第57話「Shall We Dance?」
「ね、ねぇ……安藤くんはホントの本当に! ゆ、幽霊が見えないの?」
「うん、だから本当に見えないんだって」 ←ウソ
「で、でも……」
「ぁ――――――」 ピョンピョンピョン
「こんなに後ろからピッタリ付いてきてるのにィイイ!?」
「そんなこと……イワレテモナー?」
(てか、桃井さん普通に俺らが通り過ぎたら後ろから付いてきたけど……)
「ぁ――――――」 ピョンピョンピョン
(その歩き方、幽霊じゃなくてキョンシーだから!)
「うぅ、幽霊が……幽霊が後ろから付いてくりゅぅ……」 ぷるぷる
「…………」
(朝倉さんも気付こう? その幽霊どう見ても日本式でしょ? 日本の幽霊そんな小刻みにハネたりしないでしょう?)
「あ、安藤くん……」
「何?」
「い、今更な気もするんだけど……その、私が貴方の腕にしがみ付いているのは……べ、別に幽霊が怖いとかじゃないのよ!」
「へー、ソウナンダー」
「あ! ちょ、その言い方は信じてないわね! か、勘違いしないでよね! これは別に怖くてしがみ付いているわけじゃなくて……そ、そう! 安藤くんには見えていないから分からないだろうけど、あの幽霊は安藤くんを狙っているの! だから、私が安藤くんが幽霊に持っていかれると寂しいから、持っていかれないようにとしがみ付いてあげてるだけなんだからね!」
「なにそれ! 俺、その幽霊に狙われてるの!?」
「そうよ! だ、だから、安藤くんは私から離れちゃダメなんだからね!」 ぷるぷる
(朝倉さん。俺なんか頼りないだろうに、そこまで怯えるほど幽霊が苦手なんだな。
うーん、流石にかわいそうだし、どうにかして安心させてあげたいけど……いまさら、あの幽霊は偽者で俺が見えてないフリしてるって言ったら、グレムリン化した朝倉さんにぶっ殺されかねないからな……)
「朝倉さん。じゃあ、少しだけ腕を放してくれる?」
「え……あ、安藤くん!」
(そんな……急に私の手を握って)
「ずっと、腕を抱きしめても歩きづらいでしょ? だから、手を繋ごう。俺には幽霊が見えないから俺が幽霊に連れて行かれないように手を握っててよ」
「安藤くん……」
(安藤くんの手、温かい……)
(いい加減、朝倉さんに抱きつかれっぱなしだと……良い匂いはするわ、朝倉さんが怯えて強く抱きつくたびに、何か柔らかい感触が伝わるような……伝わらないような……? そんな微妙な焦らしプレイをくらって俺の理性がどうにかなりそうだったし、これなら朝倉さんも少しは落ち着いてくれるといいんだけどな)
「え、えへへ……なんか、こうして手を繋いで並んで歩くと二人でしたデートの事とか思い出しちゃうわね」
「――っ! あ、朝倉さん!」
「ひゃあ! あ、安藤くん!?」
(ななな、何! 安藤くんが急に私を抱きしめて……こ、このままだと私! 私! 私しぃい、心の準備がぁああああああああ!?)
(アカン……今の朝倉さんの笑顔で理性が吹き飛んでしまった……ここは委員長も桃井さんも見ているんだ。もし、こんな所で朝倉さんに手を出したら俺の学校での命は――――)
「あ、安藤くん……」
「はっ! 朝倉さん、ゴメン! 今すぐに――」
「その、優しく……してね?」
「……………………」 ポキ ←心の何かが折れる音
(命、燃やすぜ!)
「朝倉さん!」
「ひゃ、ひゃい!」
「ぁ――――?」
((…………ん?))
「ぁ――――?」
「って、いニャァああアアアアアアアアアアアアア! ああああ、安藤くん! 幽霊がいつの間にか安藤くんの真横から安藤くんを睨みつけてるわぁああああ!」
(うぉ! ビックリした……桃井さん、何やってるの!)
(そ・れ・は・こっちのセリフだよー? もうねー、何か良い雰囲気だったからー、ここはオバケ役として空気をぶち壊さないとって思ってーね? だって、人が一生懸命オバケやってるのに目の前でイチャイチャされたら邪魔したくなるでしょー?)
