第134話「国会中継」



「…………」 パラパラ

「…………」 パラパラ


(うーん、久しぶりに朝倉さんの部屋に来たというのに、結局はいつもと同じで二人してラノベ読んでいるだけなんだよなぁ……)


(ワキャーッ! 安藤くんが貸してくれたこのなろう小説『硬いのは嫌なんで、攻撃力に極振りします』めちゃくちゃ面白いわね! 主人公の破王キルムちゃんも可愛いし、バトルも私好みの主人公無双モノだから面白すぎてページをめくる手が止まらないわ!)


(…………ま、朝倉さんが幸せそうだしいいか)


「…………」 ペラ


(あ、気付いたら俺の読んでたラノベ『ハゲロン(毛)』読み終わっちゃったよ……うーん、今日は持って来たラノベこれと朝倉さんに貸したやつだけ出し、他に読むもの無くなっちゃったなー)


『えー、では次に内閣総理大臣』


(お? 何かと思ったらテレビか、ふーん、今ちょうど参議院決算の国会生中継してるんだ……よし、暇だし朝倉さんが読み終わるまでこれでも見てるか)



 30分後



『えー、学園の理事長とは個人的なつながりは無く――』


「…………」 

「…………」


(ラノベを読み終わって気が付いたら、いつの間にか安藤くんが国会中継をガン見してるのだけど……集中して見ているみたいだし、話しかけないほうがいいかしら?)


「…………」 じー ←テレビを見てる

「…………」 じー ←安藤くんを見てる


(なんかさっきから、話が学園がどうこうとか献金がどうこうとか何を言ってるのか全然わかんねぇな……てかこれ決算報告の話題は何処行ったんだ?)

 

(国会中継を真剣に見てる安藤くんカッコいい! 流石は安藤くん! きっと、自分が生徒会に入る為、政治に関心を持ち始めて真剣になって国会中継を見ているのね。確かに今の世論は献金問題とか、いろいろあってごちゃごちゃしているから、真剣に見てしまうのも無理ないわね!)


(お! 総理大臣が水を飲んだ! すげぇ……あんな皆に見られその上生中継もされている壇上で発言を一旦中止しながら、台の上にある無駄にでかい水差しを手にとってコップに水を注ぎ堂々と落ち着いた表情で水を飲むその姿……流石は総理大臣は肝が据わってるぜ! いやぁ~もし、あれが俺だったら、生中継されている国会の中で堂々と水を飲むとか絶対に無理だもん、てかなんであの水差しあんなにでかいんだ?)


(流石は安藤くん! 今の矢部総理の発言に反応するとは流石ね! 確かに、今の矢部総理の返しは見事だったわ……ほら、野党の野次も今のでピッタリ止んだわね)


(おお! あれは麻生太さんじゃないか! すげぇえ、麻生太さんが総理と談笑してる! いやぁ~麻生太さんって言ったら自分からサブカルチャー好きを公言してくれる政治家だから、やっぱり親近感湧いちゃうよね)


(やっぱり、安藤くん流石ね! 今一瞬だけ映った麻生太さんと矢部総理の笑顔……そこで反応するとは、安藤くんったら結構政治経済を調べているのね! そう、今の流れで野党はこれ以上は追求が出来ない流れになったわ。それでの、麻生太さんと矢部総理の短い会話での笑顔……それこそ、この長い問題追求の流れが変わった瞬間の合図ですものね!)


「…………」 じー ←テレビを見てる

「…………」 じー ←安藤くんを見てる


(お、今度は国会内全体を映したな……そうだ! 国会中継ってこんなつまんないんだし、この中に寝てる議員絶対にいるだろ! よし、そいつを探そう……あ、いた! アイツ寝てる! 名前も顔も知らないけど、あの議員絶対に寝てるって!)


(さささ、流石は安藤くん!? 場面が議事堂全体を映したシーンに変わっても今までの真剣な表情を崩さず――いや、むしろより真剣に画面を食い入るように見始めたわ! きっと、これはこの全体を映している間に一人でも多くの議員の顔を覚えようとしているのね!)


『以上で中継を終わりに――』


「ふぅー……結局、最後まで見ちゃったね」

「ウフフ、安藤くんったら随分真剣に見ていたわよね?」

「うん、国会中継って意外と面白いね」

「そうね。私も見ていて楽しかったわ♪」


(いやー、国会議員がつけているバッジって、ポジモンに出てくるジムバッジみたいでカッコいいよね)


(キャーッ! 安藤くんカッコいい! 私の彼氏ってどうしてこんなにカッコいいのかしら! キャァーー♪)




「…………」 じーー


(ご飯が出来たから呼ぼうとしたけど、せっかく部屋で二人きりなのに……あの二人は何で国会中継なんか見て盛り上がっているのかしら?)






【次回予告】


「皆、いつも応援してくれてありがとう! 委員長よ。

 さーて、次回の『何故かの』は?」


結局、久しぶりに彼女の部屋に行ったにも関わらず、まともに手も出せなかった安藤くん。

彼は自分のヘタレさに呆れ、朝倉さんと『ある約束』を決心するのだが……


次回、何故かの 「すれ違う約束」 よろしくお願いします!


「フッ、仕方ないな……マイ・スゥイート・プリティーハニー☆」


* 次回予告の内容は嘘予告になる可能性もあります。

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