第107話「推薦人」
【生徒会長選挙 事前調査】
① 石田くん 57%
② 朝倉さん 43%
③ 安藤くん 0%(集計不可)
「…………」
「…………」
(勢いで生徒会長選挙に立候補したら彼女も立候補してた件……!)
「まさか、生徒会長の推薦で朝倉さんが生徒会長に立候補するなんて予想外だよ……」
「いやいやいやいや! 安藤くん、それは私のセリフなんだけど!? 私の方こそ、まさか安藤くんがトイレ行っている間に副会長と大喧嘩してその流れで、安藤くんが生徒会長に立候補するなんて、一体誰が予想できるのよ!」
(しかし、これって朝倉さんが選挙で勝った場合。俺と副会長の賭けはどうなるんだ?)
「フン、掲示板の前で何を言い争っているかと思えば……見苦しいな」
「ん? って、お前は……副会長!」
「ああ、彼が噂の副会長さんね」
「おい、貴様! 人を指で指すな。それに僕の名前は石田だ。人を呼ぶ時はちゃんと名前で呼べ。失礼だろ」
(何だこいつ……いちいち五月蝿い奴だな)
「何だこいつ……いちいち五月蝿い奴だな」
「おい! そういうのは心の中で言っても声にして出すものではないぞ!」
「うるせぇな……ちゃんと心の中でも思ったよ」
「なら、余計に声にして出すな!」
「…………」
(へぇ~、安藤くんから話を聞いた時は『え、あの安藤くんが喧嘩?』って、ビックリしたけど、どうやら本当にこの石田くんとは仲が悪いみたいね)
「それで……先ほどの会話からすると、君が『朝倉さん』で間違い無いかな?」
「ええ、姉ヶ崎先輩に頼まれて立候補した『朝倉』です。
お互いにいろいろありそうだけど……石田くん、よろしくね」
「ほう……」
(この男の交際相手だと聞いていたから、一体どんな礼儀知らずな女子かと思ったが、意外にまともな女子生徒じゃないか……)
「この男の交際相手だと聞いていたから、一体どんな礼儀知らずな女子かと思ったが、意外にまともな女子生徒じゃないか」
「おい! そう言うのは心の中だけで言うもんじゃなかったのかよ?」
「安心しろ。僕もちゃんと、心の中でも思ったさ」
「なら、余計に声にして言うな!」
「…………」
(あ、あれ? もしかして、二人って意外と仲良しさんなのかしら?)
「もう……石田くん、ダメだよ? 生徒会長に立候補してるんだから、もう少し仲良くしなきゃ……」
「ん、そうか?」
「「え!?」」
(うわ、ビックリした! いきなり知らない女の子の声が聞えたと思ったら、副会長の後ろに女の子が隠れていたのかよ!)
(え、この子さっきから副会長の後ろにずっといたの? 確かに副会長より背が低いから見えなかったって言うのもあるけど……元々、存在感が薄い子なのかしら? おかっぱ頭に眼鏡で、制服もピッシリ着ているところを見ると、あまり人前に出るのが苦手なタイプね)
「石田くん、この子は?」
「ああ、紹介がまだだったな。こいつは僕の推薦人で生徒会の書記をしている『藤林』だ」
「あ、始めまして……藤林です。えっと……石田くんとはクラスでも同じで……そ、その今回も出来たら一緒の生徒会に入りたいって思って……彼の推薦人をしてます。あ、あの――よ、よろしお願いします……」 ササッ!
「お、おい、藤林……挨拶が終わったからって僕の後ろに隠れるのは止めろ」
「うぅ……だって、石田くんがいきなり自己紹介させるのが悪いんだよ……」
「…………」
「…………」
(フムフム、なるほど……ずばり、藤林ちゃんは石田くんのことが『好き』だと見たわ!)
(フムフム、なるほど……ずばり、藤林さんは『D』カップだな!)
「それよりも、石田くんはもっと他の人と仲良くするべきだと思うけど……」
「そうか? まぁ、藤林がそういうなら……朝倉さん」
「はい」
「どうやら、会長の推薦らしいが勝つのは僕だ! 僕はこの選挙でそれを証明する。お互いに頑張ろう」
「え、ええ……」
(え、これって仲良くしてるつもりなのかしら……? なんか、普通に宣戦布告にしか思えないのだけど?)
「よし、用は済んだ。行くぞ、藤林」
「ええええ! 石田くん、それだけ!? ご、ごめんなさい! 彼はあれでも仲良くしてるつもりなんです……ちょ、ちょっと! 待ってよ、石田くん!?」
「まったく! 会長はどうして僕を選んでくれないんだ……」 ブツブツ
「…………」
「…………」
(なんか……彼女、大変そうね)
(……え? てか、俺には何も言わないの?)
「朝倉さん、そういえば一つ聞きたい事があるんだ」
「何かしら、安藤くん?」
「『推薦人』って何?」
「え、安藤くん知らないの!? 『推薦人』は選挙活動で立候補者の選挙活動をサポートしてくれる生徒よ。推薦人は投票権は無いけど、その代わりに応援演説とかもあるし、選挙活動期間は立候補者の生徒と一緒に行動するから時間外の図書室や教室の仕様権利もあるのよ」
「ああ、思い出した! そういえば職員室で立候補した時になるべく早く『推薦人』をつれて来いって言われたな」
「因みに、今まで生徒会長になった生徒はその推薦人を生徒会役員にするパターンが多いわね。多分、藤林さんもそれが狙いなんじゃないかしら?」
(あれ? じゃあ、わざわざ俺が生徒会長に立候補しなくても、俺が朝倉さんの『推薦人』になればよかったんじゃね……?)
「じゃあ、朝倉さんの『推薦人』は生徒会長ってことになるの?」
「うーん、それなんだけど姉ヶ崎先輩は今年受験もあって忙しいから、私の推薦人は『モモ』にお願いしたわ。それで、安藤くんは『推薦人』は誰にお願いするの?」
「そうなんだよね……」
放課後
「ってな訳で、委員長! どうか俺の『推薦人』になってください。お願いシャス!」
「絶対に……嫌っ!!」
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