第47話 後日談「委員長の観察日記」


【一日目】



(私の名は委員長。本当の名前は他にもあるけど、最近では皆が私の事を委員長と呼ぶのでもう委員長でいいと思っている)


「朝倉さん、おはよう」

「委員長、おはよう」


(この人は朝倉さん。学校一の美少女と言われている程の人気者だ。彼女がどれだけ人気者かと言うと――)


「朝倉さん! おはよう! おはよう! 山田だよ! おは――」


『てめえぇ、山田! 何勝手に抜け駆けして朝倉さんに声かけてんだ! こっち来い!』


「委員長、山田くんが来たと思ったら、複数の男子に連れ去られえて行ったんだけど……」

「いつものことでしょ……」

「そうね」


(とまぁ、このくらいに人気者だ。朝倉さんを慕う男子生徒は多くそのためこの学校の男子は不用意に朝倉さんへは手出しをしないという不可侵条約が結ばれているとかいないとか……)


「あ、あの……朝倉さん、おはようございます!」

「おはよう♪」

「お、おはようございます! 朝倉さん!」

「おはよう♪」


「キャーッ! 私、朝倉さんと挨拶しちゃったわ!」

「私もよ! 私も! 見た? あの朝倉さんが微笑んでくれたの!」


(因みに女子の方は男子みたいにそんなへんな条約は無いけど、それでも『朝倉さん』という存在は一目置かれているため、女子の中でも朝倉さんとフランクに話せる人は少ない)


「朝倉さんは今日もお昼は学食なの?」

「ええ、そのつもりよ」


「見て見て~~委員長、朝倉さんとあんな仲良く話してる……」

「いいなーーうらやましい……朝倉さんとあんなに親しいなんて流石は委員長だよね」


(フフン、だからこそ、朝倉さんと話せる人はそれだけで他の女子からも一目置かれるのだ。そう、私みたいにね! 流石は朝倉さん! 学年のトップカーストの恩恵は大きいわ)


「サクラ、おはよう!」

「あ、モモ! おはよう」


(彼女は桃井さん、朝倉さんの親友であり、唯一朝倉さんとニックネームで呼び合う女子だ。あの朝倉さんとそこまで親しいだけあって桃井さんも学校内で二番目くらいに男女から人気のあるカーストの上位者だ)


「お! 委員長もおはよう」

「桃井さん、おはよう」


(そして、最近私も朝倉さんと仲良くしているおかげで桃井さんとも交流をもちつつある。これで私の学校カーストも安泰……委員長というキャラ設定のおかげもあって生徒、先生からの内申点もいいし、今では私も学校カースト順位上から10番目くらいにはなっているわ。これも全部、安藤くんのおかげね)


「ねぇ、委員長!」

「何かしら? 桃井さん」

「悪巧みもほどほどに……ね?」ボソ

「…………え」

「なーんちゃって! テヘ♪」

「何々? モモ何の話?」

「なんでもなーい! サクラには関係ありマセーン!」

「あは……アハハ」


(桃井さん……意外と侮れないわね)


「ちょっと! なによそれ! 教えなさいよ~~」



(そんな朝倉さんだが、彼女が教室に来ると面白い事が起きる)



「昨日、ゲーセンでさー」

「マジでー? 超うけるー」

「ウェ~~イ!」


 ガラガラ~~


「サクラ、聞いてる?」

「はいはい、聞いてるわよ……」


『っ!?』


(((あ、朝倉さんだ!)))ズザササーッ!


「フレンズだったんでしょ? モモ」

「そうなのーっ! 流石サクラ、話が分かるねー」

「…………」


(凄い、朝倉さんが教室に入っただけで教室で騒いでいたクラスメイトがまるで、モーゼが海を二つに割るみたいに一斉に静かになったわ……これぞ毎朝起こされる『朝倉さんの奇跡』)


「安藤くん、おはよう」

「おはよう、朝倉さん」



(そして、授業中……ここから私の苦労が始まる)


「はーい、今日の美術の時間は二人一組で『デッサン』をしてもらいまーす。じゃあ、いつもどおりペアを組んで始めてください」


(来た!)


「…………」ソワソワ


(で、できたら安藤くんと――)


「サークラ! 一緒に組もう?」

「も、モモ! え、ええ……そう――」

「桃井さん! きょ、今日は私とペアを組まないかしら?」

「委員長!」


(委員長……貴方、まさか――)

(朝倉さん! ここは私に任せて貴方は安藤くんを誘いなさい!)


