第二章【演劇】

第48話「脚本」




「安藤くん、安藤くん!」

「え、朝倉さん?」


(いかん、眠くて少し意識が持っていかれてた)


「ちょっと! 人が真剣に話しているのに『ボーー』っとしないでよね!」

「ごめんごめん」


(俺は今、図書室で朝倉さんが作る演劇の脚本作りを手伝っている。何でそんな状況になったのかと言うと――)



 回想


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「では、今年の学年発表会についてのクラス会議を始めます」


『はーい』


「…………」


(なんだ? 六時間目がHRに変更されたと思ったら何か知らない会議が始まったぞ?)


「ねぇ、朝倉さん?」

「っ!?」


(あ、安藤くんが私を呼んでいる!?)


「にゃ、何かしら? 安藤くん」

「学年発表会って……何?」

「……安藤くん、ちゃんとHRの時に先生が言ってたこと聞いてたの?」

「全く」

「そうよね……聞いてたらこんな質問しないわよね。

 学年発表会ってのは毎年六月に一年と二年がクラス別で演劇をやってクラスの親睦を深めるが目的の行事よ。安藤くん、一年の時もやったでしょう?」


(演劇……そんなの一年の時にやったっけ?)


「ああ、思い出した! あのクラスの買出しをさせられたり、小道具を作らさせたり、クラスメイトから奴隷みたいに扱われた行事か!」

「どうやら、安藤くんだけはクラスメイトと親睦を深められなかったみたいね……」

「だって、俺『ぼっち』だし」


(つまり、今回もその演劇をこのクラスでやるから、委員長が六時間目の授業を使ってそのHRをしているのか……クラスが新しくなって、夏休みが始まるまでのこの六月にクラスの親睦を深めるっていう目的は分かるんだけど、悲しいことに二ヶ月も経ってクラスに馴染めない『ぼっち』は結局何をしても『ぼっち』のままなんだけどな)


「それで、今日はこのクラスがやる演劇の『内容』を決めいたいと思います。

 誰か、やりたい話はあるかしら?」



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(そうだ。それでどんな話をやるか決まらずに委員長が『全員、明日までに演劇の脚本を何か考えてくる事。その中で一番いい脚本を演劇の内容に選ぶわ』って言って……朝倉さんと一緒に図書室で脚本作りをする事になったんだよな。でも……)


「そ、それで……安藤くん! 私の考えた『脚本』どうかしら!」

「うーーん……朝倉さん、まず質問をさせてもらっていいかな?」

「何かしら!」

「これを『演劇』でやるの?」

「ダメ……かしら?」

「…………」


(『クラスメイト全員で異世界転生! ありふれてないスキルで俺TUEEEチートハーレムで異世界最凶目指す』か……タイトルがどう見ても『なろう』の作品なんだけど)


「これ……なろうの作品とかじゃないよね?」

「もちろん! なろうの作品で私が好きな話を参考にして私が考えた最強の俺TUEEEチート演劇よ!」

「委員長は童話か何かの小説を脚本にするって言ってなかったけ……?」

「え、でも個人が考えたオリジナルでもいいって言ってたわよ?」

「そう……だったね」


(そうだったぁああああ! 朝倉さんって見た目は完璧美少女なのに中身はなろう大好きラノベオタクだったぁあああ! いや、確かに脚本を作りたいって言った時はうすうす異世界モノをテーマにするんじゃないかと思ったけど……

 これは流石に――)


「朝倉さん、この脚本……異世界に転生して直ぐにクラスメイトの半分が主人公に惨殺されてるんだけど?」

「最初はインパクトが大事なのよ! 特に主人公はクラスで虐められていた設定だからチートスキルをもらって真っ先にいじめっ子に復讐したのね!」


(つまり、演劇が始まって出演者の半分は開幕で殺されると……)


「朝倉さん、この脚本……その次に女子生徒が全員、主人公の奴隷になってるんだけど?」

「異世界モノでハーレムと奴隷ヒロインは鉄板よ! だから、増やせるだけ奴隷ヒロインを増やしてみたわ!」


(つまり、クラスの女子は劇中で全員が奴隷役になると……)


「朝倉さん、この脚本……最後に主人公が残りのクラスメイトも皆殺しにして終っているんだけど?」

「最近はダークヒーローモノが流行っているのよ! だから主人公はあえて凶悪な設定にしてみたわ!」


(つまり、演劇の最後には主人公役以外はすべて殺されると……)


「で、その主人公役は一体誰がやるのかな?」

「え、安藤くんじゃダメかしら?」


(俺にクラスメイト全員のヘイトをかき集めるようなこの役をやれと!?)


