第176話「何故かの(桃井さんルート)5」
「安藤くん、この席で食べようか?」
「うん、もう何処でもいいです……」
「へぇー、安藤くんはパスタにしたんだね。私はカレーにしたよ♪ やっぱり、ここの学食のカレーは一押しだからねー」
「カレーか……なんか、桃井さんがそういうの好きなんて少し意外だね」
「うーん、そうかなー? 安藤くんの中で私のイメージがどんなのか良く分からないけど、食べ物の好みは子供っぽいかもねー?」
(ふふーん、こうして少し子供っぽい食べ物が好きなのをアピールして、安藤くんに少しでも親しみを持ってくれれば……なんて、思惑もあるんだけど、実際にカレーが好きなのは本当なんだよね)
(てか、桃井さんのカレーってあれ絶対に大盛りだよな? もしかして、桃井さんって意外と食うタイプか? なるほど……それであんなに夢とキボウが胸いっぱいに膨らんでいるのか)
「じゃあ、いただきまーす♪」
「いただきます……」
(てか、気付いたら結局桃井さんと一緒に食べる事になってしまった……なんか誘われ方が多少……いや、かなり強引だった気がするが……やっぱり、俺が桃井さんの本性を皆に言わないか不安で見張っていると言う事なのかな? てか、周りの男子の視線が死線になっててマジで食べる気にならないぞこれ……)
「んんー? 安藤くん、あまり食べてないけど食欲無いのー?」
「うん……なんか食欲がね」
「ふーん……」
(あ、いいこと思いついた!)
「じゃあ、私が『アーン』で食べさせて――」
「おっしゃああ! オラ、なんか急に食欲が湧いて来たぞ!」
「――って、何でそんな急に食べ始めるの!? その食欲どこから降ってきたの!」
(もーう! 安藤くんったら、せっかく私が『アーン』で食べさせてあげるついでに外堀を埋めようとしていたのに隙が無さすぎるよぉー)
(ふっざけんな! 桃井さんみたいな美少女に『アーン』なんかされたら、現場を目撃した男子生徒全員に放課後の校舎裏へラブレターのご招待だわ!)
「あら、なかなか珍しい組み合わせね」
(ん? 誰かが話しかけて――)
「あ、サクラ!」
「こんにちは、モモ。私もここで一緒に食べさせてもらうわね?」
「――ッ!?」
(あ、朝倉さんだとぉおおおおおお!? 何でここに学校一の美少女と有名な朝倉さんまで来るんだよ! しかも、朝倉さんまで有無を言わさずに一緒に食べる事が一方的な会話で成立しているし!? 俺、朝倉さんなんて
いや、そうか。朝倉さんは桃井さんと仲がいいんだよな。だから、桃井さんがいるところで一緒に昼飯を取るのは必然……まてよ? なら、俺はお邪魔虫なのではないだろうか?
だって、考えてみても学校一の巨乳で有名な桃井さんと学校一の美少女で有名な朝倉さんの中に『ぼっち』の俺がいるなんて不自然すぎる。むしろ、ここは朝倉さんに席を譲って『ぼっち』の俺はさっさと退場するのが学園カーストのスクールマナーではないだろうか?
よし、そうに違い無い。むしろ、そうしよう!)
「おお! 朝倉さんが来たってことは俺はもうお邪魔だよね! うんうん! じゃあ、後は若いお二人に任せて、俺はここいらでお暇を――」
「あら、安藤くんったら何を言っているのかしら? そんなこと言われたら、まるで私が安藤くんを追い出したみたいじゃない? ウフフ、別に私が勝手に混ざらせていただいただけなんだから、安藤くんが立ち去る必要なんか無いわよ。ね、モモ?」
「うんうん! 安藤くん、そうだよー。それに若いお二人にって、安藤くんも同い年でしょー?」
「う、ウギギ……そ、ソウデシタネ」
(な、なにぃいいいいいいいいいいいいいいい!? 引止められただと!? さ、流石は完璧美少女と謳われる朝倉さんだ……この場から逃げる隙が無い)
(ムムム……まさか、ここでサクラが入ってくるなんて予想外だなー……でも、サクラと安藤くんに接点はないはずだし作戦に支障はない……よね? でも、何故か私の女の勘が安藤くんとサクラを一緒にすると危険だって伝えてくるんだよねー……なんでだろう?)
(珍しい事に、モモが男の子と一緒にお昼を食べているから声をかけたけど、まさかそのお相手が安藤くんだなんて意外だわ。まだ、二年になったばかりで安藤くんのことは良く知らないけど……確か、いつも教室の片隅でラノベを読んでいる男の子よね?
実はライトノベルは私も大好きなのだけど、私の場合は『学校一の美少女』というイメージがあるからその趣味はなるべく隠しておきたいのよね。そういう意味で言うと安藤くんは私のラノベ趣味が露見しかけない唯一の危険人物……だとしたら声をかけたのは失敗だったわ……でも、そこで明らかに安藤くんを避けてしまうのは逆に不自然。ならば、私に出来る事はあえて安藤くんを避けるようなそぶりはせずに、それでいて私のラノベ趣味が露見しないように立ち振舞うことよね!)
「じゃあ、三人一緒の席でいいわよね?」
「うん、いいよー」
「そうだね……」
(((いや、よくないです……)))
【次回予告】
「皆、いつも応援してくれてありがとう! 委員長よ。
さーて、次回の『何故かの』は?」
次回 「何故かの(桃井さんルート)6」 よろしくお願いします!
「じゃあ、いつもの『ペタリンじゃんけん』を始めるわよ! 出す手は決まった? 今日もまだまだ【グー】ピックアップ! な、なな、なーんと98%の確率で【グー】を出すわよ!
ペタペタ・ペタりん♪ じゃん・けん・ポン♪」
【チョキ】
「連続で当てるなんて、とてもとてもツイてるわね♪」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます