第128話「調査結果」



『では、以上で本日の公開討論会を終了します。立候補者の方はお疲れ様でした。この後は休憩をはさみまして、各立候補者の「演説」がありますので、それまでご休憩ください』



「いやぁ……やっと、終わったな。おう、委員長! なんとかやりきったぜ!」

「安藤くん、お疲れ様。まぁ、中々のできだったんじゃないかしら?」

「しかし、流石は朝倉さんだったなー。いや、俺も意外と奮闘したと思うんだけど、結局は最後全部、朝倉さんに持っていかれちゃったもんな」

「そうね。最初朝倉さんが中々議論に入らなくって疑問に思っていたのだけど、きっとあれは安藤くんと石田くんの意見が出揃うのをある程度待っていたのね。最初に相手の意見を言わせて、相手が出してきた意見の欠点を突き、その上で自分のよりいい意見を出す。あれで、場の空気はほぼ朝倉さんが握ったも同然だったわ」

「ああ、それにあの後も学食を放課後も開放する意見や、学食としてでなくカフェテリアの導入とか、結構斬新的な意見を出してきたからな」

「まさか、あれほどの隠し玉を持っていたとはね……これは私の予想だけど、多分今回の朝倉さんの活躍には生徒会長がかなり手を貸している気がするわね」

「まぁ、そうだろうな。事前に議論のお題を知っていたわけではないと思うけど、生徒会長が討論会の進め方や、先に相手に意見を言わせるとか、その手の『戦い方』を伝授されたんだと思う。だって、朝倉さんならそれで十分だろ?」

「そうね。それらの必要最低限の『戦い方』さえ教われば朝倉さんほどの人ならあとは自分で考えて作戦を練れるでしょうね……」

「あぁ……」


(朝倉さんって基本スペックはマジで高いからな。そこに生徒会長の知識と経験が加われば、討論会が朝倉さんの独壇場になるの仕方が無い。

 結局、あの後は朝倉さんが次々とアイディアをだして石田を叩きのめし、そして俺も自分の意見が結局は屁理屈だらけなので、根拠と経験に基づいた朝倉さんの意見には敵わず、討論会は朝倉さんの大勝利で終わったんだからな。

 だからこそ――)


「ほら、安藤くん。今の討論会を見た後の支持率が出たわよ」

「お、どれどれ?」




【生徒会選挙 支持率調査結果】


① 石田くん 30%(前回57% 支持率27%ダウン!)


② 朝倉さん 64%(前回43% 支持率21%アップ!)


③ 安藤くん  6%(前回0% 支持率6%アップ!)




「よっしゃあ!」

「計算通りね!」


「「イェ~イ!」」 パッシーン! ブルン、ブルン! ←ハイタッチの音


「委員長、作戦通りだな」

「フフ、そうね」


(そう、これでいいのだ! 今回、俺達がこの討論会で狙ったのはズバリ石田の支持率を下げる事のみ! つまり、俺と委員長の作戦では『討論会で石田を徹底的に攻撃する』だったのだ。しかし、それだけだと俺が悪役みたいになってしまうので、その後に朝倉さんが討論会を完全に仕切ることで、俺も石田と一緒に倒される形となり最後は朝倉さんの大勝利で終る……そこまでが俺と委員長の書いた今回の筋書きだったのだ。

 だって、俺は討論会でどのような活躍をしても元々の支持率が0なので失う支持率が無い。逆に石田は下手に支持率が高かった為、討論会で下手を打てば一気に支持率は下がるだろう。そして、俺が石田を討論会で屁理屈でもいいので言い負かす事により、石田にヘイトを集めていた奴らの支持が少しでももらえるという計算だ。

 さらに、この作戦の胆は朝倉さんが最後に大勝利することで多くの支持率が朝倉さんに入るという点だ。俺達の一番理想の勝利図は朝倉さんが圧倒的な支持率を得て当選し、支持率を奪われた石田の支持率を俺が最後の最後に上回ると言う図だ。

 そして、この結果を見れば支持率が下がったのは石田のみで俺と朝倉さんは支持率が上がっている。うん、これほどまでに無い結果だな)


「安藤くん、でも大変なのはここからよ? 下がったとは言ってもそれでも石田くんの支持率は30%以上あるわ。ここからは急激な支持率の低下は望めないし、安藤くんの支持率も10%にすら届いてないんだからね?」

「分かってる……まずは支持率10%くらいが目標か? 最終的に石田が下がっても20%きる事は無いだろうから……俺も20%台の支持率を取らなきゃな」

「選挙なのに、目標の支持率が20%台なんて……一体、私達は何処の野党よ」

「ぼっちの『ぼっち党』だよ! あれな、俺らの党とかテレビの開票結果一覧で『その他』に含まれるやつだから」

「その言い方止めてくれる!? 何だか、私まで『ぼっち』みたいでしょ!」


(しかし、今回の作戦。一番の不安は朝倉さんが討論会でちゃんと活躍できるかって所だったんだが、普通に楽勝だったな。やっぱり、あの生徒会長と朝倉さんのコンビって反則級のチートだよなぁ……)


「あ! 委員長。それより、さっきアナウンスで言ってた『各立候補者の演説』って何? 俺、何も聞いて無いんだけど……」

「はぁ? 何を言っているのよ。ちゃんと、今日の『公開討論会』の後にも数十分程度だけど、各立候補者にスペースが与えられ、その場で『演説』をする予定だって私は伝えたはずよ」

「いつだよ! 俺、マジで初耳だけど?」

「ええ? そんな筈は……だって、生徒会からプリントが配られて、その時に安藤くんがいなかったから、山田にプリントと伝言を――……ん?」

「や、山田……? え、それいつよ?」

「確か……この前の金曜日ね」

「…………」


(それって、確か俺が生徒会長の為にスネークしてた日じゃね?)


「てか、その日って山田、仕事をサボって校庭でサッカーしてた日じゃん」

「………………」


「「や、山田ぁあああああああああああああああああああ!」」







【次回予告】


「皆、いつも応援してくれてありがとう! 委員長よ。

 さーて、次回の『何故かの』は?」


やっと『討論会』が終わったと思ったら今度は『演説』!?

しかも、安藤くんの演説に人が誰も来ない! 

危機感を覚えた委員長は宣伝役としてある人物に白羽の矢を立てるのだが……


次回、何故かの 「選挙カー」 よろしくお願いします!


「うーん、心当たりのある人物が一人だけいるような気が……」


* 次回予告の内容は嘘予告になる可能性もあります。





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