第163話「自由意志」


「つまり……生徒会の引継ぎが面倒だから、俺のお見舞いを理由に生徒会の引継ぎをサボってきたと言う事か?」

「ちぃ~がぁ~い~まーすよぉ~っ! だから、そもそも生徒会の引継ぎなんて雑務は石田先輩一人いれば良くないですか!? わざわざ、一人で十分なのに私とか要らないですよね? だって実際に引継ぎなんて言ってもただの書類整理で私手持ち無沙汰でしたしぃ~? だから、引継ぎは石田先輩にお願いして押し付けて私は先輩のお見舞いに来てあげたんですよぉ~?」

「はいはい……因みに、お見舞いって普通は何か見舞いの品を持ってくるもんだけど、姉ヶ崎は何か持って来てくれたのかな~?」

「うぐっ! そ、それはぁ~~」

「やっぱり、サボりの言い訳じゃねえか……」


(まったく、この後輩ちゃんとは違い、桃井さんなんかお見舞いに超特大級のメロンを二つも持って来てくれたというのに……)


「あ、そうだ! お見舞いは私の『可愛い笑顔キャピッ!』とかって、どうですかぁ~? えへへぇ~♪」

「妹と彼女で間に合ってます」 キリッ!

「はぁぁぁああああ!?!?!? ちょ、その返しマジでムカつくんですけどぉーっ!?」

「そんなこと言われてもな……」


(いや、マジで間に合っているし)


「はぁ~先輩ったらマジで枯れてますよねぇ~? じゃあ、代わりに――


 先輩が生徒会長選挙で当選できた『理由』なんて情報はどうですかぁー?」


「…………は? 何それ? 何で姉ヶ崎がそんな情報を持っているの?」

「だって、私お姉ちゃんの手伝いで選挙の集計手伝ってましたしぃ~? だから、投票の内訳を知ってても当然みたいなぁ~?」

「マジで? 本当なら、気になるけど……」


(実際、俺があの選挙でギリギリだとは言え、いきなりあそこまで支持率が急激に増えたのは少し気になっていたんだよな)


「じゃあ、特別に教えちゃいますねぇ~♪」


(まぁ、本当はこういう情報って他の人には言っちゃいけない決まりなんだけどぉー? これはお見舞いの品の代わりの情報だからセーフでオッケー♪ みたいなぁ~?)


「先輩が選挙で勝てた勝因はぁ~? ぶっちゃけ、一年生の票を先輩がほぼ独占したからですねぇ♪」

「はい!? お、俺が一年の票をほぼ独占してたぁあ!?」

「そうですよぉ~? だって、一年生の投票の九割は先輩だったみたいなぁ~?」

「え……な、何で俺にそんな一年の票が集中しているわけ? てか、それ本当なの?」

「本当ですよぉーっ! だって、お姉ちゃんが投票率をまとめたのを、ちゃんとこの目で確認しましたもん!」

「でも、俺だけに一年の票が集中してたって言われてもな……」


(てか、一学年だけそんなに投票先が偏るものか? 他の二年、三年の投票の割合はどうなってたんだよ)


「そうだ! ちょっと、紙にその投票の割合見たいなの書ける?」

「いいですよぉ~♪ こう見えても実は私って記憶力には自信があるみたいなぁ~? えっへんキャピッ!

「へぇーソウナンダー凄いネー」 ← 棒読み


(そう言われると逆に不安になるのは何故だろう……でも、一見ふざけているように見えるが後輩ちゃんって、実は桃井さんと同じタイプで根は『しっかり』……いや『ちゃっかり?』してそうだし大丈夫か?)


「ん~~まぁ、こんな感じでしたかねぇ~♪」

「どれどれ……」




☆生徒会長選挙の投票内訳☆


【安藤先輩】

 150票(一年生 108票 二年生 20票 三年生 22票)


【朝倉先輩】

 124票(一年生 4票 二年生 56票 三年生 64票)


【石田先輩】

 82票(一年生 8票 二年生 40票 三年生 34票)




「こんな細かく覚えているの!?」


(マジで!? 大雑把な数字でよかったのに、ここまで細かい数字も覚えているとか、完全記憶能力とかの持ち主かよ!)


