第70話「スマイルもタダじゃない」




「ありがとうございましたー」


(あー、バイトだる~い。もうホント、カレシと別れてからいい男は見つからないし……友達はカレシ優先で女の友情なんて無いし……ホント、バイトしかやることないわー。カフェのバイトとこのレストランのバイト掛け持ちしてるから、お金だけ溜まっていくし……虚しい)


 カランカラン♪


(はっ、お客さんが来た! 接客しなきゃ!)


「いらっしゃいませー」 ニコッ!


「とりあえず、この三階にあるサイセリアでご飯にしようか?」

「いいわね! サイセリアって、イタリアンなイメージでお洒落だし、レストランの中でも値段が良心的だから学生の私達には助かるのよね」

「あははー、サクラなにそれ? なんだか何処かのステマみたいー」


(うげぇ! あの客は前に私が駅前のカフェでバイトしている時にであったカップル……って、何か女が一人増えてるし!? 何、あの巨乳は……一体何を食べればあんな育つんだよ! くぅ……あの巨乳を見ると前のカレシに振られた思い出が――)


『ゴメン、俺……Bカップ以下は女って認めない主義なんだ』


(じゃあ、最初っから付き合うなよ! ふざけんなよ! 確かにパッドで誤魔化してた私も悪いけどあのセリフは無いだろうが! くっそう……前回も一緒にいた彼女の方は私よりも胸無さそうなのに、今回増えてる方の胸は反則でしょ! ケンカ売ってるんかワレ!)


「さ、三名様ですね……こちらの席へどうぞー」 ←無表情


「やったわ! テーブル席よ!」 ギチギチ


「ちょうどピークが少し過ぎてるみたいだから席が空いていたんだね」

「サイセってピークは凄い混むから偶に席が分かれる時とかあるもんねー」 むにゅむにゅ


(……ん? てか、この三人組みどういう関係なの? 何か二人の美少女が真ん中の冴えない男を取り合うかのように抱きついているけど……もしかして、修羅場? でも、その割にはお互いにニコニコしているし……てか、何でこんな美少女二人がこんな冴えない男を取り合ってるの! 私にはまだ新しい出会いも無いのに世の中不公平すぎィイイ!)


(何かさっきから店員さんが睨んでくるんだけど……やっぱり、こんな美少女二人から両腕に抱きつかれている男って周りから見たら、凄いスケコマシ野郎に見えるんだろうな。実際はただのモテない『ぼっち』だと言っても誰も信じてくれなさそうだ。トホホ……

 さて、このテーブル席は最大四人が二人づつ向かい合うように座るタイプだから、まず俺が座ってその向かい側に朝倉さんと桃井さんが座れば……

 ふぅ、やっとこれで俺の両腕が解放されるな)


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【理想】

 俺

「テーブル」店員

 朝 桃


【現実】

 朝俺桃

「テーブル」店員


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「ご……ご注文はお決まりでしょうか…………」 ←無表情

「さて、何を頼もうかしら?」 ギチギチ

「………………」

「何にしよーう? 迷うなー?」 むにゅむにゅ



((どうして、こうなった!))



(いや、おかしいでしょ! 普通はここで男女で席分かれるよね!? てか、二人がけに三人で詰めて座るから胸だけじゃなくて、朝倉さんと桃井さんの体のいたるところが接触して超ヤバイんですけどぉおおおお!)


(ハイ死ねーっ! 市ねじゃなくて、死ね! このスケコマシリア充野郎がぁああ! お前みたいなモテモテ野郎が私のいる店に来るんじゃねぇええええ! テメーには……絶対にスマイル売ってやんねーから!)


「じゃあ、私は温たまカルボナーラにするわ!」 ぎゅうぎゅう

「お、俺は……ビーフシチューオムライスで」

「私はー、ハンバーグプレートのセットにしようかなー」 むぎゅむぎゅ



(そして、この一時間が私にとっての地獄の始まりだった)



「ご注文の品、お待たせしましたー」 ←無表情


「モモ、貴方って意外と食べるのね?」

「うーん、そうだねー。私って結構食べる方なんだー……

 ほら『育ち盛り』だからねー♪」 ドドーン

「うぐっ……」 テーン


(まっ、何処とは言わないけどねー♪)

(カッチーン……)


「あらあらあら……そうなの? モモは育ち盛りでいいわね~~私って、ほら?

 モモとは違って『無駄な脂肪』が付かない体質なのよね」


(まっ、何処とは言わないけどぉ?)

(カッチーン……)


「わ、わー二人とも美味しそうだよ? 食べようよー」


(お、俺は――どんな『おっぱい』でも美味しそうだと思います……よ?)


