第178話「彼を落とす為のたったひとつの冴えたやりかた」


 スカッ~ン♪ ← チャイム


「……じゃあ、午後のHR始めるぞ。委員長」

「起立、礼、お願いします!」


『お願いします!』


「えーと、報告事項は……特にねぇな。じゃあ、寄り道しないで帰れよ……以上」

「起立、礼、ありがとうございました!」


『ありがとうございました!』



「しゃあああああ! 学校終わった!」

「うちの担任の数学の先生はHRが短いのがいいよな!」

「とっても、話が短いフレンズなんだね」

「隣のクラスの担任とかは、話が長いからHRだけで十分以上かかるらしいよ」

「うわー、マジヤバくね?」


「山田! 今日は野球部休みだから何処かで遊んで行こうぜ!」

「おう、吉田! じゃあ、バッティングセンター行こうぜ!」

「ウェーイ!」

「山田……俺、せっかく野球部休みなのに、バッティングセンターにつれていくとかお前……」

「ハゲェーイ!」

「沢渡、うるせぇ! だから、これはハゲじゃなくて坊主なだけだ! はぁ……まぁ、いいか。たまには部活のこと抜きでバット振るのもいいかもな。

 じゃあ、お前ら行くぞ!」

「「ウェーイ!」」



「…………」


(HRが終るとウチのクラスは、とたんに元気になるな……)


「安藤くーん」

「も、桃井さん……何か用?」


(まま、また桃井さんが話しかけて来た! やっぱり、昨日閉じ込められたのがきっかけで、俺が桃井さんの本性を暴いたから警戒してるんだよな……)


(今日一日、安藤くんに猛アタックしたつもりだけど、安藤くんが私に落ちる気配は一向に無い。そして、気付いたらもう放課後……決めるならこれが最後のチャンスだよね!)


「うーんとね……ちょっと、お話があるんだけどいいかなー?」

「え」


(お話だと!? こ、これはまさか――



『私ねー? 実は今日一日、安藤くんのこと見てたんだけど……やっぱり、私の本性を知っている人は生かしておけないんだよねー。だから――

 安藤くんには消えてもらけどいいかなー?』

『な! ちょ、桃井さん待っ――』

『答えは聞いてないよー♪』


 ビッグバァアアーーン! ←安藤くんが抹殺される音


『うわぁああああああああ!』



 ――ってな展開か!)


「は、話しって……ここで?」

「あぁ~ゴメンね。出来たら人がいない場所がいいんだけどー」

「ッ!?」


(人のいない場所だと!? やっぱり、俺を抹殺する気なのか!)


「どう、ダメかなー?」

「えーと……」


「安藤くん、いつまで教室にいるの! 貴方、今日が図書委員の当番だって忘れてないでしょうね?」


「え、委員長?」

「委員長!」


(委員長ぉおお! ナイスタイミング! そういえば俺って今日が図書委員の当番じゃん!)


(うわーまさか、安藤くんが図書委員だったなんて計算外だよー。これじゃあ、今日はもう無理かな……)


「あ、ゴメン委員長! ちょっと、話してて遅れてた。

 てな訳で、桃井さんゴメン! 俺、委員長と同じ図書委員だから……」

「あ、そうなんだー。急いでる所ゴメンね」

「ううん、俺の方こそ……」


(よっしゃ! これで、桃井さんから逃げれるぜ!)


「はぁ? 安藤くん、ぼっちの貴方にクラスで話す人なんて私以外にいないでしょ? 嘘を付くならもっとマシな嘘を――って、え……桃井さん?」

「ヤッホー、委員長♪ 安藤くんを引き止めててゴメンねー?」

「ああ、別にかまわないわ。それにしても、桃井さんが安藤くんに用なんて珍しいわね……

 安藤くん、貴方ちゃんとコミニュケーションは取れたんでしょうね?」

「委員長、それは一体どういう意味!? 流石にいくら俺が『ぼっち』でもクラスメイトとコミュニケーションくらい取れるからね!」

「それが信用できないって言っているのよ……貴方の場合『ぼっち』を拗らせすぎて、こっちが『(どうせ、同じ帰り道よね……)』って思って『どうせなら、一緒に帰らない?』って、聞いても『(貴方をシメるから、体育館裏について来なさい……)』って意味で勘違いするじゃない?」

「どうやったらそんな勘違いが起きるんだよ!? ありえねーから!」

「本人はそう言っているけど、どうかしらね~?」


「んー?」


(んんん~? あれあれー? この委員長と安藤くんの距離感はなんだろう……何故か、私の女の勘がこの二人を放置するとサクラよりも危険なことになるって訴えかけてくるよー? てか、この二人って放課後一緒に帰るような仲なの!?

