第101話「ごはんに誓って」


【劇場版 ノーライス・ノーライフ】



 パッパラパラパラ~~♪


「ヘイヘイ~~どけどけぇえ! パラパラお米チャーハンセットのお通りだ!」

「美味しいお米で作った料理はいらんかねぇええええええええ!?」

「ヒャッハーッ! パン派の連中はケーキでも食ってろ!」


「ヒィイ! お母ちゃん……お米がお口の中でパラパラに弾けて美味しいよぉ~……」

「らめぇええ! パン派からお米派に乗り換えちゃうぅうう!」


「くっそぉお! お米派のレジスタンスめ! またしてもあのような美味しそ――じゃない! あんな美味そ――う……でもない! 悪魔的な料理を出しおって! 教会の『パンこそが志向、米は口にするべからず』という教えに刃向かうというのか!」


「にぃにぃ……黒、お腹減った……お、お米が食べたいよぉ……」

「くっそ! 妹の黒がこんなにも腹を空かせていると言うのに今の俺達には『米』が無い! これじゃ飢えちまう!」


「はっはーはっは! どうやらお米派もここまでのようだな! お前達の大好きなお米は全てワシが平らげた! う、ゲップ……」

「オッホホホ! お米が無いのならパンを食べればいいじゃない? ほ~ら……ここにはこんなに美味しそうなパンが沢山あるのよォ?」


【パン】 ホッカホッカ~♪


「ふざけんな! 俺の妹は『小麦アレルギー』なんだ! こんな状態でパンなんか食べさせたら……」

「大地さん、これを食べてください! これは私達が貴方達兄妹のために作った新しいパンとお米の未来かたちです!」


「こ、これは……」

「にぃにぃ、これって……」

「ああ!」


「「米粉パン!」」


 パク


「にぃにぃ……あ、アレルギィイーがぁああああああああ!」

「く、黒ォオオオオオオオオオオオオオオ!」


「な、なんだと!? お米のデンプンがパンの小麦粉を書き換えただと!?」

「これは……新たな『食』の想像! 名づけるならまさに『最後の晩餐』!」


「俺達を誰だと思ってる……」

「黒とにぃにぃは二人で一つ」

「大地の俺と妹の黒、二人でひたすら美味しい米を作ることだけを考えてきた……」



「「そう『群馬県』で!」」



「くそう! み、認めてなるものか……こんなに美味しいパンが『お米』であるなんて……」


「「俺達『群馬の民グンマー』がいる限り『お米』に『マズイ』の文字ない!」」


『グンマーって何だぁああああああああああああああああああああああ!』


「「さぁ、ライスごはんを食べよう! ごはんに誓ってメッシェンテ!」」



                                     【おわり】


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「いやー、面白かったね! 朝倉さん」

「私もよ、安藤くん!」

「朝倉さん、良ければこのショッピングセンターの中にある書店も寄って行かない?」

「そうね。久しぶりに安藤くんと本屋さんで『なろう』の作品を吟味するのも悪くないわね」



 本屋 文豪堂



「あ! 朝倉さん見て見て! 土橋真三郎先生の新作が出てるよ!」

「確かその作家さんって安藤くんが好きな作家さんよね?」

「うん! この人の作品はどれも人間心理の描写が上手くて面白い作品が多いんだけど、中々本を出さないんだよね。うわぁーまさか新作が出てたなんて知らなかった……これは絶対に買ってこう!」

「うふふ、安藤くんったらご機嫌ね。折角だから、私も何か買おうかしら?」


(……いつもなら、こういう時は俺と朝倉さんは別々に好きな本を買っているけど――今日は朝倉さんとの『デート』なんだから、それじゃダメだよな)


「朝倉さん、良かったら今日のデートのプレゼントに何か好きなラノベ一冊プレゼントするよ」

「え、安藤くんいいの!?」

「うん、これでも『彼氏』だからね。何か『彼氏』として朝倉さんにプレゼントしたいんだ」


(あ、安藤キュン! 何だか今日の安藤くんはいつもと違うわ! いつもの安藤くんも十分にイケメンでカッコいい彼氏だけど、今日の安藤くんは何だか……いつもよりも『彼氏』っぽくて私なんだか安藤くんに始めて『彼女』扱いされてる気がするわ!)



『彼氏として朝倉さんにプレゼントしたいんだ』 ←第三者から見た安藤くん


『ジュテ~ム……セニョリータ! ア~イ・ラヴ・ユ~~ アモーレ! かっぱーれ! アッパーれ! プレゼント・フォォオオオオ! ユーゥ~~?』 ←朝倉さんから見た安藤くん


 ↑

*こんなフィルターがかかってます。



「そ、そう言う事なら……お言葉に甘えさせてもらおうかしら? でも、それなら私は安藤くんが選ぶオススメのラノベが欲しいわ♪」

「そうきたかぁー……よし、分かったよ! じゃあ、何かオススメの本を探すから少し待ってくれる?」

「うん!」


(うふふ、安藤くんったらどんな本を私に選んでくれるのかしら♪)


