第34話「本棚」



「ここが安藤くんの部屋ね」

「見たいって言ってもラノベくらいしかないよ?」

「本当ね。うわー大きい本棚……ねぇ、安藤くんこれ何冊くらいあるの?」

「うーーん、ちょくちょく買って入らなくなったらアキバで売ってるから、詳しくはわからないけど……多分、この本棚にあるだけで200冊はあると思うよ」

「200冊!? ウソ、私なんてその3分の1も持っていないわよ!」

「いや、朝倉さんも十分持ってるじゃん。大体、朝倉さんは『なろう』で読んでるのが中心なんでしょう? だから、紙媒体は手持ちが少ないだけじゃない?」

「ああ、そういえばそうね。でも、安藤くんだって『なろう』は読んでるでしょ?」

「まあね。でも、俺は書籍化してるのはそっちで読んじゃうから。ほら、ここの棚の段とか主に『なろう』の作品だし」

「本当だわ! これは食べ物がすべて異世界に放り込まれる特性の大食い選手が主人公の『異世界食道』それに、こっちは日本の労働基準法から逃げて異世界に進出し、異世界の住人をタダ働き同然で働かせる『異世界居酒屋「ワタ」』じゃない! これは、日本の薬局で働いていた主人公が異世界に転生し現代の知識を生かした薬屋さんを始めて、市場を独占し成り上がる『異世界ドラックストア マツモト!』だわ!」

「あはは、やっぱり朝倉さん『なろう』は詳しいね」

「安藤くんだって結構知ってるじゃない?」

「まぁ、俺は主にランキングに乗ってるのとか書籍化したのしか読んでないから、あと『なろう』だけじゃなくて他のラノベも最近は読んでるからね」


(そう言われれば安藤くんの本棚って棚ごとに種類が分けられている気がするわね……上段が『なろう』系かしら? 中段の作品は『エロの使い魔』『ねこかみ』『俺の弟がこんなに可愛いわけがない』……なるほど、少し昔の大物タイトル系かしら? 中段よりちょっと下が最近の作品系ね。ん? 一番下の段の棚だけ何故か国語辞典がビッシリ…………これは――そうか! 安藤くん、昔はこの辞典をつかってラノベの読めない漢字を調べていたりしたのね!)


「安藤くん、この一番下の段の国語辞典は――」

「そそそそ、それはただの国語辞典だよ! 昔読めない漢字を調べていただけでのなんの変哲もないただの国語辞典だからとくに面白くもなんともないよ!」

「あら、やっぱりそうなのね。でも、こんなに何個も違う種類をそろえているのね」

「そそそ、それは! ラノベって普通の小説とは違って変に難しい漢字を使っていたりするからいろんなのを調べられるように、いろんな辞書をそろえていただけだよ!」


(ああ、そうか! 確かに『なろう』の作品でも「漆黒」って書いて「やみ」って読んだり「炎」を「焔」って書いたりするものね)


「でも、使っている割には綺麗ね。少し私にも見せてもらっていいかしら?」


(安藤くんが使っている辞書ってどんなのかしら?)


(ヤバイ! 朝倉さん、それは見てはダメなやつだ!)


「朝倉さん、ちょっとま――――っあ!」


(あ、足が滑って……)


(え、なんで安藤くんが飛び込んで――)


「ふぇ……きゃあ!」

「ぐぁあ!」


(イテテ……とっさに動いた所為で足を滑らせて朝倉さんを床に押し倒してしまった……し、しかし、今回は何とか両手を床に付けたから、朝倉さんの体に……ましてや、胸に触るなんてことは無かったぞ! 少しガッカリだ……)


「朝倉さん、ごめんいきなり倒れちゃって……大丈夫?」

「あわわ…………」

「朝倉さん?」


(あれ? 何で私……なんで安藤くんに押し倒されて? まさか、この状況はいわゆる『床ドン!』わ、わわわ、私! いま安藤くんに『床ドン!』されてるわ! この後どうなっちゃうの!? もしかして――ダメ! それはまだ早いわ! だって胸さえ触られただけなのに……せめて――)


(…………? 朝倉さんは何で目を閉じて口を突き出しているんだろう? もしかして、頭でも打ったか? だとしたら早くどかないと!)


「むーー!」

「朝倉さん、ゴメン! 今退くか――」


「朝倉先輩! 飲み物お持ちいたしました――――って、ああぁあ!? お兄ちゃん、何やってるの!?」


(なにぃいいい!? このタイミングで妹の乱入だと! この状況はヤバイ!)


「いや、違う! これは!」

「お、お兄ちゃんの変態! スケベ! エロガッパ! このラノベオタク!」

「だから、ラノベオタクは関係ないだろぉおおおおおおおおおお!」



(あ、安藤くん……まだかしら?)







【おまけss】「居眠り」



「zzZZ……」 スゥスゥ

「…………」 ワナワナ


(あ、安藤くんが寝てるわ!?)


「~~zzZZ」 スゥスゥ

「…………」 ワナワナ


(どど、どうしましょう……安藤くんが授業終っても眠ったままってかなり珍しいわね……昨日徹夜でラノベでも読んだのかしら……)


「zzZZ~~」 スゥスゥ

「…………」 ワナワナ


(くぅううう! 眠っている安藤くんの寝顔無防備でなんて可愛いのかしら! さ、触ったらダメかしら?)


「zz~~……」 スゥスゥ

「…………」 ワナワナ


(だ、ダメだよ! 今触ったりなんかしたら安藤くんが起きちゃうじゃない! うぅう……寝ている安藤くんなんて存在は私にとって超激レアSSRのようなものだからほっぺを突っついたりしたかったけど……ハッ、そうだわ!)


「zz~~……」 スゥスゥ

「…………」 カシャ!


(フフフ~~寝ている安藤くんの横顔ゲットよ♪ 今日からこの写真を待ち受けにするわ!)


(…………え! 朝倉さん、今俺の寝顔を撮った? 何で!?) ← 途中から起きてた


「フフン~~♪」 

「……zzZ」 ← 寝たフリ



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