第126話「屁理屈」




『ななな、なんと! 安藤くん、ここに来て「学校の出入りを自由にする」発言がきました! これは公約と思っても良いのでしょうか!?』


「公約……?」

「おい、貴様! 自分が何を言っているのか分かっているのか? これは討論会と言っても僕達の発言に嘘は許されない! つまり、もしも貴様が当選したら、お前はさっきの発言通り『学校の出入りを自由にする』という約束を守る義務が生じるんだぞ!」

「別によくね? むしろ、学校の出入りを自由にするくらいでそんな騒ぐ事かよ?」

「大アリだ! そもそも、学校を出入り自由にしたら防犯面での危険性や生徒の怪我、サボりなどにも繋がるだろう! そもそも、生徒会長に当選しても学校の校則を変えるような政策は基本取れない。できもしない事を公約として掲げるのはルール違反だ!」


『そうですね……インテリメガ――じゃなくて、石田くんの言うとおり生徒会長選挙中には立候補者の公の発言は公約として扱われ当選後にはそれを順守する義務が生じます。

 これは歴代生徒会長の中で、過去に口だけの公約を掲げて生徒会長になった「管山 鳩夫」という生徒が当選後全ての公約を守らなかった為にできたルールです。ですので、安藤くんの発言は公約と形になるわけなんですが、安藤くんはその公約を守るつもりはあるのでしょうか?』


(なるほど、だから石田はあんなに激怒していたのか……でも、これって結局は当選しなければ何を言ってもいいってことだよね? そもそも、現時点で俺に当選の確率は限りなく低く、目指すは朝倉さんが当選して俺がその生徒会に入れてもらうこと! その為に俺に出来る事は石田の支持率を下げる事……ならば、どうせ当選しないだろうし、嘘八百言ってやるぜ!)


「もちろん、出来る限り努力する所存です!」


「「「うぉおおおおおおおおおおおおおおお!」」」 ←観客の生徒達


「貴様ぁああ! 何を言っているのか本当に分かっているのか!? そもそも、生徒会長に学校の校則を変える権限なんて無いんだぞ!」

「おいおい、石田さんよ……でも、俺の公約にこれだけ賛成してくれる生徒がいるんだ。つまり、皆も俺の公約を望んでいると言う事にならないか? 生徒がそう思っているのなら、それを無理でも実行しようとするのが生徒会長って奴なんじゃないだろうか? それとも、お前は生徒会長になっても『どうせ無理だから』というつまらない理由で何も行動を起こさないつもりなのか? 俺は違うぞ! 例え、お前が言うように生徒会長に校則を変える権限が無くても、それが出来るように学校に訴えかけて見せようじゃないか!

 だって、無理かもしれないが『出来るかも』しれないだろう! 生徒会長になると言うのなら『出来ない』じゃなく『出来るかも』で行動しようぜ! だって、それが生徒の代表ってことなんじゃないのかよ!」

「ぐぅぬぬ……」


『これはなんと言う事でしょう!? この展開を誰が予想したのか……まさか、あの石田くんがどこぞの馬の骨とも知らぬ生徒に言い負かされています! 聞いてください、この観客の反応を!』


「「「うぉおおおおおおおおおおおおおおお!」」」 ←観客の生徒達


「なんかすげえぞ! 誰だか忘れたけど、あの石田を言い負かしてる!」

「誰だっけアイツ! あのインテリ石頭が何も言い返せてないなんて初めて見たぜ!」

「確か……朝倉さんと付き合っているって噂の……なんて名前だ? とにかくすげえ!」


『これはこれは予想外の展開です! 石田くんはこのまま言い負かされてしまうのか? まさかの討論会のダークホース! その名は――な、何でしたっけ?』


「安藤だよ! へっ、どうだ石田……? 『ぼっち』ってのは元々何かと理由をつけて逃げるのが上手いから、屁理屈を考えさせたら最強の生き物なんだ。何せ周りに誰もいないから、戦う相手は常に『自分』と言う名の『現実』だ!」


(お前なんか、俺が普段から戦っている『朝倉さんに好意を寄せるリア充の妬みと視線』に比べたらスライム以下だ! こんな討論会なんて俺の屁理屈で片付けてやるよ!)


「し、しかし! 学校の出入りを自由にするということは不審者が学内に入る危険性も上がる! さらに、外に出た生徒が事故に遭う可能性もあるんだぞ!」

「そんなの昼休みの間だけ出入り自由にすればいいだろ? それに、朝の登校時間や下校時間も学校が基本出入り自由じゃないか。なら、昼休みだけ出入り自由にしてもたいしてかわらねえだろ?」

「それで、実際に問題が起こったらどうするつもりだ!」

「そんなことを言ったらキリが無いだろ。事故や不審者の侵入は朝の登校時間だって起こりうるんだからな。むしろ、俺達がやるべきは生徒が危険だから『規制』するんじゃなく、ウチの学校にそんな危険を犯す生徒は居ないと『信頼』してやることじゃないだろうか!」


「「「うぉおおおおおおおおおおおおおおお!」」」 ←観客の生徒達


「くっ……どこまでも理想論ばっかり言いおって、これじゃ話にならない!」



『さてさて、意外な展開になってますが、ここでもう一人の参加者の朝倉さんはどのような意見をお持ちですか?』


「へ、私!」



「くっ…………」


(今の状況、会場は僕の『開放反対派』よりも、安藤(アイツ)の『開放賛成派』が圧倒的に有利……しかし、もしも彼女が僕と同じ『開放反対派』に回れば僕にも反撃のチャンスはある!

 そして、反対派の意見であっても……)


「朝倉さん……」


(しまった! もしも朝倉さんが『開放反対派』の意見を言うとせっかく傾いた会場の空気が逃げてしまう……しかし、それで俺の『開放賛成派』の意見を言ってしっまうと、それはそれで朝倉さんの公約と言う事になり、それは後々面倒な事になる! 何たって、朝倉さんは俺と違ってガチで生徒会長になってもらわないと困るからだ。

 つまり、この場面、朝倉さんは『反対派』の意見しか言えない!)


「私は――」


「「…………」」


((どっちだ!))


「学校を開放する必要性は無いと思うわ」

「そ、そうか!」

「くっ……」


(これで、流れが石田の意見に……)


「でも、石田くんの生徒の意見を切り捨てるのも、同じ立候補者としてどうかと思うわね」

「何?」

「お?」


「そもそも、皆議題の根本から話がずれているのよ。私達が今話し合うべきはお昼休みに学校を出入り自由にするべきか? では無く『学食が高い』という問題一点だけよ」


「「あ、そういえば……」」






【次回予告】


「皆、いつも応援してくれてありがとう! 委員長よ。

 さーて、次回の『何故かの』は?」


「何故かの」が始まってから終始ポンコツ、ポンコツと呼ばれていた彼女がついにその実力を発揮する!

「学校一の美少女」と呼ばれる彼女の実力はいかにスカ!

「完璧美少女」による話術が討論会の会場を揺るがすスカ!


次回、何故かの 「ワンコイン」 を見てくださいスカ!


「安藤くん、やっておしまい!」


* 次回予告の内容は嘘予告になる可能性もあります。



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