第60話「バカ、正直」
「モモ! 私の演技どうだったかしら!」 エッヘン!
「あ、あははー、うん凄く斬新だったよー」
「そうかしら! えへへ、もうそれほどでもないわよ~~」
「あははー」
クラス一同『(…………)』 シーン
「お、おい……委員長どうするのこれ? 朝倉さんの演技……」
「そう言われてもジュリエット役は朝倉さん以外できないし……本人に事実を伝えて練習させるしかないでしょう」
「ねぇ、委員長? サクラに事実を伝えるって言うけど、一体誰があのサクラに『演技が下手だから練習して』って言えるの?」
「それは……安藤くん?」
「俺!? 無理無理無理! てか、何で俺なの?」
「「そりゃあ……安藤くんが言えなかったらこのクラスで言える人なんていないでしょう?」」
「委員長と桃井さんがハモった!? え、それほど! まぁ、確かに……あの朝倉さんに演技が下手なんて言える奴はこのクラスには――」
「わっはははは! 朝倉さん、それはマジでやばい! え、朝倉さんってそんなに演技下手だったの!? それでジュリエット役大丈夫? あ、そうだ! 良ければ俺が演技を手取り足鳥教えてもいいんだぜ☆」
「え……山田くん、今なんて……?」
『や、山田ァアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!』
「ちょ、お前バカ! この野郎! お前は何て事を言っているんだ! この大バカが!」
(山田……今日ほど、お前がいて良かったと思った日はないぜ!)
「そうよ、山田くん! いくらなんでも、言っていい事と言いづらい事ってあるのよ! もう、本当に空気が読めないんだから!」
(まさか、山田のバカが役に立つ日があるとは思わなかったわ)
「もーう、山田くんったら本当に空気が読めないんだからー、自分の役割を分かってないのに実行できるなんて本当におバカなんだからー」
(山田が空気読めなくてよかったー)
「え、なんだよ皆! え、俺そんな責められる事言った!? だって、朝倉さんが演技下手だったのは本当だろ!」
クラス一同『山田! お前はもう黙ってろ!』
「何でだぁああああ!」
(しかし、問題はここからなんだよな……朝倉さんが大根役者なのはきっと演じる役に自己投影ができていないからなんだ。朝倉さんはただ台本を覚えているだけでそれを音読しているに過ぎない……だから、それを改善する為には覚えたセリフを読み上げるのでは無く、実感した上で心から言わないといけないんだけど……)
「っ! ……ねぇ、委員長。私にいい提案があるんだけどなー」
「何かしら、桃井さん? ふむふむ……それはいい考えね」 ニヤリ
「でしょう」 ニヤリ
(うぅ……なんだろう。凄い悪寒がする) ブルブル
「嘘……もしかして、私の演技力低すぎ?」
【おまけss】「ポイント」
「朝倉さん、おはよう。ふぁ……」
「安藤くん、おはよう。あら、何か凄い眠たそうだけど朝からどうしたの?」
「ああ、やっぱり眠そうに見える? 実は昨日電子書籍でラノベを結構買っちゃってさ……積みラノベが増えちゃってたから夜遅くまでラノベ読んでたんだ」
「もう、そんな寝不足になるまでラノベ読んでちゃダメでしょ? 因みに電子書籍でラノベを結構買ったって言ったけど……何冊くらい買ったのかしら?」
「うーん、ざっと一万円くらいかな?」
「いっ、一万円分!? 何でそんな一気に買ったのよ? 何かの長編シリーズとかかしら?」
「いやいや、実はね。俺が使っている電子書籍のサイトって購入した金額にたいして何%のポイントが付くんだよ」
「ああ、そういうの結構あるわね。それってポイントで購入もできるんでしょう?」
「うん、1ポイント一円で使えるんだけど……実は昨日だけの一日限定でそのポイントが90倍になるキャンペーンをやっていたんだよ」
「90倍!? そ、それは凄いお得ね……」
「うん、でも昨日俺がそのキャンペーンに気付いたのが夜中の二十三時でさ……」
「え、それって昨日だけのキャンペーンなのよね? じゃあ、一時間も残ってないじゃない!」
「そう! それで、急いでキャンペーン対象の作品のラノベをリストアップして終ったら既に時刻が二十三時五十五分! もう……後先考えずに決済ボタン押しちゃうよね」
「それで一万円分もラノベを購入したと」
「うん」
「でも、ならポイントも結構溜まったんじゃないかしら?」
「そうなんだよ! おかげで9000ポイントも溜まっちゃった!」
「だけど、それって結局お得なのかしら? 確かに九千円分のポイントは溜まったかもしれないけど実際に安藤くんは遣う予定の無い一万円を使ってるわけだし……」
「いやいや、朝倉さん。それが実は違うんだよ」
「どう言う事?」
「俺って電子書籍はいつも口座引き落としじゃなくて、あらかじめ月の始めに一万円分のポイントを変換してポイントを使って電子書籍を購入しているんだ。それでさ、昨日も実は月初めだからそもそもポイントを一万円分購入しようと思って電子書籍のサイトを開いたわけよ」
「って、ことは……安藤くんはそもそも、昨日の時点で一万円分のポイントを買う予定だったってこと?」
「そういうこと! 一万円分のポイントを購入するとボーナスでポイントが千円分付くから、俺みたいに電子書籍で毎月一万円くらい使う奴はあらかじめポイントを購入した方がお得なんだよね。だから、俺からしたら一万円で一万千円分のポイントを購入する予定だったのが……」
「実際は一万円で一万円分のラノベと九千円分のポイントを購入したのに変わっただけということね……」
「そういうこと! そう考えるとお得じゃないかな? だって使う予定だった金額は同じ一万円で結果はポイントこそ二千円分少なくなったけど」
「一万円分のラノベは既に購入してるわけよね……」
「そう! つまり、俺は昨日のキャンペーンで一万九千円分のポイントを手に入れたと言う言い方も出来るわけさ!」
(つまり、俺はつい衝動買いしちゃったけど何も間違えてはいな――)
「安藤くん……それって多分、課金する人の発想よ」
「……はい」
「あと、買っちゃったものは仕方ないけど……それで、夜更かしでラノベ読んで寝不足になるのはいただけないわね……学生の本分は勉強なのだから、もう少し私生活はしっかりした方がいいわよ?」
「はい、すみません……気をつけます」
(うん、やっぱり、この理論無理があるよな……はぁ、ついキャンペーンだからって普段買わないようなラノベとか買いすぎたぁぁああああ!)
「………………」
(委員長として、朝から朝倉さんと安藤くんが何を話しているのか遠目から観察していたけど……安藤くんって、意外と将来は朝倉さんの尻に敷かれるタイプね)
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