第187話「GT神塚」
『北都高』それは昔『バカ』の代名詞としてこの地域では常識になっていた。
しかし、十年ほど前に北都高の理事長がある一流財閥の経営者に変わった事で、今まで進学率0%だった北都高に大革命が起きる。
まず、新しい理事長は外部から優秀な教師を北都高に呼ぶことにした。そして、呼び出された教師の名は――
『ゴッドティーチャー神塚』
名づけてGT神塚である。
教員免許を持ち、経営コンサルタントとしても活躍する神塚先生は理事長との契約により、三年以内に北都高校から東大合格者を出す事を条件に高い契約金で雇用された。
そして、神塚先生はその契約どおり、三年以内に北都高校から二名の東大合格者と、九十名の自主退学者(更生しなかったヤンキー)を叩きだし……
北都高はヤンキー学校から、見事な進学校へと生まれ変わったのである。
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「――っと、言うのが代々から伝わる。私達、北都高の歴史でございます」
「早坂さん、詳しく教えてくれてありがとう。凄く興味深いお話だったわ」
「いえいえ、こんな話でよければいつでも。何せ、朝倉さんは私の盟友ですから」
「そ、そう、それは嬉しいわ……」
(何で私は早坂さんにここまで強い仲間意識を持たれているのかしら? それに、何故か少し哀れみのような視線も感じるのよね……) スカーン
「あはは……それにしても、早坂さん? そちらの生徒会長さんの紹介って話だったけど……今の話は関係ないんじゃないのかな?」
「キシャァーーッ! フシャァ~ッ!」
「ヒィイイ! な、何で早坂さんは私にだけそんな厳しい態度なのぉ……」 ブルンブルン!
「……おい、石田。お前の彼女がいびられているが助けなくていいのか?」
「安藤、君はバカか? 相手はあれでも一応は客人だぞ。こちらが下手に口を出して体育祭の話がこじれても困るだろう」
「なるほど……それで、本音のところは?」
「……正直、どう見ても原因が原因なので、男の僕が下手に口を出せる事でも無さそうだし、そもそも、彼女が怖い」
「だよな……」
「キャハハ~、先輩達って本当にチキンですよね~♪」
「え、どう言うこと? ねぇ、姉ヶ崎さん。安藤くんと石田くんは何の話をしているの?」 スカーン
「HAHAHAHA~
「あぁ、そうですね。流石は坊ちゃまです。凄い凄い……この、早坂。坊ちゃまの聡明さにお見逸れいたしました。感無量です」
「…………」
(なんか、向こうの生徒会長の扱い、丁寧な用で意外と雑いな……あと、早坂さんはBだな)
「南の地の諸君、ウチの早坂の説明が長くてすまない。しかし、彼女を責めないでくれない、かな
「因みに、先ほどの話に出てきた『北都高の理事長になった一流財閥』と言うのが白銀坊ちゃまのお家であり、坊ちゃまはその一族の御曹司にあたります。
そして、私は白銀家に代々仕える家のメイドであり、坊ちゃまのお世話係として同じ高校に通わせていただいて、生徒会の補佐として副会長を務めているわけです」
「「「な、なるほど……」」」 ← 南都の生徒会一同
(((北都の副会長、生徒会長の話をぶった切ったぁあー―っ!?)))
「HAHAHAHA~
「坊ちゃま、大変申し訳ございません。この早坂、主である坊ちゃまのお話を遮るなどという大変無礼な行いをしてしまい、心のそこら辺から反省しております」
「「「…………」」」
(((ちゃんと謝るんだ……)))
「しかし、坊ちゃまのお話は少々要領を得ません。むしろ、それはこの場を提供していただいた南都高の生徒会の方達の貴重な時間を、坊ちゃまの中身の無い話により無駄に奪うという行為にしかなりません。なので、この早坂は坊ちゃまのお話を遮らせていただいたのです。なぜなら、代々白銀家に仕える者として、早坂にはたとえ坊ちゃまの頭が中身の無いスカスカのガラス細工であろうと、それを本物の宝石以上に輝かせる使命があるからです」
「「「――ッ!?!?」」」
(((っと、思ったら、なんかメチャクチャ貶し始めたぁ――ッ!?)))
「HAHAHAHA~
「ありがとうございます、坊ちゃま。私なんかにもったいなきお言葉です」
「おいおい、ヤベェよ……俺、あんな変な奴らと話し合いとかしなきゃいけないの?」
(てか……最近、俺の周りって変な奴が多すぎじゃない……?)
