第112話「スネーク」




「…………」 キョロキョロ


(よし、出入り口は誰もいないな……)


「……こちら『ぼっちのスネーク』体育館前の廊下に潜入した。出入り口付近に他の生徒の気配無し……『ペッタンコ大佐』指示を頼む。どうぞ……」 ヒソヒソ


 スタスタスタ


「……こちら『ペッタンコ大佐』ですわ。案内ご苦労です。なら『ぼっちのスネーク』はそのまま前進し、先の曲がり角まで生徒がいないかを確認してくださいまし……どうぞですわ」 ヒソヒソ


「『ぼっちのスネーク』了解した。このまま潜入を続行する……」



(ああ……何で俺はこんな放課後の体育館前の廊下で体操服にブルマ姿の生徒会長を後ろに引き連れながら、他の生徒に見つからないようにコソコソと生徒会室に向かって移動しているんだろう……そうだ。原因は『山田』だ。


 始まりはアイツが選挙の仕事をサボって校庭で遊んでいたサッカーボールが偶然、近くを通りががった生徒会長にぶつかって生徒会長の制服に泥をつけた事が全ての始まりだった。

 山田は当然、生徒会長と一緒に居た他の生徒会の男子にフルボッコにされ、生徒会長は体育館のシャワーを借りて泥を洗い流す事にした。その間、生徒会長の制服は事務の職員さんが学校にある洗濯機で洗ってくれ、制服が乾くまで生徒会長は『体操着で十分ですわ』っと、言っていたのだが……

 問題は俺が事務の人から伝言を頼まれ、生徒会長が使っているシャワー室の扉の前に来た時に起こったのだ……)



回想


 コンコン ←シャワー室のドアを叩く音


「生徒会長~いますか? 事務の人達が洗濯してくれた制服は生徒会室に後で届けてくれるらしいんで……じゃあ、俺は失礼しますね」

「お、お待ちになって……ですわ!」

 

 ガチャ! ←シャワー室のドアが開く音


「うぉ! 生徒会長、何で出てきて……って体操着姿か……」

「ちょっと、何で少しガッカリしてますの! 朝倉さんに言いつけますわよ?」

「ヘイ、それは止めるんだ! マジで洒落にならない……」

「あら? これは面白い反応ですわ。もしも、私が『安藤くんってば、私の裸体を想像して興奮していたんですわ! およよ……』っと、朝倉さんに告げ口したらどうなる事でしょう?」

「別に言いたきゃ言ってもいいが、それを言った場合……生徒会長は怒りで我を忘れてグレムリンと化した朝倉さんに刺される可能性が高いけどいいの?」

「貴方の彼女ってそういうお人ですの!? てか、私が狙われるんですの!?」


(いや、だから洒落にならないって言ったじゃん……)


「それで、何で生徒会長はシャワー室から出てるんですか? 流石に中が脱衣所で既に体操着に着替えているとしても……男の俺が女子用のシャワー室の前に居続けるのは心臓に悪いんですが……」

「そ、それが……とある問題が発生したのですわ」

「問題? うーん……あ」

「き、気付きましたわね!?」


(なるほど……確かに生徒会長には『問題』が発生しているようだ。何故なら、俺の目の前にいる体操着姿の生徒会長にはBカップ程度ほどはあった『おっぱい』のふくらみが、忽然と姿を消していたのだから……)


「生徒会長……その見るも無残な『焼け野原』はどうしたんですか?」

「くっ……言うにこと書いて草も生えない平原って意味で『真っ平ら』とでも言いたいのですか! そうなんですね!? そもそも、胸のことなら貴方の彼女も大概でしょう!」

「てめぇ、バカ! ふざけんな! 朝倉さんも流石にそれよりは『ある』わ!」

「ば、バカ……後輩にこんな暴言を吐かれたのは初めての屈辱ですわ!」

「はぁ……てか、生徒会長。いつもの『アレ』はどうしたんですか?」


(ホント、今の生徒会長が体操着姿だから、余計に胸の部分の斜面の直角さが目立つんだよ。もう、見てるこっちが悲しくなるくらい……真っ平!)