「あらあら、うふふ……」 ぎゅうぎゅう

「もー、サクラたら……ねー?」 むぎゅむぎゅ



(その後も店の中でイチャイチャと……)



「はーい、安藤くん♪ これあげるー『あーん』して♪」 むぎゅー

「ひゃ! 桃井さん!?」

「ちょ――モモッ! なら、こここ、こっちだって! ははは、はい!

 あ、『あーん』…………して?」 ぎゅーっ!



(そして、食事が終わったと思ったら……)



「安藤くーん? 実はさっき、サクラを名前で呼んでいたのに気付いてたー?」

「はっ!? マジで!」

「え、モモ……それって、本当!?」

「うん! てか、やっぱりサクラは気付いてなかったんだねー……」


(まぁ、あの時はアレ以上あの場所で目立ちたくなかったから、後で場所を移した時に罰ゲームは取っておこうと思ってたんだよねー)


「って……ことは?」

「こ、事は……っ!」

「うん、そう!」


「「運命の罰ゲーム!」」


「うわぁああああああ! ミスったぁああああああ!」


(ふっふっふ! 散々、安藤くんをからかってサクラを挑発した後に、安藤くんからサクラへの愛の言葉! これを聞けばサクラも今までの私の挑発も忘れて機嫌を直してくれるよねー)


「じゃあ、どうぞ!」

「わ、私はいつでも準備オッケーよ!」 ドキドキ

「…………」 ドキドキ


(くっ! やっと桃井さんが腕を放してくれたと思ったらこれかよ! 仕方ない……腹をくくるしか無いか。でも『愛の言葉』って何を言えばいいんだ? そうだ! ここは朝倉さんが相手だし、あの有名なラノベのセリフにしよう!)



「ジュリエット……僕らはやはり、二人で一人だったのかもしれない……奇妙な愛情すら感じるよ……

 今、二人の運命は完全に一つになった。そして、船の爆発で消える…………

 ――――愛……して…………る。ジュリエット……………」 



「ーーーーーっ!」 ズッギューーーーーーン!


(こ、このセリフは! あの超有名ラノベ作品『ジョンの奇妙な冒険』の第一部で主人公がヒロイン兼ライバル兼ラスボスのディオリナと最後の夫婦喧嘩(ラストバトル)で首だけになったヒロインを瀕死の主人公が『首だけになっても君を愛してる』と告げて船の爆発と共にこの世を去って第二部の冥界編につながるセリフだわ!)


「あ、安藤くん……? それなんだか死亡フラグっぽ――」

「最っ……高よ! 私もう死んでもいいわ!」

「――って、サクラはそれでいいの!?」


「……………」


(ゴチャゴチャイチャイチャと、うっぜえぇええええええええええええええええええええええ!)


「いらっしゃいませーーぇぇぇえええええええええええええええええええええええええええええ!」




(…………あれ、てか『ジュリエット』って何?)







【おまけss】「バイトさんの一日」



 十一時 起床


「あー眠ぅ。昨日、遅くまで飲みすぎた……まぁ、もちろん一人で宅飲みですけどね……はっ」



 十三時 大学で講義を受ける


「えー、この通り南アフリカには群馬と深い関わりがありまして――」


「…………」


(この講義マジで暇だわー。最初はイケメンの男子達がいたからこの講義を受けたけど、そのイケメン達も後半全然出席してないしマジでハズレだわー)



 十八時 バイト


「いらっせー」


(あーマジでバイトだる……)


 カランコロン~♪


(ファ! あのお客さん凄いイケメン!)


「いらっしゃいませ♪」



 二十二時 帰宅


「…………」


(今日も良い男はいなかったな……ん?)


「あ、こんなところに新しいコンビニが出来てる……」


(確かつまみとチューハイ切らしてたよね……? 自分へのご褒美に何か買っちゃおうか♪)



 カランカラ~ン♪


「…………」

「いらっしゃいませー」 ニカ☆


(あ、この店員さんめちゃイケメン……)


「…………」 ボケー

「あの、どうかしましたか?」

「え! あ、いや……こんな所にコンビニが出来たんだなーって思いまして……あ、バイトの募集もしてるんですね」

「はい、先週オープンしたばっかりなんです。オープニングスタッフとしてアルバイトも募集しているんですよ。よければどうですか?」 ニカ☆


(え! アルバイトのお誘い!? どどど、どうしよう……ただでさえ、今掛け持ちでバイトしてるけど――)


「や、やります! 私、ここでバイトします!」

「え、いいの?」

「うん!」


(でも、そんなことより出会いが優先だもんね!)



 こうして、彼女のバイトがまた増えた。




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