第200話「掌握」
「――って事で、今年は北都校に勝たないと俺の生徒会長の座が危ういみたいなので……今回の合同体育祭は運動部の総指揮をある人物に任せることにしました~」
「おう、野球部キャプテンの吉田だ。宜しくな!」 ピカーン! ← 太●拳
『ふざけんなーッ! 生徒会長は辞任しろ!』
「むむ……やはり、全校集会を開いての運動部を含めた生徒達の説得は厳しいな」
「石田くん、仕方ないよ……だって、運動部の人からしたら安藤くんが生徒会長になった所為で部費の予算が削減されたのに、その状態で……
『合同体育祭毎年負けたら、俺が辞任しかねないから今年は勝とうね!』
――って、言われてるんだよ? それは生徒会のリコールも要求されて当然だよね……」
(あ! でも、本当に生徒会のリコールまで実現できたら、この混乱に乗じて石田くんを生徒会長に出来るかな……?)
「キャハハ! 新生徒会始動一ヶ月でリコールとかマジでウケるんですけどぉ~♪」
「いやいや、全然笑えないから……お兄ちゃん、全校集会とか大勢の人の前で説明とか大丈夫かな……」
「妹ちゃん、きっと大丈夫よ! だって、安藤くんは演劇や生徒会長選挙の時も大勢の人の前で立った経験があるのよ? いまさら、安藤くんが緊張とかするわけ無いわ!」
「いや、サクラお義姉ちゃん……その心配なら別にしてないんです」
「え、そうなの?」
「はい……お兄ちゃんって、知らない人相手なら逆に動じないタイプなんで……高校入試の面接の時も――
『え、知らない人相手に緊張とかするわけないじゃん。だって、他人だろ? 正直、他人が俺の事をどう思おうが俺は気にしないし、逆に俺も赤の他人なんか興味も無い。ほら、例えば……外を歩く時、雑草を踏み潰さないか足元を気にしたりしないだろ? 他人なんかアレと一緒だ』
――って、言ってましたから……」
「「「うわぁ……」」」
「あはは……」
(私もその気持ち分かるかも……)
「じゃあ、妹ちゃんは何を心配していたのかしら?」
「サクラお義姉ちゃん、えっとね……ほら、お兄ちゃんって良くも悪くも遠慮が無いじゃないですか? だから、こんな大勢の人の前で説明とかしたら、お兄ちゃんの事だからまた余計な事を言ってしまわないか不安で……」
「あぁ、それは――ありえるわね……」
「安藤妹、何故それを早く言わない!? おい、全校集会での説明をアイツに任せた奴は誰だ!?」
「それ、石田くんだよ?」
『安藤! さっきは君の口車に乗せられて司会をやらされたが、全校集会こそは君が生徒会長として、責任をもって出るんだ! いいな!?』
「――って、言ったの覚えてるよね?」
「キャハハ~! 先輩の信用の無さマジでウケるんですけど~♪」
(でも、実際に運動部が熱くなっているこの状態。先輩が下手な事を言えばマジでリコールもありえる状況だけど……はたして、先輩はどんな手を打ってくれるのかなぁ~?)
「てめぇ、吉田! 何、生徒会の味方に付いてんだ! この裏切りハゲ!」
「ゴラァ! テメこのハゲ! 野球部が生徒会の犬になってんじゃねえぞ! テメェは頭だけじゃなくて脳ミソもツルピカか!」
「山田ぁあああああああああああ!」
「ハゲろぉおお! このハゲ野郎が!」
「おぉう、吉田。お前すごい嫌われようだな……一体、何をしたらこんな嫌われるんだ?」
「全部、お前が原因だよ!? って……テメェら誰が『ハゲ』だゴラァァアアアアアアアアア! 俺はただの『坊主』で断じて『ハゲ』じゃねぇええええええええ!
あと、どさくさにまぎれて俺を『山田』って呼んだ奴は誰だ! お前だけは絶対に許さねぇからな!?」
「…………」
(誰がどう見てもハゲなんだよなぁ……てか『ハゲ』よりも『山田』呼ばわりされる方が嫌なのな)
「はぁ……やっぱり、ハゲの人望じゃあこの場を収めるのは厳しかったか。
どけ、吉田。ここは俺に任せな」
「だから、俺は『ハゲ』じゃねえ――って、安藤! お前、正気か!?」
(お前、運動部の連中なんてロクに友達いないだろ! だから、俺に頼んだんじゃ……)
「まぁ、見てなって……フッ、友達の人数の違いが人望の決定的差ではないと言うことを教えてやるよ」
「安藤、お前……」
(じゃあ、最初から俺に運動部のまとめ役とか頼むなよ。俺、ただハゲ呼ばわりされただけじゃねぇか……)
(いや、俺って体育会系の人間って大っ嫌いだから、この説明が終ったら普通にお前に後の管理は丸投げするつもりだからね?)