 私、安藤くんにこんな仲の良いい女の子がいるって聞いて無いよーっ! むむむ……よし、予定変更! 持久戦でジワジワと行く予定だったけど、ここで一気に仕掛けるよー!)


「ねぇ、安藤くん! やっぱり、少しだけお話したいことがあるから時間いいかな?」

「うげぇ!? で、でも……図書委員の仕事が――」

「ねぇ、委員長。少しだけ安藤くんを借りてもいいかなー?」


(ね? 委員長……) ← アイコンタクト


(あ、ハイ……) ← アイコンタクト


「別にいいわよ」

「うな!? い、委員長!?」

「…………」


(ごめんなさい、安藤くん。何故か今、猛烈に桃井さんに逆らってはいけないプレッシャーを感じたのよ……)


「だって、安藤くん♪」

「えーと……でも、ここじゃ話せないんだよね?」

「大丈夫だよー♪ もう、ここでするって決めたからねー」

「え」


(桃井さん、なりふり構わずここで俺を始末する気か!)


「な、なんでしょう……」

「うん、私ねー? 実は今日一日、安藤くんのこと見てたんだけど……」

「ヒィッ!」


(ヤバイ、やられる――)


「安藤くんのこと好きになっちゃったみたい♪

 だから、付き合ってー」


「ふっあ!?」



『はぁああああああああああああああああ!?』 ← 周りの生徒達



「どう、かなー?」


(うーん、本当は一か月くらいかけて安藤くんの方から告白させる予定だったんだけどー? でも、今日一日中アピールしてたんだし、流石に安藤くんも私の気持ちには薄々は気付いてるよねー?)


(なんで、告白!? 嘘でしょ! だって、桃井さん俺のこと警戒してたじゃん!? だって、そんなそぶりも無かったし……え、なんかの罰ゲーム?

 フラグなんて一回も立ててないんだけど!)


「い、いや、流石に――」

「!?」


(この流れ……まさか、安藤くんってば私からの告白を断るつもりなの!?)


(冗談……もしくは俺を一日中監視するつもりか?)


(この私に告白させておいて断るんなんてさせないんだから!)


「あ、安藤くんは……私が嫌い……かな?」 ブルン!ブルン! ← 何かが揺れる音

「え、別に……」 ブルン!ブルン! ← 安藤くんの心が揺れる音


「じゃあ『嫌い』……じゃ無い?」

「まぁ……うん」


(流石に……『嫌い』ってわけじゃないんだよな。ただ『ぼっち』の俺からすると苦手なだけで――)


「そう! 私も好き!」

「え!? いや――」

「『嫌い』じゃ、ないよねー?」

「まぁ……」

「じゃあ、カップル成立だねー!」

「んん!?」


(え、ちょっと待って! だって……あれ? もしかして――

 俺、告白OKしちゃってるぅううー!?)



『うぇえええええええええええええええええええええええええええええ!?』 ← 周りの生徒達



(こうして、俺と桃井さんは付き合うことになった)




「ほら、やっぱりコミュニケーション取れてないじゃない……」



 おわり




【次回予告】


「皆、いつも応援してくれてありがとう! 超久しぶりに本編で大活躍だった委員長よ♪

 さーて、次回の『何故かの』は?」


次回  何故かのエクストラステージ よろしくお願いします!


「カッコいいタイトルで誤魔化しているけど、これって事実上の『未定』よね?

 まぁ、いいわ! じゃあ、いつもの『ペタリンじゃんけん』を始めるわよ! 出す手は決まった? もちろん、私は決めてるわよ。因みに、ここ三回連続で【チョキ】を出しているんだけど、今日も【チョキ】だったりするのかしらね?


 ペタペタ・ペタりん♪  じゃん・けん・ポン♪」 



















































【パー】



「流石に何回も同じ手は使わないわよ♪」



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