五章【体育祭】

第186話「合同体育祭」



「合同体育祭? 石田、体育祭が他校との合同ってどういうこと?」

「安藤……君はそれを本気で言っているのか? 僕達の南都高校の体育祭は毎年、近くの北都高校と合同で、市の運動場を借りて行われているだろう! 君も二年生なら去年の体育祭で経験しているはずだぞ!?」

「…………はて?」


(そう言われて見れば、ウチの学校の体育祭ってわざわざ市のでかいグランドを借りて大々的に行われていた記憶があるけど……正直、一年の時の俺とか『ぼっち』を極めていたからクラスでも空気だったし、その影響で体育祭の種目も団体競技にカレーの福神漬けレベルのおまけで参加しただけだったからイマイチ記憶に残ってないんだよなぁ~

 そもそも、あの頃の俺はガチでクラスメイトの顔すら覚えていなかったから『なんか、人が多いな~』くらいには思っていたけど、他校の人間がいても自分の学校の人との区別も付かなかったから、気付かなかったぞ)


「安藤……貴様、それ本気で言っているのか?」

「『ぼっち』を舐めるなよ。石田」

「だから、あの時の体育祭は人が多かったんだね……まさか、他校との合同だったなんて……」

「ちょっと、藤林さん! まさか、貴方も安藤くんと同じ認識だったの!?」

「キャハハ! 私はお姉ちゃんの体育祭を見学した事があるので知ってましたけどぉ~? まさか、実際に参加してた先輩達が知らなかったとか、チョーウケるんですけどぉ~♪」


「しょーがねーだろ……

 『ぼっち』だったんだから」


「「「…………」」」


「…………」


(安藤くん、私もその気持ち……凄い分かる!)


「ん? 藤林、顔が暗いが大丈夫か?」

「え! い、石田くん、大丈夫だよ?

 あははは……」




「で? つまり、その『合同体育祭』ってやつの打ち合わせが今日あるの?」

「ああ、今日は最初だし顔合わせだけと言う事で、北都高の生徒会長がウチに来る予定だ……だから! あれほど、今日だけはちゃんと時間通り生徒会に来いと言ったのに、なんでこんな打ち合わせの時間ギリギリになっているんだ!」

「仕方ねぇだろ。だって、俺はそんな打ち合わせがあるって聞いてなかったし~? それに、一応はその打ち合わせに間に合ったんだから」

「貴様、それでも生徒会長か!? 大体、僕があれほど探したのにいままで何処にいたんだ!」

「いや、それは……」


(てか、普通に教団Oの集会で遅れましたなんて言えないもんなぁ……

 さて、なんて誤魔化すか――)


「っていうかぁ~? 何で、ウチの学校の体育祭ってその北都高と合同でやるんですかぁー? 普通の学校はそんな他校と合同で体育祭なんてやらないと思うんですけど~?」

「――っ!」


(姉ヶ崎妹ナイス!)


「そ、そうそう! それ、俺も気になるな~? 教えて、石田もん!」

「誰が『石田もん』だ!? しかし、そんな事聞かれても、流石に理由までは僕も知らないぞ。藤林は知っているか?」

「うーん、ゴメン。私も知らないや」

「安藤くん! そのことなら、私が知っているわ!」

「え、本当? 朝倉さん」


(流石、ペタえもん!)


「ええ、前にこの学校に入学する時にママから聞いた事があるのよ。確か……私達が生まれるより前から、この南都高と北都高には因縁があったらしいの」


「「「「因縁?」」」」


「ええ、ママは噂を聞いた事があるだけで詳しい事は知らないみたいだったけど……

 昔、この両高校にはそれぞれ『番長』と呼ばれるヤンキーがいたそうなのよ。それぞれの番長はお互いの高校を牽制して硬直状態が続いていたんだけど、ある日を境に北都高の番長が何者かに倒されたらしいの。

 それを北都高の生徒は南都高の番長が犯人だと決め付けて、北都高は今までより南都高に因縁を付けるようになったわ。そして、その事に見に覚えの無い南都高の番長が、全ては北都の言いがかりだとして両高校は過去最悪の仲の悪さになったらしいのよ……」


「ん? 朝倉さん、それなんか噂にしちゃ詳しすぎない?」

「確かに、僕も噂にしてはなんか具体的な気が? まるで、事実を全て見ていたかのような……」


「もう、安藤くんも石田くんも何言っているのよ~? 噂だから話が曖昧になるとはかぎらないでしょ? むしろ、周りが曖昧な部分を脚色して話すから、時間が立てば経つほど噂は詳細な話になるってママが言っていたわ」


「ああ、そういうことか」

「まぁ、それならありえる……のか?」


「じゃあ、続き話すわよ?

 それがきっかけで、両高校の仲がより悪くなりケンカまでも頻繁に起きて教師が頭を抱え始めた頃……その代の生徒会長がある発言をしたのよ。


戦争ケンカがダメなら戦争スポーツで決めるしかねぇだろ! 合同体育祭……つまり、オリンピックだよ! ガッハハハ!』


 ――ってね♪」


「…………」


(あれ? なんか、聞き覚えのあるような言い方……気のせいかな?)


