第92話「水着姿」


 プール当日

 


「簡単なレジャー施設のプールって聞いていたけど、意外と広いところだな……」


(てか、朝倉さん達、着替えるの遅いな……俺とかとっくに着替え終わってプールの入り口で五分くらい待ってるぞ)


「…………」 


(フッ! しかし、事前に邪魔な男子共の介入を阻止して『おっぱい』ハーレムを作り上げた俺はクールに朝倉さん達が出てくるのを待つぜ!)


「…………」ソワソワ



「ママーっ! あのお兄ちゃん、さっきからずっと『キョロキョロ』してる!」

「シーッ! 見ちゃいけません!」



「は、早く来ないかな……」


(正直『ぼっち』の俺がプールに一人で立っているのは周りの視線が少し痛いです……これなら沢渡と吉田くらいは誘っておけば良かったかも……)



「安藤くーん!」

「少し待たせたわね……」


「その声は――桃井さん、委員長ぉ――っ!?」


(って、この水着は……)


「あははー♪ 安藤くん、もしかして、私の水着に見とれちゃったのかな? 駄目だよー? 安藤くんにはサクラって彼女がいるでしょー?」


(くふふふー♪ 安藤くん、私の水着……見てる~見てる~♪ 

 私の水着はどうかなー? 安藤くんは『ビキニ』が好きって言うから、せっかくだし『三角ビキニ』にしてみたんだよねー。色は流石に派手かなー? って、思ったけど可愛いから黒の水玉にしちゃった♪ でも、このビキニ買う時はあまり気にしてなかったんだけど、実際に着てみたらトップの背中が細い紐タイプになっているから後ろを見られるのは少し恥ずかしいかなーーてね♪)


「…………」


(ヤベェ……俺は今何を見ているんだ……? 黒い水玉のメロン? いや、違う……これは『宇宙』だ! そう、俺は今『宇宙』を見ている! はち切れんばかりの二つの『宇宙』が俺の目の前に存在しているのだ。その『宇宙』はたかがさんかくの狭い面積二つで隠しているだけでその大半が零れ落ちてしまいそうで、ブラックホールかのように俺の視線を吸い込んで離さない!

 そう、『宇宙の真理』はここにあったんだ!)


「ちょっと、安藤くん……桃井さんの水着ばっかり見すぎじゃないかしら? 後で朝倉さんに言いつけるわよ?」

「委員長、ごめんなさい! だから、それだけは許し――て」

「な、何よ? ちょっと、そんなジロジロ見ないでよね……え、エッチ!」


(フン! 安藤くんったら今更私の水着に見とれたって遅いわよ。どうせこの男のことだから『胸』ばっかり見ているに違いないわ! ほ、本当に……やらしいわね。

 私だって、一応は朝倉さんとか桃井さんと比べられるのも癪だから、気合入れて水着を新しくしたのよ。どうかしら?

 この『パレオタイプのビキニ』は! 流石に肌を全部出すのは恥ずかしかったから、腰に巻きつけるタイプのパレオがあったのは助かったわ。これなら、スカートみたいで私も少しは恥ずかしさを抑えられるしね。それに色も私の好きな『スカーレットピンク』でカッコいいのもポイントが高いわね!)


「…………」


(何だこの水着!? チャイナドレスだ。エロい! 何で水着なのにスカート巻いてるの!? 下にも水着を着てるのは分かるけど隠されてることで逆に意識してエロいぞ! しかも、委員長って桃井さんほどじゃないけど巨乳だから水着は映えるって思っていたけど、こうしてみると意外と美脚だよな……なんか腰に巻いてるスカートは結構長めなんだけど、スリットみたいな感じでチラチラと除く生足が妙にエロくてヤベエぞこれ……)


「もーう、安藤くん? せっかく可愛い女の子が二人も水着で登場したのに何か感想の一つでもないのかなー?」

「それだけど、後から出てくる朝倉さんの前でも気の聞いた感想は言えなさそうね……」


(あ、そうだよな……黙ってないで何か感想を言わないとな。えーと――)


「……ご馳走様でした」


「「何が!?」」


(いや、だってこんなの見せられたらこれ以外の言葉なんて出てこねぇだろ……)


「お兄ちゃーん!」


「おう、今度は妹か。てか、朝倉さんはまだ出てこないの――ぉ?」


(フ……流石の俺でも『妹』の水着くらいで動揺なんか――ぐぁあああああああああああ!)


「うん! なんか、サクラお義姉ちゃんは恥ずかしがって、なかなか出てこようとしないから置いてきちゃった♪ 多分、もう直ぐ出てくると思うよ。

 因みに、お兄ちゃん! 私の水着はどうかな~?」


(フフン♪ 今日の水着は薄いグリーン色の『ホルターネックタイプのビキニ』にしてみたんだよね~♪

 首の後ろで結ぶタイプのこれなら、少し胸が無い私でもバストを強調することができるもん♪ 正直、私じゃ桃井さんや委員長さんには大人の女性的な魅力で勝ち目は無いけど……でも、このビキニは全体のデザインが『水着』と言うよりも『服』に近くて下もミニスカートみたいなデザインだから、これを着る事で制服っぽさを出して『年下の可愛い妹』路線で勝負だよ!

