第105話「ノーサンキュー」
(さて、突然だが『生徒会長』にふさわしい人物とは一体どのような人物だろう。
まず、一つ目に『人望』がある人が望ましい。そもそも、生徒会長になるには毎年三人~五人ほどの立候補者がおり、生徒会長は毎年選挙によって選ばれているのだ。だからこそ、選挙で勝てるような多くの生徒に認知されている『人望』のある人物が最低条件だ。
そして、二つ目に『成績』が良い生徒であるべきだ。生徒会長と言う以上は生徒の上に立つ者としてある程度『成績』が良く無ければ選挙で勝ち抜くことは厳しいだろう。
最後に、三つ目『カリスマ』を持っていると最高だ。
多くの有権者に人気が無くとも、ただ勉強が出来なくても、時に選挙というのは劣勢の人物が持っている『カリスマ』だけでその場を支配してしまう事がある。
『夢がある!』
『ぶっ壊す!』
『チェンジ!』
『壁作るぞ!』
そういう『カリスマ』というのは目に見えないからこそ、人が『言葉』として形にした際に思いもよらない『真価』を見せるのだ。
だからこそ、そういう『カリスマ』は持っている方が良い。
さて、以上を踏まえた上でそれに該当する『生徒会長』にふさわしい人物は誰かと言うと――)
「朝倉さん、しかいないんだよなぁ……」
「つまり、私が『生徒会長』になって安藤くんを『生徒会』に入れればOKって事よね!」
(そう、なんか最近は俺専用のポンコツ残念美少女彼女『ペタ倉ちゃん!』っと、化している『朝倉さん』だが……彼女なら『学校一の美少女』と言う人気から『人望』も『カリスマ』も問題ないし、学力だって『学年一位』という思い返せば凄いハイスペックな彼女なのだ!
でも、しかし……)
「やっぱダメだよ! これはそもそも、俺が朝倉さんと一緒の大学に行く為に『推薦』をもらうとして『生徒会』へ入ろうとしているのに、その為に朝倉さんをこんな風に『利用』するのはなんか『間違っている』気がする!」
「安藤くん……私はね。貴方が大好きなのよ」
「あ、朝倉さん!」
「……ねぇ、桃井さん。何アレ?」
「わかんなーい。爆発すればいいのにねー、委員長?」
「全くだわ……」
「でも、安藤くん。なら『生徒会』はどうするの?」
「大丈夫! 朝倉さんに無理させなくても俺の朝倉さんと出会ってから鍛え上げられた『コミニュケーション能力』でなんとか生徒会長になりそうな人に取り付いてやるよ♪」
「安藤くん! 流石は私の彼氏だわ!」
「……ねぇ、桃井さん。何アレ?」
「わかんなーい。ただ、あの二人夏休み終ってから少し仲良すぎだよねー?」
「全くだわ……」
「あ、朝倉さん、俺ちょっとお花を剥ぎ取りに行ってくるね」
「ええ、行ってらっしゃい。アナタ……」ボソ
(なんちゃって……キャアアーッ!
ウフフ♪ それにしても、生徒会長ね~うーん、私は乗り気じゃなかったけど、安藤くんのためなら正直なってもいいのよね。でも、安藤くんはああ言ってたし……
とりあえず、安藤くんが『トイレ』から戻ってきてから改めて話し合えば大丈夫でしょう)
バタン ← トイレのドアを閉める音
「さて……朝倉さんにはああ言ったけど、実際『ぼっち』な俺のコミュ力なんかで本当に生徒会長に取り入ることなんて出来るのか? でもな……朝倉さんと同じ大学行く為には『推薦』が必要だしその為には内申をあげるためにも生徒会に入らなきゃ……」 ブツブツ
(しかし……学校のトイレを使うなら、やっぱり職員室の廊下にあるトイレ一択だよな~♪ だって、ウチの学校で唯一ウォシュレットが付いているトイレだし、使う人も全然いな――)
コンコン! ← トイレのドアを叩く音
(ん? ここのトイレに俺以外の人が来るなんて珍しいな……)
「入ってマ~ス♪」
(全く、鍵がかけてあるんだから入ってるの分かるだろ? それに、トイレなら下の階にもあるんだし閉まっているんだからそっち行けよ……)
コンコン!
(いや、だから入ってるんだって! そもそも、こっちはまだ入ったばっかりだっての……)
コンコンコン!
「…………」
(いやいやいや、だから入っているの分かってるよね……? こいつはここ以外にトイレがあるのを知らないのかな? よし、なら教えてあげよう)
「あの~トイレなら下の階にも上の階にもありますよ~?」
「…………」
(よし、これで落ち着いて――)
コンコンコンコン!
(…………ブチッ!)
「俺には許せない事が二つある……一つは『人を殺すこと』そして、もう一つは――」
カラカラカラカラ~
ジャー
「てめえコラ! ふざけんなよオラ! 入ってるって言ってるのがわかんねえのか!? もう一つは『トイレのドアを無駄に叩きまくる事』だオラァアああああああ!」
(この非常識な野郎は一体何処のどいつだ!?) ガチャ!
「フン! やっと開いたか……一つ、君に教えてあげよう。
ここは学校のトイレだ。つまり、学校に通っている全ての生徒に利用する権利がある。そして、トイレは考え事をする場所では無い。下賎な企みは他所でするんだな?」
(ん? 誰だこのイケメン眼鏡……あれ? 俺のクラスメイトじゃ無いのにこの顔、なんか見覚えがあるぞ……『ぼっち』の俺が知っている男子生徒?
うーん、背は俺よりも少し低いよな? 170無いくらい? 顔はイケメンでインテリっぽい眼鏡をかけてて髪はちょっと長めのクラスメイトじゃない同学年の俺が知っている男子生徒……はっ!)
「確か、今の生徒会の『副会長』!」
(そうだ! 男だからあんまり覚えてなかったけど、女子の間では『イケメン』として結構な人気がある奴じゃん!)
「何だ知っていたか。なら、もう一つ君に教えてあげよう。
僕は今度の選挙に『生徒会長』として立候補する予定だ。もちろん『推薦』目当てなどでもない。僕には『生徒会長』の意思を受け継いでこの学校を良くする『義務』がある。その為に『生徒会メンバー』においても、それにふさわしい『生徒』を選ぶ予定だ……正直に言おう、僕の目指す『生徒会』に君のような人間はノーサンキューだ!」
バタン! ← トレイのドアを閉める音
「な、何ィイイイイイイ!?」
「…………」
(うーん。安藤くんったら、トイレ長いわね……)
ガラガラ~
「っ!?」
(はっ! 安藤くん!? やっと、持って――)
「失礼いたします」
(――って、思ったら人違いか……ん? でも、あの女の子って、三年生? 三年の先輩が私達のクラスに何の用かしら?)
「すみませんが、このクラスに『朝倉さん』はいらっしゃいますでしょうか?」
(え! 用があるのは『私』に? 女子だから告白ではないわよね……そもそも、そういうのは安藤くんと付き合ってから無くなったし……)
「はい、朝倉は私で――」
(んん!? ちょっと、待って! この人って……)
「せ、生徒会長!?」
「はい、私が『生徒会長』ですわ♪」
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