「北都高の生徒会長、本当に個性的な人ね……」
(安藤くんを助ける為にも、副会長の私がしっかりしなくちゃ!) スカーン
「うむ……なかなか、話が通じなさそうな相手だな」
(安藤も生徒会長としては不安が残るし……ここは、唯一まともな僕がしっかりしなくては!)
「あはは……なんかこれ大丈夫かな……」
(うーん……安藤くんは論外だし、朝倉さんは安藤くんが関わると使えないし、石田くんは頭が固いし……これは、書記の私がしっかりしないとダメだね!)
「キャハハ、マジでウケる~
(私からしたら、ここの生徒会も十分に変な人ばっかりなんだよねぇ~♪ てか、この集まりツッコミ足りなさ過ぎ~みたいな?)
「では、改めて……南の地の諸君! 此度の合同体育祭は僕がこの地により輝くための偉大な一歩となるように勤めようではない、か
「『南都高の皆様、今度の合同体育祭もお互いに全力を出していいものにしましょう』
――っと、坊ちゃまは仰っております。では、今後ともどうか宜しくお願いいたします」
「……?」
(ん? なんか早坂さんが俺に向かって手を差し伸べてきたけどこれはなんだろう……?
アレか、賄賂か? はっ! それとも胸のサイズを見ていたのがバレた? つまり、それの慰謝りょ――)
「ッ! え、ええ! こちらこそ、宜しくお願いするわ」
(ちょっと、安藤くーーん! 何で相手が握手を求めているのにガン無視しているのよぉおおおおお! 危うく、相手が握手を求めているのに気まずい空気になる所だったじゃない……まぁ、咄嗟に私が早坂さんの手を握り返したからよかったけど……べ、別にこれは! 安藤くんが私以外の女の子の手を握るのが嫌だったとかじゃないんだからね!
でも、何で向こうは生徒会長の白銀くんじゃなくて副会長の早坂さんが握手の手を差し出したのかしら……? って、それは考えたら私も同じ事してるのよね……)
「……坊ちゃま」
「ああ、十分だよ。ミス早坂……フム。朝倉さん、確か聞いた話だと君は副会長だったはずだが……君達の長、生徒会長はいないのかな?」
「ああ、ゴメンなさい。ウチの生徒会長なら――」
「ん、呼んだ?」
(どうも、俺が生徒会長の安藤で――)
「雑用係の君は黙ってくれない、かな
「え……」
(いや、あの……俺が生徒会ちょ――)
「大丈夫! 君が何者かなんて見なくてもわかる、よ
そんな君がこの選ばれし者だけが集える生徒会という神聖場な場にいる理由なんてたかが知れている……つまり、君は内申を得るが為の理由で生徒会に取り入れてもらった雑用係ということ、さ
「あ、そうですか……」
(あれ……でも、あながち間違ってないぞ?)
「ウフ、ウフフ……あらら」 ゴゴゴォ! ←負のオーラ
「え、朝倉さん!? なんか女の子がしてもいいの? ってくらい怖い顔してるよ!」
(ひぇええ……なんか、朝倉さんの背中から黒いオーラのような物が見える気がするよぉ……)
(この男、コ○ス♪)
「しかし、だとすると長は誰か……確か、ここの長は男子だと僕は聞いたな。っと言うことは、君がここの生徒会長、だね
「いや、僕は――」
(副会長なんだが……)
「挨拶なら不要だよ! 何故なら、この地の噂は僕の城にまで届いているから、ね
「『挨拶なら、大丈夫です。この学校の噂は北都高で聞いていますから』
――っと、坊ちゃまは仰っております」
(なんか、坊ちゃまが暴走しているけど、面白そうなのでこのままにしておきましょう)
「ん? ちょっと待て、ウチの学校の噂って……一体どんな噂が流れてるの?」
「フッ……その噂を語るには、まず僕がこの学校に来た真の目的を言わなければならない、ね
「真の目的……?」
「ああ、そうだ! 雑用係くん、君に尋ねよう! 君にとって僕は一体何に見える、かね
「え」
(そりゃ、ただのバカ――)
「そう! 僕は『超リア充』だ!」
「「「…………」」」 ← 生徒会一同
(((コイツは、何を言っているんだ?)))
