第47話 「委員長の観察日記」


(私の名は委員長。本当の名前は他にもあるけど、最近では皆が私の事を委員長と呼ぶのでもう委員長でいいと思っている)


「委員長おはよう」

「おはよう、安藤くん」


(先日このクラスである事件があった所為で安藤くんに関わろうとする生徒はこのクラスには少ない…………そう『少ない』だ)


「安藤おはよう!」

「あー……おはよう」


(この男は山田。あの事件以降で変わった事があるとするなら、山田が安藤くんにやたら話しかけるようになったくらいかしら? 今までは安藤くんに興味ある生徒は朝倉さん以外にいなかったけど……『あの事件』以降このクラスでは安藤くんに話しかけるのを誰もが躊躇っている。

 まぁ、元々安藤くんに話しかける人なんて朝倉さん以外にいないから本人もそれをそこまで気にしている様子ではないのだけどね……)


「なぁなぁ! 安藤はまた文字ばっかりの本を読んでるのか? 何、それってそんなに面白いの? なんて題名の本?」

「……これは『竜と犬』ってラノベだよ」

「ラノベ……? なにそれ童話?」

「なろう小説だけどな……」


(とまぁ、こんな風に会話が全く噛み合っていないのに山田のバカはクラスの『安藤くんには触れないでおこう』という空気をまるで無視して毎日彼に話しかけている。まぁ、それが……クラスに腫れ物扱いされている安藤くんを気遣っての行動なら私も素直に山田をバカからアホへ昇格させるのもやぶさかではないのだけど、彼の目的は……)


「で! 実際、どうやったら朝倉さんに話しかけてもらえんの!?」

「…………」


(これなのよねぇ……。つまり、山田のバカは親切心で安藤くんに話しかけているんじゃなくて、ただ安藤くんと親しくすれば間接的に朝倉さんとお近づきになれるって思っているだけなのよ)


「なぁ! 安藤、教えてくれよ~」

「…………」


(あー山田マジでうぜぇ……どうしようかなこれ)


「な? 朝倉さんの好みのタイプとかでもいいからさぁ?」


(なんかさりげなく要求を変えてるし……いや、待てよ?)


「仕方ないな……」

「マジでか!?」

「でもこれは他のクラスメイトには言いたくないから耳を貸してくれない?」

「お、おう!」



「…………」


(安藤くん、朝倉さんがまだ教室に来なくて暇だからって何か始めたわね)



「山田、一回しか言わないからよく聞くんだぞ?」ヒソヒソ

「おう!」

「朝倉さんは……体力に自信のある男が好きなんだ」←大ウソ

「マジでか!?」

「ああ! 俺が言うんだから間違いない」←大ウソ

「で、でもよぉ……体力なんかどうアピールすればいいんだよ?」

「なら、俺に名案があるけど……聞く?」

「ああ、教えてくれ!」

「まず、上半身裸で校庭を10周するんだ」

「おう!」

「そして、戻ってきたら『フゥ! いい汗かいたぜ! 今日もハッスル、マッスル! ボクの体は筋肉!』って叫ぶんだ」

「お、おう……? なぁ、安藤? それって……本当に効果があるのか? なんか、俺バカにされているような……それに上半身裸になる意味も、校庭を10周する理由も良くわかんないんだが?」

「バカ野郎、山田! このバカ田が!」

「っ!?」

「いいか? まず、上半身裸になるのはフェロモンを出すためだ」

「ふぇ、フェロモン!?」

「ああ、上半身裸だとなんか出そうだろ?」

「ああ! 確かに……」



「…………」


(ええ、出るわね……変態が一匹)



「それに校庭を10週する理由は簡単だ」

「その理由とは!?」

「チャクラだ」

「チャクラ!?」

「上半身裸で校庭を10週することでなんか『チャクラ』って出そうだろ?」

「ああ、確かに!」



「…………」


(いや、出ないわよ)



「って、わけだ……分かったらさっさと校庭を走って来い!」

「おう! いい情報を教えてくれてサンキューな! 安藤」


 ガラガラ~~バタン!


「ふぅ、これでラノベが読める……」

「おい、安藤。ちょっといいか?」

「ウェーイ!」

「え……?」



「…………」


(あれはよく山田くんとつるんでいる吉田くんと沢渡くんじゃない。どうしたのかしら? まさか、安藤くんが山田をからかいすぎたから仕返しとか!?)



「えーと……」


(たしか……このボウズ頭なのが吉田だっけ? それで『ウェーイ』ばっか言ってるチャライのが沢渡だよな?)


「吉田と沢渡……だっけ? 何?」

「だっけって……お前、クラスメイトの名前くらい覚えろよ。いや、最近けっこう山田がお前に話しかけているからさ……迷惑じゃないかと思ってな?」

「え、迷惑……?」


(何で吉田がそんな事聞いて来るんだ?)