「委員長かー……うん、いいよ! サクラ、今日は委員長と組むね?」

「ええ、問題ないわ。じゃ、じゃあ、私は――」


(さあ、これで朝倉さんは安藤くんとペアに――)


「安藤! 一緒にペアを組もうぜ!」

「え、俺……?」


(山田ァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア! アンタは何でいつもいつも私の邪魔をするのよ! この邪魔田がッ!)


「あ――じゃあ、私は他の子と……」


(ほら、邪魔田の所為で朝倉さんが諦めようとして……ああ!)


「やーまーだ? お前何言ってるんだ? お前は俺達と一緒に組むんだろ?」

「え、吉田?」

「ウェーイ!」

「沢渡?」 


(よ、吉田くん、沢渡くん! ナイス!)


「でも、それだと3人ペアにならないか? 先生は二人一組って……」

「山田、お前はバカだな……いいか? バカ+バカは『1』だ。つまり、俺と沢渡と山田を足したら丁度『2』になるからいいんだよ」

「えーと……そうか!」


(いやいや、そうか! じゃないでしょう。でも、これで――)


「安藤、すまないな……この山田は俺達で3人用なんだ。って、わけでお前は他の奴と組んでくれ」

「あ、ああ……でも、誰と――」


「あ、安藤きゅん!」


「朝倉さん……」

「その、一緒に組まないかしら……? か、勘違いしないでよね! これはあくまで友達の安藤くんがかわいそうだから仕方なく組んであげるだけなんだからね!」

「う、うん!」


「委員長?」

「……何、桃井さん?」

「これで満足?」

「さぁ?」


(でも、安藤くん……何であれで朝倉さんの好意に気付かないのかしら?)


『…………(マジで何で気付かないんだろう?)』



「ウフフ、安藤くん。可愛く描いてよね?」

「もちろん!」



(因みにこの後、安藤くんが二度目のグレムリンを召喚したのは言うまでもない)






【二日目】



(私の名は委員長。名前はまだ無い……なんちゃって。本当は名前はあるけど、皆が私の事を委員長と呼ぶのでもう委員長でいいと思っているわ)


「委員長おはよう」

「おはよう、安藤くん」


(この人は安藤くん。学校一の『ぼっち』よ。先日このクラスである事件があった所為で安藤くんを知らない生徒はこのクラスにいないが、それでも安藤くんに関わろうとするクラスメイトは少ない…………そう『少ない』だ)


「安藤おはよう!」

「あー……おはよう」


(彼は山田だ。そう、あの事件以降で変わった事があるとするなら、山田が安藤くんにやたら話しかけるようになった。今までは安藤くんに興味ある生徒は朝倉さん以外にいなかった。そして『あの事件』以降このクラスでは安藤くんに話しかけるのを誰もが躊躇っているのだ。まぁ、元々安藤くんに話しかける人なんて朝倉さん以外にいないから本人もそれをそこまで気にしている様子ではないのだけど……)


「なぁなぁ! 安藤はまた文字ばっかりの本を読んでるのか? 何、それってそんなに面白いの? なんて題名の本?」

「……これは『竜と犬』ってラノベだよ」

「ラノベ……? なにそれ童話?」

「なろう小説だけどな……」


(とまぁ、こんな風に会話が全く噛み合っていないのに山田のバカはクラスの『安藤くんには触れないでおこう』という空気をまるで無視して毎日彼に話しかけている。まぁ、それが……クラスに腫れ物扱いされている安藤くんを気遣っての行動なら私も素直に山田をバカからアホへ昇格させるのもやぶさかではないのだけど、彼の目的は……)


「で! 実際、どうやったら朝倉さんに話しかけてもらえんの!?」

「…………」


(……これだ。つまり、山田のバカは親切心で安藤くんに話しかけているんじゃなくて、ただ安藤くんと親しくすれば間接的に朝倉さんとお近づきになれるって思っているだけなのよね)


「なぁ! 安藤、教えてくれよ~~」

「…………」


(あー山田マジでうぜぇ……どうしようかなこれ)


「な? 朝倉さんの好みのタイプとかでもいいからさぁ?」


(なんかさりげなく要求を変えてるし……いや、待てよ?)


