第26話「勝者と敗者」
「…………」
「はい、安藤くん『あーーん』」
(何で朝倉さんはこんなノリノリで俺に罰ゲームでしかない『あーーん』を強要できるんだ? 好きでもない異性にこんなことするの普通は嫌でしょ! もしかして、朝倉さん俺のこと好きだったり……いやいやいや! 過去にも何回かそんな戯言考えたけど、考えれば考えるほど『無い』から! だって、あの朝倉さんよ? あの朝倉さんがこの状況下で本心は恋する乙女みたいにドキドキしてるとかありえないよ)
(どどどど、どうしよう! 私いま安藤くんに最大限に大胆な行動とっているよね!? これじゃあ、私が安藤くんのこと好きなのバレないかなぁ……で、でも、少しだけ安藤くんにこの気持ちを気付いて欲しい気もするけど……)
「あ、安藤くん? お願い……『食べて?』」
「…………」パク
「ど、どう?」
「美味しい……」
(そりゃ、俺が好きで食べてたあんかけチャーハンだから美味しいのは当たり前だよな。でも、これで罰ゲームも終り――)
「じゃあ、第二回戦行くわよ~」
「って、二回戦!? 委員長俺まだこの茶番続けるの!?」
「だって、二人ともまだ全然、仲良くなれてないじゃない。これはあくまで二人が『友達』見たいに見えるほど仲良くなるまでやってもらうからね」
(いやいや『友達』ってよりこれじゃあ『恋人』だろ……)
「あ、安藤くん……二回戦のじゃんけんやるわよ!」
「だから、朝倉さんは何でそんなにやる気なの!?」
二回戦目
「「じゃんけんぽん!」」
「私の勝ちね! じゃあ、教科は『理科』よ」
「二人の点数は?」
「91点よ」
「67点」
「勝者、朝倉さん!」
「はい、安藤くん『あーーん』♪」
「ぐっぬぬ……」
パク
三回戦目
「「じゃんけんぽん!」」
「私の勝ちね! じゃあ、教科は『英語』よ」
「二人の点数は?」
「92点よ」
「…………12点」ボソ
「…………敗者、安藤くん」
「何で敗者の方を言ったぁ!」
「安藤くん、元気出して! 中間テストは赤点取らないでね? はい『あーーん』♪」
「も……もう、殺してくれぇ……」
パク
四回戦目
「「じゃんけんぽん!」」
「私の勝ちね! じゃあ、教科は『社会』よ」
「二人の点数は?」
「98点よ」
「34点」
「はい勝者、朝倉さ~ん」
「委員長、その『分かってた』みたいな表情やめて」
「安藤くん『あーーん』して♪」
「…………あーん」←死んだ魚の目
パク
五回戦目
「安藤くん……いくらなんでも、じゃんけん弱すぎない?」
「俺、じゃんけん勝ったことねえから」
「いや、私はむしろ、委員長として安藤くんの点数の悪さの方が問題だと思うけど……」
「そ、それじゃあ! 安藤くん、五回戦やるわよ!」ウキウキ
「ねぇ、委員長これまだやるの?」
「そうね。もう、十分面白かったし、これで最後でいいんじゃない?」
「おい、今なんて言った!?」
(もう、二人とも感覚がマヒしたのか『あーん』には大分慣れたいみたいだし潮時でしょう)
「「じゃんけんぽん!」」
「私の勝ちね! じゃあ、最後の教科は『数学』よ」
「二人の点数は?」
「96点よ!」
「100点」
「…………」
「…………」
(え)
(はぁ?)
「あ、安藤くん……今、なんて言ったの?」
「100点だけど……」
「ちょっと、安藤くん。いくら負け続けているからって委員長である私の前で嘘を付くのはどうかと思うのだけど……だって、朝倉さんは実力テストで学年一位なのよ!」
「それ、総合でしょ? 数学だけは俺が一位だから……てか委員長、朝倉さんが総合一位って分かっててこの勝負けしかけたよね?」
(嘘、安藤くんが100点? あの安藤くんが私よりも点数が高いですって!? って、あ! あそこにいるのは数学の先生! ちょうどいいわ。本当に安藤くんが100点なのか確認を――)
「おう、安藤か。なんだ学食で食べてるの珍しいな」
「あ、先生。こんにちは」
「今回『も』数学のテスト100点だったな。次の中間も頑張れよ」
「あざーす」
「…………」
「…………え、本当なの? てか『今回も』って事は」
「うん、いつも数学だけは100点だよ俺」
「す、凄いわ、安藤くん……私、いままで100点なんて取ったこと無いわ」
「え! でも、朝倉さん点数高いじゃん!」
「その、どの教科もちょっとしたケアレスミスで満点は取った事無いのよ……それに数学はいつも最後の文章問題が難しくて」
「そうか……なら、取ってみる100点?」
「「え」」
「朝倉さんが良ければだけど、俺が朝倉さんに数学教えてあげるよ。朝倉さんがミスするのって単純なケアレスミスと最後の文章問題なんでしょう? なら、少し教えるだけで、朝倉さんなら数学は100点取れると思うけど……」
「是非、お願いします!」
「うわっ!」
(そ、即答!? 朝倉さん、よっぽど100点取りたいんだな)
(安藤くんと勉強会!? うそ、まるで夢みたいだわ!)