「ウェーイ! ほあら? 吉田って山田と幼馴染だからいつも山田の尻拭いしてんのよ! マジでウケるだろ? それで、最近山田がお前にまでちょっかいかけてないか心配なんだってよ」

「ちょ! ば、沢渡よけいなこと言うな!」

「ウェーイ! サセーン」


(ああ、なんだそんなことか。何か吉田ってボウズで体育会系のリア充だと思ってたけど、あの山田の面倒を見てるとなると苦労しそうだな……)


「うん、超迷惑してる」


(って、わけで責任者にちゃんと抗議しておいた)


「お、おう……それはスマンな。てか、お前って意外と正直なのな……まぁ、山田があまりにもウザかったら遠慮なく呼んでくれ。俺がシバいとくから」

「ウェーイ!」

「ん、覚えとくよ」

「すまん、それだけだ」


(ふーん、吉田っていつも山田とか沢渡みたいな騒がしい奴らと一緒にいるけど意外と苦労してそうだな。山田と沢渡だもんなぁ)


「…………」

「ん、安藤なんだ? 俺の顔をずっと見てるけど?」

「いや、吉田の頭ってやっぱり山田の所為でハゲたのかな? って、思って……」

「安藤、お前って意外と失礼な奴だな」

「ウェーイ! 安藤、吉田のボウズは野球部だから丸めているだけだぜい!」

「あ、そうなんだ」


(てっきり、山田によるストレスでハゲ散らかしたのかと……)



「…………」


(なんか、安藤くんが今までぼっちだった理由がそこはかとなく分かったわ)



「あ、安藤くん!」

「あ……朝倉さん」

「お、じゃあ、俺達はこれで……」

「ウェーイ!」

「…………」

「…………」



「…………」


(吉田くん、空気読んだわね。そして、安藤くんと朝倉さんもそれを察して少し気まずそうにうつむいちゃって初々しいわね~~まぁ、あれで付き合ってないんだけど……)



「……お、おはよう。安藤くん」

「朝倉さん、おはよ――」


 ガラガラ~!


「フゥ! いい汗かいたぜ! 今日もハッスル、マッスル! ボクの体は筋肉!」



「…………」

「…………」



(や、山田ァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア! アンタって奴は何でそう毎度毎度、空気を読まずにぶち壊していくのよ! 少しは吉田くんの髪の毛の一本でも飲みなさい! って、あ……無いわね)



「お、おはよう! 朝倉さん」

「うん! それでね。この前、安藤くんに教えてもらったなろう小説なんだけど……」

「ああ!『LV9,99の町人ね』だよね。どうだった?」


「フゥ! いい汗かいたぜ! 今日もハッスル、マッスル! ボクの体は筋肉!」


「……す、すごく面白かったわ! 特にレベルって概念がある世界に寿命を削って自分のレベルを上げる戦闘シーンとかもう!」


「今日もハッスル、マッスル! ボクの体は筋肉ぅ~~!」


「…………最高だったわ」

「……そ、そう。なら、他にもオススメしたいのがあるんだけど――」

「何、何!? 教えて安藤くん!」

「うん! 『雲ですが――』」


「ハッスル、ハッスル! マッスル! マッスル! ボクの体は――」


「山田くん」

「――きんっ! な、何! 朝倉さん!」

「うるさい」

「……はい」



「…………」


(まぁ、あの事件から……安藤くんの周りは少し騒がしくなった気がするわね)




【委員長のあとがき】


「皆、いつも応援してくれてありがとう! 委員長よ♪

 因みに、皆はカクヨムの使い方は慣れたかしら? 『何故かの』を読んでくれている人の中にはカクヨムの機能がよく分からない人もいると思うから、一度カクヨムの機能をここで説明させてもらうわね♪

 まず、カクヨムで読者の人が使える機能は以下の通りよ。


①フォロー

②★

③コメント

④💛


 ①のフォローは『なろう』で言うブックマーク機能よ。カクヨムでは

作者へのフォローと作品のフォローの二種類があって紛らわしいけど、ブックマーク機能は作品のフォローをすれば大丈夫よ。

 因みに、フォローをすると作品の応援にもなるからできれば『何故かの』もフォローしてくれると嬉しいわ♪


 ②の★は『なろう』で言う評価ポイントよ。なろうがストーリーと文章で、それぞれ1ポイント~5ポイントの五段階評価に対して、カクヨムは★1個~3個だけの三段階評価になっているわ。

 レビューを書かなくても★マークを押すだけで評価できるから『何故かの』を応援したいって人は3回★マークを押してくれると嬉しいわ♪ 


 ③のコメント機能、これはカクヨムだと各話だとごとにコメントが付けられるようになっているわ。


 ④の💛機能、各話ごとにTwitterの『いいね』みたいな役割の💛があるわ。わざわざコメントを書くのが面倒だという人は💛のマークを押してみるのもいいわよ。


 皆、これからも『何故かの』を宜しくね♪」


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