(うーん、朝倉さんにオススメのラノベか……でも、オススメのラノベならこの夏休みで結構教えちゃったから正直ネタ切れ気味なんだよな。いや、ここはあえて一般文芸とか新書から探してみるか? 最近の『なろう』はラノベレーベル以外にも一般や新書でも書籍化してるからな……お、これは『ビジネス書』として書籍化された話題の作品じゃないか! これなら――)



『【異世界ヌーブラ株式会社】うわっ……私の「おっぱい」盛りすぎィッ!?』



(……ダメだ。こんなのを勧めたら多分、朝倉さんに殺される……一応これは、ヌーブラが存在しない異世界を舞台に主人公が『どうやって商品を売るか?』というマーケーティング理論を解説してるビジネス書のなろう作品なんだけど……何故か朝倉さんに見せた瞬間、今日のデートが終る気がしてならない……)


「朝倉さん、こういう作品はどうかな?」

「どれどれ……『君が鯉を食べるなんて、ありえないはずだった』なんかラノベと言うよりはライト文芸よりの作品ね。安藤くん、これはどんな作品なの?」

「これはね。幼い頃に鯉を喉に詰まらせて死に掛けた主人公が、そのトラウマを克服するために、ヒロインの板前見習いの女の子に協力してもらって、鯉を食べれるようになろうとする作品なんだ。一見するとギャグっぽくみえるかもしれないけど、話の内容はいがいとシリアスで読んでいくうちに何故主人公が鯉を食べなきゃいけないのか? ヒロインの鯉料理の腕はどこで覚えたのか? といろいろな謎が出てきてそれらが終盤で一気に紐解かれるんだよ!」

「なるほどね……何だかよくわからないけど、凄く面白そうだわ!」

「うん、凄いオススメだよ。作中に出てくる鯉料理も美味しそうだしね。特に『鯉と恋の濃いこい色ソテー』とかが――」



 むきゅぅ~~♪ ←誰かのお腹が鳴った音


「…………」

「…………」


(今の音は……そうか、映画を見てからしばらく時間が経つけどまだ何も食べて無かったな)


(あわわわ……安藤くんがおいしそうなご飯のお話するからお腹が鳴っちゃったわ! 恥ずかしぃいいい!)


「あ、安藤くん! 違うのよ!? 今のは私のお腹の音じゃなくて……そう! 私の携帯の着信音なのよ! あらあら~? 一体、安藤くんとの大切なデート中だって言うのに誰かしらねー? ああ! モモからだわ! へー、なんかダイエットが上手くいかないとか、いつもの愚痴だったわ!」


(ふ、ふぅ……なんとかこれで私のお腹の音は誤魔化せたわね!?)


(うーん、絶対に今の音は朝倉さんのお腹からしたんだよなぁ……てか)


「え、朝倉さん。桃井さんってダイエットしてるの?」

「ええ、そうよ。まぁ、してるって言ってもアレは趣味か病気のようなものよ。モモって意外と良く食べるでしょ? だから定期的に『うぇーん! サクラぁ~また太っちゃったよ……よし、決めた! 元の体重に戻るまでダイエットするよー』って一定周期ごとにダイエット宣言してる――」


(あ……そういえばこの話ってモモが他の人に知られたくない話ナンバーワンの話題だったわ。私ったらお腹の音を誤魔化そうとして、ついうっかり……でも、安藤くんなら別に言いふらすような相手もいないし大丈夫よね?)


「――のよ……あはは」

「そうなんだ。以外だね」


(なんか良く分からないけど、これって多分俺が知ったらマズイ系の話題だよな……よし、このネタは迂闊に他の人には話さないようにしよう。思わぬところで桃井さんへの切り札ゲットだぜ!)


「そうだ、朝倉さん。別にさっきの携帯の着信音とはなんの関係もないんだけど、お腹減ってないかな?」

「そそそ、そうニョ!? わわ、私も別にさっきの携帯の着信音とはなんら関係はないのだけど、ちょうどお腹が減ってきたところだったのよ。オホホ~」

「じゃあ、ちょうどいいからどこかで食事にしようか?」

「うん! 安藤くん、そうしましょう」

「因みに、朝倉さんは『パン』と『お米』ならどっちが食べたい?」

「っ!?」


(こ、これは今日見た映画のセリフだわ! なら、私の応えはもちろん!)


「そうね……ウフ、やっぱり『お米』かしら?」


(流石は朝倉さん! 朝倉さんなら、きっと分かってくれると思ったけど、やっぱりこういう『ラノベ』のネタを言い合えるのは楽しいなぁ……)


「だね! 朝倉さん」

「うん! 安藤くん」


「「さぁ、ライスごはんを食べよう! ごはんに誓ってメッシェンテ!」」


 パァッーーン! ←無言のハイタッチ!


(やっぱり、俺達って最高のカップルだな!)


(やっぱり、私達って最高のカップルだわ!)


「じゃあ、行こうか。朝倉さん」

「うん、安藤くん♪」


 みきゅぅ~~♪ ←誰かのお腹が鳴った音


「…………」

「…………」


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