四章【生徒会】
第104話「進路」
(新学期が始まり……俺はある事を考え始めた)
「朝倉さんは卒業した後の進路ってもう決めてるの?」
「何? 安藤くん、夏休みが終わったからってもう進路の心配? そんなの私達まだ二年生なんだから早いわよ」
「いやそうなんだけどさ……やっぱり、出来たら大学は朝倉さんと同じ所がいいかな? って思って……」
「安藤きゅん……大好き!」 スカ!スカ!
「あ、朝倉さん!? ちょっと、ここ通学路だからね?」
「え? あ! こ、コホン……まぁ、そうね。
やっぱり、私は推薦もあるし、進学先は『S大学』かしらね」
「ああ『S大』ね……」
(うわぁ……やっぱり、朝倉さんほど成績が良いとやっぱり大学は国立の『S大』だよな)
「安藤くん! だ、大丈夫よ! 確かに安藤くんの成績だと『S大』はかなり……難しいかもしれないいけど、でも! 今からちゃんと勉強すればC判定くらいは取れるもの! それに私だって……大学は安藤くんと一緒がいいし、なんなら私が安藤くんに合わせて大学を選ぶのも――」
「朝倉さん、それはダメだよ」
「安藤くん……」
「これは一生のことなんだから、俺なんかの所為で朝倉さんがいける大学を選ばないなんてのは絶対にダメだ。大丈夫……朝倉さんが『S大』を受けるなら俺も『S大』を受ける。そして、絶対に『合格』する! だから、一緒に『S大』を目指そう?」
「安藤くん……うん! 二人で『S大』目指しましょう!」
(まぁ、彼女が行くからって理由で進路を決める俺も俺なんだろうけどな……)
「ってなわけで、先生……どうか『S大』に受かるためにも俺にどうか『推薦』をください! お願いシャス!」
「おい、安藤……お前は担任を舐めてんのか……?」
「いやいや、そんなめっそうもございません。
ただ、普段からやる気の無い先生なら俺の数学の成績は分かってますし、なんとかそれで『推薦』をくれるんじゃないかな~っと思ってご相談をですね」
「お前……やっぱり、教師を舐めてんだろ? それに、いくら数学の成績『だけ』が良くても流石に推薦はあげられないぞ」
「そんなぁーっ! じゃあ、俺はどうやって『S大』に行けばいいんですか!?」
「勉強しろ。以上」
「そんなの無理に決まってるじゃないですか!? だって『S大』って言ったらここいらで数少ない国立な上に倍率もアホみたいに高いし、何たって埼玉で一番偏差値の高い大学ですよ! そんな大学に数学以外にとりえのない俺が猛勉強しただけで受かると思いますか!?」
「まぁ、無理だな(笑)」
「笑顔!? 俺、この先生が笑顔になる瞬間始めてみた! よりによってこんな瞬間でかよ!」
「すまん、すまん。しかしなぁ……『S大』ってお前……流石になぁ? 大体、朝倉だって推薦はあるが受かると決まっているわけじゃないんだぞ? あいつの成績でだって受かる確率は三割あればいい方だ」
「そ、そうですよね……」
「…………」
「でも、やっぱり俺は『無理』だとしても自分が『足枷』になるのは嫌なんです。そのために何でもいいから少しでも受かる確率を上げられる『方法』があれば!」
「そこで純粋に『勉強』を頑張るって選択肢を諦めているのがな…………
だけど『方法』が無いわけじゃないぞ?」
「え、先生それって本当ですか!」
「ああ、『生徒会』に入れ」
「へ、生徒会?」
「そうだ……確かに今のお前の成績じゃ『推薦』をあげられる可能性は0だ。しかし、今学期から書記とかでもいいから『生徒会』に入って何かしらの『実績』を作り上げて、尚且つ成績もあげれば……『推薦』をあげられる可能性が無い……わけでもなくはないような……
つまり、0じゃ無いってことだ」
「でも、その言い方って……むちゃくちゃ低いって事ですよね?」
「ドアホ『0』と『1』じゃ全然変わるんだよ……それくらい数学が得意なお前なら分かるだろ?」
「まぁ、確かに……そうか?」
「そうなんだよ……もし、それで奇跡的に『推薦』さえ取れれば、例え『S大』だとしても『AO入試』での受験が可能になる。S大のAO入試では推薦がある事が条件だが、その代わり試験内容は国・数・英の三教科のみで、後は『面接』での人物面を考慮した入試になる。そうなればお前のことなんだから数学はどうせ満点だし、残りの国語と英語は死ぬ気で勉強して奇跡を起こせば平均点とはいかなくても半分は取れるだろう? 数学が満点の他が半分ならテストの段階での即不合格はまず無い。まぁ、合格の可能性も低いんだが……しかし、先ほども言ったとおりAO入試は『面接』が重要視される入試だからテストで半分以上とれば、後は奇跡でも起きて面接で高評価をもらえれば奇跡的に受かる……可能性があるような……」
(それでも、こいつが『S大』に受かる可能性は……0.001%も無いんだよなぁ……でも、俺みたいな教師に進路の相談をする生徒なんてロクにいねぇし……少しくらいは担任として面倒を見てやるか……)
「お、俺…………先生がこんなに長く喋ったの初めて聞きました!」
「誰の所為だと思ってるんだよ……っ!」
(しかし、生徒会か……)
「でも、先生。生徒会ってそんな簡単に入れるんですか?」
「簡単じゃ無いが……難しくも無いだろう。生徒会はちょうど夏休み明けの新学期から生徒会長の選挙が行われ、他の役職については生徒会長の指名か立候補制だ。
何もお前に『生徒会長』をやれと言っているわけじゃない。どうせいつも『生徒会長』以外の役職なんて立候補は無いんだし、選挙が終わった後に『書記』とか希望しておけば自然と生徒会には入れるんじゃないか?」
「先生、なんか適当すぎません?」
「少しでもいいから推薦をもらえる可能性を上げたいと言ったのはお前だぞ。むしろ、これ以外にお前が『推薦』もらえる可能性を上げる方法なんて無い」
「マジか……」
(でも『ぼっち』な俺が生徒会に入るとか普通に考えて無理ゲーじゃないか? でも、そうしないと朝倉さんと同じ大学に行くなんて……こうなったら、生徒会長になりそうな人にあらかじめ媚を売って――いや、無理だ! そんなコミュニケーション能力があったら『ぼっち』なんかやってねえよ! なら、いっそ俺自身が生徒会長に立候補して……いやいやいや、流石にそれは――)
「おい、安藤……何もそんな難しく考える必要は無いんじゃないか?」
「え、何でですか? もしかして、先生は俺なら『生徒会長』にもなれると――」
「それは無い」
「即否定!? 教師なのに!」
「教師だからこそ、過ちは正しておくんだよ」
「過ち!? 一瞬だけ俺に芽生えた世迷言を『過ち』扱いされた!」
「自分でも『世迷言』って言ってんじゃねえか……いや、そうじゃなくてだな。
生徒会長なら、お前の身近に立候補に適任な奴がいるだろ?」
「え……あ!」
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