第168話「役割」
「…………」
(うーん、生徒会の仕事って書類の確認とか雑務ばっかりで面倒だなぁ……よし、こういう時こそ他力本願だ!『嫌な仕事こそ、人に勧めてあげなさい』なんて言葉もあるくらいだしな!)
「石田ぁー、これやって」
「何だ……ああ、これか。仕方ない。僕に任せろ」
「サンキュー」
(次は……女子更衣室の案件の書類か)
「朝倉さん、この書類の確認お願いできる?」
「ええ、安藤くん。任せて頂戴!」
「ありがとう、朝倉さん」
(こっちは……前生徒会の引継ぎの残りか……面倒だな)
「石田ぁー、これやってぇ~」
「何だ……ああ、これか。仕方ない。僕に任せろ」
「サンキュー」
(こっちは……ああ、体育館の使用申請書か)
「藤林さん、少し手空いてる?」
「安藤くん、大丈夫だよ。何かな?」
「この手続きの書類の記載をお願いしたいんだけど、いいかな?」
「うん、任せて」
「ありがとう、藤林さん」
(こっちは――って、何で野球部の部費の予算票がここにあるんだよ!)
「姉ヶ崎妹~」
「はぁーい、先輩。なんですかぁ~?」
「これ、何故か俺のところに混ざってたわ」
「あーっ! 何でそれが先輩の所にあるんですかぁーっ! もう、メチャクチャ探したんですからねー?」
「いや、俺の所為じゃないと思うよ? 多分ね……」
「アハハハ! 何でそこで自信無くすんですか? マジでウケるんですけどぉ~
でも、見つけてくれてありがとうございます。先輩♪」
「お、おう……」
(よし! これで、俺の仕事は殆どなくなったぞ! 後は書類にサインをするだけの簡単なお仕事――ん? これも……石田でいいか)
「うーん……石田、これあげる」
「ん、何だ? 蛍光灯の発注書じゃないか。つまり、これをチェックすればいいんだな?」
「そうそう、なんかそっちに各部の備品発注書があったでしょ? それと一緒に確認して事務についでに出しといて」
「分かった。しかし、これくらいなら、安藤。君にもできるんじゃないのか?」
「それはそうなんだけど……でも、雑――じゃなくて、やっぱりこういう細かい確認作業は忍耐力があって作業の早い石田には敵わないからさぁ~」
「な、何だ!? 急にそんな褒めたからって……何も出ないからな! ま、まぁ……確かに、僕は忍耐力があって作業が早いかもしれないが……フン! し、仕方ない、早くその書類も僕によこせ!」
「サンキュー、石田♪」
「「「…………」」」 ← 生徒会の女子一同
(((ちょ、チョロい……)))
「むぅ~ん……あれ? えーと、安藤先輩。これ見てくださいよぉ~」
「姉ヶ崎妹、どうしたの? 予算票に間違いでもあった?」
「うーん、間違いかどうかは分からないんですけどぉ~? ここにある予算票の割合なんですけど、図書室の予算だけ前年比とくらべてやけに多くないですか?」
「ああ、それね。それなら前年の予算が少なかったのと、今年は図書室の本の買い替えで予算が多い所為で、前年比との差が開いているだけだから気にしなくていいよ」
「ふぅ~ん……なんだ! そうだったんですねぇ~分かりました! ありがとうございます。先輩♪」
「……ん? おい、ちょっと待て安藤! 確かに図書室の本の入れ替えは予定にあったが、だからと言ってそんなに予算に前年比との差が出ていなかったはずだが――」
「石田くん! まぁまぁ、落ち着いてね? ほら、石田くんが覚えているデータって去年の数字でしょ? 今年は情報科の授業が選択で増えるからその分入れ替えの予算が多いんだよ」 ← 図書室の予算が増えると得する人
「石田くん、藤林さんの言うとおりよ。それに、その書類なら姉ヶ崎さんが確認する前に私と藤林さんも作成の時に確認しているから問題は無いわ」 ← 図書室の予算が増えると得する人
「そ、そうか……うん、藤林と朝倉さんの二人がそういうのなら大丈夫だな」 ← チョロい人
「石田、喋っている暇があるなら仕事を進めろよ? 正直、俺はお前の仕事が終っていようがいまいが、最終下校時刻になった時点で、お前を見捨てて朝倉さんと一緒に帰るからな」
