第68話「無乳」




「ぷんぷん!」

「ジュリエット! 本当にゴメン! ちゃんと後で桃井さんに居場所を送ってもらおうとしていたんだよ。でも、ちょっと話が長引いちゃって……」

「フーンだ! そうね。ロミオは私なんかと一緒にいるよりモモと一緒にいる方が楽しいモンね? フーンだ!」 ぷんぷん!


(あっちゃ~~朝倉さん、すっかりヘソを曲げちゃったよ……それも仕方ないよな。だって、桃井さんとの話が終って気づいた時には――)



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「あれ? 安藤くん、そう言えばサクラこっちに来るの遅くない?」

「うあ! そうだった!」

「え!? 安藤くん! いきなり何処に行くの!?」


(あの時、朝倉さんは絶対に俺の話を聞いていなかったから、ここに来ないって事はまだ三階で俺達を探しているに違いない! 早く迎えに行かなきゃ!)


(安藤くん、足早っ! 三階まで凄いダッシュしてる!)


「着いた! ジュリエットォオオオ―ーーーッ!」



「ふぇぇ、皆ぁ……どこ――っ! この声は、ロミオ!」



「ジュリエット!」

「ロミオ!」


(朝倉さん!)

(安藤くん!)


「迎えに来るのが遅くなってゴメンなさい!」

「もう! 何処に行ってたのよバカァアアアアアアア! うわぁああああああああん! ワタジィ……ワダジざみじがったぁあああああああ! うわぁああああああん!」

「俺が目を放したばっかりに……ゴメンね。ジュリエット」

「わ、ワダジも……一人になっても気付かなくてゴメンなざい……」 


(今後、買い物に夢中になった朝倉さんから目を離すのは止めておこう……)

(これからは、買い物に夢中になっても絶対に一人で行動しないって決めたわ!)


「もう、大丈夫だよ。ジュリエット……決して君を放さない!」

「ろ、ロミオ……私も絶対に貴方から離れないわ!」



 周りのお客さん『ワァアアアアーーーーーーッ!』 パチパチ~~



「…………」


(ロミオとジュリエットで呼び合っている所為かなー? 周りのお客さんが何かの劇の再会シーンかと勘違いして拍手してるけど……これただ迷子のサクラが安藤くんに無事保護されただけだからねー……。

 とりあえず、状況が落ち着くまでは他人のフリしてよーうと♪)



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(――てな、事があって一階のカフェテリアスペースに戻って落ち着いた今……)


「べ、別にあれは気が動転していただけで……ろ、ロミオに抱きついたのは私が一人でいるのが寂しかっただけでそれ以上の気持ちなんかこれっぽちも無いんだからね!」

「うんうん、大丈夫だよ。ジュリエット……そこまで念押しされなくても分かっているから」


(うぅ……寂しさのあまり、安藤くんを見つけたとたんに抱きついちゃったけど……私の気持ちバレて無いわよね?)


(そういえば、朝倉さんって怖いの苦手だったもんな。きっと、いきなり一人ぼっちになったのが相当トラウマになってしまったんだろう)


「えーと……二人はそれでいいのかなーって、私は思うんだよねー……」


(はぁ、こりゃ進展しないわけだねー)


「もう、サクラもいい加減に機嫌なおしなよー。大体、元々は話を聞いていなかったサクラが悪いんだからねー? てか、そもそも何で二人は連絡先を知らないの?」


(安藤くんも、前々からサクラの連絡先を聞いておけばこう言う事にはならなかったのにねー)


「そ、そうよ! ロミオ! 連絡先交換しましょう! モモの言うとおり、今回の最大のミスはお互いの連絡先を知らなかった事が一番の大問題よ! よって、この場で連絡先を交換すれば今後、はぐれても安心じゃない!」

「いや、ジュリエット……はぐれるのはダメだからね? でも、連絡先か。うーん」


(流石はモモだわ! これで今まで聞きたかったけど、何度も聞こうとして断念していた安藤くんの連絡先が聞けるわ!)


「…………」


(安藤くん、サクラに連絡先教えるの渋っているみたいだけど、何か問題があるのかなー?)


(これ、連絡先って交換したら……自分が登録しているアドレス帳の数とかバレたりしないよな……?)



【安藤くんのアドレス帳の登録件数】(昨日の時点)


①「俺」

②「妹」

③「家」


 以上!



