第164話「派閥」
「それで一年をまとめているのが……姉ヶ崎、お前でいいのか?」
(でも、だとしたら何でこいつは俺を支持したんだ? それがまったく分からないんだよな……)
「え? あ! あぁ~……うーん、まぁ、それは半分は正解で半分ハズレですかねぇ~?」
「ん? 半分って……どう言うこと?」
「そのままの意味ですよ。今の一年ってぇ~? ぶっちゃけ、派閥が二つあるんですよねぇ~」
「は、派閥って……」
(おいおい、それ一体何処の世界のギャングだよ……俺、二年生だけど、派閥なんて末恐ろしいのが一年の間にあるなんて全然知らないんだけど?)
「つまり、その派閥の一つをまとめているのが……お前ってこと? てか、一年のボス的な?」
「ヤダ~っ! 先輩ってば『ボス』なんて汚い言葉じゃなくて『アイドル』って言ってくださいよぉ~」
「いやいや、実際に『ボス』みたいなモンだろ……」
(つまり、派閥ってのは学年カーストの頂点みたいなもんか? なんかこう……学年のリア充の中の王様みたいな? 確かに、こいつの場合はチャラいし、生徒会長の妹だからそういうのピッタリだよな。まぁ、その場合は王様じゃなくて女王様か?)
「因みにぃ~? もう一つの派閥をまとめているのが……先輩の『妹さん』みたいなぁ~?」
「学年の
(ウチの妹って学校で派閥なんか牛耳ってるの! マジで!?)
「まぁ、先輩の妹さんの場合はぁー? 妹さんが派閥をまとめているというよりもぉ~? 私の派閥以外の子達が、妹さんに付いている……みたいなぁ~?」
「それの違いがよくわからないんだけど……」
(つまり、ウチの妹が可愛すぎて一年で人気ってことか? って、マジか! ヤバイ、妹に
「てか……じゃあ、お前とウチの妹って知り合いなんじゃん」
「え、別に『知り合い』じゃないですよぉ~?」
「は? じゃあ、何でウチの妹が一年の派閥をまとめてるとか知ってるの?」
(普通、友達でもない限り他クラスの人間のことなんか知る機会無いよな?)
「アハハハ! 先輩ってばそんなことも分からないんですかぁー? そんなのぉ~……自分の地位を脅かす可能性のある人間は全員、調べておくに決まっているじゃないですかぁ~」
「…………」 ゾクゾクゾク!
(怖ッ! 何今の笑顔!? 普通に可愛かったのにメチャクチャ悪寒が走ったぞ!?)
「……つまり、俺の妹が一年生に俺を投票するように頼んだってことか?」
「キャハハ! そんなあからさまなことはしてませんよぉ~♪ でも、先輩が自分のお兄さんだって事はアピールしていたみたいなぁ~?」
『皆、聞いてくれるかな? 実はね……私のお兄ちゃんも、この生徒会長に立候補してるんだ。でも、私のお兄ちゃんってこういうの苦手だから、結構苦戦しているみたいなの……
だから、お願いします! どうか、今日のお兄ちゃんのスピーチを聞いてあげてください!
別に、お兄ちゃんに投票して欲しいって訳じゃないし……当然、他の先輩に投票してもかまわない……でも、その前にちゃんとお兄ちゃんのスピーチを聞いて欲しいの! 聞いた上で、誰に投票するかを決めて欲しいんだ……どうか、お願いします』
「――って……投票の日のHRでクラスの皆にお願いしたらしいですねぇ~まぁ、他のクラスの子達から聞いた話ですけど♪」
「そんな事が……」
(でも、妹の奴なんでそんなお願いをしてまで、俺を――って、そういえば……)
『ええい! つまり『お兄ちゃん』としては『妹の一票』は自分に欲しいって意味だよ! 言わせんな恥かしいなおい!』
『ほへぇ~~お兄ちゃんは私の『一票』がそんなに欲しいんだ……へぇぇ~~♪』
『な、なんだよ……急にニヤニヤしやがって……』
「…………なるほど」
(あの家での会話がきっかけか――っ! 俺的にはたった一票のつもりだったけど、まさか妹の一票が一年生全体に影響するなんて思わねぇよ!)
「つまり、妹のそのお願いが俺の投票に影響していると?」
「まぁ、それが全てと言うわけじゃないですけど……でも、先輩の妹さんって一年生の中では結構発言力があるんですよね。それというのも、私が『こういうキャラ』じゃ、ないですかぁ~?」
「え、まぁ、そうだな……」
(てか『こういうキャラ』って、自分で言うか普通?)
