第212話「仕立て上げられた参謀」



「助けて、ドピーえもん~!」

「誰が『ドピーえもん』よ!? 安藤くん! 私の名前は委員長――って、違ぁあああう!」


(確かに『委員長』だけど、私の名前は――)


「じゃあ『インえもん』?」

「――って、そこを変えろって意味じゃないのよ! 何よその呼び名は!? ちょっと、語呂良いじゃない……」

「……なら『インなんとか』……もん?」

「それ、もう別のキャラクターになってないかしら!?」

「もう、なんだよ? 一々文句が多い委員長だな……だったら『委員えもん』だ!」

「今『委員長』言った! 委員長って言ったのに何で変な名前を付けようとするのよ!?」


(……あれ? ちょっと、待って! そもそも、私は委員長じゃなくて、立派な名前が――)


「分かった、分かった……そこまで言うのなら『委員長』でいいよ。

 って、わけで――助けて、委員長♪」

「何で、私が『委員長』呼びを懇願してもらっている流れになっているのよ……もう、委員長でいいわよ。それで『助けて』って、嫌な予感しかしないのだけど……どういうことかしら?」

「いやぁ、それが……」


(今更考えると、俺の状況何が起こっているのかさっぱりだな……これ一体何から話せばいいんだ……? まぁ、いいや、委員長だし最初から全部話せば勝手に要点をまとめてくれるだろう)




「――って、感じでもう何をどうしたらいいか、さっぱりなんだよ……」

「…………え、ちょっと待ってね……? 今、話を整理するから……」


(なんか、安藤くんが生徒会に入ってから、最近出番が無いわね~って思ってたら……この男は一体何をしているのよ……てか、何かしらの面倒が起こらないと、私の出番って回ってこない運命なの!?)


「――つまり、まとめると……安藤くんと朝倉さんは北高の副会長の早坂さんに体育祭でボロ勝ちするように頼まれて脅迫されていて……でも、北高の会長は負けるわけにはいかなくて……しかも、安藤くんも負けるわけがいかないという状況なのよね?」


(なにこの状況……一見簡単なように見えて、それぞれの立場から見ると複雑ね……


『安藤くん』負けたら生徒会解散の危機。


『北高の副会長(早坂さん)』北高の会長が好き。会長に負けて欲しい。


『北高の会長(白銀くん)』北高の副会長が好き。体育祭に勝ちたい。


 ――あれ? でも、これって……)


「ねぇ、それ普通に私達の学校が勝てばその『白銀くん』って人が落ち込むだけですむんじゃないかしら?」


(だって、そうよね? どうせその北高の会長と副会長は両思いなんだし、どうせ負けても問題はないわよね? むしろ、問題なのはこっちが負けた時の生徒会解散問題くらいなんだから普通に勝てばいいと思うけど――)


「いやぁね? それは俺も分かっているんだよ……。そして、これが早坂さんから渡された北高の主要な体育祭出場選手リストな」

「どれ? 見せて――はぁあ!?」


『北高一年 ペンジャミン・ルイス・ペン・シャンソン 国籍 ジャマイカ 出場競技 陸上系』

『北高二年 ロバート・ボイ・サップ・ジュニア 国籍 アメリカ 出場競技 綱引き 騎馬戦』

『北高三年 ダレビッシュ・セファッド・ホォリード・悠 国籍 日本 出場競技 玉入れ、陸上系』

『北高一年 山本アルベルド 国籍 不明 出場競技 綱引き 騎馬戦』

『北高三年 犬井ひろし 国籍 カンボジア 出場競技 陸上』


「ちょっと、何よこれ!?」

「早坂さんが言うには、会長の白銀が家のコネとか資産とか持てる限りの裏金を献金して集めた選りすぐりのエリート留学生らしいぞ。その他にも今月に入って北高には多くの転入生や留学生が入っているが、どいつも全国レベルのスポーツ選手だって」

「たかが体育祭に本気出しすぎでしょ! てか、こんなの相手にして勝てるわけないじゃない!?」

「だろぉ~? つまり、現状もっとも簡単な解決法の『北高に勝つ』はもっとも達成が難しい『目標』ってことなんだよ……」

「じゃあ、もういっそのこと北高の会長と副会長が両思いなのを伝えたらどうなのよ?」

「おいおい、委員長……このコミュ障ぼっちをこじらせた俺に『他人の恋を手助けする』なんてことが出来ると思うか?」

「……言いたいことは山ほどあるけど、確かに無理な話よね……じゃあ、朝倉さんは? 朝倉さんはそのことは話していないの?」

「朝倉さんには白銀の方の事情は話してないな。理由は朝倉さんに全部話すと、朝倉さんが勝手に暴走して、なんかややこしいことになりそうだから」

「あぁ……」


(流石、安藤くんね……確かに言われて見ればよりややこしい状況になりそうだわ)


「なんかもう『こうすれば全て解決!』って状況じゃないんだよね……。って、わけで委員長! 何か良い方法無いかな?」

「それを何で私に聞くのよ!? 安藤くんは会長なんだから、生徒会の皆に相談すればいいじゃない!」

「そんなもん出来たら苦労しねえよ! 俺の生徒会メンバー思い出してみろよ! 頭の固い石田と、普段は完璧だけど、肝心なところでやらかす朝倉さんだぞ!? ましてや、学校中が『体育祭勝とうぜ!』って、雰囲気の時に『えへへ~、北高の副会長に脅されているんだけど、どうすれば勝てるかな?』なんて言えるか!?」

「それは……言えないわね」

「だろ? だからこそ、委員長なんだよ。だって、俺ってこんなことを相談できる(都合の良い)相手なんて委員長しか思い浮かばないし……」

「え、安藤くん……」


(な、何よ! 急にそんなこと言って……ズルいじゃない! 生徒会に当選してからは忙しいとか言って、ロクに図書館にも来なくなったクセに……貴方がリクエストしたラノベだってまだ誰も借りてないのよ? なのに、こんな時だけ頼りにするんだから……)


(いや~、そもそも俺って友達少ないし、こういう腹黒案件になると対応できるのって委員長しかいないからな。一応ペッタンコ元会長に相談するのもありだけど、あのペッタンコもどっちかと言うと朝倉さんポンコツよりの人間だから、参謀に仕立て上げるなら委員長が適任なんだよな)


「し、仕方ないわね……そこまで言うのなら、手伝ってあるげるわよ……?」

「ホントに!? 委員長!」

「えぇ……そのかわり! これは貸しひとつだからね? この私を利用するんだから、このッ貸しは大きいわよ?」

「分かってる、分かってる!」


(確かに、委員長も桃井さんに負けるとは言え、大きいもんな! マスクメロンかな)


「でも、何か具体的に良い方法ってあるか……?」

「まぁ、現状……無くもないわね」

「マジで!? ど、どんなの……?」


「解決方法が無いのなら全てをうやむやにしてしまえばいいのよ……つまり、私達が狙うのは――『引き分け』よ!」





【次回予告】


「皆、いつも応援してくれてありがとう! 委員長よ♪

 またせたわね! ついに、私が本編に登場よ! 次の話も私の大活躍に期待してね♪

 さーて、次回の『何故かの』は?」


次回 「実行委員会」 よろしくお願いします!


「じゃあ、いつもの『ペタリンじゃんけん』を始めるわよ! 出す手は決まった? もちろん、私は決めてるわ。じゃあ、いくわよ?

 ペタペタ・ペタりん♪  じゃん・けん・ポン♪」 















































【パー】


「皆のコメント、評価、待ってるわ♪」


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