第185話「友達(マブダチ)」



「ナゼ……ココに……イル」 ゴゴゴッ!


(ふぇえ~~なな、何で安西さんがここにいるの!? まったくわけがわからないよぉ~)


「へへへ~南都高の裏番とあろう奴が随分と動揺しているじゃねぇかよぉ? まぁ、確かにお前らの学校のマドンナが俺達のところにいちゃ~ぁ? どんな目にあって連れて来られたか心配でならないよなぁ……へへ、そんなに知りたけりゃ教えてやるよ……

 おい、お前ら! どうやってこの女をココに連れてきたか教えてやりな!」


(正直、俺も子分達が奴らの学校のマドンナをどんな目にあわせてつれてきたのか興味が――)


「「ヘイ! 土下座で頼み込んで付いてきてもらいやした!」」 ← 子分たち


「……へへへ、悪いがぁ……女を連れてきた方法は秘密だ。まぁ、状況を見れば分かるだろ……? つまり、そう言う事だよ。ああ! そう言う事だよ! そう言う事にしておけやゴラァアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

「…………ぁあ”?」 ゴゴゴッ!


(そう言うこと……? つまり、どう言う事だろう? ふぇぇ……これは普段からあまり周りの空気を読むのが苦手な僕には難しい問題だよ。とりあえず、この状況を理解するヒントはあの下駄箱のお手紙だよね?

 お手紙の内容は『一緒に遊ぼう!』みたいな内容だったし……


『放課後の手紙』+『山田くんのお友達』+『後から現れた安西さん』=『そう言うこと』


 そ、そうか! そう言うことだったのか……)


「マ、マサカ……ッ!」

「へ、へへ……よ、ようやく状況がのみこめたようだな……べべべ、別に! びび、ビビってなんかいねぇからな! ほほ、ホントだぞ!? や、やるのか!?

 ウラララシャアアアアアアアアアアアアアアアアア――ッ!」

「…………クッ!」 ゴゴゴゴッ!


「す、すげぇ! あの南都高の裏番がウチの番長の威嚇に押されてやがる!」

「流石はウチらのカシラや! マジでまんじ卍解ば●かいの鬼ヤバムッチャファイヤーだぜ!」


「へへ……お前ら、止めろヨォ……テレるだろうが? ばっきゃショーイ……」

 

(まぁ、南都高の番長も俺が威嚇しても手が出せなくて当然だからな? 何せこっちには『マドンナ』っていう人質がいるんだからよぉ~?)


「グウゥ…………」 ゴゴゴゴッ!


(まさか、こんなことになるなんて……くっ! か、考えてもいなかった……だって、まさか……まさか――あの手紙をくれたのが本当は『安西さん』だったなんて!)


「…………」 ギロリ!

「……?」


(あらら~、何故か朝倉くんにものすごい睨まれてしまったわ……やっぱり、私が人質になっていることに怒っているのかしら……?)


(安西さん……僕は全て分かったよ! あの手紙の本当の差出人は安西さんだったんだね……きっと、安西さんはいつまでもクラスに馴染めない僕を気遣って、僕と友達になろうとしてくれたんだ! だけど、女性の安西さんから僕に友達になろうって言うのは勇気がいるはず……そこで、山田くんが安西さんに協力してくれたんだ!

 きっと、安西さんは僕に友達を作る為に、僕の唯一の友達である山田くんに相談を持ちかけた。相談された山田くんは他校の友達に協力してもらって、僕をここに呼び出したというわけだ。安西さん一人で僕を呼び出すのは勇気がいるけど、お昼休みで一緒に遊んだ彼らなら不自然じゃないもんね。その証拠にあの下駄箱に入っていた手紙はどう考えても山田くんが書いたものだった! だって、あんな何を書いているかも分からない文脈メチャクチャのひらがなばっかりの手紙を書く人物なんて、山田くん以外にありえないもん! 僕が山田くんの友達で普段から山田くんと交換絵日記をつけているから解読できたけど……あの手紙は流石に僕以外に読める人いないんじゃないかな?)


