第71話「平原」
「あー、いっぱい遊んだねー」
「そうね! 映画も観たし、食事もして三人でいろんなお店を見て回って楽しかったわ!」
「うん……ソウダネ」
(疲れた……食事した後、朝倉さんと桃井さんにショッピングセンターの中にある店という店を片っ端から連れまわされた……前のデートは朝倉さん一人だったけど、今回は桃井さんもいたから連れまわされる頻度は二倍かと思えば、それ以上だったぜ)
「もう、十八時だしねー。結局、委員長からの課題だけど……」
「ああ、私とロミオがお互いに30回以上役名で呼び合うって奴かしら?」
「それなら、とっくに30回以上は言っているでしょ? てか、桃井さんカウントしてたの?」
「うん! えーとね、安藤くんがサクラを『ジュリエット』って呼んだ回数が32回でー、サクラが安藤くんを『ロミオ』で呼んだ回数が127回だねー」
「え! 私ってそんなにロミオの名前を呼んでいたかしら!?」
「うん……呼んでたね」
(最初は言いづらそうにしてたけど、食事してからは慣れたのか普通に『ロミオ』呼びが定着してたからな……朝倉さん、今日はもう『ロミオ』呼びが取れないんじゃないかな?)
「その分、安藤くんは結構ギリギリだねー?」
「そういえば、ロミオは私の三分の一以下の回数ね」
「うん……そうだね」
(そりゃ、なるべく最小限ですむようにカウントしてたからな)
「じゃあ、課題もクリアしたことだし今日はこれで解散だねー。安藤くんはサクラをちゃんと家まで送ってあげてねー? 家に帰るまでが『デート』だよ♪」
「え、解散って……桃井さんは?」
「私は二人のお邪魔だろうから、ここからは一人で帰るよー。あ! 安藤くん、いつぞやの肝試しの時のような申しでは結構だよ! だって、まだ日が落ちてないから一人でも平気だよー」
「うーん、まぁそうだよね……じゃあ、桃井さんこれで!」
「モモ、じゃあね!」
「うん! バイバーイ!」
(安藤くん、サクラ。あとは上手くやってね……私、応援してるんだから)
「六時過ぎてるのにまだ暗くないね……」
「そうね。もう直ぐ、夏だからかしら?」
(桃井さん……俺に気を使ってワザと二人っきりにしてくれたんだろうな。だって、桃井さんの家ってあの方向じゃ遠回りだろうし……)
(モモったら……変な気を使って! 何よ……安藤くんに変なちょっかいかけてると思ったら……別れた後にこっそり応援のメールなんか送って来たりして……)
「…………」チラ
「…………」チラ
((め、目があった!?))
「あ、あはは……」
「うふふ……」
((どうしよう……なんか、二人っきりになったら緊張してきちゃった!))
「ろ、ロミオは良くこの辺は通ったりするのかしら!?」
「うん、そうだねジュリエット! 今日来た映画館はよく一人で観に来たりするから、この辺の道も結構知っているよ!」
「そ、そうなのね……」チラ
「う、うん…………」チラ
(ど、どうしましょう! 緊張して上手く会話ができないわ!)
(朝倉さん、緊張しているのかもう課題は終わったのにやっぱりロミオ呼びが抜けてないな……仕方ないから一応俺もジュリエット呼びであわせているけど、流石に明日には呼び方いつもの『安藤くん』呼びに戻るよね?
でも、そういえば今日のデートも課題も結局は朝倉さんの『大根役者問題』を治すのが目的だっけ……)
「ねぇ、ジュリエット」
「何かしら、ロミオ?」
「今日一日、実際に『ロミオ』と『ジュリエット』呼びでデートしてみたけど……その、演技はできそう?」
「うーん、どうかしら……正直、私も自分の演技は何とかしたいのだけど……やっぱり自信は無いわね」
「そうか」
「なぜかしら……なんとかジュリエットになって演技しようと思うのだけど、いざ演じると役に成り切るのが難しくて……」
(役に成り切るのが難しいか……朝倉さん、結構それを気にしてたんだな)
「ジュリエット、良かったらこっちに小さな公園があるんだ。そこに寄っていかない?」
「え、公園? まぁ、いいけど……」
(安藤くん、何で公園なんかによるのかしら?)