「キャハハハ! もう、先輩ったらそんなわけ無いじゃないですかぁ~、実はお姉ちゃんが書いた内訳をスマホのカメラで保存してたんで、カンニングしちゃいました♪

 あ、記憶能力に自信があるって言うのはちょっとした冗談です。テヘキャピッ!

「なんだ。そう言うことか……一瞬、マジで信じちゃったよ」


(あれ? でも、こいつこれを書いている時にスマホなんて見てたっけ……? まぁ、いいか)


「でも、実際に数字にすると凄くないですかぁ~? 正直、一年生のが無いと先輩ボロ負けなんですよぉー?」

「確かに……これはすげぇな」


(いや、むしろ異常じゃね? 二年、三年の投票率は何だか事前の支持率と比べると納得がいく……しかし、一年の投票だけは説明が付かないだろ。だって、俺のスピーチ前の支持率は20%も無かったんだ。それなのに9割もの生徒が俺に投票するか? 一応は投票前のスピーチの効果とも言えなくはないが……それなら、二年と三年の投票率も高くないと説明が付かない)


「…………おい、姉ヶ崎。この一年の投票って、何か裏があるだろ?」

「アハキャピッ! やっぱり、気付きましたぁ~? あ! でも、別に不正をしていたとかじゃないんで心配しなくても大丈夫ですよぉ~♪」

「不正じゃない……」


(そういえば、いつかの道場破りの時に委員長が――)



『え、私は選挙のルールは守っているわよ? 生徒会が決めたルールは「賭け事や脅迫による投票の強制を禁ずる」であって、私が約束させたのはあくまで「安藤くんを支持すること」でしょう? だから……もし、彼らが「安藤くんを支持」した上で、自分の「自由意志」により「誰」を選んでも私はとがめるつもりは無いわよ? それで、もし投票したのが「安藤くん」であってもそれは彼らの「自由意志」だからルールを破っているとは言えないわねぇ~?』



(――って、言ってたな)


「例えば……一年をまとめている誰かがいて、そいつが『俺』を支持したとする。そしたら、偶然に一年生の殆どが自分の『自由意志』で『俺』に投票した……ってとこか?」

「…………わぁ~、本当に驚きました。もしかして、先輩って結構……頭キレる系男子! 見たいなぁ~?」

「ば、バカ……そんなんじゃねぇよ。偶然、似たような事を言ってた奴を知っていただけだし……」

「アハハ! またまたぁ~、そんな謙遜しないでくださいよぉ~♪」


(ヤバイ……この先輩思ったより全然面白いかも♪ まったく、お姉ちゃんも見る目が無いよねぇ~? だって、朝倉先輩とか石田先輩みたいな人が生徒会長なんて全然、面白くないでしょ? それに比べて、先輩なら……フフ、期待してますねぇ? セーンパイキャピッ!





【次回予告】


「皆、いつも応援してくれてありがとう! 委員長よ。

 突然だけど、今日から次回予告はタイトルだけになるわ。でも、安心して!

 なんと、次回予告がタイトルだけになる代わりに……

 今回から! 次回予告の後に私と『じゃんけん』ができるわ! だから、今のうちに出す『手』を考えておいてねキャピッ!

 さーて、次回の『何故かの』は?」


次回、何故かの 「派閥」 よろしくお願いします!



「じゃあ、準備はできたかしら? 出す手は決まった? もちろん、私は決めたわよ? いくわよ……え、カンペ? 何よこのセリフを読んでじゃんけんすればいいの? って、何よこれ! こ、こんなセリフを言わなきゃいけないの!? ふざけるんじゃ――え? 人気投票4位の委員長さんにしかできない仕事……? ふ、ふぅ~~ん……そこまで言うのなら仕方ないわね! わ、わかったわよ……言えばいいんでしょう!

 コホン……皆、良いかしら? じゃあ、行くわよ…………ペタペタぺたりん♪  じゃん・けん・ポン♪」 


















【パー】

         

「勝てたらいいことあるかもしれないわよ? フフ♪」


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