* お互いに空気を読んで会話してます。
(いや、気持ちは分かるけど……てか、俺も確かにやばかったしね。でも、この肝試しってそもそもそれが目的じゃなかったの?)
(てへへー、そうでしたー、私ったらうっかり! てへぺろ☆)
(幽霊が『てへぺろ☆』すんなよ……)
* お互いに空気を読んで会話してます。
(とりあえず、ここは何とかして朝倉さんを誤魔化そう)
(そうねー)
* お互いに空気を読んで会話してます。
「朝倉さん、大丈夫? なんかまた幽霊が出たみたいだけど?」
「また出たんじゃなくてさっきからずっといるのよ! 今も、安藤くんのとなりに!」
「え、隣?」
「ぁ――?」
「いるいる! いま二人同時に『え?』って感じで振り向いたわ!」
「どこ? どこ?」
「ぁ―? ぁ―?」
「いやぁああああ! 二人同時に『どこ? どこ?』ってやってるぅうううううう!」
「あ、ホントにいた」
「ぁ―、ぁ――――」
「 」 ←幽霊2号
「え、何処を見て言って……て、ぎゃぁああああああ! 遠くの茂みにも幽霊がぁああああ!」
(桃井さんと同じ格好してるし、ここからだと距離がありすぎて胸の大きさの判別が難しいけど……あの大きさなら残りのメンバーからして委員長だな、だって、メガネかけてるし)
「ホップ♪ ステップ♪」
「ぁ――♪ ぁ――♪」
「うぴゃああああ! 二人で一緒に『ホップ♪ ステップ♪』してるぅううううう!」
「シャル・ウィ?」
「ぁ―う?」
「ぴにゃあああああああ! 二人でダンス踊ってるぅううううう!」
(このあと、朝倉さんが違和感に気付き、俺のダンスパートナーになった幽霊の正体に気付くまで数分ほど、俺と桃井さんのダンスは続いた)
【おまけss】「同棲」
「ねぇ、朝倉さん」
「安藤くん、何かしら?」
「最近さ……『同棲モノ』のラブコメ多くない?」
「…………凄い分かるわ!」
「だよね!」
(あ~やっぱり、朝倉さんならこの話題分かってくれると思ったんだよな!)
「流行なのかな……? 同棲モノのラブコメが出てきたのってここ最近だよね?」
「そうねー。何なのかしらね? 前までラノベのラブコメと言ったら学園を舞台にしたのが多かった印象だけど、最近は『同棲モノ』が増えて学園じゃなく主人公とヒロインの生活を舞台にした同棲モノラノベが増えた印象だわ」
「でも、あって実際には結構無理あるよね? だって、学生で同棲だよ?」
「そうね。実際に学生で同棲なんて……普通に無理ね。むしろ、だからこそフィクションでそれを読みたいと言うニーズがあるのかもしれないわね」
「あーそれはあるかもね」
「実際に、安藤くんも最近は同棲モノのラノベ読むのかしら?」
「そうだね。増えて来て流行なのかな? って思って何冊か手を出したよ。うん、確かに面白かったね。でも、同棲の理由に無理があるでしょ? って感じるのもあるな」
「まぁ、そこはフィクションだから仕方ないんじゃないかしら? むしろ、学生が同棲してて無理の無い設定ってどんなのよ?」
「うーん、そうだね……まず、最低限その二人が付き合ってないと不自然かな?」
「まぁ、それはそうね。同棲している関係なんだから付き合っているほうが理解は出来るわね」
「あとは……両親公認の仲とか?」
「確かに、ご両親の公認ってのがあるだけでグッと理解は深まるわね」
「それに……既に将来を誓い合っている!」
「ああ! 結婚を前提とした同棲てことね! でも、学生でそこまでは流石に非現実的じゃないかしら?」
「学生と言えども大学生なら?」
「うんうん、大学生なら……ありえるかしら?」
「でも、そんな『両親公認で将来を誓い合った大学生の同棲してる超ラブラブカップル』なんて存在ありえるかな?」
「…………」 シーン
「…………」 シーン
「「ないないないない!」」
「あはは! やっぱり、現実で学生の同棲は厳しいね」
「ウフフ、そうね。やはり、ラノベだからこそ楽しめるって感じだわ」
((学生で同棲なんて、現実ではありえないでしょ……ましてや、自分は絶対に無いだろうな))
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