「はい、皆さんこんにちワニノコ~、ここはハゲに変わって生徒会長の俺から合同体育祭の説明をしようと思います」
『うるせぇえ! 生徒会長は辞任しろ!』
「生徒会長出てくるなー」
「帰れ、帰れ~!」
「朝倉さんと別れろー」
「朝倉さんは俺の嫁!」
「お前なんか、山田以下だバキャロー」
「はい、皆さん元気な挨拶ですね~。でも、クソ雑魚な発言は止めようねー? あと、ドサクサにまぎれて『山田以下』だって言った奴! お前だけは、許さねぇからな……」
(意外と『山田』って言われるのスゲェ侮辱された気分になるのな……)
『…………』 シーン……
「はい、皆さんが静かになるまで先生何分か待ちました~って、俺先生じゃないけど……まぁ、いいや。じゃあ、合同体育祭についての概要の説明を始めさしてもらいます」
(さて、どう言いくるめようか……ペッタンコ会長にはこういう時は、分かりやすい
「おい! 今すぐ、あのバカを壇上から引きずり下ろせ! やっぱり、安藤なんかに任せたのが間違いだったんだ! 今からでも、僕が変わりに壇上に立つ!」
「い、石田くん! 落ち着いて……一応、最後まで様子を見よう……ね?」
(まぁ、最後まで様子見てもダメだとは思うけど……)
「まず、今回の合同体育祭。中でも特に運動部の皆は特に不満があると思います。それもそうだろう……だって、運動部は副会長の石田が指示した予算案改変の件で大きく部費を減らされているんだからな!」
『ふざけんなーッ! 副会長は辞任しろ!』
「このクソメガネーーッ!」
「巨乳の彼女と分かれろー」
「ハゲろ! クソメガネー」
「安藤ぉおおおおおおおおおおおおお! 貴様と言う奴はぁああああああああああああああああああああああ!」
「い、石田くん! おお、落ち着いて! ステイだよ! ステイ! きっと、安藤くんにも考えがあるんだよ……ね?」
(まぁ、多分。何も考えてなさそうだだけど……)
「しかし、諸君! 安心して欲しい。今回の合同体育祭、特に功績をあげた部活は……俺が、生徒会長の権限を持って! その部活の部費を全面的に『考慮』し、大幅な部費の増加を『努力』して『目指す』事をここに約しよう!」
『うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!』
「さらに、これは一つの部活動にかぎらない! 俺は今回の合同体育祭において、大きく貢献した部活動の部費を全てを平等に見直し『考慮』するつもりだ!」
『うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!』
「俺はこと『数字』と『金』には虚偽は一切言わない! つまり、考慮する……! 考慮すると言ったが……今回、まだその増加の幅と上限まではしていない。そのことをどうか皆には理解して欲しい……
つまり! 今回の合同体育祭で諸君らの働きが大きければ! その増加される部費の額は今までの……十倍! いや、二十倍ということもありえるだろう……と、いうことを!」
『うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!』
「いいか、お前ら! 今回の合同体育祭、勝つぞー!」
『うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!』
「生徒会長、バンザーイ!」
「副会長はクソメガネー」
「生徒会長、名前忘れたけどサイコーッ!」
「安藤、お前すげぇな……」
「ふぅ……そうか、吉田?」
(よし、これで運動部の連中を掌握できたな……)
『うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!』
「安藤くん、流石だわ!」
「安藤、君って奴は……あいつ、説得という過程をすっ飛ばして事を収めやがった……」
「あはは……でも、これって一歩間違えるとただの独裁政治だよねぇ……?」
「まったく……お兄ちゃんはバカだな~。やっぱり、私が見てないとダメだね」
「キャハハ~! 先輩ってば、マジでウケるんですけど~♪」
(ふぅーん、運動部が熱くなっているこの状態を逆に利用して、運動部の人達の熱をそのまま合同体育祭に向けるとは……先輩ってば、上手く話を誘導させましたねぇ~♪ でも、このまま何も問題が起きなければいいですけどぉ~?)
「……キャハ
【次回予告】
「皆、いつも応援してくれてありがとう! 委員長よ。
さーて、次回の『何故かの』は?」
次回 「スケコマシ(勘違い)」 よろしくお願いします!
「次回は皆お待ちかねのラブコメ回よ♪ じゃあ、いつもの『ペタリンじゃんけん』を始めるわよ! 出す手は決まった? もちろん、私は決めてるわ。じゃあ、いくわよ?
ペタペタ・ペタりん♪ じゃん・けん・ポン♪」
【グー】
「そして、あのキャラも登場するらしいわよ?」
「いらっしゃいませー」
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