「フッ、どうやらこの質問は愚問のようだったね……何故なら、僕が『超リア充』であるのは何をどう見ても明らか! だって、僕はリア充になるべくしてこの世に生まれてきたのだから、ね
「はい、ソウデスネ。坊ちゃまは完璧な『超リア充』でございます。
日本人の旦那様とカナダ人の奥様との間に生まれたハーフであり、その血のおかげか無駄に整ったオムツ以外は完璧なお顔。そして、家柄という権力に導かれて作り上げられた学歴と言う名の社会のレール。さらに、財力と言う名の魅力に惹かれ無駄に擦り寄ってくる自称親友と言う名のお友達。
そいて、最後は幼馴染属性をも持ち合わせつつ、坊ちゃまを完璧に理解し生涯を通してもお使えする覚悟のある美しくて可愛い将来はとってもいいお嫁さんになりうる美少女メイドの私。ええ、坊ちゃまは本当に完璧な『超リア充』でございます」
「HAHAHAHA~
「「「…………」」」 ← 生徒会一同
(((この生徒会長、ウゼェ……)))
「しかし、この学校にはそんな『超リア充』の僕をも超える真の『リア充キング』がいるという噂を僕は聞いた、のさ
「へぇ~……で、そのウチの学校にいるって言う『リア充キング』なんてアホな呼び方されてる残念な奴ってどこの誰よ?」
(てか、ウチの学校の噂は何処に行った?)
「ミス早坂
「はい……かし坊ちゃ!」
「「「何、今の!?」」」 ← 生徒会一同
「かしこまりました、坊ちゃまの略……略して『かし坊ちゃ!』で、ございます」
「「「何かすごい訴えられそうな口調!」」」
「では、我が北都高にて噂になっている『リア充キング』については様々な噂が届いております……まず、その中でももっとも有名な噂は――
『北都にもその美しさが伝わるほどの、学校一の美少女を彼女にするほどのリア充である』
――ですね」
「ん?」
(学校一の美少女……あれれ~? 最近は聞いてないけど、何処かで聞いたことのある言葉だぞ?)
「他には――
『学内で行われた演劇では脚本を担当し、その上に自分が書いた脚本の主演を自ら演じて大成功を収めるほどの自分が大好きな超絶ナルシストのリア充である』
――など」
「んんん……?」
(あれ……なんだろう? 急に嫌な汗が……か、風邪でも引いたかな?)
「さらには――
『夏休みに学校一の美少女の彼女だけでは飽き足らず、市内のプールで水着の美少女をはべらせて、男一人の超絶ハーレムを作り出すほどのリア充である』
――という噂や」
「お、おう、おう……」
(おっかしいなぁ~~? 何かそのシチュエーションめちゃくちゃ覚えがあるんですけどぉ……)
「最後には――
『今年行われた生徒会長選挙では、会場の生徒全員を沸かすほどのスピーチを見せ、有力な候補者を押しのけての見事な大逆転勝利の当選を果たす、まるで神から認められたかのような漫画かドラマの主人公かのような活躍をするほどのリア充……いや、リア充キングである』
――というような感じの噂が流れております」
「因みになんだけど……噂の出所は?」
「はい、南都高の『新聞部』ですね」
「あー、なるほど、なるほどね……完全に理解した」
(ゲス谷、てめぇの仕業かぁあああああああああああああああああ!!)
「あながち全て嘘と言えないのが凄いわよね……」
「あいつが……リア充……ブハハ! だ、ダメだ……僕の腹がよじれる……」
「ププ……も、もう、石田くん、笑っちゃったら失礼だよ? ププ……」
「キャハハ、マジでウケる~
「僕は将来、白金財閥を背負う御曹司として全てにおいて頂点に立たなければいけない男だ……だからこそ! 僕はこの学校にいるという『リア充キング』を超えてリア充の王――そう『リア王』になるためにここに来た、のさ
「なるほど……」
(よし、俺がその生徒会長だというのは隠しておこう……)
【次回予告】
「皆、いつも応援してくれてありがとう! 委員長よ。
ちょっと、ちょっと! この生徒会ツッコミが足りないんじゃないかしら? もし、私がこの場にいたら今回の話だけで132回はツッコミいれる事ができたわよ? もう、これはどこかにいる超絶人気キャラのツッコミ役を生徒会に入れたほうがいいんじゃないかしらね~?
さーて、次回の『何故かの』は?」
次回、何故かの 「二位じゃダメなんですか!」 よろしくお願いします!
「じゃあ、いつもの『ペタリンじゃんけん』を始めるわよ! 出す手は決まった? もちろん、私は決めてるわ。じゃあ、いくわよ?
ペタペタ・ペタりん♪ じゃん・けん・ポン♪」
【グー】
「因みに、今回の更新の時間がいつもと違うのは作者が新しいガチャを早く回したいからよ♪」
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