第118話「二人の『ぼっち』」




「実はさっきチラッと表紙が見えたんだけど、藤林さんが読んでたのラノベだよね?」

「あ……うん、分かっちゃった?」

「まぁ……ね。ラノベは俺もよく読むから、何読んでたの? もしかしたら俺も知っているタイトルかも?」

「うーん……ライトノベルって言っても私が読むのって女性向けだから、安藤くんは知らないと思うなぁ……『ラクエル・クララックの最悪』ってタイトルなんだけど――」

「あ、それ知ってる! てか、この前、俺も読んだよ!」

「何で知っているの!? てか、安藤くんも読んだの!」

「うんうん! 確か『なろう』の作品だよね? ストーリーは主人公の伯爵令嬢は家が決めた許婚の騎士と結婚する事になるんだけど、主人公はその騎士が大っ嫌いでその騎士に嫌われて婚約破棄してもらおうとして、いろいろな作戦を立てるんだけど、何故か主人公がやることなすこと全て空回りして逆にその騎士様に惚れられちゃう話だよね?」

「そうそう! え、安藤くんってこういうのも読むんだ……私、こういう女性向けのラノベの話って周りに出来る人いなかったからビックリしちゃった……」

「まぁ、俺って『なろう』の作品なら結構ジャンル問わずに読んでいるからね。でも、女性向けのラノベは話せる相手がいなかったから、俺も藤林さんとこの手の話が出来るのは嬉しいな」


(一応、ラノベの話なら基本は朝倉さんとするんだけど、朝倉さんはあれでゴリゴリの『俺TUEEE』系の作品がメインだから、女性向けは本当に話せる人がいないんだよね)


「え、因みに安藤くんは他にどんな作品を読むの?」

「えーと、最近読んだのだと『公爵令嬢のお品書き』とか『天丼・カツ丼・親子ドーン!』かな? 後は『強欲で謙虚をモットーに生きております!』とかは凄い好きだね」

「嘘!? それ、私も凄い好きな作品だよ。他のも全部読んでる! え、じゃあ、強欲の最新刊はもう買った?」

「昨日買って既に読み終えたね!」

「早いよ! 発売日昨日だよね!?」



 一時間後


「さて、やっと選挙活動の用事が一段落付いたな。確か、藤林は図書室で待っていると言っていたが……まったく、帰っていいと言ったのにアイツはいつも待つからな。仕方ない、待たせてしまったし、帰りに何か奢ってやっても――」


「それでねー」

「うんうん」


「――ん?」


(図書室から藤林の話し声? 中で誰かと喋っているのか?)



「ふぅー、やっと! 今日の予定が全部片付いたわ! 安藤くん、図書室で待ちくたびれてなければいいけど……でも、安藤くんのことだからきっと一人でラノベを読むのに夢中になっているわよね!」

「え、君は……」

「あら、石田くんじゃない? こんにちは、石田くんも図書室に用なの?」

「あ、ああ……僕は待ち合わせでね。この前会っただろう? 藤林とここで待ち合わせしているんだ。そういう、朝倉さんもかな?」

「ええ、私もここで安藤くんと待ち合わせしているのよ」

「そうか……偶然だな」

「そうね。それで、石田くんは中に入らないのかしら?」

「いや、僕もちょうど今来た所でこれから入るところだったんだ……」

「そう、じゃあ開けるわね」

「ああ、かまわないよ」


(中の話し声といい、なんか嫌な予感がするな……)


「安藤く~ん♪」


 ガラガラ~



「だから、何で直ぐに一巻で打ち切っちゃうの!? って、話なんだよ!」

「分かる! 確かに女性向けの小説は売上げが立ちにくいから打ち切りラインがシビアなのは分かるけど……それでも、せめて! せめて三巻までは刊行して様子を見るべきだと思うんだよね!」

「そう! ホントにそれ! やっぱり、安藤くん分かっている! 一巻で評判が良くないと打ち切られるからって最近は一巻に複数のキャラを登場させる展開が多いけど、それだと一人一人のキャラを掘り下げられないから、内容が薄っぺら苦なっちゃうんだよ!」

「確かに! いやぁ~藤林さんも分かってるね! 一巻の登場人物は多くても五人までにして欲しいよね。それで物語のスポットは二人くらいに押さえて一巻だけでもメインキャラの話をちゃんと掘り下げて欲しいんだよ!」

「それそれ! 恋愛ジャンルなんだからキャラを出す事に意識しすぎてメインの恋愛をおろそかにするとか本当に……もう、なんなの!? って感じだよ!」

「分かるわ……あ、朝倉さん! 用事はもう終ったんだね」

「え? あ、石田くん! もう、来てたのなら声かけてよ」


「え、ええ…………」

「あ、うん…………」


「「あれ、二人とも黙っちゃってどうしたの?」」


(変な朝倉さん)


(変な石田くん)


「…………」

「…………」


((え、何この状況……?))







【次回予告】


「皆、いつも応援してくれてありがとう! 委員長よ。

 さーて、次回の『何故かの』は?」


「朝倉さん、練乳を飲む」

「安藤くん『おっぱい』に眠る」

「石田くん、土に還る」


のどれか一本でお送りいたします。次回も『何故かの』をよろしくお願いします!


「朝倉さん、もしかして俺が藤林さんを好きになるとか思っている?」


* 次回予告の内容は嘘予告になる可能性もあります。

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