「へっへへ……さて、それじゃあそろそろ勝負をつけさせてもらおうか?」

「…………」 ゴゴゴゴッ!


(勝負をつける……つまり、僕の予想が正しければ安西さんが僕に『友達申請』してくると言うことかな?)


「ゲッヘヘヘ……南都高の裏番よぉ~? ひざまずけや」

「…………ェ?」


(ん――何だって?)


「あぁあああん? 聞こえないのかぁああ~~んんん? ひ・ざ・ま・ず・け って……言ってんのじゃオラリャリャリャリャァアアアアアアアアアアアアアアイッ!」 ← 威嚇

「…………?」


(跪く? 今、跪けって言った……よね? え、何で!? 何で僕が山田くんのお友達に『跪け』なんて言われてるの!? だって、これから安西さんの『友達申請』が始まるんじゃ――)


「うぉ~イオイオイオォーイ? この期に及んでまだ俺様に屈さないとか……テメェ~まさか、今の状況を分かってないわけ無いよなぁ~……?」

「…………?」 ← 分かってない

「チッ……おい、あの女が見えねえのか! オララァ~~ン!」

「……?」


(いや、安西さんはさっきから見えているけど、それと跪くのに何の関係が――そ、そうか! 『友達になってもらう』為の土下座か!)


「へへ……ようやく分かったようだな」

「クッ……」


(なるほど……つまり、僕程度の人間が安西さんと友達になってもらうなんて、おこがましいと言う事か。うんうん、よく考えて見ればそうだよね! だって、安西さんは『学校一のマドンナ』って言われるほどの女性なんだから、たとえこれが安西さんが僕を気遣っての『友達申請』だとしても、そんな安西さんと友達になってもらう為には、安西さんからではなく! 僕の方が土下座くらいして『頼み込む側』で無ければいけないと言う事だ!

 つまり、今回の『友達申請』は要約すると――


『あらら~? 朝倉くんったら、いつもクラスに馴染めなくて惨めねぇ~ウフフ♪ 惨めで惨めでとても見ていられないから、特別にこの学校一のマドンナである私が貴方の友達になってあげようかしら? ウフフ~でも、勘違いしないでね? これはあくまで、朝倉くんが、どーしても私と友達になりたい。というのならなっても言いと言う話で、私は別に貴方と友達になってもならなくてもいいのよ。だから……土・下・座♪

 ウフフ~私と友達になって欲しければ土下座してくれるかしら♪』


 ――っていう意味だったんだ!) ←違います


「オウオウオウ! ほら、早く跪いてこの俺様に土下座しろや! オリャヤアアアアアアアアアアアア!」

「……ッ!」


(あ、そうだった! せっかく、あの安西さんが僕なんかと友達になってくれるって言うんだから早く土下座しなくちゃ!)



「す、スゲェ! あの伝説の裏番がウチの番長に土下座してやがるぜ!」

「人質取った相手に無駄にデカイ態度で土下座決めさせるなんて……流石、カシラだぜい! ゲスい事と狡い事やらせたら上にでる奴はいませんぜ!」

「朝倉くん……」


(私の為にそんな虫ケラに頭を下げるなんて……もしかして、朝倉くんって意外と良い人なのかしら?)



「ギャッハハ! ついに……ついに、あの伝説の裏番がこの俺様に跪いたぜ! これで、今日からこの俺様がこの街の裏番……いや、それよりも強い! そう、裏の裏!

 名づけて……『伝説の表番』だぁあああああ!」



「すげぇえ! ウチの番長が新しい伝説になっちまった!」

「『伝説の表番』の誕生じゃいゴラァアアアアアアアアアアア!」

「ねぇ、それって結局『普通の番長』に戻ってないかしら……?」


(あらあら、どうしましょう……? 最初は変なのに絡まれたから隙を見て逃げる予定だったのだけど……)



 パ、パリーーンッ! ← ナニかが砕け散る音



「アン? 一体、何の音だ……?」


「――ッァ!」  ドサッ! ← 子分が股間を押さえて倒れる音

「――ピィッ!」  バタッ!  ← 子分が股間を押さえて倒れる音


「あらあら~? 何故か急に隣の男の子達が倒れたけど一体どうしたのかしら……ウフフ♪」

「んな! 何で俺の子分達が倒れて……テメェ、女! 一体何をしやがった!?」

「あらあら~? 私が何をしたって言うのかしら? だって、私は今まで彼らに両手を捕まれていたのだけど……ウフフ♪」


(でも、朝倉くんはいい人みたいだし……せめて、ゴミ掃除くらいは手伝わないとね? ウフフ♪)


「ふ、ふざけんじゃねええ! じゃあ何で俺の子分達が股間抑えて倒れてんだ!」 ガシッ!

