第171話「何故かの(大学生編)3」




 ガチャ ← 玄関のドアを開ける音


「「ただいま~」」


(家に誰もいなくても出かける時は『行って来ます』帰って来た時は『ただいま』を言う俺達の決まりごと。最初は『同棲』を意識して少し恥かしかったけど、今ではすっかり慣れたな)


(ウフフ♪ 安藤くんと一緒にアパートへ帰って二人で『ただいま』って言うこの瞬間が、一日で一番幸せな時間ね)


「安藤くん、直ぐにご飯の用意するわね♪」

「うん、俺はラノベ読んで待ってるから急がなくていいよ」

「ありがとう。でも、私だってラノベ読みたいんだからそんなに時間はかけないわよ♪」

「じゃあ、俺はあまりラノベに集中しすぎないようにしないとね」

「そうね。安藤くんったら、一度ラノベを読むのに集中すると止まらないんですもの!」

「あはは……それは耳が痛いや」

「だから、直ぐに作らないとね♪ まずはお味噌汁に入れるネギを切って……」


 スカカカカン! ← 朝倉さんの包丁の音


「…………」


(やっぱり、朝倉さんみたいな美少女がエプロンをして台所に立つと……こう、来るモノがあるよなぁ~……)


「フフン~♪」


(私がご飯を作って、安藤くんがラノベを読みながらそれを待ってくれる……

 こうしていると、まるで――)


「まるで、新婚さんみたいね」


(――って、私ったら声に出てる!?)


「え、朝倉さん……」

「あ、安藤くん!? これは違うの! その……」 スカスカ! ブンブン! ← 包丁を振り回す音

「朝倉さん、落ち着いて! とりあえずポンコツって包丁を振り回すのは止めようか!」


(しし、新婚さんみたいって……いやまぁ、確かに今の俺達の状況は新婚さんみたいだけど……やっぱり、高二の時に俺が言ったプロポーズのことを意識してるんだろうな)


(うぅ、私のバカバカ美少女おバカ! もう、これじゃ……まるで、私が安藤くんに結婚の催促しているみたいじゃないのよ! まぁ、確かに高校生の頃に安藤くんがしてくれたプロポーズを意識しているのはあるんだけど……)



『結婚しよう!』



「「あは、あはは……」」


((でも、意識するとやっぱり恥かしい……))


「………」 チラ


(やっぱり、大学を出たら……でも、就職して直ぐは流石に早いわよね? お互いの仕事もあるだろうし、生活が安定するまではこのまま同棲もいいけど……安藤くんはそこらへんどう考えて――って、もう! そんな事より、この変な空気を誤魔化さなきゃ!)


「………」 チラ


(ヤバイ。覚悟はしてるけど、思い返すとめちゃくちゃ恥かしいな……あれ、てかこの同棲って大学を出た後はどうなるんだ? 結婚は俺が朝倉さんを養えるようになってからって母に言われているが……

 ん~? もしかして、この同棲って……俺達が大学卒業しても続く系か!?

 ちょっと、朝倉さんに確認を――)



「ほ、ほら! そんなラノベあったでしょ!」


「え……ラノベ?」

「うんうん! ら、ラノベよ! ラノベ! 確か最近読んだラノベでこういう新婚さんみたいな展開のなろう小説があったような気がするのよね~」


(ちょ、ちょっと……誤魔化し方が強引すぎるかしら?)


「ん~? ああ、ラノベね! そう言えば、確かに『異世界はインターホンとともに』が最近ちょうど『新婚さん編』に入ったところだよね!」

「うんうん! そ、そうよ! 安藤くん、それだわ!」


(やった! 誤魔化せたわ!)


「アニメの放送中は更新が止まっていたんだけど、最近になって更新再開したんだよね!

 新婚になった主人公が新しい家に引っ越したことで、裏の訪問販売組織タスキンに目をつけられちゃって、訪問販売対策に新型インターホンセキュリティー通称『セゴム』を開発して、ゲート機能を取り付けたインターホンで悪徳業者を繁殖期のオークの巣穴に飛ばしたシーンは傑作だったね!」

「そうそう! そして新インターホンセキュリティー通称『セゴム』が異世界で大ヒットして主人公が大金持ちになるんだけど、何処からか現れた謎のオークの集団がスタンピードを起こして主人公のいる村が襲われそうになるのよね」

「うんうん! だけど、そこで主人公の新発明『荷電粒子砲のスイッチ型インターホン』によってオークの集団は殲滅され、主人公が英雄になる展開も良かったよね!」

「そうそう! でも、オークの集団がどうして村を襲ってきたのかは謎のままだから、きっとこれは後の展開への伏線だと、私は思うのよ!」

「うんうん、そうだね。だって、何の前フリも無しにいきなりオークの集団が現れたからね……うん、あの展開は驚いたよ。きっと、朝倉さんの言うとおり、オークの集団を生み出した犯人がこの後の展開で出て来るんだよ!」

「ええ、そうに違いないわ! 次の更新も楽しみね♪」

「うん! そうだね、朝倉さん」


(って……あ、あれ? 何か忘れているような気が――?)


「はい、お待たせ。ごはんできたわよ♪」


(まぁ、いいか!)


「ありがとう、朝倉さん。さて、食べ――おぉ……なんか、今日は豪華だね?」

「ええ♪ だって、明日から月曜で大学も始まるし、安藤くんはバイトもあって大変でしょう? それに、安藤くんは朝が苦手で起きるのが遅いから、沢山食べないとね♪」

「な、なるほど……」


(それで、このメニューかぁ~)



【晩御飯のメニュー】


・ご飯

・味噌汁

・納豆

・生卵

・山芋

・うなぎ ← 安藤くんの分は二倍!



「うなぎ……高くなかった?」

「ちょうど、安かったのよ。ほら、精を付けなきゃ頑張れないでしょ?」

「そ、ソウダネ……」

「はい、アーン♪」

「ア――いや、自分で食べられるからね?」


(危ない危ない。つい、うなぎに気を取られて朝倉さんのペースに乗せられる所だった……大丈夫、このメニューに深い意味は無い……)


「じゃあ、いただきまーす」

「いただきます。あ、そう言えば今日はジュースも買ってあるのよ♪」

「へー、そうなんだ。何のジュ――」



 ユ○ケル ← ジュース



「どう、頑張れそう?」

「あはは……」


(これがあるから、いつも朝は起きれないんだよなぁ……)






【次回予告】


「爆発しろ――――ッ!! ふぅ……

 皆、いつも応援してくれてありがとう! 委員長よ。

 さーて、次回の『何故かの』は?」


次回 「何故かの(桃井さんルート)」 よろしくお願いします!


「じゃあ、いつもの『ペタリンじゃんけん』を始めるわよ! 出す手は決まった? もちろん、私は決めたわ。行くわよ!

  因みに、今日は8割の確率で【パー】を出すわよ。


 ペタペタ・ペタりん♪  じゃん・けん・ポン♪」 



















































【グー】










「確率なんて、ガチャと同じよ♪」


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