「ゴメンゴメン……でも、この作品は本当に面白いし、桃井さんも気に入ると思うから是非、読んで見てよ」

「むぅ……安藤くんも、これ読んだことあるの?」

「もちろん! じゃなきゃ、お勧めしないよ」

「ふ、ふーん~。そうなんだー」


(うーむ……どうせ、安藤くんのことだから、何も考えていないんだろうなー)


(桃井さん、一人で唸ってどうしたんだろう……トイレかな?)


「しょうがない! じゃあ、読んでみるよ。安藤くん、ありがとうねー」

「うん、読んだら感想教えてね。桃井さん」


(よし、これでさらに桃井さんをラノベの沼に片足突っ込ませたぞ! 『伯爵令嬢の嗜み』なら、朝倉さんにもお勧めしたばっかりだし、上手くいけば朝倉さんが桃井さんにラノベ好きを言うきっかけにもなるだろう)


「アハハ! でも、今日のことはサクラには内緒にしなきゃだねー?」

「え、何で朝倉さんに内緒にしなきゃいけないの……?」


(ん? 今日って何か朝倉さんに内緒にするようなことしたっけ? むしろ、後で朝倉さんに桃井さんが『SAO』買ったことを報告しようかと思ったくらいなんだけど……)


「ふぅーん、そっかぁ~……やっぱり、安藤くんは気付いていないんだねー?」

「桃井さん、気付いていないって何――」


(――を? ……え、桃井さん――)


(サクラ、ゴメンね)


「これはお礼の印だよ♪

 安藤くん……これで、内緒にしなきゃいけないよねー?」

「…………」 コクコク


「よろしい! 安藤くん、今日は本当にありがとうね! バイバイ~♪」

「…………」 コクコク


(え……え? いや……大丈夫、ほっぺだから……いやいや! そうじゃなくて――え?)



(安藤くんのバーカ! 今日のは『デート』って……言うんだよー♪)





【次回予告】


「皆、いつも応援してくれてありがとう! 委員長よ♪

 ごめんなさいね。この番外編はこれで終わりなのよ。次回からはまた普通に本編が始まるわ。因みに、今更だけどこの番外編の時系列は本編の第二部のちょっと後のお話らしいわよ? まぁ、私が出ていない番外編なんてどうでもいいけどね。

 ……そろそろ、私も本編に登場するわよねぇ?

 さーて、次回の『何故かの』は?」


次回 「困った時の……」 よろしくお願いします!


「ちょっと! このタイトル嫌な予感しかしないんだけど!?

 じゃ、じゃあ……いつもの『ペタリンじゃんけん』を始めるわよ! 出す手は決まった? もちろん、私は決めてるわ。じゃあ、いくわよ?

 ペタペタ・ペタりん♪  じゃん・けん・ポン♪」 















































【パー】


「皆のコメント、評価、待ってるわ♪」


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