「何故だ!? そこは僕が終るまで待つか、せめて手伝うくらいしないのか!?」
「嫌だよ。何で俺がお前の残った仕事を手伝わなきゃならんの……?」
「そもそも、僕の仕事量がおかしいんだ! 安藤! 君の仕事を回す配分、他のメンバーと比べて、僕に回される仕事量がニ、三倍ほど多いだろ!?」
「そんなことアーリマセーン! ちゃんと、皆に合わせて仕事をお願いしてますぅー!」
「じゃあ、何で君の仕事だけ極端に簡単なのばっかりで量が少ないんだ!? 去年の姉ヶ崎会長は他の誰よりも多い仕事を自分でやっていたぞ!」
「バッカ! 石田のバッカ野郎! 俺にあの生徒会長と同じ能力を求めるんじゃねぇ! どれだけ、俺とあの会長にスペック差があると思っているんだよ! 同じなのは精々、胸囲くらいだよ!」
「きょ、脅威……? おい、安藤。何故、そこで脅威なんだ?」
「あ、ゴメン……今の言葉は忘れて」
「……プッふ」
(ヤバイ! 先輩ったら突然笑わせるの止めてくださいよぉ~)
「もう、二人とも騒ぐのはそれくらいにして仕事に戻ったら? じゃないと本当に帰れなくなるわよ」
「うん、ゴメン。朝倉さん……」
「ああ、すまない。朝倉さん……」
((まったく、コイツが騒ぐから……))
「あはは……もう、本当にあの二人は仲悪いねー。朝倉さん、迷惑かけてゴメンね?」
「そんな! 別に、藤林さんが謝ることじゃないわよ。それに、安藤くんのことは妻(予定)である私の責任とも言えるし……なんちゃってね。ウフフ♪」
「あれ? やっぱり、別人かな? 朝倉さんは何処に行っちゃったんだろう……?」
(はぁ……それにしても、安藤くんって一見不真面目に見えて意外とちゃんと皆の事を見ているよね。
確かに、石田くんの言うとおり姉ヶ崎会長の時は会長が殆どの仕事を背負って、他の役員達が余った仕事を片付けるやり方だったけど、安藤くんのやり方はそれとまったく逆なんだよね。
まず、前生徒会のやり方と同じで、生徒会長の安藤くんに生徒会の仕事がまとめられるのは同じだけど、安藤くんはそれらの仕事を内容だけ確認して、自分以外の人が出来る仕事を極力皆に回しちゃうんだよね。
生徒会長のサインが必要なの書類は安藤くん。
会計関係は前生徒会長の妹の姉ヶ崎さん。
それ以外の仕事は、朝倉さんと石田くん。
一応、去年から生徒会を続けている石田くんは生徒会の仕事になれているから、その分まわされる仕事も多いけど……安藤くんって私にはあまり仕事を回さないんだよ。回すときもさっきみたいに、私と石田くんの状況を確認してくれるし……だから、きっと私が石田くんの仕事を手伝えるように考慮してくれているんだと思う。
その証拠に、頭の固い石田くんが関わると問題の起きそうな女子生徒関係の仕事やトラブルは朝倉さんに任せてるし、安藤くん自身も本人の仕事は少ないけど、その分は何故か数字が苦手なのに会計になった姉ヶ崎さんのフォローや、手が空けば朝倉さんの手伝いをしているからね。
だから、効率だけでいえばこの新しい生徒会って、去年の生徒会より仕事の処理が圧倒的に早いんだよね、生徒会長が忙しそうにしている生徒会より、生徒会長が楽している生徒会の方が仕事が速いというのもアレだけど……
最初はなんでこれで仕事の処理が早いのか疑問だったけど、こうして数日この生徒会で活動してその理由もなんとなく分かった気がする。
多分、安藤くんって人を使うのが上手いんだ。誰にどの仕事をさせればいいとか、見ていないようで人をよく見ているからか、人を使う才能があるんだよ)
「藤林さん? なんか悩んでいるようだけど、どうしたの?」
「うぇ! ああ、朝倉さん! なな、なんでもないよ! うん、ゴメン。し、仕事に戻るね。あはは……」
(まぁ、本当は本人が仕事をしたくないだけなのかも知れないけど……てか、もう少しくらい石田くんと仲良くして欲しいんだけどな)
「あ、ゴメン。俺ちょっと、トイレ」
「そう、行ってらっしゃい。安藤くん」
「行ってくるね、朝倉さん。そうだ……石田も一緒に行く?」
「「「!?」」」 ← 生徒会の女子一同
(((何で!?)))
