第199話「交渉(健全)」



「さぁ、吉田。どうする? 例えば、野球部の部費を10%くらいなら上げてやれないこともないぞ?」

「何、安藤。それはマジで――」


(確かに部費が10%も上がるなら、生徒会に付くメリットとしては十分だが……でも、安藤は俺達の協力がどうしても欲しいはず。ならば、もっと吹っかけてもいいんじゃねぇのか?)


「いや……10%なんて生ぬるいぜ、安藤。なんせ、野球部も生徒会の予算削減で部費が少なくなってんだ。10%程度じゃ去年と大差がないぜ」

「じゃあ、いくらならいいんだよ?」

「そうだな……よし、部費二倍だ! この条件を飲むなら俺は生徒会についてやるよ」

「部費二倍ぃ……? いやいや、お前ら野球部の部費って元々予算がデカイじゃん。そんなの無理に決まってるだろ? まぁ、できても20%アップが限度だな」

「いいや、これは譲れねぇな!」


(へっへへ、流石に部費二倍は吹っかけすぎかもしれないが、最初にこれだけ吹っかけ交渉の中で妥協したように見せる。そして、最期に50%アップくらいまでにできれば御の字だぜ!)


「どうやら、交渉は決裂しそうだな」

「いや、そもそも買収しようって時点でありえないだけどね。あはは……」

「まぁ、コミュニケーション能力が壊滅的なお兄ちゃんが交渉って時点でこの展開は読めてたけどね……」

「えぇー? でも、先輩なら意外と何とかしちゃうと思うけどなぁ~?」

「アンタがウチのお兄ちゃんの何を知ってるのよ! それに、私だってお兄ちゃんがこのまま引き下がるなんて思ってないしね……?」

「ウフフ、二人とも安藤くんのこと信頼しているのね♪ もちろん、私だって信じているわよ!」


(でも、正直。この展開は厳しいわね……だって、交渉と言うのは基本的にどっちが主導権を奪うかにあるわ。だけど、現状だと主導権は完全に吉田くんにある。だから、安藤くんはどこかで話の主導権を奪う必要があるのだけど……)



「俺が生徒会に協力する条件は野球部の部費二倍だけだ!

 出来ないなら、俺はこの話を降りるぜ?」


(さて、安藤。お前はこの条件……どうする?)


「よし、分かった! じゃあ、部費を半分にしよう」

「何で下がるんだよ!?」

「え、不満……なの?」

「不満に決まってるだろ!」

「仕方ないなぁ。じゃあ、吉田だし……」 チラッ

「……?」

「うん、部費『0円』でいい?」

「今、何を見て判断した!? って、俺の頭をガン見するんじゃねえ!」

「え、じゃあ何? 三分の一? それとも二割減?」

「言い方の違いじゃねえからな!? 減らすなって言ってんだよ!」

「分かった! お値段据え置きで!」

「それ、変わってねぇえよなぁ!?」

「いや、だから……生徒会の味方に付けば、部費を減らさないでやるって事だよ?」

「何その脅迫! 俺ら味方しないと、さらに部費削られるの!?」

「はぁ……下げるなって言ったり、変えろって言ったり、一体どうすればいいんだよ?」

「だから、部費を上げろって言ってんだよ!」

「分かった、分かった。じゃあ、部費『20%アップ』だ! どうだ、これで良いだろ?」

「よっしゃ、乗った!」

「じゃあ、交渉成立ってことで……吉田、これから宜しくね」

「おう、任しとけ!」


(そうだよ! 最初からそう言えばいいんだよ。まったく――……

 あれ?)





【次回予告】


「皆、いつも応援してくれてありがとう! 委員長よ。

 さーて、次回の『何故かの』は?」


次回  「掌握」 よろしくお願いします!


「じゃあ、いつもの『ペタリンじゃんけん』を始めるわよ! 出す手は決まった? もちろん、私は決めてるわ。じゃあ、いくわよ?

 ペタペタ・ペタりん♪  じゃん・けん・ポン♪」 















































【グー】


「次回予告のタイトルは嘘予告になる場合もあるわよ♪」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る