第196話「遊び心」



「では、これから生徒会役員会議を始める! 進行は副会長のこの僕、石田と!」

「あはは……書記の私、藤林です……宜しくお願いします」


「「「「わぁー」」」」 パチパチ~ ← その他の生徒会一同


「何これ!?」


(お兄ちゃんから『今日、生徒会で会議があるから放課後集合な?』って、言われて生徒会室に来てみたら……いきなり、生徒会がクイズ番組みたいな空気になってるんだけど!?

 てか、お兄ちゃんもさらりと私を生徒会に呼ぶけど、私生徒会役員じゃないからね?)


「あら、妹ちゃん。そんなに驚いてどうしたの?」

「『どうしたの?』じゃないよ! サクラお義姉ちゃん、これは一体何の冗談なの? 何で生徒会の会議がこんな何処かのテレビ番組みたいな始まりか足してるの!?」

「うーん、そんなに言うほど変かしら?」

「変だよ!? だって、何で会議なのに進行の二人以外はお客さんみたいなノリで拍手しているの!?」

「キャハハ~! マジでウケる~♪」

「五月蝿い! アンタは黙れ! てか、なんかそのセリフもこの状況だとテレビ番組の合いの手にしか聞こえないから!」


「では、会場の空気も温まったようだな! 藤林、今日のお題を発表してくれ」

「あはは……安藤くんの妹さん混乱してるけど、いいのかな……?」


「良くないですよ!? 石田先輩も何この状況をさらっと流して進めようとしているんですか! むしろ、先輩ってこういうの許さない真面目なキャラですよね!?」

「そうだな。しかし……今の僕にはこの会議の『司会』という重要な仕事が……」

「真面目か!?」

「あはは……妹ちゃん、ゴメンね? 石田くんって、悪くも良くも悪くも無駄に頭が硬くって変に真面目だから……まぁ、この状況の主な原因はお兄さんに聞いて……ね?」

「お・兄・ちゃ・ん!? どうせ、そうだろうと薄々思ってたけど、一体何をしたらこんな状況になるの!?」


(そうだよね! 真面目なはずの生徒会がこうなっちゃう原因なんてトップしか考えられないよね! もう、本当にウチの駄兄ちゃんがダメダメでゴメンなさい!)


「え、俺……? 別に俺は悪くねぇぞ? ただ――



【会議十分前】


「会議の進行係? 俺パス、石田やって」

「生徒会長は君だろう! だから、会議の進行はトップの君がやるべき仕事だ!」

「えぇ…………」


(クソ面倒だな……よし、ここは適当な事を言って石田に押し付けよう。幸いに、こういう時の処世術はペッタンコ会長からこの前教わったばかりだからな)


「……なるほど、確かにお前の言いたいことは分かる。しかし、石田よ。

 トップに立つ人間に必要な要素って分かるか?」

「な、何!? トップに立つ人間に必要な要素だと……」


(トップに立つ人間とは当然、コイツではなく前会長こと、姉ヶ崎生徒会長のようなお人の事だろう……そんな姉ヶ崎会長のようになる為に必要な要素とは何だ?

 きっと、その必要な要素と言うのは会長の普段の行いにヒントがあるはず……思い出せ! 姉ヶ崎会長の言動や日々の行いを思い出すんだ……ハッ! そう言えば姉ヶ崎会長は普段から生徒会室に不自然に置かれていた神棚を見て毎日拝んでいた。つまり――)


「分かったぞ。毎日、お祈りをすることだな!」

「神頼みになってるじゃねぇか」


(石田の奴ヤベェな……俺、少しは石田のこと分かったつもりだけど、コイツが何を何を考えてこの結論にたどり着いたのか、サッパリ分からねぇよ)


「全ッ――然ッ違う! てか、何でその結論になっちゃったの? お前、きっと宗教の勧誘とか簡単に引っかかるタイプだから気を付けた方がいいよ?」

「なんだと!? じゃあ『トップに立つ人間に必要な要素』とは一体なんだ!?」

「フッ、それはな……『エンタメ』だよ」

「エンタメ……だと?」


「「「…………」」」


(それって、安藤くんにも無くないかしら?)


(それって、安藤くんにも無い要素だよね……)


(アハハ~、それ先輩に一番足りない要素だし、マジでウケる~♪)


「ああ、そうだ! いいか、石田? 人間、トップに立つ為には『正しさ』だけでは限界がある。何故なら、正しさだけでは人は付いてこない!

 誰かの上に立つ人間ってのは常に心に余裕を持っているんだ。その『余裕』ってのが『エンタメ』なんだよ。つまり、遊び心ってことだな」

「なるほど! 確かに、姉ヶ崎会長も僕と違って常に心に余裕を持つようなお人だった……僕に足りなかったのはその『遊び心』だったのか!」

「…………」


(そうか? あのペッタンコ、俺と会うと直ぐに『コロス!』とか言ってくるぞ? むしろ、俺はあれほど心に余裕が無い奴も知らないけどな……)


「ああ、なんだかんだでそんな感じだ! つまり、石田。この『司会』っていうのはその『エンタメ』を育てる訓練なんだよ?

 いいか、司会って言ってもただの会議みたいに淡々とこなすんじゃダメだ! お前は『エンタメ』を持った上でこの会議を一個のテレビ番組だと思え! そうすれば、お前に足りなかったエンタメ性……お前だけの『遊び心』が見つかるはずだ!」

「あ、安藤……君はどうして、僕にそこまで教えてくれるんだ?」

「フッ、なに当たり前のことを聞いてるんだよ……そんなのお前が俺にとってかけがえの無い、副会長みがわりだからに決まってるだろ♪」キラーン!

「安藤ぉおおおおおおおお! よし、分かった! 会議の司会はこの僕に任せてくれ……君にとってかけがえの無い、副会長親友の僕が責任とエンタメを持ってこの会議の司会を勤めさせてもらう!」

「よっしゃ! 流石、石田だぜ!」


「「「うわぁ……」」」


(((チョロイなぁ……)))






【次回予告】


「皆、いつも応援してくれてありがとう! 委員長よ。

 さーて、次回の『何故かの』は?」


次回  「対策」 よろしくお願いします!


「じゃあ、いつもの『ペタリンじゃんけん』を始めるわよ! 出す手は決まった? もちろん、私は正々堂々と勝負するわよ? 【グー】かしら……?


 ペタペタ・ペタりん♪  じゃん・けん・ポン♪」 



















































【パー】


「皆が【グー】を出すと予想したのだけど……どうだったかしら?」




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