第84話「着信アリ」
「ふぅー、いい湯だった。全く、妹が先に風呂入るから、もうこんな時間じゃないか……」
(あ、そういえば今日から毎晩、朝倉さんと電話するんだっけ……すっかり忘れてたけど、いまからでも大丈夫かな?)
「えーと、俺のスマホは――って、なんじゃこりゃ!?」
『着信アリ 朝倉さん 28件』
(お、俺が風呂に入っていた一時間の間にこれだけの着信が……28件って、ここ一年間の総着信件数以上だぞ!?)
スカ~ン♪ ←スマホの着信音
「ヒィッ!?」
スカ~スカスカ~~♪
「………………」
『着信アリ 朝倉さん』
「き、来た……」 ゴクリ
スカ~スカスカ~~♪
「……っ! も、もしもし?」
『あ! も、もしょもしょ!? あ、安藤くん? こんばんは……』
(良かった……あまり怒って無さそうだ。いつもの朝倉さんだ)
「うん、こんばんは。朝倉さん、さっきは電話に出れなくてゴメンね」
『もう、やっと出てくれたわね! 電話するって約束だったのに一体何してたのよ?』
「それがちょうどお風呂に入ってて……」
『ふぇ!? お、お風呂!? じゃあ、まさか……ああ、安藤くんはいま裸にゃの!?』
「朝倉さん、落ち着いて。流石の俺でも、マッパで電話に出ないから……大丈夫だよ。もう、服は着てるから」
『そ、そうなのね。それは残ね――ム……げっふん! げっふん! もとい、安心したわ!』
(おいおい……今、俺の彼女なんて言おうとした?)
「朝倉さんの方は今何しているの?」
『私? 私は安藤くんが中々電話に出てくれないから、夏休みの宿題をやっていたわ。今日でちょうど半分くらいは片付いたわね』
(ふーん、夏休みの宿題か~~)
「へーそうなんだ……それで、朝倉さんの方は今何しているの?」
『え? だから、安藤くん。いま宿題をしていたって……』
「へー、それで朝倉さんの方は今何しているの?」
『…………安藤くん?』
「…………ナンデショウ?」
『貴方……宿題やってる?』
「モ、モチロンダヨ?」
『因みに、残りはあとどれくらい?』
「………………」
『わ、分かったわ……聞き方を変えるわね。どれだけ進んだの?』
「す……数学以外は、理科が二ページしか進んでません…………」
『安藤くん! 貴方この夏休みの一週間何をしていたのよ!?』
「すいません! ラノベ読んでました!」
『もう……それで、数学はどれだけ進んでるの?』
「あ、数学はもう終ってるよ」
『へ? お、終っているってどう言うこと……?』
「文字通りだよ。数学の宿題なら最後の授業で渡されたその日のうちに全部片付けた」
『渡されたその日のうちって……つまり、一日で数学だけ夏休みの宿題終らせたの!?』
「うん、簡単な復習問題ばっかりだったからそんなに時間はかからなかったよ」
『いや、でもそう言っても……渡された宿題の問題集ってたしか120ページくらいあったわよね? それを――全部?』
「うん」
『何でそれを他の教科に活かせないのよ……』
(うーん、そうは言われてもね~)
『はぁ……まったくもう、明日からはちゃんと進めるのよ? 今からやれば間に合うんだからね?』
「はーい」
『もう! 後でやってなくて困っても助けてあげないんだからね?』
「大丈夫~♪ 大丈夫~♪」
『何でだろう……何故か、凄く不安だわ』
(もう~、朝倉さんったら心配性だな。流石に俺だって何処かの『のび●』じゃないんだから、宿題をすっかり忘れて後で――
『うわぁあああああああん! 助けて、ペタえもん~!』
――なんて泣き付く展開なんて起きやしないさ!)
『それで、本題なんだけど……明日って、安藤くん予定は空いているかしら?』
「明日? うん、大丈夫! 朝倉さん以外に俺を誘うような友達も予定も無いよ!」
『そう、なら安心したわ……いや、それで安心するのもどうなのかしら……?
まぁ、いいわ。じゃあ、安藤くんさえ良ければ明日も……そ、その!
安藤くんに会いたい……のだけど?』
(ヤベェ……俺の彼女、声だけなのにマジ可愛い……朝倉さん、マジ天使!)
『あ、安藤くん? その……駄目かしら?』
「え、あ! いやいや、全然大丈夫! むしろ、俺だってできれば毎日だって朝倉さんと一緒にいたいからね!」
『安藤くん! うふ、ありがとう。私もよ♪』
(ああ、俺は何て幸せなんだろう……あの『ぼっち』だった俺にまさか、こんな幸せな事を言い合える彼女がいるなんて……まるで、朝倉さんのおかげで『天国』にでもいるような気分だ)
「じゃあ、待ち合わせは何処にしようか? やっぱり、いつものファミレスに――」
『あ! そ、その、待ち合わせ場所ならもう決めているのよ……』
「え、何処?」
(一体何処だろう? いつものファミレスじゃないのかな?)
『えっとね……わ、私の家なの』
「え?」
(い、家? まま、待てよ!? 付き合ったばっかりのカップルが、彼女の家で待ち合わせ……まさか、このパターンは!?)
『あ、安藤くん』
「う、うん……」
『実は明日、私の両親ね……』
(キタキタキタァアア――ッ!?)
『いるの!』
「…………へ?」
(あれ? 待って……この展開ちゃう)
『そ、それでね? できたら明日、私のパパに会って欲しいな~て……』
「ぉ――――っ!?」
そして、俺は……天国から地獄へと突き落とされた。
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