(だ、だって……私の中で主人公って言ったらあ、安藤くんしかいないもの……キャ!)


「朝倉さん、この脚本は止めよう……多分、親睦が深まる前にクラスが崩壊する」

「そう……脚本って意外と難しいのね」


(これからは、朝倉さんにもっと『ほのぼの』したラノベをすすめよう……)


「じゃあ、次はゾンビパニックモノで――」

「朝倉さん、バッドエンドしか見えないんだけど?」


(この様子だと、俺の脚本書く時間無いな……仕方ない、俺の分は何か適当な小説の話をパクって委員長に出そう)







【おまけss】「クラスメイト全員で異世界転生! ありふれてないスキルで俺TUEEEチートハーレムで異世界最凶目指す」




「なんだこれは!」


『何だー何だー』 ← クラスメイト


「ようこそいらっしゃった。勇者共よ!

 ワシはこの『ヨクアタール国の国王じゃー』」

「ふむ……なるほど」


 俺は主人公だ。なんか、良く分からないけど、突然不思議な事が起きて俺達はクラス全員で異世界のヨクアタール国という国の王様に、異世界召喚されてしまったらしい。


「つまり、俺達は異世界召喚されてチートスキルを与えられたわけか!」


 そして、俺はそのチートスキルの腕試しにそこら辺にいたクラスメイトの男子を全員皆殺しにした。



『ギャー ヤラレター』 ←クラスメイトの男子の断末魔



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「朝倉さん、この脚本……異世界に転生して直ぐにクラスメイトの半分が主人公に惨殺されてるんだけど?」

「最初はインパクトが大事なのよ! 特に主人公はクラスで虐められていた設定だからチートスキルをもらって真っ先にいじめっ子に復讐したのね!」



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「ふむ、こんなものか」


『きゃー人殺しー』 ← クラスの女子達


「あ、女子は殺さないから安心していいよ」


『え、本当!』 ← クラスの女子達


「うん、でも裏切られると嫌だから全員奴隷の契約を結ぶけどいいかな?」


『いいともー』



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「朝倉さん、この脚本……その次に女子生徒が全員、主人公の奴隷になってるんだけど?」

「異世界モノでハーレムと奴隷ヒロインは鉄板よ! だから、増やせるだけ奴隷ヒロインを増やしてみたわ!」



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『嫌だ! 死にたくない! タスケテー 』  ← ヒロイン


「ふん、この僕が本当にお前を許したとでも思っていたのか? お前は僕が虐められているのを知っていても僕を助けなかった! だから、今から殺されるお前を僕が助けなくてもお前は文句を言えないんだ!」



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「朝倉さん、この脚本……最後に主人公が残りのクラスメイトも皆殺しにして終っているんだけど?」

「最近はダークヒーローモノが流行っているのよ! だから主人公はあえて凶悪な設定にしてみたわ!」



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「ふははは! 僕は勝った! 僕を虐めていた奴らを全員僕が倒したんだ! この僕のチート能力……『タンパク質を豆腐に変える力』で!

 僕こそがこの世界の新しい魔王だー」



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「朝倉さん……最後に一つだけ聞いていいかな?」

「安藤くん、何かしら?」

「主人公のこの能力って……何がチートなの? てか、どうやってクラスメイトをあんな簡単に倒したの?」

「え? だって『タンパク質を豆腐に変える力』よ? それはもちろん、人体の中のタンパク質を豆腐に変えて――」

「朝倉さんストップ! わかった……それ以上言うな」

「えー」

「…………」


(何この能力……怖っ!?)


 

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