(バレたら嫌だけど……朝倉さんと桃井さんの言い分ももっともだし、朝倉さんのことだから俺が目を放さないようにしても今後お互いがはぐれる可能性は大いにある……)


「……そうだね。交換しようか?」

「――っ!?」



(ついに……安藤くんの連絡先が――っ! いいいやったぁあああああああああああああああああああああ!

 朝倉ちゃん大勝利ーーっ!)



「ど、どうしたの……ジュリエット? いきなり、立ち上がったりして……?」

「へ? あ……ちがっ! これは違うのよ! き、気にしないで……そう! 天井に蚊が居たのよ! だから、ちょっと私の昇●拳で追い払っただけなんだからね!」

「そ、そうなんだ……」

「ぷっ……ぷぷ…………」プルプル


(うわぁ……久々に朝倉さんの謎行動でたなぁ……)


(さ、サクラ……分かり安すぎよ! て、てか……安藤くんは何でこれで気付かないの!?)



【連絡先交換中】



「はい、これで交換できたね?」

「うん! これでいつでもロミオに連絡できるわね……って! べ、別にだからと言って、私がそうやすやすとメールを送る女だと思ったら大間違いなんだから、勘違いしないでよね!」

「朝倉さん、大丈夫だよ。だって、俺メール苦手だから」

「え”……」

「あー、そういえば安藤くんってそういうイメージあるよねー」

「うん、何か今まで『ぼっち』だったからそういうのなれてないんだよね」


(お、終ったわ……まさか、安藤くんがメール苦手だったなんて……じゃあ、連絡先を交換した意味なんて無いじゃない!)


「うーん、じゃあこの機会に練習してみたらどうかなー? メールって学校だけじゃなくて社会に出てからも使うでしょーう? むしろ、社会に出た時の方がお仕事とかで使いそうだしやってみようよ。安藤くん」


(モモ、ナイスよ!)


「うーん、練習か……」

「そ、そうよ! ロミオがどうしてもと言うのなら……そ、その、私もロミオにメールを送るのもやぶさかでもないような、そうでもないような、なくもないような……そんな気がするわ!」

「う、うん……じゃあ、これからはメールもしてみようかな……」

「本当ね!」

「うんうん……」

「じゃあ、決まりね~♪」


(やったわぁあああああああ! これで、安藤くんとメールもできる! くぅううう! これはまたまた、朝倉ちゃん大しょ――)


「じゃあ、安藤くん。私からもメールするから返事してねー?」

「分かったよ。桃井さん」


(――へ?)


「ちょっと待って! な、何で……モモが既にロミオの連絡先を知っているの?」

「えー? 何でって……サクラを探す前に私が安藤くんと連絡先を交換してたからだよ♪」

「――――っ!?」 ←声にならない声


(ななな、なんですってええええええええええええ! っじゃ、じゃ……私よりもモモの方が先に安藤くんの連絡先を……)



【安藤くんのアドレス帳の登録件数】(朝倉さんと交換する前)


①「俺(本人)」

②「妹(家族)」

③「家(家族)」

④「桃井さん(友達)」 ←New



「えへへ~サクラごめんねー?」

「――っ!?」


(安藤くんの初めて……の友達枠、もらっちゃった♪)

(カッチーン! モモ……貴方はこの私を怒らせた!) ゴゴゴゴ……


「えへへ~~」

「アハ、アハハ……」

「っ!?」


(え、何この空気……ヤダ怖い!)


「ねぇ、安藤くん! そろそろお腹へらない? 何処か食べに行こうよー?」 もにゅん!

「ももも、桃井さん!」


(桃井さんが腕に抱きついてきた! 腕が! 俺の腕が――桃井さんのおっぱいに沈んで、いる……だと……!?)


(ムキィイイイイイイイ! モモ! 何てハレンチなの! 卑怯よ! 貴方がその気なら私だって……っ!)


「わわわ、私もお腹へったわね~、モモの言うとおり何処かで食べましょうか?」 スカッ!

「え、ちょっと! 何で! ジュリエット――まで…………」


(朝倉さんも! 抱き、ついて……きた……ぞぉ?)


「……………うん」 チーン


「え、ロミオ……?」 スカスカ

「ぷぷーっ!」


(サクラ……元気だしてね?)


「――っ!?」


(モモ! 貴方何笑ってるのよ! 安藤くんもそんなに巨乳の方が好きなのッ!!) プッツ――――ン!


