第94話「プールその後」


「はあー」

「つかれた……」

「あはは~なんだかんだでいっぱい遊んじゃったねー」

「朝倉さんもあの後ちゃんと『課題』をクリアしたみたいね。なんかウォータースライダーで少しトラブルがあったみたいだけど……」

「サクラお義姉ちゃんも、お兄ちゃんも一体ウォータースライダーで何があったのか教えてよ~!」


「「絶対に嫌だ!!」」


「あははー息はピッタリだねー」

「まぁ、どうせ大したことじゃないでしょ……」

「もーう! お兄ちゃん、帰ったら絶対に聞き出すんだからね!」

「妹よ。マジで止めてくれ……」

「ねぇ、安藤くん。何か向こうから知らない男性が笑顔でこっちに走ってくるんだけど……アレは貴方の知り合いかしら?」

「はぁ? 委員長、知らない男性って――」


「よ! 奇遇だな。なんだ? お前ら、こんなところで何してんだよ~~おう!」

「わっぷ……誰だ! いきなり背中を叩いたのは――げ!?」


「げぇ……」

「あ、安藤くん……? その人は一体どなたかしら?」

「妹ちゃんも知ってるみたいだけどー?」

「なんかすごくチャラい男性ね……」


「おうおう、なんだこのかわい子ちゃん達は~? んん? お前も隅に置けんな! ガッハッハッハ!」

「……えっと、こいつは……ですね」


「お父さん! なんでこんなところにいるの……マジ最悪」


「「「お父さん!?」」」


「どうも! こいつらの父デース。よろぴく♪」 

「嘘でしょ!? え、だって……見た目まだ二十代じゃ?」

「え、マジで!? そんな若く見える! いやー、俺もまだまだイけるな! 実は今年で四十代になるんだなー」

「えー! ってことはまだ三十代なのー!」

「嘘でしょ! 若いわね……」


「てか、オヤジこんなところで何してんだよ……」

「おいおい、息子よ? それは父の質問でもあるんだが?」

「俺達はプールの帰りだよ! それより、オヤジはまだ仕事中だろ?」

「ああ、仕事な……あれは――辞めた!」


「「「仕事辞めた!?」」」


「えー! お父さん、また仕事辞めちゃったのー!」


「「「また!?」」」


「ああ、えーと……恥ずかしながら、ウチのオヤジは仕事が長続きしないんだよ……」

「ちなみに仕事辞めるのはこれで今年三回目な? てへ♪」


「「「三回目!? てか、今年だけで!?」」」


「大丈夫! 大丈夫! すでにもう次の仕事は決めてある……たった今面接行って決まったところ! 明日から新しい職場で再チャレンジだぜ!」

「うるせえ! 何回チャレンジすれば気が済むんだよ! もう、しま●ろうも真っ青だよ!」


「な、なんか……すごいお父さんね」

「てか、安藤くんとも妹ちゃんとも全然似てないわね」

「妹ちゃん、お父さんあんな感じだけど、生活とか大丈夫なのー?」

「あ、はい。お金のことに関してはお父さんには何一つ期待してませんから……ウチの生活はすべてお母さんが稼いでいるので」

「じゃあ、安藤くんの家は共働きなのね。そう言えば前に安藤くんがそんなことを言っていたような……」

「まぁ、共働きというよりも、お父さんがあんな感じでちょくちょく仕事を辞めて収入が安定しないのでお母さんが仕事を辞められないだけなんですけどね~~」


「「「……………」」」


(((クズだ…………)))


「で、でも……じゃあ、お母さんが仕事で家にいないなら、家事はお父さんがしてるのかなー?」

「いいえ、お母さんが朝のうちに一通りやってくれます」


「「「………………」」」


「ガッハッハッハ! 母さんは良い女だろ?」

「全くだよ……なんでウチの母はお前みたいなのを選んじゃったの?」

「愛だよ! 愛! ガッハッハッハ!」


「この人が……安藤くんのお父さん」

「あまり似てないよねー」

「むしろ、似てたら問題でしょ……」


「おうおう! それで息子よ……一体どの子がお前の彼女だ?」

「んな!?」


「「「っ!?」」」 ドキッ!


「な、何を言ってるんだよ!」

「隠すなー隠すなー! こんな美人ぞろいでプール? 一人くらい手を出してないと可笑しいだろーガッハッハッハ!」


(((うわぁ……最低だ…………)))


「どれどれ……うむむ! そうか、この背の高いポニーテールの子だな!」

「みょ!」


(え、えええ! わわわ、私!? 安藤くんの彼女は私じゃなくてサクラが……でも、そう見えたってことは――?)


「だって、この子が一番『おっぱい』が大きいからな! ガッハッハッハ!」

「っ!?」

「バカ! ちげえよ!」


(むぅ――……)


「む、そうか……なら、この三つ編みメガネの子だな!」

「はぬ!」


(私!? バカ言ってんじゃないわよ! 別に私は安藤くんの彼女なんかじゃないわよ! で、でも……やっぱりそう思われたってことは私と安藤くんがそういう仲に見え――)


「何故なら、この子は隠れ巨乳だからな! 俺の目には分かる! さっきの子ほどじゃないが、中々に……ガッハッハッハ!」

「だから、ちげえよ!」


(…………サイッテー!)


「なら、やっぱり! この黒髪ロングの美人さんだな!」

「ふぇ!」


(わわわ、私!? 私は――って、そうよ。私、安藤くんの彼女でしょ!)


「ふふん! やっぱり、私のこのあふれ出るオーラが――」

「まぁ、この二人が違うならこの子っていう消去法だけどな。ガッハッハッハ!」

「はぬぅ!」

「朝倉さん!? 大丈夫! しっかりして!」


「それにしても、どのこも可愛いな……それに皆そろって『おっぱい』が『大』『中』『小』で、よりどりみどりってか? ガッハッハッハ!」


「「「………………」」」


(((あ……安藤くんのお父さんだ)))


「死ね! くそオヤジ!」

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