第44話「可愛い」




「安藤くん見て! ラノベが沢山そろってるわ!」

「うん、この9階は最近リニューアルして1フロアごと火ノ国屋書店って本屋さんになったんだよ。意外とラノベも品揃えがいいんだよ」

「私このデパートの9階がこんな素敵な本屋さんになっていたなんて知らなかったわ!」


(朝倉さん、楽しそうでよかった。食事の後、このデパートに入ってから、2時間以上するけど……下のフロアからいろいろ見て回ったのにまだ疲れないのかぁ――……)



 回想


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2階 靴売場


「安藤くん、見て見て! この靴、可愛くないかしら!」

「うん、そうだね」


(……可愛い? ただの白い靴にしか見えないけど?)



4階 女性服売場


「安藤くん、見て見て! この服、可愛くないかしら!」

「うん、そうだね」


(……可愛い? ただの黒い服にしか見えないけど?)



5階 女性服売場


「安藤くん、見て見て! こっちの服も可愛くないかしら!」

「う、うん……そうだね」


(……可愛い? さっきのと何が違うんだろう? てか、何で女性服売場2フロアもあるの?)


「ふぅ……これで一通りは見たわね」

「そうだね」


(お! 朝倉さん、やっと満足したかな? これ以上、女性服売り場にいたら俺のライフが持たないよ。さぁ、次のフロアに――)


「じゃあ、もう一度4階のフロアから回りましょうか」

「もう一度!?」



7階 食器売場


「安藤くん、見て見て! このティーカップセット、可愛くないかしら!」

「ウン、ソウダネ」


(朝倉さん……その食器、俺はもう見飽きたよぉ……ねぇ、何度見ても食器の模様が替わったりするわけじゃないからね?)



8階 家具売場


「安藤くん、見て見て! このソファー、可愛くないかしら?」

「かわいー、すごーい」


(可愛いって……可愛いって、何だ?)



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(――ってな、感じで朝倉さんに連れまわされながら、もし家を買って住むならどんな家具を買うかとかいろいろ意見を聞かれたんだよな……)


(ウフフ♪ 今日は安藤くんと一緒にショッピングができるなんて、何て最高のデートなのかしら! 安藤くんにいろいろ聞きながら、次のデートに備えての服の参考とか……もし、私達が……その、一緒に暮らす事があるとしたらの部屋の家具を想像したり……とか、なんちゃって! 安藤くんが一緒にいるおかげで、いろいろ想像して楽しかったわ!

 それに最後はこんな大きな本屋さんに来れるんですもの!)


「安藤くん、見て見て! ここの棚『なろう』の書籍化作品コーナーになってるわ!」

「うお、マジだ!『無職って、それはないでしょう!』の新刊もある!」

「安藤くんって、『無職って、それはないでしょう!』も読んでるの!」

「うん、ランキング上位の作品はだいたい読んでるからね。面白いよね『無職』」

「そうなの! 面白いのよ! 私もこの小説が『なろう』で一番好きで!」


(あぁ……少し前までは安藤くんとこんなに『なろう』の話なんてできなかったのに……今では私が話しかければ安藤くんがちゃんと答えてくれる! うぅ……こんな会話がしたかったのよ。私は! はぁ、これからも、安藤くんと仲良くしたいわ……)


(そう言えば……妹のメモにこのデパートで朝倉さんへのプレゼントを見つけろってあったけど、結局何にしようかな。流石に服とかはなんかセクハラな気がするし、だからと言って家具は高いし……もうラノベじゃダメかな?)


「あ! 安藤くん、見て見て! これ可愛くないかしら?」


(来た! 朝倉さんの可愛い攻撃!?)


「って……これは栞?」

「そうよ! 金属製のメタルしおりで、フクロウのゆるキャラが描かれてて可愛いのよ!」

「へ~~ゆるキャラか――っ!」


(――って、何これキモッ! フクロウ!? これフクロウか!? え……なんでフクロウに両手両足が生えてるの……? てか、コイツ二足歩行してるよね?)