「汚い手で触るなブタ野郎」

「ぇ――」



 パリーーンッ! ← ナニかが砕け散る音



「――ォ!」


(ま、間違いねぇ……今の回し蹴りは……幻のヤンキー殺しの……技に――)


「てぇめぇが…………『南中の玉割り愛死姫はしひめ』――ァ」  ドサッ! ← 番長が股間を押さえて倒れる音


「フゥ……」


(あらあら……その通り名、まだ残ってたのね? ウフフ♪)


「…………」


(僕、いつまで土下座してればいいんだろう……? あ、そうか! 僕ったら、まだ『友達になってください』って言ってないじゃん!)


「あ、あ……ッ!」

「何かしら……朝倉くん? ウフフ♪」


(あらあら、残るは朝倉くんだけど……一応、口封じした方がいいのかしら?)


(言え、言うんだ僕! ここまでお膳立てしてくれた皆の為にも……ちゃんと、安西さんに『友達になってください』って言うんだ!)


「ずっと! 一緒に……いたい!」 ← 訳 (友達になってください!)

「え……」


(朝倉くんったら! な、何でこんなところでプロポーズ……?)


「そ、それは……(愛の)告白ってことかしら……?」

「あぁ……(友達申請の)告白だ」

「そんな……でも、何でそんないきなり?」


(だって、私達そんなまだお互いのことよく知ってないわよ?)


「いきなり……じゃない」

「え」 


(それって……まさか、朝倉くんはずっと前から私のことを? もしかして、私が人質になって抵抗しなかったのも優しいだけじゃなくて……そういう理由?) キュン! ← 心に何かが響く音


(いきなりじゃないよね? だって、僕はずっと友達がほしかったんだもん! それに、安西さんは入学直後からクラスの人気者だったし、僕もいつかは安西さんみたいに、たーくさんの友達を作りたいと思ってたんだ!)


「でも……見たでしょ?」


(私の本性……)


(ん、何を? ああ、もしかして手紙の字? って、えええ! あれ安西さんの字だったの!?)


「その……驚いたわよね?」

「まぁ……」


(そうか~あの手紙って安西さんが書いた奴だったのか……僕はてっきり山田くんが書いた奴だと思ったよ)


「でも、関係……ない」

「朝倉くん……」


(私の本性を知った上で……それでも、私が好きってこと?)


(いや、字が汚い事と友達申請に関係は無いよね? だって、僕はあれくらいの字なら山田くんでなれてるもん)


「その……本当に私でいいのかしら?」 ← (恋人として)

「あぁ……オマエがほしい……」 ← (友達として)


「あらあら……じゃあ、喜んで♪」

「……ッ!」


(うわぁ~~っ! ホント!? やったーーっ! 初めて、女の子の友達ができたよ! ヤッター!)



 こうして、二人の交際は始まった。





【次回予告】


「皆、いつも応援してくれてありがとう! 委員長よ♪

 さて、これで『何故かの』【番外編】も今回で終了! 次回はついに、お待ちかねの『本編』よ! でも、プロットがまだ決まってないから、少しだけ更新は待ってくれるとうれしいわ」


次回 何故かの 「本編(予定)」 よろしくお願いします!


「じゃあ、いつもの『ペタリンじゃんけん』を始めるわよ! 出す手は決まった? もちろん、私は決めてるわ。じゃあ、いくわよ?


 ペタペタ・ペタりん♪  じゃん・けん・ポン♪」 



















































【グー】



「次回の更新は少し待っててね♪」


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