第170話「何故かの(大学生編)2」



「ありがとうございましたー♪」


(このファミレスのバイトを続けて早数年……気づいたら、いつの間にかバイトからファミレスの店長になっちゃった。

 でも、いいの! 最初はイケメンがいたから決めたバイトだったけど、厨房のイケメンは休憩中に男と抱き合ってたし、いつまでたっても私の運命の人は現れないし……だから、私は恋ではなく、仕事に生きると決めたんだ! いつまでも恋なんかにうつつを――)


 カランコロ~ン♪


(あ! お客様だ。よし、ちゃんと仕事しなきゃ♪)


「いらっしゃいま――」


「朝倉さん、ちょっとここで休憩しようか?」

「ええ、いいわよ。ウフフ、このファミレスって私達の地元にもあったから、つい懐かしくて入っちゃうのよね」

「そうだね。まぁ、チェーン店だから俺達の大学の近くにあってもおかしくは無いんだけどね」


「せ……」


(――って、またおまえら……か――――い!

 ったく、何なの!? せっかく私が仕事を選んだ決別の意味を込めて、新店の店長に立候補してまで地元を離れたっていうのに、何でお前達バカップルまでこの土地に引っ越して来てんだよ! あぁああ!? 大学だと!? しかも、カップルそろって同じ大学でのキャンパスライフだとォお!? んなもん、私でもしたこと無いわ! 人生なめてんじゃねーぞぉ!

 おぉう!)


「……よ、ようこそ! 二名様でよろしかったでしょうか♪ では、こちらの席へどうぞ~」


(ふぅ、危ない危ない……私は仕事に生きるって決めたんだ。なら、ちゃんと私怨は捨てないとね。大体、正社員になってこの職場で数多くのリア充カップルを見てきた私に、いまさらアンタら程度のイチャイチャなんて気にもしないんだから……深夜のリア充カップルに比べたら、アンタらのイチャイチャなんて所詮おままごとよ! 

 ハッハッハッハ! 私がいつまでもリア充耐性が低いと思ったら大間違い――)



「だけど、ここら辺ってある程度足がないと移動に不便だよね」

「仕方ないわよ。だって、私達が二人で借りられるアパートって家賃が安い所になるから、必然的に交通は不便よ。むしろ、アパートの近くに小さなスーパーがあるだけマシね」

「まぁ、そうだね……」



(――って、どどど、同棲だとぉおおおおおおおお!? うぇえええ!? 何、何!? あのバカップル大学生で同棲してるの!? 嘘……だよね? 嘘だと言ってよぉ……同棲なんて私ですらした事なのに、それをあんなペーペーの学生共が……い、いや! まだこのくらいではやられないわよ。フン! は、話を聞く限りだとどうやらお金にそんな余裕も無いみたいだし、同棲というよりはただのシェアハウスみたいなものでしょう? きっと、二人分の家賃を払えないから仕方なく同棲しているとかそんな感じで、きっと恋愛ドラマみたいな甘い展開は――)



「それに移動なら、安藤くんにはバイクがあるじゃない」

「まぁね。大学の下見に行った時にアパートから駅とか大学まで結構距離があったから、免許を取っておいて正解だったよ」


(当初の予定では原付にするつもりだったが、ついでにと『もし、俺が二輪の免許と大学受験の両方を一発で合格したら、合格祝いに好きなバイク買ってよ』っと、親父と賭けをして正解だった。おかげで憧れのオンダのバイクDN-01ゲットだぜ!)


「でも、朝倉さんは大変じゃない? 大学は俺が送っていけるけど、今日みたいに一人で駅の方とか気軽に来れないでしょ?」

「私なら大丈夫よ。だって、必要な時は安藤くんがバイクで送ってくれるし……

 それに、その方が安藤くんと一緒にいられて幸せじゃない♪」

「朝倉さん……」



(甘ぁ――――――――い!

 って、なんじゃこの甘ったるさはぁあああああああああああああああああああ!? ちょっと、姿見ないうちにこのカップル進展しすぎじゃない!? 同棲+バイクって……リア充か!