「仕方ないな……

 教えてやるよ」ニコ

「マジでか!?」

「ああ、でもこれは他のクラスメイトには言いたくないから耳を貸してくれ」ヒソヒソ

「お、おう!」



「…………」


(安藤くん、朝倉さんがまだ教室に来なくて暇だからって何か始めたわね)



「山田、一回しか言わないからよく聞くんだぞ?」ヒソヒソ

「おう!」

「朝倉さんは……体力に自信のある男が好きなんだ」←大ウソ

「マジでか!?」

「ああ! 俺が言うんだから間違いない」←大ウソ

「で、でもよぉ……体力なんかどうアピールすればいいんだよ?」

「なら、俺に名案があるけど……聞く?」

「ああ、教えてくれ!」

「まず、上半身裸で校庭を10周するんだ」

「おう!」

「そして、戻ってきたら『フゥ! いい汗かいたぜ! 今日もハッスル、マッスル! ボクの体は筋肉!』って叫ぶんだ」

「お、おう……? なぁ、安藤? それって……本当に効果があるのか? なんか、俺バカにされているような……それに上半身裸になる意味も、校庭を10周する理由も良くわかんないんだが?」

「バカ野郎、山田! このバカ田が!」

「っ!?」

「いいか? まず、上半身裸になるのはフェロモンを出すためだ」

「ふぇ、フェロモン!?」

「ああ、上半身裸だとなんか出そうだろ?」

「ああ! 確かに……」



「…………」


(ええ、出るわね……変態が一匹)



「それに校庭を10週する理由は簡単だ」

「その理由とは!?」

「チャクラだ」

「チャクラ!?」

「上半身裸で校庭を10週することでなんか『チャクラ』って出そうだろ?」

「ああ、確かに!」



「…………」


(いや、出ないわよ)



「って、わけだ……分かったらさっさと校庭を走って来い!」

「おう! いい情報を教えてくれてサンキューな! 安藤」


 ガラガラ~~バタン!


「ふぅ、これでラノベが読める……」

「おい、安藤。ちょっといいか?」

「ウェーイ!」

「え……?」



「…………」


(あれはよく山田くんとつるんでいる吉田くんと沢渡くんじゃない。どうしたのかしら? まさか、安藤くんが山田をからかいすぎたから仕返しとか!?)



「えーと……」


(たしか……このボウズ頭なのが吉田だっけ? それで『ウェーイ』ばっか言ってるチャライのが沢渡だよな?)


「吉田と沢渡……だっけ? 何?」

「だっけって……お前、クラスメイトの名前くらい覚えろよ。いや、最近けっこう山田がお前に話しかけているからさ……迷惑じゃないかと思ってな?」

「え、迷惑……?」


(何で吉田がそんな事聞いて来るんだ?)


「ウェーイ! ほあら? 吉田って山田と幼馴染だからいつも山田の尻拭いしてんのよ! マジでウケるだろ? それで、最近山田がお前にまでちょっかいかけてないか心配なんだってよ」

「ちょ! ば、沢渡よけいなこと言うな!」

「ウェーイ! サセーン」


(ああ、なんだそんなことか。何か吉田ってボウズで体育会系のリア充だと思ってたけど、あの山田の面倒を見てるとなると苦労しそうだな……)


「うん、超迷惑してる」


(って、わけで責任者にちゃんと抗議しておいた)


「お、おう……それはスマンな。てか、お前って意外と正直なのな……まぁ、山田があまりにもウザかったら遠慮なく呼んでくれ。俺がシバいとくから」

「ウェーイ!」

「ん、覚えとくよ」

「すまん、それだけだ」


(ふーん、吉田っていつも山田とか沢渡みたいな騒がしい奴らと一緒にいるけど意外と苦労してそうだな。山田と沢渡だもんなぁ)


「…………」

「ん、安藤なんだ? 俺の顔をずっと見てるけど?」

「いや、吉田の頭ってやっぱり山田の所為でハゲたのかな? って、思って……」

「安藤、お前って意外と失礼な奴だな」

「ウェーイ! 安藤、吉田のボウズは野球部だから丸めているだけだぜい!」

「あ、そうなんだ」


(てっきり、山田によるストレスでハゲ散らかしたのかと……)



「…………」


(なんか、安藤くんが今までぼっちだった理由がそこはかとなく分かったわ)



「あ、安藤くん!」

「あ……朝倉さん」

「お、じゃあ、俺達はこれで……」

「ウェーイ!」

「…………」

「…………」



「…………」


(吉田くん、空気読んだわね。そして、安藤くんと朝倉さんもそれを察して少し気まずそうにうつむいちゃって初々しいわね~~まぁ、あれで付き合ってないんだけど……)



「……お、おはよう。安藤くん」

「朝倉さん、おはよ――」


 ガラガラ~!


