第40話「服を選ぶならこんな風に」
「お兄ちゃん……それってデートって言うんだよ」
(家に帰って今日の出来事を妹に話したら、なにやら妹がアホな事を言い出した……)
「いやいや! アホなのはお兄ちゃんの方だよ! いい、よーく考えてね。休日に仲の良い男女が街へ出て女性にプレゼントを買う行為を何て言うと思う?」
(うーーん)
「…………完全に『デート』じゃねえか」
「だから、私さっきからそう言ってるじゃん!」
「ヤベエ! マジでデートだ! てか、なら何で朝倉さんはこれをオッケーしちゃったんだよ! いや、まて……委員長だ! 委員長もいるぞ! この話をしたのはそもそも委員長だから明日は俺と朝倉さんだけじゃ無くて委員長もいるはずだ!」
「お兄ちゃん……その委員長って人、その話をした時にお兄ちゃんと朝倉先輩の二人で行けとか言ってなかった?」
「え?」
(確か――……)
『明日は学校も休みなんだし二人で街へ出て朝倉さんと一緒に街を回りながら朝倉さんが好きそうな物を見つけてそれをプレゼントすればいいのよ』
「うん、言ってた……」
「お兄ちゃんのバカ」
「どうしよう! いきなり明日デートって言われても何をしたらいいかわかんねぇよ!」
「…………」
(うん、多分その時の朝倉さんもお兄ちゃんと同じ気持ちだったと思うよ)
「とりあえず、お兄ちゃんは今から服を買いに行くべきじゃない?」
「服? は? 何で? 妹よ、流石にお兄ちゃんでも私服くらいは持ってるぞ」
「はぁ……お兄ちゃん、悪いけど普段休日にお兄ちゃんが着てる全身真っ黒のシャツとズボンは『服』とは言えないからね」
「俺がいつも休日に来てたの『服』のカテゴリーに入ってないの!? じゃあ、俺は今まで何を着て外歩いてたんだよ!」
「うーん、ただの『布切れ』じゃないかな?」
「実の妹に普段のコーディネートを遠まわしに『ゴミ』って言われた!?」
(いや、実際にお兄ちゃんのファッションって『ゴミ』だからね? それに……)
「ねぇ……いくらお兄ちゃんが原始人のファッションセンスでよくても、明日はあの『朝倉先輩』と出かけるんでしょ? なのに、お兄ちゃんはあの『朝倉先輩』に原始人と一緒に歩かせて平気なわけ?」
「あれ……? もしかして俺、実の妹に『原始人』扱いされてる? 縄文土器も作れないの?」
(しかし、妹の言い分も一理ある。確かに明日一緒に出かけるのはあの朝倉さんだ。その朝倉さんの隣にいつもの休日の格好をした俺を並ばせると…………
あ、ダメだこれ。死にたくなってくる)
「妹よ! お願いします! この原始人の兄貴にどうか現代人のファッションをコーディネートしてください!」
(今更だけど、俺やっと事態のヤバさに気付いたぞ! このままだと俺デートに着て行く『服』が無いじゃん! しかし、妹なら! それでも妹なら俺に朝倉さんと並んでも恥かしくないコーディネートをしてくれるはず!)
「はぁ……仕方ないな~~本当にお兄ちゃんは仕方ないな……あーあ、仕方ないから、嫌だし面倒だけど『妹』だから! お兄ちゃんの『妹』だから、一緒に服を選んであげるよー」
「ありがとうございます! やはり持つべきものは頼りになる『妹様』です。へへ~~」
「因みにお兄ちゃん、予算はいくらある?」
「明日の予算もあるし…………5千円くらいで一式そろえられないかな?」
「少なっ! 嘘! お兄ちゃんなんでそんな予算少ないの!? 普通なら服を一式そろえるとしたら2,3万はかかるからね!」
「はぁああ! 嘘だろお前! 2,3万とか……俺が一ヶ月に使ってるラノベの購入金額と同じなんだけど」
「お兄ちゃん、そのお金を少しは服に回そうよ……」
(妹よ分かってないな~~本は頭の栄養なんだぜ? だから、お金に糸目は付けちゃいけないんだよ……)
(――って、お兄ちゃんのことだから思っているんだろうけど、その頭にたらふく栄養を与えた結果がその『ぼっち』のお兄ちゃんなんだよね……はぁ、手遅れになる前にさっさと朝倉先輩、お兄ちゃんのこともらってくれないかな)
「先ずは買いに行くお店を選ぶ前に、どんなコーディネートを基準にするか選ぶから、お兄ちゃんこのメンズモデルの服装から好きなもの選んで」
「なんだよ。いきなりスマホ見せて……ファンションモデルの画像か? うへぇ……なぁ、妹よ……お兄ちゃん本当にこの中から選ばないとダメかな? なんかどれもイケメンしか着る事を許されないイケイケのファッションに見えるんだが……」
「最近のメンズってどれもそんな感じだよ」
「えーーマジで?」
(流石にぼっちの俺にはこんなイケイケのファッションはイタイだろ……こっちはビシッとしたスーツ的なファッションで学生の俺にガ着るには不釣合いだし、もう一つは――何だこれ? なんで方袖だけ長いの? え、この服片方の袖だけ破れてるんじゃね? なんか袖が長い方は鳥の羽っぽく見えるし民族衣装か? もう一つのは……なんでこれマフラー巻いてんだ!? しかもジャケット肩が超尖がってる!? てか、履いてる靴もドリルみたいに尖がってる!? 何この今にも天元突破しそうなファッションは!?)
