第31話「責任」




「責任を取ってもらいましょうか」

「……はい」


(朝倉さんが、お手洗いから戻った第一声がこれ……ああ、俺の学校生活死んだな。でも、最後に俺の人生じゃ一生触る事のできないものを触る事もできた。

 ああ、悔いは無い)


(正直言ってあれはほぼ事故だわ。で、でも……例え事故といっても私は安藤くんに人生で始めて胸を……むむむ、胸を触られたのよ! これは何かしらの責任を取ってもらわないと私のこの嬉しいような恥かしいようなどうしようもない気持ちにケジメを付けられないのよ!)


「朝倉さん、大丈夫……俺も事故とはいえ朝倉さんの――その……ね? してしまったわけだし、男として責任は取るよ!」

「え」


(せ、責任って……安藤くん、もしかして!)


「朝倉さん、何でも言ってください! 今回の責任を取って、俺!

 朝倉さんの言うこと何でも聞きます!」


(えええええええええええええええええええええええ!)


「あああ、安藤くん……今『何でも』って、言った?」

「はい! 男に二言はありません! 朝倉さんが今回の事を許してくれるなら俺は何でも喜んで朝倉さんの言うことを聞きます!」


(どどど、どうしましょう! 何でもってことは……つまり『何でも』よね!

 キャァア――ッ! どうしましょう! どうしましょう! 安藤くんが『何でも』私の言う事を聞いてくれる……あ、あんな事や……こここ、こんなことでもいいの!? ほ、本当に!?)


「安藤くん……ほ、本当に『何でも』言っていいのかしら?」

「イエス・ユア・マジェスティ」


(ふぁあああああああ! こ、これは本当だわ! 夢じゃ無いのね!)


(さぁ、朝倉さん。一体どんな命令を出してくる……? やっぱり胸を触ったんだからそれなりの事は言ってくるよな……『じゃあ、私の気がすむまで殴らせなさい』とかならマシだけど『じゃあ、安藤くんは学校にいる間はラノベを読むの禁止ね』とか言われたら俺学校で衰弱死する自信あるぞ……それとも『じゃあ、慰謝料として安藤くんにはスレ●ヤーズの全巻セットを新品で買ってもらおうかしら?』とか言われても俺の貯金が死ぬ……でも、たとえそのような事を言われても俺は責任を取らなきゃいけないんだ! だって、だって! 俺はそれ以上に『価値』のあるものを触ってしまったんだからぁああああああ! 『朝倉さんの胸』とか朝倉さんを知る全男子の求めて止まぬ『桃源郷』じゃないか! 畜生! この罪を少しでも償えるならどんなことも受け入れてやる!)


(どうしましょう! どうしましょう!『ナンデモ?』『なんでも』『何でも!』安藤くんが何でも言うこと聞くって言うけど……そもそも、安藤くんは私の粗末な胸を触っただけだし、そんな『何でも』なんて言っていいのかしら……? でも、この際だし少し欲を言うなら――

『じゃあ、罰として明日は私を家まで迎えに来なさい!』とか、言っちゃっていいのかしら! でも、少し欲張りすぎかしら……? やっぱり、家まで来てもらうのもかわいそうよね? あ、じゃあ!『安藤くん! 罰として明日は私と一緒に下校しなさい!』とか、どうかしら? でもでも、それより~~『罰として、明日は二人でお昼を食べるわよ!』とかでも……それなら!『じゃあ……罰として、優しく頭を撫でて……?』って、キャァアーーーーッ! そんなこと言えないわよ! バカじゃないの私!?)


「…………」

「…………」


(な、なんだろう。朝倉さん、さっきから難しい顔したりモジモジしたりしてるけど……そ、そんなに恐ろしい事を命令するつもりか!)


「決めたわ!」

「は、はい!」


(やっぱり、ここは正直に一番私が欲しいものを言うわ!)


「朝倉の名において命ずる!