「む、そうだな……僕も一緒に行こう」
「「「!?」」」 ← 生徒会の女子一同
(((マジで!?)))
「じゃあ、行くか」
「ああ、そうだな」
(やっぱり、石田も我慢してたんだな。生徒会って女子の比率の方が高いからトイレ行きづらいんだよな……)
(安藤、助かった。正直、僕もそろそろ限界だったんだ……)
ガラガラ~ 二人が生徒会室から出て行く音
「「「…………」」」 ← 生徒会の女子一同
(((え……もしかして、あの二人って意外と仲良し?)))
おまけss「新生徒会の『ぼっち』」
キーンコォ~ンカーンコーン♪
「よっしゃあ! 下校時刻だ! 皆、帰ろうぜ!」
「な、何!? 安藤、ちょっと待ってくれ……まだ、終わってない仕事が半分もあるんだ! せめて、あと一時間!」
「うるせぇ、バカモンが! ウチの生徒会は残業禁止ですぅー! 超ホワイトですぅー! 何故なら、俺のラノベを読む時間が無くなるからね!」
「そ、そこを何とか!」
「てか、石田。お前それ今日中に終わらせる気だったの!? それ週末までにやればいい仕事だからね? なのに、もう半分も終わらせちゃったの!? 今日火曜日だから! ペース配分って言葉知ってる?」
「ほらほら、安藤きゅん! 石田くんのことは藤林さんに任せて帰りましょう♪」 スカッ!
「あ、朝倉さん……ここ、生徒会室だから腕組むの早いから……まだ、皆見てるからね?」
「ウフフ、そうね『まだ』早いわよね♪」
イチャイチャ♪ ← 謎のラブラブ空間
「うわぁ、生徒会の仕事が終わった途端に、朝倉さんが朝倉さんじゃなくなっちゃったよ……」
「むぅ、確かにこれは今週分の仕事で今日中に終わらせなくて良いのは分かるが……しかし、仕事を残して帰るというのはどうにも気持ちが――」
「まぁまぁ、石田くんもそろそろ帰るから残りは明日にして片付けようね? ほら、明日も私が手伝ってあげるから」
「しかしだな、藤林」
「それに、私だって石田くんと早く帰りたいし……」
「――ッ!? し、仕方ないな……藤林、帰るぞ!」
「うん、石田くん!」 ムギュ!
イチャイチャ♪ ← 謎のラブラブ空間
「あ、私は先に帰りますねぇ~……」
(はぁ……先輩達、マジで爆発しろ)
【次回予告】
「皆、いつも応援してくれてありがとう! 委員長よ。
さーて、次回の『何故かの』は?」
次回 何故かの「大学生編」 よろしくお願いします!
「次回はついに人気投票で上位になったキャラの番外編よ! 誰の番外編かは……お・た・の・し・み♪
じゃあ、いつもの『ペタリンじゃんけん』を始めるわよ! 出す手は決まった? もちろん、私は決めたわ。行くわよ!
ペタペタ・ペタりん♪ じゃん・けん・ポン♪」
【チョキ】
「また同じ手だと思った? フフ♪」
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