第51話「残念ペッタンコ」
「こんなのってあんまりだうわぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
「朝倉さん、ここ図書室だから落ち着いて……ね?」
(どうしよう……脚本が俺の『ぼっち』とジュリエットに決まったのも予想外だけど、その脚本を読んだ朝倉さんが人語を発しているか怪しくなるレベルで大泣きするのも予想外だ)
(うぅ……何度読み返してもなんて悲しいお話なの……それに、この「『ぼっち』とジュリエット」ってお話……何故かただの作り話とは思えないのよね。なんか……こう、身に覚えのあるような? 何故かしら?)
「うぅ……涙で、目が……目がアアア!」
「朝倉さん、ハンカチあるから良かったら使って」
「う、うん……安藤くん、ありがとう……」
ズビィイイイーーッ!
「俺のハンカチぃいいいいいいいっ!?」
【学校一の美少女にふさわしくない、見苦しいシーンがありました。しばらくお待ちください】
「ふぅ……ありがとう、何とか落ち着いたわ」
「うん……朝倉さん、図書室に俺以外の生徒がいなくて良かったね」
「何のこと?」
(ああ、もう。最近の朝倉さんはなんかこう……俺と二人っきりになると突然ガードが緩くなる気がする……あれか? 俺が朝倉さんを変に意識しすぎているだけなのかな? でも、席だって自然と向かい側じゃなくて隣に座るし……なんか良い匂いがするし、胸元もさっきからチラチラと……朝倉さんそんなに大きくないから、不用意に見えそうになると逆に危なくてドキドキするじゃないか! もう、この残念ペッタンコめ!)
(はぁ、安藤くんの前だとつい気が緩んじゃうわね。ん? 何かしら……今、安藤くんから少し不愉快な視線を感じたわ? ああ、きっと私が隣に座っているから緊張しているのね。まぁ、それは仕方ないでしょう! なんたって私はこの高校で一番の美少女なんだから! 委員長が『二人っきりの時はなるべく隣に座るようにして少し屈む姿勢を意識しなさい』って言っていたらそうしているけど……コレって何の意味があるのかしら?)
「あ、安藤くん……やるわね。まさか、安藤くんがこれほどの脚本を仕上げてくるとは完全な予想外だったわ。この脚本なら、私の脚本が僅差で負けるのも納得よ。流石はこの私が自ら投票してしまっただけあるわ」
「え! 朝倉さん、俺の脚本に投票してくれたの? ああ、だから朝倉さんの脚本俺の票だけしか入ってなかったんだ……」
「安藤くんは私の脚本に投票してくれたのね!」
「うん、流石に自分の書いた脚本に投票なんて恥かしくてできないよ……」
「うっ……」
(言えない……安藤くんの脚本が無かったら私、自分の脚本に投票してたなんて言えないわ)
「で、でも! 今から演劇をやるのが楽しみね! 私も精一杯この『ジュリエット』を演じてみせるわ!」
「う、うん……そうだね。朝倉さんなら完璧なジュリエットになれると思うよ」
「安藤くん、何を他人事みたいに言っているのよ? これは安藤くんも関係あるんだからしっかりしてよね!」
「はい……」
(はぁ……朝倉さんが『ジュリエット』役になるのは何となく想像ついていたさ。だけど、まさか、この『ぼっち』の俺なんかが主役の『ロミオ』役に立候補するなんて……)
【おまけss】「話題」
「朝倉さん、それで今月発売したラノベなんだけど」
「うんうん! 安藤くん、どんなラノベな――」
「おーーい! 安藤! なぁ、安藤! 安藤!」
「「っ!?」」
((げっ! 山田!?))
「な、何?」
「いやーさ! 実は昨日の数学の宿題忘れちゃったんだよー。だから、答え見せて!」
「ああ、そんなことか……はい、これ丸写ししていいから、さっさとあっち行った……」
「おう、サンキュー! あ、そうだ! ところで朝倉さんと楽しそうに何の話してたの?」
「うっ……」
「っ!?」
(ヤバイ……朝倉さんはクラスではラノベ好きを隠しているから、ラノベの話していたとは言えない……)
「え、えーと……」
「と?」
「…………」 ゴクリ
(あ、安藤くん! わわ、私がラノベ好きなのは二人だけのヒミツなんだからね!)
「と、トイレのウォシュレットって……たまに頭がおかしいくらい威力が強い時あるよね?」
(あ、安藤くぅーーーーーーーーーーん!?)
「あぁーー! あああ! あるあるある!」
「そうそれ! それの話をしていたんだよ!」
「…………」 プルプル
(とっさにトイレの話で誤魔化しちゃったけど……あ、朝倉さん、怒ってないかな?)
(も……もの凄い分かるぅぅううううううううう! でも、安藤くん。なんで貴方はラノベの話題が取られると、次に出てくるの話題がいつも『トイレ』の話なのよぉおおおおおおおおおおおおお!)
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