「フゥ! いい汗かいたぜ! 今日もハッスル、マッスル! ボクの体は筋肉!」



「…………」

「…………」



(や、山田ァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア! アンタって奴は何でそう毎度毎度、空気を読まずにぶち壊していくのよ! 少しは吉田くんの髪の毛の一本でも飲みなさい! って、あ……無いわね)



「お、おはよう! 朝倉さん」

「うん! それでね。この前、安藤くんに教えてもらったなろう小説なんだけど……」

「ああ!『LV9,99の町人ね』だよね。どうだった?」


「フゥ! いい汗かいたぜ! 今日もハッスル、マッスル! ボクの体は筋肉!」


「……す、すごく面白かったわ! 特にレベルって概念がある世界に寿命を削って自分のレベルを上げる戦闘シーンとかもう!」


「今日もハッスル、マッスル! ボクの体は筋肉ぅ~~!」


「…………最高だったわ」

「……そ、そう。なら、他にもオススメしたいのがあるんだけど――」

「何、何!? 教えて安藤くん!」

「うん! 『雲ですが――』」


「ハッスル、ハッスル! マッスル! マッスル! ボクの体は――」


「山田くん」

「――きんっ! な、何! 朝倉さん!」

「うるさい」

「……はい」



「…………」


(まぁ、あの事件から……安藤くんの周りは少し騒がしくなった気がするわね)







【おまけss】「委員長の観察日記 裏側」


 私の名は委員長、名前は(以下略



『では、時刻になりましたので会議を始めます』


『はーい』

『はーい』

『はーい』


 放課後、家に帰り予定の時刻になったのでラインのグループトークから『委員長クラス会議』を選んで会議の開始を宣言すると他のクラスメイトから次々と返事か帰ってきた。

 このグループトークは私が今日の会議を開く為に『朝倉さん』と『安藤くん』と『桃井さん』ついでに『山田』以外のクラスメイトを招待したもの。

 つまり、今日のこの会議には『朝倉さん』と『安藤くん』と『桃井さん』ついでに『山田』以外のクラスメイトが全員このやり取りに参加している。じゃあ、何故こんな会議を開き『朝倉さん』と『安藤くん』と『桃井さん』の三人だけ……ついでに『山田』がこの会議にいないかと言うと――


『では、私達のクラスの今後……主に朝倉さんと安藤くんの二人に対するクラスの対応についての会議を始めます』

『はーい』

『はーい』

『はーい』


 つまり、こう言う事だ。この前の事件は朝倉さんの暴走による力技で一見解決したように見えるが、さすがにそれで全てのクラスメイトが納得しているわけではない。同じクラスメイトの中には二人の中を応援している生徒もいるし、逆に良く思っていない生徒もいる。だから、私はあの事件以降ちょくちょく、皆に時間を作ってもらってこのグループトークでクラスメイト皆の不満などを聞いたりしてあの二人に変なちょっかいをかけないようにクラスをコントロールしているのだ。

 山田もハブられているのは、単純にアイツは会議の邪魔をしそうから。そして『桃井さん』に関しては彼女は朝倉さんの親友であり近すぎる立場でありながら私の動きに気付いているようなので、警戒してメンバーから外している。

 因みにこの会議は今日で三回目だ。


『じゃあ、先ずは各グループからの代表意見を報告してくれるかしら?』


 そして、私達のクラスにはいくつかの派閥が存在している。


『はい! 「その他の女子連合」は以前と同じで、対象二人のカップル成立の為なら全力で協力を惜しみません』


 この『その他の女子連合』はその名の通り朝倉さん、桃井さんを抜いた残りのクラスメイトの女子達の派閥で、彼女達は派閥の中でも一番の穏健派だ。

 何故なら、朝倉さんは学校でも一番の美少女でその朝倉さんを狙う男子は多い。だから、女子生徒に人気のある男子が好きな子も『朝倉さん』という事が多々あった。しかし、朝倉さんが安藤くんと結ばれ彼氏持ちとなれば、今まで朝倉さんを狙っていた男子が諦めその恩恵を他の女子が得る可能性があるからだ。そして、おまけに朝倉さんが夢中の安藤くんを好きな女子が他に誰もいないというのも大きい。