「そ、それが……私がシャワーを浴びている間に事務の職員さんが汚れた制服を持って言ってくれたのですが、その時に脱衣所の掃除もついでにしてくれたみたいで……見つかると恥かしいからとゴミ箱の近くに隠していた『アレ』も誰かが捨てたゴミと間違われて捨てられてしまったみたいなのですわ……」

「マジかー……」


(そういえば職員さんに伝言を頼まれた時に『更衣室に変なゴミが大量に散らばってたわね? 何かしらあれ? 肩パッド?』って、呟いてたけど……それか)


「それで、生徒会長はその姿でどうするんですか? もし、誰かに見つかりでもしたら……」

「だから、それで困ってここから動けずにいたのですわよ! こうなったら、安藤くん! 貴方には私に協力してもらいますわよ!」

「協力?」


(協力って何をするんだ? あれか? 生徒会長の『おっぱい』が大きくなるまで揉めばいいのか?)


「いや……流石に俺には朝倉さんって彼女がいるのでそういう『協力』は……」

「貴方、一体何を想像してますの!? 違います! 貴方には私がここから誰にも見つからずに生徒会室にたどり着く為の道案内をして欲しいのですわ」

「道案内? つまり、人のいなさそうな道を探して生徒会長を誘導しろと?」

「そうですわ!」

「でも、何で生徒会室なんです?」

「そ、それは……生徒会室に行けば……ス、スペアの『アレ』があるから……です……わ」 モジモジ

「…………」


(何で生徒会室にそんなモンがあるんだよ! とか、聞くのはヤボなんだろうな~~)


「てか、そもそも俺が生徒会長の為にそんなことする理由あるんですか?」

「うなっ!」


(いや、だって俺と生徒会長って選挙の敵同士だよな? 敵が困っているのに助ける道理も無いんだよなー)


「そ、それは……わ、私が他の生徒に見つかって『胸』のヒミツがバレたら大変なことになりますわよ!」

「生徒会長がですよね?」

「いいえ、安藤くん。貴方もですわ……」

「え!?」

「覚えていますか? 先日の会話を?」

「ええ」



『俺の要求は簡単です。俺の選挙の邪魔をしないでください。そうすればこのヒミツは俺が一生守り通してみせます』

『本当……ですわね?』

『…………』 コクン



「私は貴方が秘密を漏らさない事を条件に貴方の選挙の邪魔をしない約束をしました……しかし、私の秘密が既に他の生徒に漏れた時点で私にはこの約束を守る理由は消滅しますわ」

「なんだと!? それとこれは話が別だろうが!」

「そんなの関係無いのです! 私の秘密がバレたら少なくても誰かを犠牲に巻き込まないと私の気がすまないのですわ! そして、先ほどの体操着の件も朝倉さんに報告して私の身もろとも貴方を巻き込んで自爆いたします!」

「そんなの横暴だぁああああああ!」

「オーホッホッホ! さぁ、安藤くん一緒に地獄に落ちたくなければ、この私の秘密を守る為に尽力するのですわ! オーホッホッホ!」 ペターンッ!



回想終り


「…………」


(てな、感じで結局生徒会長を生徒会室まで案内する事になったんだよな……)


「こら! 『ぼっちのスネーク』応答しなさい! さっさと先に進んで生徒が居ないか確認するのですわ!」 ペタペタ!

「生徒会長、分かったから肩を叩くのをやめてください……」


(仕方ない、ここはさっさと生徒会長を生徒会室まで送り届けるとするか……)







【次回予告】


「皆、いつも応援してくれてありがとう! 委員長よ。

 さーて、次回の『何故かの』は?」


ブルマの生徒会長を引き連れ、生徒会室へと向かう安藤くん。しかし、その先にある人物が立ちふさがる!

果たして二人は無事に生徒会室へたどり着けるのか?


次回、何故かの 「大盛り味噌ブタチャーシュー麺」 よろしくお願いします!


「ペタペタリンリンですわ!」 


* 次回予告の内容は嘘予告になる可能性もあります。

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