「それが効果を発揮して、初めて行われた両高校の『合同体育祭』は大成功! 生徒達も因縁が消えて仲良くなったのを見て、先生達がそれ以降も体育祭は合同で行おうってことで決まったらしいわ」


「朝倉さん、ありがとう。そしたらこの『合同体育祭』って結構前からやってるんだね」

「そうだな。朝倉さんの話から推測しても『番長』なんて呼び名がある時代だもんな……」

「うーん、いかにも『昭和』って感じだね。石田くん」

「キャハハハ~ッ! まるで『昭和』って言うよりも『石器時代』? てか、マジでウケるんですけどぉ~♪」


「…………」


(何故かしら……私、今ここにママがいなくて本当に良かったと思っているわ。理由は分からないけど……)



 スカコンコン ← ドアを叩く音



「あら、誰かしら? はーい」

 

 ガラガラ~


「おう、お前らちゃんと集まっているな」

「あ、先生じゃないですか」

「おう、安藤。まさか、お前が本当に生徒会長になるとはなぁ……正直、俺は今でもこれが悪い夢なんじゃないかと思っているぞ」

「いやいや、俺が生徒会長になれって最初に勧めたの先生ですよね……?」

「俺は生徒会に入れと言っただけで、何も生徒会長になれとは言ってねぇんだよ」


(というか、あの時はそう言えば推薦の話を諦めるだろうと思って話を振ったんだが……な)


「ところで、数学の先生が生徒会室に何か御用ですか?」

「おう、朝倉か。すまん、こんな所で話している場合じゃなかった……お前ら、今日は合同体育祭の打ち合わせだろ? 北都高の生徒会長と副会長が来たから、ここに通していいか?」

「ああ、そういえばもう時間でしたね。はい、こっちは準備が出来ているんで大丈夫です」

「そうか、流石はウチの学校の副会長は優秀だな」

「ウフフ、それほどでもないですよ。先生」

「…………」


(うん、それほどでもないよ。むしろ、ポンコツだよ?)


「「「…………」」」


(((生徒会長をスルーして朝倉さんを褒めるあたり、先生はこの生徒会のことを分かってる……)))


「おーい、待たせたな。二人とも入っていいぞ」


「…………」


(北都高の生徒会長と副会長か……これが、もしラノベだったらここで巨乳の美少女が来るんだろうな~)


「失礼いたします」 サッ


「おっ――」


(なんだ今の感覚……まるで、生徒会室に一陣の冷たい風が通り抜けたような錯覚……)


「皆様、始めまして。私は北都高の副会長を勤めさせていただいております。

 早坂といいます。以後、お見知りおきを」 キリッ!


「…………フム」


(短いショートの髪、細くキリッとした目つき……そして、何よりもその薄い胸元!

 北都校の副会長、早坂さんは――そう、紛れもない『貧乳』だ!)


「早坂さんね。始めまして、私はこの学校の副会長をしている朝倉よ。宜しくね」

「朝倉……貴方が」

「え、早坂……さん?」


(どうしたのかしら?)


(この人……私よりも胸が――無い!)


「フッ……正直、貴方のことは好きになれないと思っていましたが、どうやらそれは私の勘違いだったようですね。朝倉さん、私は貴方と仲良くなれそうな気がいたします」

「どういう意味かしら!?」


(なんなのよこの人!? 何で私は初対面の人から因縁吹っかけられて、勝手に仲間認定されたの!?)


「あはは、宜しくね。早坂さん? 私は書記の藤林です」

「…………」 チラッ


(パターンD。敵、ですね)


「私、貴方は嫌いです」

「うぇええ! 何で!?」


「おいおい、石田……なんか、やけに濃いキャラの奴が来たが北都高の奴って皆あんな感じなの?」 ヒソヒソ

「おい、こら安藤! バカな事を言うな! これでも、彼女は向こうの学校からきたお客様なんだぞ! そんな事言ったら相手の学校に失礼だろ!」 ヒソヒソ

「いや、でも……」

「それに、北都高と言ったらこの付近では一番の進学校として有名な所だぞ? 過去にはあの東大合格者も複数人出している」

「マジかよ!」

「ああ、だから彼女が特別なだけだろう……きっと、生徒会長の方は――」


「ヘイヘイヘーイ! ミス早坂、僕は一体いつまでこの扉の前で待っていればいいんだぁーい? ベイベェ~?」

「あぁ……坊ちゃま、失礼しました。どうぞ、お入りくださいませ」


「おい、石田……もう、この時点で嫌な予感しかしないんだが?」

「ま、まて、安藤……まだ、決め付けるのは早い……ちゃんと、本人を見てみるまでは――」


「ハァーイ! ボンジュール? 南の地の民よ……さぁ、待たせたね!

 僕が北の地からやってきた、やがてこの国の頂点に立つエリート!

 そう、北都高の生徒会長、白銀さ!」 キラーン☆


「皆様、こんにちは。本日はお招きありがとうございます。私が北都高の生徒会長を勤めております、白銀です。どうか宜しくお願いいたします。

 ――っと、坊ちゃまは仰っておられます」


「「「…………」」」 ポカーン


「…………」


(どんな奴が生徒会長かと思ったら、なんだこの金髪碧眼のクソ寒いイケメンは……ぱっと見は何処かとのハーフっぽいが)


「……なぁ、石田。お前、これでもさっきと同じこと言えるの?」 ヒソヒソ

「ば、バカな……あんな奴らの学校が僕達の学校よりも偏差値が高い……だと!?」




【次回予告】


「皆、いつも応援してくれてありがとう! 委員長よ。

 さて、ずいぶんと待たせたわね。ついに、第五章の始まりよ! って、何で五章が始まったのに私の出番が無いのよ! しかも、また新キャラ!?

 もう、こんな有象無象の新キャラを追加するくらいなら、超人気キャラクターである私の出番を増やしなさいよね……

 さーて、次回の『何故かの』は?」


次回、何故かの  「北都の生徒会長」   よろしくお願いします!


「じゃあ、いつもの『ペタリンじゃんけん』を始めるわよ! 出す手は決まった? もちろん、私は決めてるわ。じゃあ、いくわよ?


 ペタペタ・ペタりん♪  じゃん・けん・ポン♪」 



















































【グー】



「次回の更新も宜しくね♪」

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