 なんだよ! 『ウフフ♪ 貧乏で移動は不便でも、貴方と一緒なら、それだけで幸せだわ♪』とか……新婚か! お前ら新婚さんなのか! 新婚さんウチの店にヘイラッシャイ! ってか!? アアァあん!? ウチの店は新婚さんお断りじゃ!

 ペッ!)



「むしろ、大変なのは安藤くんの方じゃないの? だって、大学に行く時とか駅の方に用事がある時は、いつも安藤くんのバイクに乗せてもらわなきゃいけないわけだし……負担になっているわよね?」

「そんな! そんなの俺には全然負担なんかじゃないよ!」


(そうだ。俺にとって、バイクで朝倉さんを送り迎えするのは全然負担ではない。

 何故ならバイクで朝倉さんを乗せると言うことは、朝倉さんが俺の後ろに抱きつくと言う事だからだ!

 さて、問題です。朝倉さんがバイクの後ろに乗って俺に抱きつくと……俺の背中にはどんな感触があるでしょう?)



『安藤くん。じゃあ、後ろ乗せてもらうわね』

『うん、しっかり俺に捕まってね』

『分かったわ!』 


 スカッ! ← 背中の感触



(侮るな!)



『安藤くん。じゃあ、後ろ乗せてもらうわね』

『うん、しっかり俺に捕まってね』

『分かったわ!』 


 フワッ…… ← 背中の感触



(驚け、これが現実だァア――ッ!

 そう! 朝倉さんは成長した! もう『スカッ!』とはならないのだ!

 確かに今朝の世迷言寝言のように『D』とはいかないが……それでも、確かに朝倉さんのバストは成長し確実に『B』を名乗れるレベルまで進化しているのであるゥウ!

 そう、これこそ朝倉さんが成長した証! 今までいくら俺に抱き付いても『スカッ!』しかいわなかった胸がついにそれ以外の音を奏でるようになったのだ! つまり、この成長により朝倉さんには『可能性』が生まれたのだ! たとえ『0』だったモノが『1』に変わった微々たる成長だとしても、成長することさえ分かればいづれ、その『1』が『C』にも『C+』にもなる可能性があるのだぁああああああああああああ!)


「朝倉さんはさっき、俺と一緒にいれて幸せだって言ったよね? それは俺も一緒だよ。

 いい? 俺にとって、朝倉さんをバイクの後ろに乗せるって言うのは、

 俺の幸せ朝倉さんのおっぱいの成長を確認できる……とっても大切な時間なんだよ。だから、朝倉さんは俺をもっと頼ってくれてもいいんだよ?」

「安藤くん……」



(あぁぁ、甘ぁ――――――――――い!

 って、だから甘すぎるんじゃボケがぁああああああああああああああああああああ!

 お前らバカップルはその糖分で私を殺す気か!? 糖分の取りすぎで恋愛糖尿病になるわ! ウチの店では現在ヘルシーフェアを開催中です! 糖質の高いバカップルは現在お取り扱いしてません! ですので今直ぐにGoヘル死!

 ペッペッペッ!)


「お……お・客・さ・まぁ~♪ 失礼ですが、ご注文はお決まりでしょうかぁ~?」


「ああ! す、すみません。朝倉さん、何にしようか?」

「そうね……あ! 安藤くん、私これ食べてみたいわ!」

「どれ? あぁ~これ……? うん、いいよ。じゃあ、これ頼もうか」

「うん! すみませーん」

「はい、ご注文はなんでしょうか?」


(てか、話し込むなら先に注文してよね……)


「「この『カップル限定ラブラブストロー付きストロベリーパフェ』ください」」



(甘ぁ――――――――――――い!)







【次回予告】



「皆、いつも応援してくれてありがとう! 委員長よ。

 さーて、次回の『何故かの』は?」


次回 「何故かの(大学生編)3」 よろしくお願いします!


「じゃあ、いつもの『ペタリンじゃんけん』を始めるわよ! 出す手は決まった? もちろん、私は決めたわ。行くわよ!

  フフ……流石にもう【チョキ】は出さないわよ。


 ペタペタ・ペタりん♪  じゃん・けん・ポン♪」 



















































【チョキ】










「なーんてね? フフ♪」


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