第87話「手段」



「…………」 ズズ ←安藤が紅茶を飲む音

「…………」 ズズ ←お父さんが紅茶を飲む音


(ヤバイな……何を話せば言いのか分からない。てか、朝倉さんのお父さんが極度のコミュ症だとしても俺じゃあお父さんの考えている事が分からないんだよな)


(はぁ、そろそろパパもお腹が空いたな~~安藤くんもいるんだし、お寿司でも頼みたいけど……娘よ! お寿司でも頼まないかい?)


「…………」ギロリ!

「え、何パパ? あ! 紅茶のおかわりが欲しいのね!」


(え、違――)


 ガチャ!


「あらあら……ウフフ♪ そろそろおかわりが欲しいかと思って持って来たわよ?」

「流石ママ! パパのことなら何でも分かっちゃうのね!」

「ウフフ~♪ それは夫婦ですもの~」

「流石ですね」

「…………」


(流石は朝倉さんのお母さんだな。あんなコミュ症のお父さんと付き合いが長いだけはある)


(ママ……紅茶はもういいよ? だって、さっきから少し飲みすぎた所為かお腹がタプタプしちゃってるもん……いや、待てよ。丁度、ママが来たんだからママにお寿司を取ろうと伝えてみよう! 付き合いが長いママなら、きっと俺の言いたい事も今度は受け取ってくれるはず)


「…………ママ」 ギロリ!

「パパ、何かしら? あら……あらあら~~ウフフ♪ はいはい、分かりましたよ」

「ッ!?」


(よし、伝わった!)


「え、ママ。パパは何て?」

「ウフフ……おめでとう♪ どうやらパパは安藤くんの事を『気に入った』って言っている気がするわ」

「…………ッ!?」 

「え! 本当ですか!?」

「やった! パパありがとう!」


(えぇえええええええええええ! 合っているけど言いたいことはそれじゃないよママ!

 仕方ない……こうなったら最後の手段を使うか)


「…………」スッ

「……?」


(何だろう? お父さんが急に朝倉さんとの付き合いを認めてくれたと思ったら、急に携帯をいじり始めたぞ?)



『お寿司でも頼もうよ~~♪ ☆(>ω・ 三 ・ω<)☆ あ、安藤くんの歓迎もかねてだから『特上』だよぉ? うーん! と、美味しいお寿司を頼んじゃおう! ☆(=・ω・=)(=>ω<=)(=´ω‘=)☆』


 どうしても伝えたい事がある時の最後の手段 → メール



「え……お、お寿司?」


(てか、メール何これぇえええええ!? お前、誰だよ!)


「パパ、お寿司頼むの!」


(パパって偶にメールで話す時があるけど……一体何でかしら?)


「あらあら~~いいわね♪ きっと、パパも安藤くんと仲良く成りたいのよ~~」


(あらあら~~メールで言わなくても話してくれれば分かるのに。ホントにパパは恥かしがり屋さんね~~ウフフ♪)


「え! つまり、ご馳走していただけるってことですか? しかも、特上ってそんなの悪いですよ! 俺は大丈夫なんで皆さんで食べてください!」

「…………」 ギロ!


(え~~安藤くん食べないの? あ、やっぱりご飯は食べてきちゃったとか?)


「お……俺の……寿司は……食べれない……のか?」 ギロリ!

「ヒィ! めめ、めっそうもございません!」


(あっぶねえええええ! 危うくお父さんの機嫌を損ねる所だった!)


「あらあら~~ウフフ……じゃあ、私は出前の注文を取ってきますね?」

「…………」 コクコク!


(やった! やっと伝わったぞ!)


「わーい! 安藤くんと一緒にお寿司だわ!」 ワクワク

「…………!」 ワクワク


(わーい! これで安藤くんと一緒にご飯だ!)


「…………」


(てか、お父さんのメールが頭から離れないんだけど……)


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