第39話「ご褒美」
「朝倉さん、良かったわね。安藤くんから100点がもらえて」
「ええ、私嬉しいわ!」
(良かった。これで朝倉さんも笑顔に――)
「だって、もらえないと思っていた安藤くんの『ご褒美』がもらえるんですもの!」
「あ…………」
(し、しまったぁあああああああああああああああ! そうだ! 俺、朝倉さんが100点取ったらご褒美を上げなきゃいけないんじゃん! すっかり忘れてた! てか、何もしなければご褒美はいらないはずだったのに何してんの俺! 畜生……これだったら100点じゃなくて――
『あ~惜しかったね。仕方ないから俺から1点あげて99点にしてあげるよ』
――とか言えばよかったあああああ!)
「あ、安藤くん……今『あ』って言ったけどまさか……」
「え、安藤くんの『ご褒美』無い……の?」ショボーン
(や、ヤバイ! 委員長が俺の動揺をみて『ご褒美』が無いことに気づきやがった! しかも、朝倉さん俺なんかの『ご褒美』が無いだけでそこまでガッカリする!?)
「違う違う違う! た、確かに朝倉さんへの『ご褒美』は今は無いけど、それは直ぐに用意するから!」
「安藤くん、それはどう言うこと? 無いなら無いって先に言った方が良いと思うわよ」
「今必死に考えてるから委員長は黙ってて!」
「安藤くん、私もそんなに『ご褒美』に期待していたわけじゃないから無くてもいいわよ」
「あ、朝倉さん……」
(朝倉さん! なんて優しい人なんだ!)
(ウソ! 本当は安藤くんの『ご褒美』チョーー欲しいわ! で、でも……安藤くんがくれたさっきの言葉は私の中ではもう『ご褒美』みたいなモノだったし~まぁ、今回はそれで許してあげてもいいんだからね!)
(……でも、ダメだ! 俺はちゃんと朝倉さんに100点を取ったら『ご褒美』をあげるって約束したんだ。それに、朝倉さんの100点を認めたのは俺なんだからちゃんと朝倉さんが喜ぶ『ご褒美』を俺は彼女にあげたい!
でも、朝倉さんが喜ぶ『ご褒美』って何だ……考えろ俺! 例えば俺が朝倉さんからもらって嬉しい『ご褒美』は――
① 頬にキッス!
② 一緒にお互いの好きそうなラノベを読む
③ ご褒美は ワ・タ・シ♪
って、アホかぁあああああああああああああああああ! それ朝倉さんがもらっても嬉しいわけ無いじゃん! あの学校で一番の美少女である朝倉さんが『ぼっち』の俺から『頬にキス』とか『一緒にラノベを朗読』とか『俺自身がプレゼントだぜ!』とかで喜ぶわけ無いだろ!
くっそう、こうなったら――)
「朝倉さん、ごめんなさい! 俺、朝倉さんが喜ぶ『ご褒美』何も用意できませんでした!」
(最終手段! 土下座だ!)
「ちょ! あ、安藤くん! いきなり土下座なんてしなくて良いわよ。別に私はご褒美が無くてもいいのよ? だって、私にとってはこの安藤くんが採点してくれた100点のテストが一番の『ご褒美』だもの」
「朝倉さん……」
(なんて優しい人なんだ……俺の採点したテストなんてたいして価値がないのにそれが『ご褒美』だなんて――)
「まぁ、安藤くんのことだから、そうだとは思っていたわよ……フフフ、安藤くん! ってわけでこの優しい委員長である私が、安藤くんに良い提案を授けてあげるわ!」
「良い提案……?」
「そう、安藤くんが『ご褒美』を用意できなかったのは朝倉さんが何をもらったら嬉しいか、分からなかった所為でしょ?」
「うん」
「なら、安藤くんが朝倉さんにあげる『ご褒美』を朝倉さん自身に選んでもらえばいいのよ!」
「…………ほう」
「え、委員長?」
「安藤くん、考えて見なさい。そもそもね、朝倉さんが喜ぶようなプレゼントを『ぼっち』の安藤くんが選べると思ってること事態が間違いなのよ」
「……確かに」
「えええええ! 安藤くん!?」
(認めないで安藤くん! 私は安藤くんが選んだ『ご褒美』なら何でも喜べるわよ!)
「だから、丁度明日は学校も休みなんだし、二人で街へ出て朝倉さんと一緒に街を回りながら朝倉さんが好きそうな物を見つけてそれをプレゼントすればいいのよ」
「おおお! 委員長それ採用! 朝倉さんもそれでいい?」
「え! あ、うん」
「じゃあ。安藤くん場所は駅前がいいと思うわ」
「オッケー時間は何時?」
「当然お昼前の12時でしょ!」
「何が当然なのかわからないけど、了解!」
「えーと…………」
(安藤くん、それって……ふつうは『デート』って言うんじゃないのかしら? はぅ!? ってことは……明日は私、安藤くんとデートするのぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!!)