「あらあらあら……ねぇ、ロミオ。そんなに大きいおっぱいが好きなのかしら……?」

「へ!? なな、何を言っているんだい? ジュリエット…………さん」

「あらあら……隠さなくてもいいのよ? だって、そんなに鼻の下伸ばしちゃってるんですものねぇ~?」

「や、やだなぁージュリエット……そんなことナイヨ?」

「あらあらあら…………本当に、ロミオはおっぱいが好きなんだから……ねぇ~~。私、少しだけ……妬・い・ちゃ・う・ぞ♪」


(え……妬いちゃう? 朝倉さんが? 何――――)


「ムッキィイイイイイイイイイイイ!!!」 ぎゅうううううううう!

「いっーーーーたいだいあたいあだいあただい! 関節! 関節!? 関節きまってるから! ジュリエット、すとぉおおおおおおおおおおぷ!?」


(あははー……少し、サクラを挑発しすぎちゃったー、テヘ♪)








【おまけss】「メール」



「つ、ついにゲットしてしまったわ…………」



【朝倉さんのアドレス帳】


1件目「私」

2件目「ママ」

3件目「モモ」

4件目「パパ」

108件目「安藤くん」 ← New



「キャホォオオイイィイ! ついにゲットしたわ! ああああ、安藤くんの連絡先!」


(フフフ……しかも、これから『安藤くんのメールの練習』と言う建前で彼にメールを送る事も了承済み! なんて素晴らしいのかしら! 彼の連絡先を手に入れるだけでなく、連絡してもいい理由までゲットできるなんて!)


「こ、このチャンスを逃すわけには行かないわよね……」


(今日はまず手始めに軽いメールを私から安藤くんに送る約束よ……さて、まずはどんな文面にしようかしら?)


「あーじゃないわね……うーん、こうでもないわね……」 ブツブツ


(もっと、こう……メールに慣れてない安藤くんでも安心して返せるような軽い文章を……)


 二時間後


「で、出来たわ!」



『拝啓 安藤様

 この度は、夜遅くにこのような形でのお便り失礼します。

 さて、最近では夜も冷え込んできましたがいかがお過ごしでしょうか? 私は冷えた夜でも、貴方様の事を思うと夜でも胸が熱くなりあまり、寝付けません。

 あら、このような言い方をしてしまいますと、まるで私が貴方様を思っているように聞えるかもしれませんが、別にそのような意味はございませんので、お間違いないよう宜しくお願いいたしますね? 

 さて、本日は私の演技力向上のためにお時間をさいてくださり、誠にありがとうございました。貴方様と過ごした今日の一時は私の大切な思い出となる事間違いないと思われます。

 あらあら、またまた、このような事を書いてしまいますと、まるで私が貴方様に恋焦がれているかのように思われるかも知れませんが、別にこれは私個人が恩義を感じているだけであり、そのような恋慕の情は一切関係ないので、お待ちがえないよう宜しくお願いいたします。

 さてさて、先ほど私は夜はなかなか寝付けない事が多いと書きましたが、貴方様はいかがお過ごしでしょうか?

 もし、お返事の内容が特に思い浮かばないのであれば、貴方様の夜のお姿などを書いていただけると大変よろしいかと思います。

 別段、これは私が個人的にお伺いしたいと言うわけでなく、お便りの返事に迷う時はその時のご自身の状況を書くとよいと言うアドバイスであり、本当にこれっぽっち微塵も私個人が知りたいと言うわけではございませんので、お間違いないよう宜しくお願いいたします。

 で、話は戻りますが夜の貴方様は一体どのようなお格好をされているのでしょうか? 寝巻きでしょうか? それとも、浴衣? ま、まさか一糸まとわぬ状態だとでも……因みにですが、私は――』 ←まだこの三倍以上続きます



「うんうん! なんだかいろいろ悩みすぎて良く分からないけど……結構上手くかけた気がするわ!」 ←メールの文章を考えすぎてて頭がポンコツになっています


(さ、さて……送るわよ!) ピッ!


「…………」


 スカスカスカーン♪ ←着信音


「もう、返事が着たわ!」


(こ、こんなに早く返事を返してくれるんなんて……なんだ、安藤くんったらメール得意なんじゃないの?)


「どれどれ~安藤くんは一体どんな返事を――」



『このメールは文字数がオーバーしている為、送信できませんでした』


「…………」



 その頃の安藤くん



「朝倉さんのメール、来ないなぁ……」



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