「それで、私って一年の目立つグループの『顔』みたいなところがあるんですよねぇ~でも、中にはそういうグループが苦手な人っているじゃないですかぁー?」
「ああ、まさに俺みたいな奴だな」
「キャハハ! 先輩、それ自分で言いますぅー? でも、まさにそうですね……それで、そういう子達に人気なグループの『顔』になっているのがー?」
「ウチの妹ってことか……」
「ビンゴです!」
「なるほどね……」
(つまり、それが例の派閥って奴ね……こいつがボスの『目立つ一年グループ』と、ウチの妹が中心の『大人しい一年グループ』の二つの派閥か)
「だから、正直なところ先輩の妹さんが皆にした『お願い』ってあまり効果は無いんですよ。実際にあのお願いで先輩に投票しようと思う一年なんて二十人いればいい方ですよ」
「じゃあ、何で俺に票が入ったんだよ?」
「そこで私の出番ですよ!」
「何……?」
「実はですねぇ~投票の前に私、皆に言ったんです♪」
『決ぃ~めた♪ 私は安藤先輩に投票しよう! だって、先輩のスピーチ凄く面白かったしぃー? あ! 安藤さんも当然、お兄さんに投票するんでしょ? 私も応援してるから、当選するといいね♪』
「――って、一年の皆に見せ付けるように言いましたから♪
先輩、もしもですよぉ~? 普段は仲良くないAとBのグループがあるとして……そのグループの『顔』二人が同じ候補者を仲良く支持していたら……AとBのグループにいる子達は逆らえると思えますか?」
「まぁ……『ぼっち』じゃない奴には無理だよな」
(だって、それってもし別の奴に入れたのがバレたら、確実に一年の中で居場所なくなるやつじゃん! 残りの三年間『ぼっち』確定だよ!)
「結局、俺が当選できたのは妹とお前のおかげだったってことか……」
(でも、納得だわ……だって、あの時は当選の事実で深く考えなかったけど、事前調査で支持率が20%も無かった奴が投票前のスピーチだけで逆転できるわけ無いんだよな……)
「う~ん……でも、案外そうとは言い切れないんですよねぇ~」
「それはどして?」
「だって、投票ってぶっちゃけ、誰に入れたかなんて分からないじゃないですかぁー? だから、私と妹さんが先輩を支持しても、操れる票なんて一年の半分くらいだと思うんですよ。でも、実際に殆どの一年が先輩に入れたって事は……案外、先輩のスピーチが一年生に響いたのかも知れませんよぉ~? つまり、私と妹さんの事は『きっかけ』に過ぎず、当選したのは先輩の『実力』って事ですよ♪
それに――」
「お兄ちゃん、ただいまー」
「――あ、妹さん帰って来ちゃいましたねぇ~♪」
「え! もう、そんな時間なの!?」
(てか、姉ヶ崎の話によるとコイツってウチの妹と仲が宜しくないんじゃ――)
ガチャ ← 安藤くんの部屋のドアが開く音
「お兄ちゃん? 玄関に靴があったけど、誰か……きて――」
「あ、どうもぉ~♪ 勝手にお邪魔してまぁーす。みたいな?」
「――ねぇ、お兄ちゃん……これはどういうことなのかなー?」 ニコニコ♪
「ハハ、お邪魔されちゃったよ……み、みたいなぁ~?」
「 はぁ? 」
「はい、すみません! なんか、お見舞いに来てくれたそうです!」
(こ、こえぇええええええええええええええ!?!?!?!? こんなマジ切れの妹の反応初めてなんですけどぉおお!?)
「キャハハ! 先輩チョー弱くてマジでウケるんですけどぉ~♪ てか、私は……『
「あ、すみません。私は『
「……はぁ?」
「……はい?」
……シーン
「…………ou」
(何この空気……)
「確かに~♪ これ以上お邪魔しても『
「お、おう……見舞いありがとうな」
「うん、もう遅いから『
「はぁーい。先輩、次は『
バタン……
「え……何? お前らってそんなに仲悪かったの?」
「別にー? ただ……お兄ちゃん、あの子には気を付けた方がいいよ」
「お、おう……そうか」
(そう言えば、当選したのは俺の実力って言ってたけど――あの時、何か言おうとしていたよな……何を言うつもりだったんだろう?)
「あーあ、いいとこだったのに邪魔が入ったなぁ~」
(先輩……安心してください。当選したのは先輩の実力ですよ♪
だって、先輩のスピーチを聞くまでは――
『安藤先輩には絶対に投票しないかなぁ~?』
――って、一年の皆に言うつもりだったんですから……)
「先輩のスピーチは私の心に、ちゃんと響いたんですよぉ~フフ♪」
【次回予告】
「皆、いつも応援してくれてありがとう! 『何故かの』で最も腹黒くないと有名な委員長よ。
さーて、次回の『何故かの』は?」
次回、何故かの 「夢」 よろしくお願いします!
「じゃあ、じゃんけんを始めるわよ? 出す手は決まった? もちろん、私は決めたわ。いくわよ……って、またこの恥ずかしいセリフを言わないといけないのよね……わ、わかってるわよ! 言うわよ! 言えばいいんでしょう!?
コホン……皆、良いかしら? じゃあ、行くわよ…………ペタペタぺたりん♪ じゃん・けん・ポン♪」
【グー】
「今回は勝てたかしら? フフ♪」
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