 安藤くん、私が数学のテストで100点を取ったら、私に『ご褒美』をください!」


「……………………え?」

「あ、あれ? ちょっと聞えなかったの? ご、ご褒美よ! ご褒美! 私が数学のテストで100点を取ったら安藤くんは『ご褒美』を私に用意しなきゃいけないの! もちろん『ご褒美』は安藤くんが一人で選ばなきゃダメなんだからね! 委員長とかに選んでもらうのは無しよ?」

「…………」


(ゴホウビ……?)


(安藤くん、固まっちゃったわ。やっぱり、私なんかの胸を触られたくらいで、少し欲張りすぎたかしら?)


「え、朝倉さん……ご褒美って、それだけ? 本当にそれだけでいいの?」

「もちろんよ!」

「でも、それって朝倉さんが数学のテストで100点を取らなきゃ意味が無いよね?」


(そうしたら俺の謝罪の意味も――)


「何言ってるのよ。だからこそ意味があるんじゃない?」

「え」

「だって、安藤くんはその……わ、私の胸を触った事を悪いと思っているのよ……ね?」

「も、もちろん!」

「それで、謝罪したいと思うのよね?」

「もちろんです!」

「なら、安藤くんは私に謝罪の『ご褒美』を与える為にも私が数学で100点を取れるようにしっかり勉強を教えなきゃいけないでしょ? そして、私は100点をとれば安藤くんから『ご褒美』がもらえるからより、勉強にやる気が出るわ!

 ああ~安藤くんは私に一体どんな『ご褒美』をくれるのかしら~~『ご褒美』が楽しみすぎて仕方ないわね~~」チラッ


(あぁ……そうか、朝倉さんは俺を責めないつもりなんだ。だから、そんなことを……)


「あはは、そうだね。じゃあ、朝倉さんは俺から素敵な『ご褒美』をもらうためにも数学を頑張らなきゃね」

「ええ、もちろんだわ!」


(フフフ……私ったら完璧ね! この約束を取りつける事により私のテストへの意気込みは最高! さらに、安藤くんの『ご褒美』はあえて内容を安藤くんに決めさせることでワクワクが二倍……いや、三十倍! しかも、もらえるのはただの『ご褒美』じゃ無いわ……

 私がもらうのは、安藤くんが頑張った私の為に! 私のことを想って! 選んでくれた! 安藤くんの心がこもった『ご褒美』なのよ!

 ハーッハッハッハ! これは数学のテスト勝ったも同然ね!

 勝ったわ……ガーハッハッハッハ!)







【おまけss】「スコップ」



「安藤くんって新しいラノベ探す時、何を参考にしているの?」

「そうだね。俺は有名なブロガーさんがオススメしてたラノベとかはこまめにチェックしてるからそういう作品を読んだりするね」

「有名なブロガーね……例えば?」

「言うても二人くらいだよ?『Gurgur818』さんとか『ラノベの王子様』とか?」

「へー、安藤くんがオススメするなら私もそのブログ見てみようかしら? あとは何か新しいラノベを探す方法無いかしら? 私、最近ちょっと読むものが無くなっちゃって新しいラノベを読もうと思うんだけど……」

「ああ、分かる分かる。新しい読んだことの無いラノベって最初の数十ページ読むのに凄い力……っていうか気合がいるよね」

「そうなのよ! 確かに『あ! これ最近何かと噂になっているラノベだわ!』って作品はあるにはあるんだけど……『じゃあ、買って読む?』ってなると中々ね……」

「人の好みって多種多様だし、他の人がオススメしてても自分に合うとはかぎらないからね……その分、俺はさっきあげたブロガーさんの趣味が比較的自分にも合うから結構新しいのを読む時は参考にしているね」

「そう言うのいいわよね~わ、私も……安藤くんとは何かとラノベの趣味は合うから……ああ、安藤くんのオススメは重宝しているわよ?」

「朝倉さん……」

「安藤くん……」


(でも、朝倉さんのオススメって微妙に俺に合わないのも多いんだよなぁ……)


(ムフフン♪ やっぱり、私達の相性はバツグンね!)



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