 つまり、女子からすればこの朝倉さんの恋愛に邪魔をする理由など一つも存在しないのだ。


『じゃあ、次のグループ』

『俺ら「草食男子連合」も女子と同じでできるかぎり協力します』


 こっちの『草食男子連合』は女子と同じ男子の穏健派だ。彼らは元々『俺らが朝倉さんと付き合えるとか思っていないし、だから朝倉さんが誰と結ばれても関係ないよ。むしろ、それで俺らの女神「朝倉さん」が幸せならそれでいいや』っていうクラスの中の草食男子が集まった集団だ。問題はもう一つのグループ……


『じゃあ、最後の「肉食野球部連合」の意見を聞かせてくれるかしら?』


 そして、最後の派閥が……『肉食野球部連合』だ。コイツらはクラスの肉食男子と男子グループの中でもクラス内の発言力の高い野球部の男子が集まった連合であり、このグループの男子だけが『朝倉さん』と『安藤くん』の仲を応援する事に断固拒否を貫いているのだ。因みに理由は『安藤くんが気に入らないから』だ。


『俺達……「肉食野球部連合」は――この件に関して、一切の手出しをしない。協力はしないが邪魔もしない。好きにしてくれ』


 お? 協力するってわけではないけど……手出しもしないと言うことは中立の立場を取るって事よね? 


『あら、以前の会議では下手な動きを見せたら対象男子Aくんをシメるとか言ってなかった? それが、一体どういう風の吹き回しかしら?』

『……対象男子Aと接触した』


 俺って『肉食野球部連合』のリーダー? うーん『肉食野球部連合』は発言力の大きい野球部が実質的なトップだから……リーダーは必然的に野球部の……ああ、そう言えば今日安藤くんと話していたわね。でも、どんな話をしていたかは聞えなかったのよね。


『それで、何で急に意見を変えることになったの?』

『……黙秘する』

『ウェーイ! リーダーってば、対象Aにハゲ呼ばわりされてたぜ! ウェーイ!』

『マジでw ウケるw』

『ワロスwww』

『フレンズwww』

『ハゲなのに草生えまくりwww』

『うるせぇええええ! 草食ども明日朝一で死にてぇんか!』

『すみませんでした!』


 安藤くん……何を言ってるのよ。


『それで、何で意見を変えるのよ?』

『……俺はアイツをただのネクラのぼっち野郎だと思ってた。だけど、それは違うかもしれない。だから、アイツが俺達の女神にふさわしいか分かるまで見守ることにした。それだけだよ』

『なるほどね』

『それと……』

『?』

『女神のあんな……事件の時にした悲しそうな顔を俺達、男子は望んでいない』


 はぁー、やっぱり朝倉さんって人気よね……


『でも、そう思ってるなら最初から断固反対とか言わなければよかったのに……』

『それは……』


 そうすれば私もこんなラインでのグループ会議開かないで『今後はクラス一同、朝倉さん達を応援しましょう』で済んだのにね。


『ウェーイ! ちょっと、言っておくけど別にリーダーは最初っから反対側じゃなかったんだぜい?』

『ウェーイ! でも、事が事だけに? 一部の男子と野球部の奴らが暴走しそうだったからリーダーがわざわざそれをまとめたんだぜ!』

『自分も女神が大好きなくせに馬鹿だよな。ウェーイ!』

『おい! 沢渡、バカ黙れ!』

『ウ、ウェーイ!? ちょ! ヨッシー、実名ヤメてw』

『なら、お前だって「ヨッシー」って書くなよ!』

『とっても仲がいいフレンズなんだね!』


『はぁ……とりえずクラスの意見はこれでまとまったから今日は解散にするわ』

『はーい』

『乙』

『おつかれー』



 会議が終わり、私はスマホの電源を切って自分の部屋のベットに倒れこんだ。


「はぁー疲れた……」


 これで、しばらくはあの二人にクラスの誰かがちょっかいをかけることはないだろう。でも、まさかあの吉田くんが強硬派の男子を抑えてくれていたとは意外だったわ。だって、彼……明らかに朝倉さんに惚れてるじゃない。

 でも、これで明日からは安心して――……


「って、私なんであの二人のためにここまでやっているのかしら……?」


 ティロティロ~フィナーレ♪ ← 着信音


「ん? 私個人宛にライン……一体、誰かしら?」



モモちゃん☆『委員長、頑張ったねぇー♪ お疲れ様でした☆』



「う、嘘でしょ……何で、桃井さんが私のアカウント知っているのよ……」



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