【おまけss】「安藤くんの一日」
コッケコケ……コロコッローーーーーー! ← 鳥の鳴き声
朝
7時 起床
「お兄ちゃん! もう、朝だよー! 学校遅刻しちゃうよー!」
俺は目覚めがいい。だから、いつも朝は早く起きて、早くシャワーを浴び、そして早く朝食を食べるのが日課だ。なので、妹に起こしてもらう……な、なんてことはあまり無い……
「うーん……おやすみ……」
「って、寝るなーー!」
こともない……
7時15分 シャワー ~ 朝食
「もう、お兄ちゃん! いつも起きるの遅すぎぃ! 私先に学校行くからね。あ! お兄ちゃんの分の朝ご飯はテーブルに出てるから~」
「ハイハイ、行ってら~」
「うん! お兄ちゃん行ってきまーす♪」
「ふぅ……さて、食べる時間は5分はあるな。いただきます」
俺の家はごはん派だ。いつもはシャワーを終えるとテーブルに妹が用意してくれたごはんとみそ汁と昨日の残り物のおかずが用意してある。
7時45分 登校
「……行ってきます」
俺の家は両親が共働きなので朝は妹が出ると誰もいない。
学校は8時までに行けばいいが、俺の登校時間は早い。それは別に学校へ早く登校しているという『早い』でなく、その意味は――
「45分……うん、今日もこのペースなら俺が自分の席に着くぐらいのタイミングでチャイムが鳴るな」
そう、単純に俺が早歩きで登校しているだけだ。俺はいつもHRのチャイムが鳴るギリギリに教室へ入っているのでこの時間までなら惰眠をむさぼれる! というギリギリまで家でだらけていられるのだ。おかげで今までHRギリギリに登校しているが遅刻をしたことは一度もない。
7時59分55秒 教室で自分の席に着く
「安藤くん、おはよう」
「朝倉さん、おはよう」
キーンコォ~ンカーンコォ~ン♪
俺が席に座るとちょうどチャイムが鳴り響いた。うん、今日もバッチリだ!
しかし、席に座ると何故か未使用だったはずの俺の椅子が妙に生あったかい……
これは――きっと、朝倉さんが原因だ。
どういうことかというと、きっと俺が登校するまでの朝の時間を使って誰かが朝倉さんと話すために俺の椅子を使っているのだろう……うんうん、朝倉さんは『学校一の美少女』という存在だから、彼女と話したがる人間は男女問わず多い。だからこそ、俺のような『ぼっち』の席はそういう朝倉さん目当てのリア充共に勝手に座られることが多いのだ。
「朝倉さん、先生は?」
「今日もまだ来てないわ」
「やっぱり……」
ちなみにうちのクラスだけはHRの時間になっても担任の先生はやってこない。やってくるのはいつもだいたいチャイムが鳴った5分後くらいだ。しかし、出席だけは委員長が目を光らせているので8時までに教室に来ないと遅刻扱いになってしまうから注意が必要だ。
「多分、このクラスで一番遅刻してるのって先生なんだよな……」
「あはは……それは言えてるわね」
だから、最近はその先生が来るまでの時間を、俺は隣の席の朝倉さんとひっそりラノベの話などをして過ごしていることが多い。
8時30分 1時間目 睡眠
「えー……この英文は――」
「…………」
「zzZZ~~」 スヤスヤ
英語の授業は正直何を言っているのか全然分からないので、貴重な睡眠の時間だ。隣の席では朝倉さんがノートを一生懸命書いているが、一体こんなつまらない授業の何処にそれほどの書くことがあるのだろうか?
よくわからないので、そんな朝倉さんの綺麗な横顔をチラリと脳内に焼き付けてそのまま安眠の旅へ出かける。
12時30分 お昼時間
キーンコォ~ンカーンコォ~ン♪
「きょ、今日はここまで……じゃ」
「――っ!」 ガタッ!
「っ! あ――……」
「…………」 スタスタ~♪
昼になると教室のリア充の生態が活発化するので、俺は一目散に学校の外のコンビニへ避難する。でも、たまに雨の日とか外に出るのがダルい時は売店で適当に買って図書室でラノベを読むことも多い。まぁ、その場合は大抵図書室に委員長がいて嫌みの言い合いになったりするんだけどね。
14時30分 授業6時間目
「あー、これ……この数式な。テスト作るのメンドイから、そのままテストに出すわ。点数取れないバカはノートに書いとけよー」
「…………」
「ウチの数学の先生適当過ぎだろ……」 カキカキ
基本的に殆どの授業を半分寝て過ごしている俺だけど、数学の授業だけは一応起きて授業を聞いている。これは別に俺が数学を好きというわけでなく、単純に数学だけは授業に追いつけるからだ。
でも、先生の授業って半分聞いてればだいたい理解できるから、余った時間で先の分の問題もあらかじめ自分で解いちゃったりするんだけどね。
16時30分 帰宅
「はぁ……今日も学校終わったわ」
帰宅すればあとはもうラノベを読むだけだ。夕食は当番制なので俺が用意する時もあるが今日は妹の当番なのでマジで飯以外はラノベを読みまくることにする。
え、学生の本分……? 何それ、新しい「なろう」のタイトル? 俺TUEEEモノ?
0時30分 就寝
「ふぁ~……眠みぃ……そろそろ、寝るか。あぁ、そうだ……このラノベ面白かったから明日、朝倉さんに勧めて……」 zzZZ~~
こうして、俺の一日は今日も平穏に過ぎていくのだった。
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