第56話「幽霊の見分け方」
「だから、最近は異世界グルメ系にもハマっているの!」
「なんか、それでも『異世界モノ』から離れないのが朝倉さんらしいよね」
(肝試し始まって五分くらいするけど、委員長と桃井さん何も仕掛けて来ないな……)
「それにしても……夜の公園って結構暗いのね」
「まぁ、西口公園は『公園』って名前だけど、広ささえ見れば軽い山みたいなもんだからね。委員長達が肝試しで回って来いって言ったコースも、公園を大きく一周するから、あと十五分くらいはかかりそうな広さだし」
(何よ……最初は肝試しだって言うから、少し……ほんの少しだけ? まぁ、怖かったけど……いざ始まってみれば特に怖いことも起こらないし、モモと委員長もゴールで待っているっていうから、これ安藤くんとラノベの話し放題じゃない!)
「ところで、安藤くんは好きなラノベ作家さんとかいるのかしら? 例えばこの作家さんのラノベなら作者買いするってやつ?」
「あるよ。俺が好きな作家さんは『水道橋 真一郎』先生だね」
「へ~~例えば、どんなラノベを書いているの?」
「うん、デビュー作はサンダーボルト文庫の新人賞で『扉の内』って作品で……他にはメディカルワークス文庫から出てる『半殺しゲームの館』とかがあるね。どれも、人物の心理描写が巧みでストーリーの駆け引きも凄いんだ! 朝倉さんは好きな作家さんいるの?」
「うーん、私は作家でラノベを選ばないから……でも『与える者 与えられる者』とか『オラ、体格は平均値でって言ったべさ!』の作品は好きだから、この作家さんのラノベなら他のも読んでみたいわね!」
(うーん、相変わらずの俺TUEEEチート系ばっかりだな。朝倉さんらしいや)
(うふふ、こんなに安藤くんとお話できるなんて肝試し様様だわ。これなら幽霊の一つや二つくらい出てもお釣りが――)
「ぁ――――――」 ← 幽霊
「…………」
「…………」
(って、思ったら目の前に白いワンピースを着た黒髪の幽霊が出てるぅううううううううううううううう!)
(あの胸のふくらみ……ポニーテールを解いて白いワンピースに着替えた桃井さんか!)
「ぁ――――――」 ← 幽霊
「ピギャァアアアアアアアアア! あああ、安藤くん! 助けて! お願い! 私を食べないでっぇええええ!」
「どわぁああああああ! ああああ、朝倉さん落ち着いて! そんな思いっきり腕に抱きつかれたら胸が――あ、あれ?」
(お、おかしいな……? 朝倉さんが思いっきり腕に抱きついてきてるのに、何も当たらないぞ?)
「あ、ああ、安藤くん……前! 前! 目の前に……ゆ、幽霊ががが!」 スカッ! スカッ!
(てか、朝倉さん凄い怖がってるな……俺の腕に抱きついてるけど腰が思いっきり引けてるし……だから、胸が当たらないのか? でも、あんなの胸のふくらみを見れば変装した桃井さんだって分かりそうだけどな……とりあえず、ここは幽霊の正体を教えて――――)
「幽霊? 朝倉さん、何言っているの? 俺には何も見えないけど……」
(――っと、思ったけど……もう少し、朝倉さんに抱きつかれたいから、ここは見えないフリをしよう)
「ぁ――――――」 ← 幽霊
「見え……ない? こ、コレが……?」
「うん、うん」
(ふっふっふ……サクラは騙されているけど、安藤くんは流石だねー。私の読みどおり……例えバレても、安藤くんなら空気を読んで乗っかってくれると思ってたんだよー♪)
(だって、怯える朝倉さんも可愛いし……)
「お、終わった……私の命もここまでだわ……」
「ぁ――――――」 ← 桃井さん
「ピギャァァァアアアアア! 安藤くん! いる! ここにいるのよぉおおおお!」 スカッ! スカッ!
「ドコー? ボクニハミエナイヨー?」
(やっぱり、当たらないなー……)
【おまけss】「忘却」
「朝倉さん、どうして人は忘れ物をするのかな?」
「うーん、覚えてばっかりだと頭が疲れるからじゃないかしら? だから、たまには休憩で忘れたりするとか?」
「あー、なるほど……でも、ならなんで忘れ物って忘れちゃいけない事を忘れるんだろう? なんか、休日に外に出かけて『あ、ついでにアレを買っておこう』とか言う時に忘れない?」
「ああ、あるわね~」
「それに、ラノベを買う時も事前にどのタイトルを買うか調べているはずなのに、買って家に戻ったら一冊買い忘れているとか……」
「あるあるある! それ、凄いあるわ~しかも、そういうのに限って一番楽しみにしているタイトルだったりするのよね」
「そうそう、忘れて困るのは自分のはずなのに何故か忘れちゃうんだよ……」
「でも、忘れちゃった物は仕方ないんじゃないかしら? だから、次から気をつければいいと私は思うわよ?」
「あ、朝倉さん……って、訳ですみません! 昨日も借りましたけど、買うの忘れていたんで今日もシャーペン貸してください!」
「もちろんいいわよ。はい、安藤くん♪」
「ありがとう! 朝倉さん……」
「おい……一応言うが、今は数学の授業中だ。黙れ」
「「す、すみませんでした……」」
((授業中なのを忘れてた……))
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