第69話「それでも、ぼっちは揺るがない」




「ねぇ、ジュリエット。何処かで食べるとしたらどのお店がいい?」

「うふふ……私はロミオの選んだお店でいいわ」 ギチギチ……


(そうか~。朝倉さん、腕を放してくれないな……めっちゃ、関節きまってるんだけどな……)


「ねぇ、桃井さん。何処かで食べるとしたらどのお店がいい?」

「あははー、私は安藤くんの選んだお店でいいよー」 もにゅんもにゅん♪


(そうかー。桃井さんも、腕を放してくれないな……めっちゃ、胸当たってるんだけどなぁ……)


「うふふ……」

「あははー♪」


(モモ! 貴方いつまで安藤くんの腕をつかんでいるのよ! 放しなさいよね!)


(サクラったら何を怒ってるのー? 安藤くんは誰とも付き合っては無いはずだよー?)


「わぁ……どのお店にしようか迷うなー……」


(ヤバイ! 何だこの状況は!? 右腕には朝倉さんが抱きついて俺の右腕を締め上げ、左腕には桃井さんが抱きついて俺の左腕にそのやわらかいおっぱいを押し付けてくる! そして、そんなハタから見たら超ハーレムな俺を周囲の男性客からものすっごい殺意の篭った視線を投げつけられるという恐怖!


【問題】

 右は天使が笑顔で腕を締め上げて、左は子悪魔が笑顔で腕におっぱいを押し付ける。そして、後ろを向けば有象無象の死線が襲い掛かってくる。

 コレって、なーーんだ?


 答えは俺の今の状況でしたー♪ って、喜べるかぁああああああ!

 畜生! こんな状況なんて『ぼっち』の俺にはありえないって十分に分かっているんだよ! それなのにこんな状況になっているのは全部、この左側にいる子悪魔の所為だ!


『あははー♪ 大丈夫ー、大丈夫ー。この桃井さんがチャチャっと安藤くんの恋が実るように協力してあげるからー』


 桃井さんってば! 俺の気持ちを知ったからって、ワザと朝倉さんを挑発しようとして、こんな……こんな素晴らしいおっぱいを押し付けてくれてマジでありがとうございます!

 きっと、桃井さんは自分があえて俺に必要以上にスキンシップを取る事で朝倉さんを挑発しようとしているんだろうけど……)


「ムキィイイイ! ちょっと、モモ! いい加減にハレンチだから私のロミオから離れなさいよ! べ、別にこれはロミオを貴方に取られるのが嫌とかじゃなくて……ろ、ロミオが私以外の『おっぱい』に惑わされるのが気に食わないだけなんだからね!」

「へ~~そうなんだー♪」 ニヤニヤ


(……桃井さんは一見、朝倉さんの反応を『嫉妬』だと思い込んでいるようだけど、それは違う! 朝倉さんの反応は『嫉妬』などではなく――自分の『おっぱいの価値』が下がるのを嫌がっているのだ!)



『私は誰かにそうやすやすと体を――ましてやおっぱいを触らせるような女じゃないのよ! なのに、私のおっぱいを触った安藤くんが学校でホイホイ他の女の胸を触ってたら、私の「おっぱいの価値」が下がるじゃない!』


『だから、安藤くんには私のおっぱいを触った責任として私のおっぱいの「価値」を守る為に軽々と他の女のおっぱいを触ったらダメなの!』



(そう、あれは忘れもしない。俺が事故で朝倉さんの胸を触ってしまった時のこと……あの時、俺は朝倉さんに『朝倉さん以外のおっぱいを触らない』という約束をしているのだ。それは朝倉さんが自分の『おっぱいの価値』を守る為の約束。

 なのに、約束をした俺が桃井さんの『おっぱい(デカイ)』を堪能している……そんな状況に、朝倉さんはきっと怒っているのだろう……

 大丈夫、勘違いなんてしない! ぼっち三原則を思いだすんだ俺!)


「あははー、安藤くーん♪」 むにゅん♪


(うわぁ~~い♪ やわらかーい!)


「ムキィイイイイ!」 ギチギチギチ


(いだぁだだだあだだ! ちくしょーーっ! きっとこれ、朝倉さんの胸も当たってると思うんだけど……関節のダメージで右腕の感覚がほぼ無くて、朝倉さんのかすかに柔らかい感触が全然わからねぇええええ!)


「うふふ……」

「あははー♪」

「…………」


(とりえず、何処でもいいから適当な店に入って腕を放してもらおう)






【おまけss】「メール2」



「ふぅ……やっと、文字数を極限にまで減らして安藤くんにメールを送る事ができたわ」


(しかし、我ながら冷静になって振り返ってみると、さっきはとんでもない内容のメールを送ろうとしていたわね……本当に、送る前に一度冷静になれて良かったわ)


「後は安藤くんの返事を待つのみね!」


(……因みに送ったメールの内容はこれで問題ないわよね?)



『安藤くん、こんばんは。

 メールが遅くなってごめんなさいね。実はさっきまで、お風呂に入っていたの。だから、少しメールをするのが遅くなってしまったわ。

 ところで、安藤くんはメールが来るまで何をしていたのかしら?

 家にいる時の安藤くんを……知りたいです』



「ウキャァアアーーッ! 私ったら……私ったら何て大胆なメールを送ってしまったのかしら! こんなの……『貴方が好きです』って言っているようなものじゃないのよぉおおお!」


(うぅう~~っ! メールなら素直になれるかも……って思ったけど素直になりすぎよ!)


 スカスカスカーン♪ ←着信音


「は! 今度こそ安藤くんからの返事が来たわ! あ、安藤くんは何て――」



『「英霊教室」ってラノベ読んでました』



「…………」



 その頃の安藤くん



「しかし、俺が家にいる時に読んでるラノベが知りたいなんて……朝倉さんは本当に、ラノベが好きなんだな~」



 スカァ~、スカァ~、スカァ~ ← カラスの鳴き声です。


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