「ほら、ここだよ。知ってた? こんな所に公園があるって」
「まぁ、意外と立派な公園ね。こんな人気の無い道に公園があるって知らなかったわ」
「実は俺って、こういう人気がない道を通るのって好きなんだ。なんか、こんな意外な場所に公園とか見つけるとワクワクしない?」
「そうね! 自分の住んでいる所とかに知らない道や場所を見つけると楽しいわね!」
「そうそう! それにこの公園はあまり人が来ないから静かで落ち着けるんだ……よかったら、この公園で少し休憩してもいいかな?」
「ええ、こんな素敵な公園を見つけたら休憩しないと損よね!」
(二人で公園に来ておしゃべりとかまるで本当のカップルみたいだわ)
(せめて、この公園で少しでも朝倉さんの心が休まればいいな……)
「それでね! その小説なんだけど書籍化したらロボのデザインがまるっきり変わっちゃったのよ!」
「あー、それねー」
「あとはね! 他の小説で、私は面白いと思うのに、ネットだと擬音を使いすぎとか批判が多くて悲しくなるのよ!」
「あー、あるあるー」
「それとそれとそれとね! 最近だとタイトルに『チート』とか『転生』が入ってると直ぐに『なろう乙』とか言われて馬鹿にされるのも腹立つわ! テンプレの何がいけないのよ!」
「それなー」
(ヤバイ、朝倉さん相当何かでストレスでも溜まっていたのかいつの間にか朝倉さんの愚痴大会になっているんだけど……)
(ふぅ――っ! もう、デート中はずぅうううううっと! モモが安藤くんに張り付いていたから迂闊にラノベの話はできないし、安藤くんはモモの胸をチラチラ見るわでストレス溜まっていたのよね! やっと、ゆっくり安藤くんとラノベの話ができるわ!
それにしても安藤くんったら、私がすこし寄りかかっているからって……モモの胸だけじゃ見たりないのか……わ、わわ、私の胸元までこっそりチラチラ見るんだから! もう、しょうがないわねー? プンプンなんだから! で、でもぉ……安藤くんも男の子な訳だし? た、谷間くらい……少しは大目に見てあげるわ!
フフン♪)
(朝倉さん、胸元がスカスカだから……ぶ、ブラが見えてる!
これ、言った方がいいのかな……?)
【おまけss】もしかの「もしも、朝倉さんが異世界転生したら」
「う……ここは?」 キョロキョロ
「目が覚めましたね」
「え、貴方は……委員長?」
「いいえ、私は委員長などではなく神様です」
「いや……委員長よね?」
「神様です」
「でも、委員ちょ――」
「神様です!」
「あ、はい……じゃあ、何で神様がいるのかしら? そもそもこの真っ白な空間はどこ?」
「説明しましょう。ここは天国です。貴方は天界の天使がうっかり地上に落っことしたバナナの皮を踏んで滑った拍子に頭をまっ平らな壁にぶつけて死んでしまったのです」
「どえぇえええええええええええええ!? 何よ! その変な死因は!? てか、天使が落としたバナナの皮って、私は天使の所為で死んだってことなの!?」
「はい……どう考えても貴方の死んだ原因は私達のミスです。せめてもの償いとして元の世界は無理ですが、貴方を別の異世界に転生させたいと思います」
「ふぇ! て、転生!? ま、まさか……その世界には魔法とかあったり?」
「はい、あります」
「じゃ、じゃあ! エルフとかゴブリンもいたり……」
「はい、あります」
「そそ、それに安藤くんなんかもいたりして――」
「います! 当然です」
「嘘でしょ!?」
(いやったあああああああああ! 最初に死んだって言われた時はどうなるかと思ったけど、まさかの異世界転生!? っは! って、ことは……もちろん?)
「ち、因みになんだけど……転生するってことは何かチート的なものはもらえるのかしら?」
「もちろんです! 私達の力の及ぶ範囲で貴方の望みどおりのモノを転生特典としてつけてあげましょう」
「き、キターーッ!」
(やっぱり、お約束どおりチート能力がもらえる展開キタわ! し、しかも、何でも好きなものですって! い、一体何をお願いしようかしら……やっぱり、欲しいものって言ったらあれよね……)
「さぁ、貴方の望むモノを言いなさい……どんな願いでも一つだけ叶えてあげましょう」
(私の欲しいもの――それは!)
「モモよりも大きな巨乳にしてください!」
「その願いは私の力を超えています……
不可能です!」
「は……?」
「…………さらば!」
神様はいなくなった。
「…………は?」 スカーン
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