「う、うん……そうだね。可愛いね」

「でしょう! このゆるキャラ最近女子の間で流行って人気なのよね~」

「へ、へぇ……これが今の女子の間では人気なのかぁ……」


(じょ、女子のセンス、俺には分からないな……あ、そうだ!)


「朝倉さん、良かったらこの栞……朝倉さんへのご褒美としてプレゼントさせてもらってもいいかな?」

「え! 安藤くん……いいの?」

「もちろん、だって、今日は元々朝倉さんへの『ご褒美』を買うためにいろいろ回ったんだからね? それに、俺もこの栞、可愛いと思うし」

「安藤くん……うん! 私、この栞が欲しいわ!」


(よっしゃあ! これでプレゼント決まった! 正直、俺にはこのゆるキャラの可愛さは微塵も分からないけど、朝倉さんが気に入っているんだからいいだろう! それに、栞ならそんなに高くは――って、高ぁああああああ!? 栞が一個、800円!? 嘘だろ! この栞一つで中古のラノベ二冊買えるぞ!)


「安藤くん、今日はありがとうね!」

「う、うん……」


(まぁ、仕方ないか……これで朝倉さんが喜んでくれるなら――)


(あ、いい事思いついたわ!)


「そうだわ! じゃあ、私もこの栞を買って安藤くんにプレゼントするわね!」

「え、何で!?」

「だって、安藤くんも数学のテスト100点でしょ? なのに、私だけ『ご褒美』をもらうのも少し気が引けるし……それに今日は凄い楽しかったからそれのお礼も含めて……ね?」

「朝倉さん……」


(俺、正直その栞いらないです。なんて、絶対に言える空気じゃない……)


「……じゃあ、もらおうかな」

「うん!」


(はぁ、俺この栞を使わないといけないのか……)


(ウフフ、これで安藤くんとおそろいの栞だわ!)


「「すみません、これください」」

「はい、お買い上げありがとうございます!」


(また、こんな風に安藤くんと一緒にデートができたらいいな……)





「………………」


(あれ? あそこにいるのって、ウチのクラスメイトの――)






【おまけss】「メイド」



『さて、今回は秋葉原で話題のメイド喫茶に取材をしたいと思います!』 ← テレビ


「ほーん……お兄ちゃ~ん」

「妹よ。何だ? お兄ちゃんは今、夕食の片付けで洗い物の最中なんだか?」 スカスカ!

「テレビでメイド喫茶特集とかやってるけど見ないのー?」

「……妹よ。一応聞くが何でそれを俺に聞く?」


「え、お兄ちゃんみたいなオタクの人って『メイド』が好きなんじゃないの?」

「ちげぇよ!? お前、全国のオタクが総じてメイド好きなわけじゃないからね!?」


「へー、そうなんだ~」

「……い、妹よ。今のセリフは決して他の人には絶対に言うなよ……お前それ、言われたのが俺だから良かったが、他の奴だったら下手したら戦争だからな?」

「ふ~ん。わかった~」

「…………」


(こいつ、本当に分かってるのか?)


(うーん、おかしいな? 確かにお兄ちゃんの本棚の下段には『メイドさんモノ』がいっぱいあったはずなんだけどな~?)


「それで、お兄ちゃん。メイド特集は見ないの?」

「…………まぁ、洗い物も一区切り付いたし休憩のついでに見ようかな……」

「何だ。やっぱり好きなんじゃん」

「いや、違うから……」


(ほ、本当に休憩のついでに見るだけで……メイドさんに興味なんて無いんだからね!)