 やっぱり『妹』でも一人の女の子として『オシャレ』には全力を出さないとね~。別に、お兄ちゃんに『可愛い』って言ってもらいたいわけじゃなくて、あ・く・ま・で! 『女の子』として『オシャレ』をしてるだけだから仕方ないよね~)


「……おお、妹よ。意外と可愛い水着じゃねえか。そんなの持ってなかったよな? 買ったの? お前、今月のお小遣い大丈夫?」


(フォオオオオオオオオオオオオオオ! ヤベエ、俺の妹マジで『可愛い』だろ! なんでこいつ俺の『妹』なの? 家の家系でこんな『可愛い』生物が生まれるとかマジで奇跡だろ……

 てか、妹の水着は実に健康的で『可愛い』な。でも、お兄ちゃんとしては周りの飢えた雄共が妹の事をチラチラと見ているのが気に食わないな……妹よ。もう少し、露出は抑えることは出来なかったのかい? でも、これなら山田達を今回のプールから排除したのは正解だったな)


「もーう! お兄ちゃんそれだけ~? デリカシーなさすぎ! サクラお義姉ちゃんが出てきた時もそんな反応だったら怒るからね!」

「はいはい……」


(も、もう! お兄ちゃんたら、でも『可愛い』って言ってくれたから許してあげるけどね……ニャフフ~~♪)


「後は、朝倉さんが来れば全員集合か……」

「うーん、サクラ遅いねー」

「え、何? 朝倉さん、まだ恥ずかしがっているのかしら? 一体、何をそこまで恥ずかしがる必要があるの?」

「うーん……サクラお義姉ちゃんが恥ずかしがっているのは主に、お二人の所為じゃないですかね~?」

「妹よ。そこで何で桃井さんと委員長の所為に――」


「うーん? ねぇ、妹ちゃん。それってどう言うことかなー?」 ビックバーーンッ! ←宇宙

「私にも特に心当たりは無いわね……?」 デカメロン! ←メロン


「ああ、なるほど……」


「「安藤くん! 何で納得したの!?」」



「み、皆? その……お、お待たせしたわ……ゴメンなさいね?」


「朝倉さん、やっと……おぉ――」

「あ、安藤くん!? どうしたの! そ、そんなジロジロ見比べられると私恥ずかしいわ……うぅ、やっぱり、私なんかモモ達と比べたら魅力無いわよね……?」

「そんなことない……」


(正直、言って現れる前はどんな格差社会が実現するんだろうと思ったけど、そんな事は無かった。

 俺の前には……『女神』が降臨していた)


「へ、へ?」 パァパァアアア! ←あふれ出る美少女力的な何か


(朝倉さんの水着は一般的な黒いビキニに白いヒラヒラが付いたごく『ふつう』の水着だった……だけど、朝倉さんがその水着を着たことでその魅力は何倍にも膨れ――上がるっ!

 一瞬、俺は朝倉さんのことを『女神』かと見間違えた。それほどまでに水着姿の朝倉さんは『完璧な美少女』になったのだ)


「俺は…………間違っていた」

「あ、安藤くん? どうしたの!?」


(人は……本当に心から美しいと思うモノを見た時、それを『芸術』と呼ぶ……水着を着た朝倉さんはまさに『それ』だった。

 黙っていれば『完璧な美少女』の朝倉さんがその黒いビキニを着た時、白い素肌がギリギリまでさらされて、その控えめな胸はまるで何かのパンドラの箱のように魅力的で朝倉さんを構成する全体が一つの高名な絵画のように完璧な『美』を表現しているのだ。

 決して、朝倉さんが『エロい』と言っているわけではない。だって、ミロのヴィーナスを見て興奮する奴がいるだろうか? むしろ、女性の水着姿を見て『エロい!』とか騒いでいる奴は死んだ方がいいんじゃないだろうか? 普通は『綺麗だね』の一言くらいはあるべきだろう。

 このプールにいる他の男性の客も同じ気持ちなのか、朝倉さんが一歩動くだけで見ていた男性は美しさのあまり気を失い。近くにいる男は涙を流し膝をついた。


 そう、まさに『奇跡』の降臨である!)


「朝倉さん……とっても綺麗です! 格差社会とか思ってすみませんでしたああああああああああ!」

「へ!? 格差社会って何のこと! てか、何で安藤くんは涙を流しながら私に土下座してるの!? ちょっと、止めて恥ずかしいから! って、気づいたら何か他のお客さんも土下座してるんだけどぉっ! 何よコレェエエエエエ!?」

「サクラお義姉ちゃん、こんな駄兄ちゃんは無視して、私達と遊びましょう♪」



「ねぇ、委員長ー……」

「何かしら、桃井さん?」

「私達……凄い負けた気がするんだけどー?」

「奇遇ね。私もよ……」


 ボイーン……

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