第114話「朝倉さん、襲来」




「安藤くーん? 何処かにいるのー?」 ペッタン、ペッタン ←足音 



―理科室―


「何で貴方まで隠れていますの!」 ヒソヒソ

「いやいや、良く考えて見てよ。生徒会長……もしも、朝倉さんが俺を見つけるとするじゃん?」

「え、ええ……」

「聡明な朝倉さんのことだ。きっと、朝倉さんは会長が山田の被害にあった事を知っているだろう。そして、そこに俺がいたことも知っている可能性が高い……すると、何やかんやで俺と会長が一緒に行動している事を考えていてもおかしくないんだ」

「いや、まさか……朝倉さんでもそこまでは――」



「おかしいわね~他の生徒会の人に聞いた話だと、生徒会長が不幸な事故にあったと聞いて、近くに安藤くんもいたらしいから……きっと、何やかんやあって二人は一緒に行動している可能性が高いと思ったのだけど、安藤くんのニオイも会長の気配も無いわね?」



「…………ね?」

「ヒィイイッ!? き、気づいていますわ!」 ← 小声です 

「会長、確かに朝倉さんは基本はポンコツ気質の天然だけど、あれで基本スペックは高いんだ。だから、朝倉さんの場合厄介なのは天然でそのスペックの高さを活かして自由に暴走している時……つまり、今のような状態だ」

「貴方、彼氏の癖に自分の彼女に酷い言いようですわね……しかし、別に貴方は見つかっても、私と一緒にいることさえバレなければいいのですから隠れる必要は無いですわよね?」

「うーーん、そうとも言えないんだよな……」

「どういうことですの?」

「つまり――」



「スンスン、クンクン……あら? 何故かとても近くから安藤くんの気配ニオイがするわね?」



「こういう時の朝倉さんは無駄に感が良いんだ」

「それは一体、どういう理屈ですの!?」 ← 小声です


(いや~思い返せば初めて朝倉さんを俺の部屋に招待した時とかも真っ先に気付いて欲しくない本棚の下段とかに興味を持ったからな……何故か朝倉さんは人の気付いて欲しくない時に感が働く節がある)


「そして、会長。もしも、だけど朝倉さんが偶然隠れている俺達を見たら

どう思う?」

「ど、どう思うって……」


(今の私達の状況は――)



①人気のいない教室で二人っきり


②彼女に隠れて他の女と密会


③しかも、その女はシャワー後で体操着に着替えている


「あ、アウト……ですわね」

「でしょ?」



「クンクン……スンスン……ふむ! この理科室が怪しいわね!」



「って、ヒィィイイイイイイッ! つつ、ついにバレましたわ!」 ← 小声です

「落ち着いて、会長! とと、とりあえず何処かに隠れよう……」

「隠れるって何処に――」

「こっち!」


 ガラガラ~ ← 理科室のドアが開く音


「安藤くーん? いるのー?」



「「…………」」 バクン! バクン! ← 心臓の音



「うーん、いないわ。おかしいわね? 確かに、安藤くんの気配の残り香はするのだけど……もしかして、安藤くんが私から逃げている?」



「「っ!?」」 ビクッ!



「って……まさかねぇ~だって、安藤くんが私から逃げる理由なんて無いもの!」



「「ホッ……」」 ← ロッカーの中



(てか、生徒会長である私が貴方みたいな男性とロッカーの中に二人っきりって、何故こんなことになってますの!?) ←アイコンタクトです


(仕方ないでしょ! あの状況で俺達二人が隠れられる場所なんてこの狭いロッカーくらいしかなかったんだから!) ←アイコンタクトです


(だとしても、隠れるのは私だけで貴方は堂々と教室にいれば良かったでしょうに!) 


(そんな事しても、朝倉さんにどうして隠れてたのかと問い詰められてゲロるのがオチでしょ! むしろ、生徒会長の胸がこんなペッタペッタじゃなければこんな事にはならなかったんですからね!) 


(ああああ、貴方! ついにレディーに言ってはならない事を言いましたわね! もう、いっその事ここから飛び出して貴方の彼女にこの醜態をさらしてくれますわ!)


(バカ! 早まったマネはよすんだ!) ペタッ!


(――ッ!? み、みぃゃぁああああああ! あああ、貴方! どさくさにまぎれてどどど、何処を触っておりますの!?) 


(え、何処って……会長の『肩』を押さえてるだけだよ?) 


(か……肩ァァアアアア――ッ!? このボケナスですわ! あな、ああ、貴方が押さえつけているのは……も、もういいですわ! とにかくこの『手』をどけてくださいまし!) 


(え、でもそんな事したら……会長このロッカーから飛び出すつもりでしょ?) 


(しませんわよ! むしろ、もうそんなのどうでもいいレベルですわよ!? とにかく大人しくするので早くその手をどけなさいな!) 


(わ、分かった……まぁ、確かに俺も男だからいきなり女性である会長の体に触れるのは不可抗力とは言っても配慮が足りなかったな……) 


(配慮どころの話じゃないんですわよね……) 


(おい、生徒会長! それよりも、やっと朝倉さんが確認を終えてこの教室から出て行くみたいだぞ!) 


(本当ですか! これで、こんな場所から出れますわね!) 


*この会話は全てアイコンタクトです



「うーん……やっぱり、こんな所に安藤くんが隠れているなんて考えづらいし、私の気のせいかしら? はぁ……ここ最近は生徒会選挙の所為で放課後の安藤くんタイムが減っているから禁断症状でも出たのかしら? これは帰ったら、安藤くん成分を一杯補給しなきゃダメね!」



(…………)じー

(…………)ダラダラ……


(ツッコミどころはいろいろありますが……え? 帰ったらって、貴方達は同棲でもしているのですの?) 


(いやいや、ただいつも学校が終わったら、俺が朝倉さんの家におじゃましてるだけだから……それに、夜には自分の家に帰っているし何もやましい事はありませんよ?) 


(ふーーん? ですわね。でも、これで朝倉さんもここから出てくれて――) 



「じゃあ、最後にあのロッカーの中を確認してから帰るとするわ」



((はぁあああ!? 何で!?)) ビクッ!







【次回予告】


「皆、いつも応援してくれてありがとう! 委員長よ。

 さーて、次回の『何故かの』は?」


「ラノベとかでは鉄則よね♪」「しまったぁあああああああああああああああああ!」「このボケナスぅううううううううううううう!」


「大佐! 動けない! 指示をくれ」「当たってますわ! い、いろいろと!?」


「さぁ、開けるわよ――」


次回、何故かの 「フルボッコ」 よろしくお願いします!


「こう見えても、俺は視力が良いからな!」


* 次回予告の内容は嘘予告になる可能性もあります。

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