「…………」じー

「…………」じー



『では、ここが今日紹介する話題のメイド喫茶、

 その名も――「めいどむーみん」です』


「アウトォオオオオオオオ!」

「うわっ! ビックリした……お兄ちゃん、急にどうしたの?」

「あ、いや……ゴメン。何故か急にメッチャアウトな感じの名前のメイド喫茶が出てきたからつい……てか、この名前大丈夫? 消されたりしないの?」

「お兄ちゃん、変だよ?」


『では、早速このメイド喫茶「めいどむーみん」の人気メニューを頼んで見ましょう! 一体秋葉原で一番人気のメイド喫茶のメニューとはどんなものなのでしょうか?』


「お兄ちゃん、一番の人気メニューだって! 一体どんなのが出てくるんだろうね?」

「えー、どうせオムライスとかじゃないのー?」


『はい! こちらが、めいどむーみん一番の人気メニュー……

 その名も「汁なし揚げ玉かけそば」です!』


「「何で!?」」


『お値段はなんと……一杯千円!』


「「しかも、高い!?」」


(嘘だろ!? 何でメイド喫茶で『そば』が一番の人気メニューなんだよ!? しかも『かけそば』なのに『汁なし』!? それただの揚げ玉をふりかけた『そば』だよね!?)


「お、お兄ちゃん……今の秋葉原ではアレが時代のトップなの……?」

「いや流石に……ただの一発ネタメニューだろ? そんな『そば』なんかが人気メニューだなんて――」


『なんと、このメイド喫茶「めいどむーみん」は現在で創業50周年! しかも、メニューはこれ一品だけ! そばに揚げ玉一筋で50年間続けてきたというのですから凄いですよねー』


「「マジで!?」」


『では、その人気メニュー「汁なし揚げ玉かけそば」にかける思いをメイド長の「フナスキンさん(店長)」に聞いてみたいと思います!

 ズバリ! 「汁なし揚げ玉かけそば」で営業50周年続けてこれた理由はなんでしょう?』

『それは、やっぱり原価が安くて利益が高いからニャー』

『ほうほう! やはり、お客様への愛があるからなんですね~!』


「「今、明らかに『原価』って言ってた!」」


『しかも、このお店は「汁なし揚げ玉かけそば」を注文すると、無料でメイドさんが七味唐辛子でハートマークを描いてくれるサービスがあるんです!』


「「超いらねえ!」」


『なんと、ゆず胡椒も選べるのニャ!』


「「そういう問題じゃねえ!」」


『因みに、このそばを作るのにメイドさんはどれだけ練習をするんでしょうか?』

『うーん、そうだニャー』


「いやいや……あんなクソメニュー作るのに練習も何もないだろ」

「うん、あれなら私にだって出来る自信あるよ……」


『まぁ、ざっと10年くらいは修行が必要だニャ!』


「「意外と長かった!?」」


『てか、新人はまずそば打ちで5年はかかるニャ!』


「「職人かよ!?」」


『それが出来ても、こねができるようになるまで5年は修行してもらうニャ!』


「「職人じゃん!?」」


『でも、ちゃんと教えようとしたら1年くらいで出来ちゃうんだけどニャ!』


「「なら、ちゃんと教えてあげようよ!」」


『なるほど……つまり、修行に修行を重ねたメイドさんの職人の腕がこの「めいどむーみん」をここまで支えてきたわけですね!』


「「なんか、上手くまとめた!?」」


『因みに、このメイド喫茶の秘密はこれだけではないんです……なんと! 壇上ではメイドさんが足踏みする瞬間をステージ上で見れる「公開ゲリラ脚踏みライブ」が開かれるんです!』


「「『公開ゲリラ脚踏みライブ!?』」」


『では、その瞬間をみて見ましょう!』


「お、お兄ちゃん……足踏みって生地を脚で踏んでコシをつける作業のことだよね……」

「ああ、そうだな……あれ、でもそれは『うどん』で『そば』は足踏みしないんじゃ――」


『公開ゲリラ脚踏みライブニャー♪』 フミフミ!

『おふっ……ありがとうございます! ありがとうございます! おふっ!』


「「――って『そば』じゃなくて『お客さん』を足踏みするのかよ!?」」


『では、噂のメイド喫茶「めいどむーみん」でした~♪』

『ご主人様のお帰りをお待ちしてるニャン!』



「なんか……すごいモノを見たね。お兄ちゃん……」

「ああ……下手したら今世紀最大の衝撃だったかもしれん……」

「…………ねぇ、お兄ちゃん」

「ん、何だ。妹よ?」

「お兄ちゃんは……」

「……?」


「私がメイドだったら、嬉しいかニャ~?」♪


「ノ、ノーコメント……」





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