「な、なぁ……妹よ。これって俺が着ても恥かしいだけだと思うんだけど」
「はぁあ? お兄ちゃんマジでそれ言っているの?」
「え、あ……うん、ハイ」
「お兄ちゃんに一つ良い事を教えてあげる」
「おう、何だ?」
「確かに、ファッションモデルが着ている服をそのまま着るのは最初は恥かしいかもしれないよ。でもね……普段のお兄ちゃんの『私服』より恥かしいファッションなんて存在しないから」
「…………マジか」
(この後、妹に言われ『ウニクロ』でマネキンが来ている服をまるごと購入した)
【おまけss】「センス」
「因みに、お兄ちゃんがこの『ウニクロ』の中でセンスいいなーって思う服はどれ?」
「え、何その……妹の辛口ファッションチェックでも始まりそうな質問……?」
「今、お兄ちゃんが言った言葉そのままだよ。どうせなら、お兄ちゃんが思い描いている『イケてる!』って抱いているファッションセンスをこの機会にぶち殺しておこうかと思って?」
「お前は一体どこの
一着目 チェック柄のシャツ
「うーん、よくわからんがこれとかいいんじゃね?」
「お兄ちゃん……ヤバい」
「何が!?」
「いやいや……お兄ちゃん、今の時代にチェック柄は無いよ……マジでない」
「え! 何!? チェック柄ってだけでもうダメなの? 色とか襟の形とかじゃなくて?」
二着目 ライダースジャケット
「これとかどうよ! お兄ちゃん、今回は自信が――」
「どうか、今回はご縁がなかったということで……」
「まさかのお断りメール!?」
「いやいやいやいや、お兄ちゃん。さすがにこれは身の程知らずにもほどがあるよ……」
「身の程知らず!? なんでだ妹よ! だって、テレビではこういうの着てるタレントとか沢山いるじゃん! それにお前さっき『ファッションモデルが着ている服をそのまま着るのは間違いじゃない』的なこと言ってたじゃん!」
「はぁ、お兄ちゃん……いい? 世の中にはね。素人がむやみに手を出してはいけない領域てのがあるんだよ……お兄ちゃん程度の階級のファッション下民はテレビのタレントが着るような貴族階級のファッションは手を出しちゃダメなんだからね?」
「何その服の格差社会!?』」
三着目 無地に『キリン』のイラストが描かれたTシャツ
「お兄ちゃん……何? この無駄にスピード感のあるキリンが描かれたTシャツは?」
「え、可愛くない? ダメ?」
「全然ダメでしょ! なんでセンスがあるものを選んでって言ってるのにこんな『変なキリンのTシャツ』なんて選ぶの~」
「ダメかぁ、うーん……可愛いと思ったんだけどな……」
「何? お兄ちゃんはひそかに可愛い路線でも狙っているの?」
(もう、そんなのお兄ちゃんのキャラじゃ――)
「は? 俺……違う違う、このTシャツはお前に似合うと思って選んだよ」
「――ほえ……私?」
「そうそう、女の子ってこういう変なイラストのキャラ好きなんだろ? あ、もちろん部屋着用だぞ?」
(お兄ちゃんが……私のために選んでくれたの?)
「へへ……そ、そうか~~もう、お兄ちゃんは本当にキモイな~~♪」
「せっかく選んでやったのに何! このひどい言われよう!?」
その後……
「え、結局……おまえそのTシャツ買ったの?」
「ふーんだ! お兄ちゃんのファッションセンスを全部否定したら流石に可哀想だから、妹として……『仕方なく!』買ってあげた……『だけ!』だもんね~~♪」
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