「いやいや……むしろ、安藤くんの方こそ朝倉さんに勉強教えてもらいなさいよ。貴方、さっきの点数じゃ英語とか赤点だからね?」
「じゃ、じゃあ! 数学を教えてもらう変わりに他の教科は私が教えるわ!」
「あ、それは別にいい――」
「「拒否しない!」」
「あ、はい……」
「ふぅ、じゃあ、後は安藤くんが朝倉さんに『あーん』してお昼時間は終わりね」
「「え!?」」
「いや、何を驚いてるのよ……そもそも、勝った方が負けた方に食べさせるルールでしょ?」
(ふふふ……安藤くんの数学の成績が良いのは予想外だったけどおかげで最後に意外なイベントができたわ!)
「い、いや……委員長? でも、もう時間ないわよ」
(まさか、私が安藤くんに『あーん』を!? え、私がさせるのは慣れたけど、安藤くんにしてもらうとなったらまだ心の準備が――)
(はぁ、もう周りの男子の殺意の波動にも慣れたしさっさと終らせよう)
「はい、朝倉さん。さっさと終らせて教室に戻ろう」
「って、安藤くんは何で急にそんな乗り気なの!?」
「はい、朝倉さん『あーん』」
「っ!? て……安藤くんそれ」
(それ! さっきまで安藤くんが食べてたチャーハンじゃない! スプーンも安藤くんのだし! ッてことはこれは間接キス!? 何で安藤くんそんな堂々としているのよ!)
(朝倉さん、どうして急に黙り込んじゃったんだろう? 委員長も何故か笑いをこらえているし……ああ、そうか! さては朝倉さん、自分が『あーん』させてもらう立場になっていまごろ恥かしくなってきたんだな)
「え、どうしたの?」
「いや……だって!」
「安藤くん、やるわね」
「ほら、朝倉さん『あーん』して? まさか、あれほど俺にしていざ自分がされると恥かしいとか無いよね?」
「だ、だって……それは――」
「ひゅーひゅーっ!」
「委員長うるさい! ああ、もう! 分かったわよ!? 食べればいいんでしょう!」
パク
(美味しい……これが安藤くんの味、安藤くんのチャーハン、そして、私の始めてのキ、キス――……っ!?)
「…………」カッァアア!
「あ、朝倉さん、顔凄い真っ赤だけど大丈夫……?」
(あ、あれ? 少し煽り過ぎたかな?)
「勝者、安藤くん」
【おまけss】「テスト問題 英語 」
問題1 次の英文を日本語訳しなさい。
『This street Will Lead you to the library』
朝倉さんの場合
(ふむふむ……『This street』で道? いや『道のり』って意味よね。そして、後半の『you to the library』で『the library』は『図書館』って意味だから『貴方は図書館に行く』さらに『Lead』『導く』って意味があるから……答えは【この道を行けば図書館に着きます】ね!)
安藤くんの場合
(……………何語? いやいや、まて! これは英語のテスト……なら、必然的にこの古代ローマーにありそうな呪文みたいなラクガキはきっと『英語』だ! 英語なら……俺にも読むことくらい出来るはず! えーと……『you』! これは分かるぞ! これは『お前』って意味だ! うん、あとは……『library』? なんか見たことある響きだな……えーと『ライバラァリー?』 ライバリー……ラビィリー? ライブリー? 思い出した! 『ライブラリー』つまり図書館だ! ってことは答えは――)
解『お前を図書館にしてやろうか!』
問題2 次の英文を読んで返事を英文で書きなさい。
『My work prevents me from visiting you』
朝倉さんの場合
(『My work』で『私の仕事』……『prevents』で『妨げる』……何を? 『visiting you』は『貴方に訪問する』つまり『仕事があるので貴方の家にいけません』ってことよね。そして、このパターンの文章に対する返事はこの前の授業で習ったばっかり……つまり、答えはこの前の授業で習った英文【Please come to the next opportunity(次の機会に来てください)】を書けばいいのよね!)
安藤くんの場合
(分からない……誰か助けてぇ……! まてまて、冷静になれ! 落ち着いて考えれば分かるはずだ俺! えーと『My work』は『私は仕事!』だろ? 『prevents』……ハイ分からない。次! 『me from』は『私が行く!』で『visiting』は意味不明ですな!『you』! これは分かる! これは『お前』だ! つまり、繋ぎ合わせると……『私は仕事! 私は行く! お前に!』って感じに……なるほど! つまり『私は仕事でお前の家に行きます』って意味か! 俺ってば天才じゃん! でも、意味が分かったところで返事の英文がまったく思い浮かばないんだよな……そうだ!)
解『OK♪』
*先生は拳を握り締めながらマルをつけた。
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